特集 PR

鹿野淳が語る『VIVA LA ROCK』 エンタテイメント復興の道

鹿野淳が語る『VIVA LA ROCK』 エンタテイメント復興の道

『VIVA LA ROCK 2020』
インタビュー・テキスト
三宅正一
撮影:HayachiN 編集・リードテキスト:矢島大地(CINRA.NET編集部)

ライブ配信のマネタイズは当然アーティストにベットされるもので、フェスにベットしなくてもいいものだとも思う。逆にフェスは、みなさんにもっともたらすものを用意したいと思う。

―なるほどね。じゃあ音楽メディアにおけるジャーナリズムとはなんだって話にも飛び火できるけど、あまりにも長くなりそうなので今日はやめておきます。

鹿野:そうか(笑)。要は音楽リスナーたちにおけるセカンドオピニオンやサードオピニオンをとるメディアとして、我々音楽雑誌にはまだアイデンティティがある。それとさっき話した「メディアとしてのベクトル」で言うと、ビジュアル面も大きいよね。たとえば『MUSICA』では未だにフィルム撮影をカメラマンに対してOKにしていて。経費としてはデジタルより何倍にも膨らむんだけど、それは我々紙メディアが持つべきクリエイティビティ意識として、「撮影はデジタルだけにしてください」と言ったら終わりだと編集長や編集部が思ってるから、そうしてるんです。

―賛成です。

鹿野:大義名分とかヒロイズムで言ってるんじゃなくて、『MUSICA』は写真やビジュアルがいいから買うと言ってくれる人が実際にいっぱいいる。現時点で音楽批評とビジュアル面を両立している紙メディアのマーケットはまだまだ存在していて。だから音楽メディアって専門雑誌界の中でダントツにマーケット力が高いんだよね。ウチはその中でもトップメディアのエリアにいるから、そういう意味でWEBメディアが怖くなかったんです。否定しているんじゃなく、別だということ。

―はい。

鹿野:で、その上で本題。「ネットとスマホの時代だ」と言われてずいぶん時間が経過した中で、この2020年2月26日以降の世の中は今まで以上に圧倒的にネットに依存してるよね。音楽エンターテイメントにおいてもそう。生配信もしくは過去のライブのアーカイブを無料配信するのもこの流れの中にある。エンターテイメントがここまでインターネットに一極集中する状況は、かつてなかったと思うんです。

鹿野淳

―そうかもしれないですね。

鹿野:だから、現実として今後一気にネットに色々なものが流れていくかもしれない。そうなった場合には『MUSICA』もどうしていくかを考えなくちゃいけない。もちろん、やめるとか終わるという話では全くなくて、むしろその逆。『MUSICA』の存続と進化のために、今この状況は大きな転換期かもしれないと思ってます。ひとりの音楽ジャーナリスト、音楽雑誌を刊行する出版社の代表としてそう考えていると表明したうえで、ライブ配信について語らせてもらうとーーたとえば先日無観客ライブを配信した打首獄門同好会も「我々はできるからやる。でも、他のアーティストに無料配信を強要しないでほしい、だって大変だしお金もかかるし」と言っていて。

―はい。

鹿野:でも、ここからライブ配信でマネタイズするアーティストが増えていくとしたら、これから2年間くらいの日本のフェスは本当に正念場だよね。本来のフェスが持つ役割を、そういったライブ配信が持ち得るかもしれないんだから。これだけ夏が暑くなり過ぎてしまった日本で、野外フェスの主催者の一部は「果たしてフェスのピークを夏にしていいのか?」と戦って試行錯誤してる。さらに今年は、どの季節に開催されるフェスもコロナの脅威と向き合わなければならない。さらに言えば、震災以降、去年の台風や今年のコロナを含めて、やはりおかしいじゃないですか、地球レベルで色々と。自然を楽しむハードルはこれからも上がってくるし、そのリスクを今まで以上に背負ってイベントをやるわけです。そうなってくると、この15年間でフェスによってもたらされていたライブエンターテイメントが今までと同じ状況では成立しなくなるリスクを多く抱えていて。今回のコロナの件はその決定打だと思います。

―まさに。先の見通しが不透明すぎるし。

鹿野:ライブエンターテイメントは今まで「現場感」を売りにしていたし、これからもそうだけど、現場感だけに依存しない体感エンターテイメントをビジネスにしていく発想が本格的に生まれたのは今回のコロナからだと思うし、マネタイズが急速に進むのも必然だよね。興行中止保険の免責事項にウイルスが含まれないことが明確化されたことと同じように、2011年3月11日の震災のときには地震ではシンプルな火災保険が下りないことがわかって、地震保険の加入量が一気に増加したじゃない。

そうなると、早ければ今年の夏フェスから興行ウイルス保険が登場すると思っていて(苦笑)。みんなこうして危機的な状況の中だからこそのマネタイズが進むわけです。音楽業界も配信のマネタイズが進むと思う。でも、それは当然アーティストにベットされるものだと思うのね。

