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sajiが素顔を見せた理由。曝け出せない心の声を物語に託す歌

sajiが素顔を見せた理由。曝け出せない心の声を物語に託す歌

saji『ハロー、エイプリル』
インタビュー・テキスト・編集
矢島大地
撮影:山口こすも
2020/04/15

phatmans after schoolからsajiへと改名したのが2019年夏のこと。sajiとして初の楽曲となった“ツバサ”を経て、4月1日にミニアルバム『ハロー、エイプリル』がリリースされた。

メンバーの脱退、レコード会社の移籍など複数の分岐点が重なってのリスタートを切ったわけだが、何よりバンドとして最も大きな変化は、物語の体裁をとった歌の中に、ボーカル・ヨシダタクミのパーソナリティーがより色濃く見えるようになったことだ。2000年代のギターロックを軸にしつつ、煌びやかなシンセの音色やストリングスが駆け上がっていくアレンジは、自分自身を曝け出すというよりも物語化していくことへの欲求として聴こえる。しかしその歌自体に見える素顔と表情が、何よりも新たなキックオフを感じさせるのだ。始まりの季節、出会いの季節、別れの季節――「春」をテーマに据えた物語が収められている今作はある種コンセプチュアルである一方、出会えなかったものと始まらなかったものを抱え、それらを曝け出せずに生きてきた自分自身が歌の中で破裂している。phatmans after school時代は素顔を見せず今まで語らなかった3人に、今だから語れる本音を聞いた。

※この取材は東京都の外出自粛要請が発表される前に実施しました。

仮想の誰かを見立てて物語を描いてきたのは、僕は僕が恥ずかしかったからなんだと気づいたんです。(ヨシダ)

―phatmans after schoolからsajiに改名しての本格的なリスタートのタイミングだと思います。

ヨシダ(Vo&Gt):はい、そうですね。

―ただ、音楽的には2000年代初頭のギターロックや1990年代から連なるJ-POPの煌びやかなアレンジが軸で、背骨が大きく変わったわけではないと思うんですね。ご自身では、sajiの音楽をどういうものだと捉えられていますか。

ヨシダ:レーベルを移籍するタイミングでリスタートの意味で改名したけど、言われた通り、音楽の基本的な部分は変わっていないと思います。ただ、昨年saji初のシングルとしてリリースした“ツバサ”はphatmans after school時代からあった曲なので、sajiの実質的なスタートは今回の『ハロー、エイプリル』からになるんですね。そこで唯一変えようと思ったのは、曲を作っている僕自身がミックスに立ち会わないようにしたことなんですよ。

―それはどうして?

ヨシダ:今までは曲を書いている身として、特に聴いてほしい部分があった上で(サウンドの)ジャッジをしてきて。だけど当然のこととして、一般のお客さんはそんな前情報がない状態で曲を聴くんですよね。だとしたら、最もバンドを俯瞰できるディレクターさんにミックスの判断を任せてみようと思ったんです。そうしてみたところ、基本的な音楽の要素は変わらないまま、phatmans after schoolから離れることができたんですよ。わかりやすく言えばギターの分量が減って、柔らかなサウンドになって音の種類と量が増えた。そこが自分でも「J-POP寄りになったな」って思ったところで。

Spotifyでsaji『ハロー、エイプリル』を聴く(Apple Musicはこちら

―逆に伺うと、以前から変わらない軸の部分はどういうものだと思われてるんですか。

ヨシダ:歌の物語性に基軸を置くことに関しては、昔からずっと変わらないですね。歌の中で主人公を立てて、僕を含めて「誰かの話なのかもしれない」って感じられる話を作るのが好きなんですよ。で、この作品を作る時に当初考えたコンセプトは、「高校生の頃の自分に戻ること」だったんです。

―それはどうしてですか。

ヨシダ:僕が音楽を始めてバンドに出会ったのが高校生の頃で、あの頃の自分の感性がいつまでも大事だと思っているんですよ。だからずっと変わらないものとして、自分の原風景をテーマにしたかったんです。たとえば大人になってから新しい音楽に感動しても、自分の人生までは変えてはくれなくて。自分の人生を変えてくれるほどの音楽との出会いは、絶対に10代の頃にある。だけど実際に自分が大人になると、どうしてもズレが出てくるんですよね。

