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羊文学・塩塚が語る、愛と許し 聴き手の「よりどころ」となる歌を

羊文学・塩塚が語る、愛と許し 聴き手の「よりどころ」となる歌を

羊文学『ざわめき』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:松永つぐみ 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
羊文学

「時代の危うさ」を切り取った“人間だった”と、新しい世代のクリスマスアンセム“1999”。両曲が捉える、漠然とした不安感

―『ざわめき』のリードトラック“人間だった”は、<ぼくたちはかつて人間だったのに / いつからかわすれてしまった>と、ある種の警告を発しているような、今までにない大きなテーマの楽曲になっていますね。途中の語りのパートも非常に印象的です。

塩塚:人間が絶滅しても生態系は崩れないって、この前、たなかみさきさんから聞いたんですけど(笑)、もともとは人間も生態系のうちの一部だったわけじゃないですか?

でも、いつからか自分たちの手でいろんなものを作れるようになって、生きものまで作れるようになった。もはや、人間だったということを忘れてしまっているから、戦争をしたりするんだと思う。

―人間の思い上がりが社会の歪みを生み出している状況に対して、<神さま じゃないと 思い出して>という歌詞をぶつけている。

塩塚:そうですね。去年はそういうことがいっぱいあったから、時代の危うさを上手く言えないかと思って作った曲です。語りの部分に関しては、大学でずっとラップの授業を受けてて、ケンドリック・ラマーを全員の前で歌わされたこともあるんですけど(笑)、ラップは韻とか難しくて書けなくて。でも、言葉を音楽に乗せて、微妙にメロディーがあるみたいなのも面白いと思って、やってみました。

―「時代の危うさ」に言及しつつ、決して息苦しい曲というわけではないですよね。MVも人間らしさを取り戻して、解放されていく様子が描かれています。

塩塚:この曲で気に入ってる歌詞があって、<風を切る奇跡 思い出してよ>ってとこなんですけど。MVは身につけているものを靴とかまで全部脱ぎ捨てて走る女性を撮ったものなんですけど、人間の身体の美しさが映っているし、生きる喜びを見事に表現していただけたなって思っています。

羊文学『ざわめき』収録曲(Spotifyで聴く / Apple Musicで聴く

塩塚:“人間だった”は、年末に“1999”と一緒に絵本つきのシングルとしてもリリースしていて。そもそも“1999”はクリスマスソングとして作ったんですけど、クリスマスは大量消費の日という一面もあるし、曲にもいろんな意味を含ませているんですよね。“1999”と“人間だった”を絵本と一緒にして発表できたのは、私たちにとっては夢があることだし、どちらもすごく大切な曲です。

―“1999”と“人間だった”にはどちらも「神様」「神さま」という単語が出てきますよね。“1999”は世紀末を題材にした曲でもあるし、2曲には通底する感覚があるように思います。

塩塚:そうですね。どちらの曲にも「世界が終わってしまうかもしれない」っていう、漠然とした不安感があるというか。

「『ポップだな』って気を許して近寄ってきてくれた人の心に滑り込んでいって、ハッとさせられたらなって思っています」

―様々な利便性を享受している一方で、多くの人が「このままではまずいんじゃないか?」という漠然とした不安を抱えながら生きているのが2020年の社会なのかなと。それに対して、強烈なカウンターを叩きつけるバンドもいれば、羊文学のように一人ひとりの「許し」と向き合っているバンドもいる。表現方法は様々でも、その背景は似ているように思います。

塩塚:この間ライブを観たGEZANがめっちゃかっこよくて。GEZANは今の時代を外からぶち壊して、新しいものを自分たちで作っていこうとしてると思うんです。マヒトゥさんとかホントに神々しくて、すごいですよね(参考記事:GEZANマヒトが我々に問う。新しい世界の入り口で社会を見つめる)。

塩塚:じゃあ、羊文学はどうかっていうと、壊そうと思っているのは同じなんですよ。でも、もっとじわじわと浸透していく感じというか、「岩に水が浸透して、その水が凍ることで岩が壊れる」みたいな、内側から壊していこうとしてるバンドかなって思っています。

