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春ねむり、愛と怒りで叫ぶ激情 この世はクソ、でも優しく生きたい

春ねむり、愛と怒りで叫ぶ激情 この世はクソ、でも優しく生きたい

春ねむり『LOVETHEISM』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:松永つぐみ 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
2020/04/30

タイトルを宮沢賢治の同名詩より引用した前作フルアルバム『春と修羅』から2年、春ねむりがミニアルバム『LOVETHEISM』をリリースした。再生すると、荘厳なファンファーレの響きと、歪んだギターが絡み合う。そして、春ねむりは確信に満ちた発声で歌う――<痛みは僕を肯定せず ただ存在だけをたしかめる>。ここには、ただ「存在」がある。意味も救いも追いつけない速度で、ただ、「在る」ということ。『LOVETHEISM』は、ときに憤怒の形相で、ときに寂しそうな囁き声で、それを問いかける。「あなたは、そこにいる?」と。

人を愛するってどういうことなんだろう? 僕はあなたを許せるのだろうか? 緊急事態宣言の真っただ中で、それでも働くために外に出ていく恋人の背中を、僕はどんな顔で見送ればいいのか? わからない。悲しい。ムカつく。頭のなかを、わけのわからない感情が渦巻く。たしかなものがほしいと思う。なんでもいいんだろう。音楽じゃなくても、別に。でも、僕はこのアルバムを聴く。何度でも繰り返し、聴く。もし、あなたがまだそこにいるのなら、『LOVETHEISM』を最初から最後まで通して聴いてほしい。30分もかからないから。そして、できればこの記事も読んでほしい。春ねむり単独インタビュー、とても濃密なものになったと思う。長い記事だけど、あなたが最後まで、そこにいてくれることを願う。

※この取材は東京都の外出自粛要請が発表される前に実施しました。

春ねむり(はる ねむり)<br>神奈川・横浜出身のシンガーソングライター / ポエトリーラッパー。2016年に「春ねむり」としての活動を始め、自身で全楽曲の作詞・作曲を担当する。2018年4月に初のフルアルバム『春と修羅』をリリースした。2019年にはヨーロッパを代表する20万人級の巨大フェス『Primavera Sound』に出演。さらに6か国15公演のヨーロッパツアーを開催し、多数の公演がソールドアウトとなった。2020年3月に約2年ぶりとなるオリジナルアルバム『LOVETHEISM』を配信リリースした。
春ねむり(はる ねむり)
神奈川・横浜出身のシンガーソングライター / ポエトリーラッパー。2016年に「春ねむり」としての活動を始め、自身で全楽曲の作詞・作曲を担当する。2018年4月に初のフルアルバム『春と修羅』をリリースした。2019年にはヨーロッパを代表する20万人級の巨大フェス『Primavera Sound』に出演。さらに6か国15公演のヨーロッパツアーを開催し、多数の公演がソールドアウトとなった。2020年3月に約2年ぶりとなるオリジナルアルバム『LOVETHEISM』を配信リリースした。

「私は、本当に人間が嫌いなんだなって思います。でも、本当に絶望しきると生きていけないから、なにかがほしいんです」

―ねむりさんの音楽には強烈に言葉が存在していますけど、自分自身と言葉の距離感はどういったものなんでしょう?

春ねむり:正直なところ、私は、言葉をそんなに信用していないフシがあると思います。自分が思っていることが真ん中にあったとしたら、口に出せるのって、その周りのことだけだと思うんですよ。周りの言葉を使って、真ん中になにがあるのかを浮き彫りにしようとするんだけど、その言葉を発声している瞬間にもう、真ん中にあるものがどんどんと零れ落ちていってしまう……そんな感覚があるんですよね。

春ねむり:私が一番、「私」そのものである瞬間って、シャウトしているときだと思うんです。だから、たとえば海外でライブをしても、言葉の不自由さを感じたことはなくて。シャウトしている瞬間に、観ている人たちと一緒になれるような感覚があるから……だから、もし私がフォークソングを作っていたら、もっと、いろいろ大変だったかもしれない(笑)。

―そもそも、ねむりさんが音楽を作る動機とは、どういったところにあるのだと思いますか?

春ねむり:私がやっていることは、「本当の私が知りたい」っていうことだと思います。こうやって喋っている今も、本当の自分ではないような気がする……そんな感覚がいつもあるんですよね。

私、道を歩いていると、おじさんに肩をバンってぶつけられたりするタイプなんですよ。見た目とか、喋り方もそうですけど、私みたいな弱そうな女に対して、そういうことをする人がいるんですよね。でも、自分のなかにはすごく暴力的な自分がいることを私は感じているし、それを上手く表現できないまま成長して、大人になってきたような気がしていて。

春ねむり

春ねむり:そういう自分の怒りみたいなものと、それでもなにかしら信じるものがほしい、なにかを信じて生きていたいっていう気持ちが、並列にあるような気がするんです。

―怒りと、それに拮抗しているものがある。

春ねむり:「この世はクソ」と、「それでも生きていけるなにかしらがある」っていうふたつの気持ちの循環のなかで、「私が本当に思っていることはなんなんだろう?」みたいなことを考え続けてきた結果……たぶん、「この世はクソ」っていう確信は、強まっていると思うんですよ(笑)。

―はい(笑)。

春ねむり:私は、本当に人間が嫌いなんだなって思います。でも、本当に絶望しきると生きていけないから、なにかがほしいんですよね。だから、モノを作る道に進んだんだろうなって思います。

春ねむり『春と修羅』(2018年)を聴く(Apple Musicはこちら

―その実感は、音楽を作りはじめた頃からあり続けているものですか?

春ねむり:いや、音楽をはじめた頃は、「とにかく救われたい」と思っていたというか……「死にたい」よりも「消えたい」が近くて。自分のことを忘れて没頭できるものが、作ることしかなかったので、音楽を作っていたと思います。

でも最近は、モノを作るのなら、なるべくフラットにこの世を見なきゃいけないと思うようになったんですよね。で、フラットにこの世を見た結果、「この世はクソだ」っていう結論に至りつつあるんですけど……でも、「この世はクソだ」って思いながらは生きていくことはできないんだって、いつも思う。

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リリース情報

春ねむり『LOVETHEISM』
春ねむり
『LOVETHEISM』

2020年3月20日(金)配信

1. ファンファーレ
2. 愛よりたしかなものなんてない
3. Pink Unicorn
4. Lovetheism
5. 海になって
6. Riot
7. りんごのうた

春ねむり
『LOVETHEISM』(CD)

2020年6月12日(金)発売
価格:2,000円(税込)
TO3S-0014

1. ファンファーレ
2. 愛よりたしかなものなんてない
3. Pink Unicorn
4. Lovetheism
5. 海になって
6. Riot
7. りんごのうた

プロフィール

春ねむり
春ねむり(はる ねむり)

神奈川・横浜出身のシンガーソングライター / ポエトリーラッパー。2016年に“春ねむり”としての活動を始め、自身で全楽曲の作詞・作曲を担当する。2018年4月に初のフルアルバム「春と修羅」をリリースした。2019年にはヨーロッパを代表する20万人級の巨大フェス「Primavera Sound」に出演。さらに6カ国15公演のヨーロッパツアーを開催し、多数の公演がソールドアウトとなった。2020年3月に約2年ぶりとなるオリジナルアルバム「LOVETHEISM」を配信リリースした。

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