―それはどういう意味でのズレですか。

ヨシダ:今の僕は自分の曲をいいと思っているけど、10代の頃の自分が今の僕の曲を聴いたら果たして感動するだろうか。大人になった僕の曲は、果たして世間の人たちにピントが合ってるんだろうか――そう考えてしまうことによるズレですかね。

10代の自分の気持ちを大事にしたいと言って曲を書いても、結局は大人の自分から見た10代の自分に向けての曲になるだけで、自分の原点に戻ることなんて無理だと理解しちゃったんです。知識も増えて引き出しも増えて、身長が伸びた自分が昔の自分の目線に合わせてあげても、なんにもならないんですよね。

saji(さじ)<br>ヨシダタクミ(Vo,Gt)、ユタニシンヤ(Gt)、ヤマザキヨシミツ(Ba)からなる、北海道出身の3人組バンド。2010年に結成されたphatmans after schoolが母体となり、2019年にバンド名をsajiに改名。同時にキングレコードへ移籍を果たし、sajiとしてのファーストシングル『ツバサ』を発表。続けて2020年4月1日に『ハロー、エイプリル』をリリース。
saji(さじ)
ヨシダタクミ(Vo,Gt)、ユタニシンヤ(Gt)、ヤマザキヨシミツ(Ba)からなる、北海道出身の3人組バンド。2010年に結成されたphatmans after schoolが母体となり、2019年にバンド名をsajiに改名。同時にキングレコードへ移籍を果たし、sajiとしてのファーストシングル『ツバサ』を発表。続けて2020年4月1日に『ハロー、エイプリル』をリリース。

―「合わせてあげる」っていう感覚で曲を書いても、むしろ10代の頃の自分に失礼かもしれないですよね。作為的にそうしても、等身大にはならない。

ヨシダ:そうなんです。だから、自分が大人になっていくからこそ書ける素直さや青さをテーマに物語を書いて、曲を全部作り直したのが今回の作品なんですよ。

―今のお話で伺いたいことがふたつあって、曲を物語にするのが好きなことと、ご自身の音楽の原風景の話についてなんですけど。まず、曲を物語にするのが好きなのはどうしてなんだと思います?

ヨシダ:……これは最近気づいたんですけど、歌の中に主人公を立てるのは、僕は自分自身が恥ずかしいからなんです。いわゆるロックバンドって、内面を曝け出して裸で叫ぶものじゃないですか。逆に言えば、普段は言えない言葉があったり葛藤があったりするからロックバンドは自分を叫んできたと思うんですけど。

でも僕は昔から、性格上「自分はこうだ」って言うのが怖いし、なんなら自分を知ってほしくないと思ってきた。だから曲を書き始めた頃から、仮想の誰かを見立てて、その影から自分が覗いているくらいがいいと思ってたんですよ。でも最近までは、自分はそういうのが好きなんだろうなって思うくらいだった。ただ2年くらい前に自己分析をしてみた時に、僕は僕が恥ずかしかったんだと気づいて。

ヨシダタクミ
ヨシダタクミ
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リリース情報

『ハロー、エイプリル』初回限定盤(CD+DVD)
saji
『ハロー、エイプリル』初回限定盤(CD+DVD)

2020年4月1日(水)発売
価格:2,530円(税込)
KICS-93914

1. ミラーリンク
2. シュガーオレンジ
3. 孤独の歌
4. コトバトビト
5. ユートピア
6. YELL MY STORY

DVD収録内容:
“シュガーオレンジ”MUSIC VIDEO
“シュガーオレンジ”MUSIC VIDEO MAKING
『saji 1st Live 2019 ~尾羽打チ枯レズ飛翔ケリ~』Live Document

プロフィール

saji(さじ)

ヨシダタクミ(Vo,Gt)、ユタニシンヤ(Gt)、ヤマザキヨシミツ(Ba)からなる、北海道出身の3人組バンド。2010年に結成されたphatmans after schoolが母体となり、2019年にバンド名をsajiに改名。同時にキングレコードへ移籍を果たし、sajiとしてのファーストシングル『ツバサ』を発表。続けて2020年4月1日に『ハロー、エイプリル』をリリース。

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