私たちはロックなんですけど、ポップミュージック寄りのロックをやっていると自分でも認識していて。“ロマンス”とかを聴いて、「ポップだな」って気を許して近寄ってきてくれた人の心に滑り込んでいって、ハッとさせられたらなって。

羊文学『きらめき』収録曲(Spotifyで聴く / Apple Musicで聴く

―「ポップミュージック寄りのロックをやってる」という自覚について、詳しくお聞きしたいです。先ほど「ある程度は商業的な部分もある」ともおっしゃっていて、ポップであることにこだわるのは「多くの人に浸透させるため」という理由が大きいのでしょうか?

塩塚:自分が面白いと思う音楽を、もっと多くの人に聴いてもらいたいんですよね。でも、ただ私が「面白い」って言うだけだと広がらないから、羊文学を入口にして、みんながいろんな音楽を聴いてくれたらいいなって思っています。

塩塚モエカ

塩塚:でも、今回のEPは全曲ノイズで私が叫び続けるだけの内容になりそうだったんですよ(笑)。『きらめき』がポップな感じでいろんな人に届いたと感じていて、それ自体は狙いどおりだったんですけど、一瞬、心が折れちゃって。私、BOREDOMSとかOOIOOとかも好きだから、「全曲ノイズでいきましょう!」って言ったら、「それは待ってくれ」って言われて(笑)。

―それはそれで聴いてみたいですけど(笑)。結果的にはポップさをちゃんと残しつつ、バラエティーのある5曲が収録されていますね。そんな作品に『ざわめき』とつけられていますが、何か新しいことがはじまりそうなポジティブなイメージと、何かよくないことが起こりそうなネガティブなイメージと、両方を感じられるタイトルだなと。

塩塚:『きらめき』の次なので、何となく対になる言葉がいいと思ってはいて。

2曲目の“サイレン”は20歳くらいのときに書いたんですけど、街で見たものに胸がザワッとするような、違和感みたいなものを感じながら演奏してる曲で。収録曲を見たときに、どれも胸がザワザワするところから曲ができていたので、タイトルにしました。

羊文学“サイレン”を聴く(Apple Musicはこちら

塩塚:『ざわめき』って、ちょっと気持ち悪さもあると思うから、この作品に合ってるなって、私的にはドヤ顔なタイトルだったんですけど……さっき言ってもらった説明のほうがいいですね(笑)。

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リリース情報

羊文学『ざわめき』
羊文学
『ざわめき』(CD)

2020年2月5日(水)発売
料金:1,540円(税込)
PECF-1178 felicity cap-325

1. 人間だった
2. サイレン
3. 夕凪
4. 祈り
5. 恋なんて

イベント情報

『felicity live 2020』

2020年3月12日(木)
会場:東京都 渋谷 WWW X

出演:
七尾旅人
羊文学
ROTH BART BARON
料金:4,000円(ドリンク別)

プロフィール

羊文学
羊文学(ひつじぶんがく)

塩塚モエカ(Vo,Gt)、ゆりか(Ba)、フクダヒロア(Dr)からなる、柔らかくも鋭い感性で心に寄り添い突き刺さる歌を繊細で重厚なサウンドにのせ、美しさを纏った音楽を奏でる3人組。2012年結成。2017年に現在の編成となり、EP3枚、フルアルバム1枚、配信シングル1曲、そして2019年12月にクリスマスシングル『1999 / 人間だった』をリリース。生産限定盤ながら全国的なヒットを記録。2020年2月5日に最新EP『ざわめき』のリリース、そのリリースより先行してのワンマンツアー(1/18大阪・梅田シャングリラ、1月31日東京・恵比寿LIQUIDROOM)はSOLD OUTに。2020年、しなやかに旋風を巻き起こしていきます。

関連チケット情報

2020年3月12日(木)
felicity live 2020
会場:WWW X(東京都)

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