―そう思う。だから主催者にラインナップも含めて明確なオピニオンのないフェスで配信のマネタイズは難しいと思うし、そこを聞きたかったんです。

鹿野:そう、フェスにはベットしないよね。するかもしれないけど、基本的にそこにフェス側が期待するのはどうなのかな?って思いながら自分はフェスをやってます。僕らがやってるフェスは人にベットしてもらうものじゃなくていいと思うし、逆に言うと、こちら側がみなさんにもたらすものをもっと明確に用意したいと思う。……さっきフェスは器だと話したけど、器がないと世の中に出せないわけだし、つまりは器であるフェスは可能性そのものなんだよね。だから、マネタイズの意味でも再構築すべき時がきているのかもしれないですね。

―でも、アーティストフェスにはベットする人は少なくないかもしれない。

鹿野:それはそれでいいじゃない。CDよりライブの時代なんだから。で、「アーティストフェスにあれだけベットしているのにウチのフェスにはベットされない」って嘆いてるオーガナイザーいたとしたら、それが一番愚かだよ。そんなフェスはないと思うけどね。我々には我々のやるべきことがある、それはビバラも『MUSICA』も同じだよね。

―今話しながら思い出したのは、去年『ビバラ』の2日目にSuchmosのライブを観てるときにKing Gnuの井口(理)くんが盛り上がってる姿がビジョンに映し出されていたことで(笑)。ああいうのはすごく『ビバラ』っぽくていいなと思ったんですよね。人によってはその一瞬をドラマティックにも感じただろうし。

鹿野:ありがとうございます。きっとスタッフ全員が、ここでは無邪気なままでいいんだって思える場所なんだろうね、良くも悪くも。……そういうご意見をいただいて思うけど、『ビバラ』はアーティストと一緒にストーリーを描くことをがんばった結果、いい意味でユルくもなってるよね(笑)。

―そこがすごく『ビバラ』っぽいし、このフェスのチャームになってるとあらためて思った。

鹿野:スタッフが「責任をちゃんと持った上で、このフェスは勝手にやっていいんだ」と思ってるユルさがある(笑)。去年からオープニングで綱引きを始めたんだけど、それもスタッフの多くがみんな前のめりであーしようこーしよう、完全に学祭状態で(笑)。いい場所ですよね、ここは…………だから、やりたいなあ。去年も三宅が指摘してくれた「ビバラの可愛げ」の部分はこの半年間考え続けたし、それはこの先も考え続けることなんだけど。でも、今年に関しては別の話になっちゃったね。開催できたとしたら、来てくれた人が来年絶対にまた来たいと思ってもらえるか、不安を頭の中からどう払拭察せれるか、フェスというものが嫌いにならない形で4日間を終えるためにどうしたらいいか? そこに全力を注ぎます。

鹿野淳

鹿野:でもさ、万が一『ビバラ』を開催できないとなったときに自分が考えることはひとつしかなくて。当然だけど、『ビバラ』は今年で終わらないんですよ。あえて言いますけど、今年中止になったら単純計算で2億5千万くらいの負債が生まれるシミュレーションは出てきました。これ、書くよね?

―書くなと言われても書くでしょう(笑)。

鹿野:(笑)。その負債を2億5千万円以下にするためにどうすればいいかの調整もしてるけどさ、7億円ものお金がかかって7億1円から純利益が生まれるフェスって、事前に中止しても2億5千万の負債を被る危険を秘めているんです。で肝心なのは、その金額ももちろん痛いけど、それよりも来年以降にこのフェスの価値が下がったり、魂が抜け落ちた安物のフェスになったりしないように──もっと言えば、来年以降に参加者が集まらない、面白そうだと思われない、その結果開催できなくなるフェスになるほうがよっぽど痛いんです。それと2億5千万円を比べると、2億5千万のほうがきっと安いんですよね。それがビジネスとしても生き甲斐としても本当に厄介だなあって思います(笑)。だから、2021年以降の『ビバラ』が最高のフェスであり、音楽を好きになるきっかけの場所であり続けるために、この2020年の春に何をすべきか。そことちゃんと向き合ってカタをつけようと思ってる。

―わかりました。マジで応援してます。

鹿野:ありがとう、なんとかしたい。

撮影:古渓一道 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved
撮影:古渓一道 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved

記事の感想をお聞かせください

知らなかったテーマ、ゲストに対して、新たな発見や感動を得ることはできましたか?

得られなかった 得られた

回答を選択してください

ご協力ありがとうございました。

Page 5
前へ

イベント情報

『VIVA LA ROCK 2020』
『VIVA LA ROCK 2020』

2019年5月2日(土)~5月5日(火・祝)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

5月2日(土)出演:
赤い公園
ANTENA
おかもとえみ
カネコアヤノ
Karin.
KEYTALK
キュウソネコカミ
Saucy Dog
SHISHAMO
SUPER BEAVER
そこに鳴る
the telephones
ニガミ17才
ネクライトーキー
Hakubi
Hump Back
ハンブレッダーズ
BIGMAMA
FOMARE
flumpool
popoq
UNISON SQUARE GARDEN
緑黄色社会
and more

5月3日(日・祝)出演:
Awesome City Club
岡崎体育
奥田民生
ORIGINAL LOVE
Creepy Nuts
ZOMBIE-CHANG
TENDRE
Tempalay
東京スカパラダイスオーケストラ
ドミコ
never young beach
Vaundy
パソコン音楽クラブ
BBHF
VIVA LA J-ROCK ANTHEMS
【Ba:亀田誠治 / Gt:加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ) / Gt:津野米咲(赤い公園) / Dr:ピエール中野(凛として時雨)】
藤井風
FLOWER FLOWER
フレデリック
フレンズ
Ryu Matsuyama
Rude-α
ravenknee
レキシ
and more

5月4日(月・祝)出演:
秋山黄色
打首獄門同好会
Age Factory
大森靖子
ORANGE RANGE
9mm Parabellum Bullet
クリープハイプ
GEZAN
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
セックスマシーン!!
chelmico
DJダイノジ
teto
XIIX
東京初期衝動
バックドロップシンデレラ
BLUE ENCOUNT
マカロニえんぴつ
マキシマム ザ ホルモン
宮本浩次
Mega Shinnosuke
ヤバイTシャツ屋さん
ユレニワ
and more

5月5日(火・祝)出演:
あっこゴリラ
WOMCADOLE
オメでたい頭でなにより
KUZIRA
kobore
さなり
Survive Said The Prophet
SiM
女王蜂
DJやついいちろう
Dizzy Sunfist
TETORA
10-FEET
とけた電球
Dragon Ash
ハルカミライ
the band apart
FAITH
HEY-SMITH
MONOEYES
LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS
ROTTENGRAFFTY
and more

プロフィール

鹿野淳(しかの あつし)

音楽ジャーナリスト。1989年に扶桑社に入社、翌1990年に株式会社ロッキング・オン(現:株式会社ロッキング・オン・ホールディングス)へ。98年より音楽専門誌『BUZZ』、邦楽月刊誌『ROCKIN'ON JAPAN』の編集長を歴任。『ROCK IN JAPAN FES』は構想から関わり、企画 / オーガナイズ / ブッキングに尽力。2003年には『COUNTDOWN JAPAN 03 / 04』を立ち上げ、国内初のカウントダウン・ロック・フェスティバルを成功させた。2004に年ロッキング・オンを退社後、有限会社FACTを設立(現在は株式会社)。2006年に月刊『STARsoccer』を(現在は休刊中)、2007年3月には『MUSICA』を創刊させた。2014年に埼玉県最大のロックフェス『VIVA LA ROCK』を立ち上げ、2020年に7回目の開催を予定している。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. THE SPELLBOUNDがライブで示した、2人の新しいロックバンド像 1

    THE SPELLBOUNDがライブで示した、2人の新しいロックバンド像

  2. 中村佳穂が語る『竜とそばかすの姫』 シェアされ伝播する歌の姿 2

    中村佳穂が語る『竜とそばかすの姫』 シェアされ伝播する歌の姿

  3. 『プロミシング・ヤング・ウーマン』が映し出す、「女性の現実」 3

    『プロミシング・ヤング・ウーマン』が映し出す、「女性の現実」

  4. ジム・ジャームッシュ特集が延長上映 『パターソン』マーヴィンTシャツも 4

    ジム・ジャームッシュ特集が延長上映 『パターソン』マーヴィンTシャツも

  5. A_oから青い心を持つ全ての人へ 自由に、自分の力で生きること 5

    A_oから青い心を持つ全ての人へ 自由に、自分の力で生きること

  6. 地下から漏れ出すアカデミックかつ凶暴な音 SMTKが4人全員で語る 6

    地下から漏れ出すアカデミックかつ凶暴な音 SMTKが4人全員で語る

  7. 林遣都×小松菜奈『恋する寄生虫』に井浦新、石橋凌が出演 特報2種到着 7

    林遣都×小松菜奈『恋する寄生虫』に井浦新、石橋凌が出演 特報2種到着

  8. 『暗やみの色』で谷川俊太郎、レイ・ハラカミらは何を見せたのか 8

    『暗やみの色』で谷川俊太郎、レイ・ハラカミらは何を見せたのか

  9. ギャスパー・ノエ×モニカ・ベルッチ『アレックス STRAIGHT CUT』10月公開 9

    ギャスパー・ノエ×モニカ・ベルッチ『アレックス STRAIGHT CUT』10月公開

  10. 『ジョーカー』はなぜ無視できない作品なのか?賛否の議論を考察 10

    『ジョーカー』はなぜ無視できない作品なのか?賛否の議論を考察