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都築響一が語る、日本のファッションの面白さ、本当のかっこよさ

都築響一が語る、日本のファッションの面白さ、本当のかっこよさ

東京オペラシティ アートギャラリー『ドレス・コード? ―着る人たちのゲーム』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

「僕たち」とは、ハイブランドに親しむヨーロッパの人ではないはず。

―先ほど挙げられた洋品店の文化も面白いですね。ロリータ服の「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」も、腰回りにゴム紐を使っているので男性や大柄の海外の人も着やすいと聞いたことがありますが、その融通の効く感じは日本ならではだと思います。

都築:ベイビーがゴム紐使ってるかはわからないけど(笑)、日本はどこの町の商店街にも洋品店がある洋品店文化の国です。ジーンズなんかも10分くらいで丈詰めやウェストの直しをパッとやってくれる。

僕が驚いたのが、でかいブルドッグが目印の「ガルフィー」のような、いわゆる極道ジャージ。浅草に行くとガルフィーのメンズが売ってたりするんですけど「丈はどうするの?」って聞かれるんですよ。まさかジャージのお直しまでしてくれるなんて! 原宿のアディダスやナイキでは絶対やってくれないでしょう。

浅草にある「メンズ・ショップいしやま」 撮影:都築響一
浅草にある「メンズ・ショップいしやま」 撮影:都築響一

―たしかに「ちょっと体型に合ってるとは思えないけど、背伸びして買うか……」ってなりがちです。

都築:そう考えると、ハイブランドと洋品店のどっちが客にとってよい店なんだろうと考えちゃいますよね。後者だったら気に入ったジャージの袖を7分丈にして夏物にしてくれるんですよ。僕がCOMME des GARÇONSに行って「このコットンセーターの袖を短くして」なんて言ったら、ただの嫌がらせになっちゃうよね。

―出禁になりそうです(笑)。

都築:つまり、ハイファッションの世界はデザイナーの世界観に自分をいかに近づけさせるかという力学で動いてるんです。でも、正直に言ってそれは人生においては例外的なもの。野菜を食べやすいかたちに切るのと同じように、商品をいかに自分にとって使いやすいように近づけるかが生活の大部分じゃないですか。

ところが、いまの僕たちは、できあがった世界観に無理して自分を合わせることに慣れすぎちゃってる。そして、そこで考えるべき「僕たち」とは誰のことなのかを考え直す必要があると思うんです。

―僕たちが日本人であることが、ないがしろになっている。

都築:スナックのママたちが着てる「お水スーツ」の取材をして、そのことを教わりましたね。みなさんご存知ないと思いますが、お水のファッション業界ってものすごく巨大なんですよ。何しろ日本中の水商売の人たちが着ているんだから。

愛媛県宇和島市スナック・タイガー&ラビットのママ 撮影:都築響一
愛媛県宇和島市スナック・タイガー&ラビットのママ 撮影:都築響一

都築:あるメーカーの社長に聞いたんだけれど、アパレル、衣料品業界全体から見るとデザイナーの名前がブランドになっていて雑誌に紹介されるような衣料品の流通量は全体の3割ぐらいしかないそうなんです。お水スーツを作っていたりするような無名の会社が大半で、そこで経済が動いている。

でも、ファッション雑誌に広告を載せてもらえないから、ファッション好きの人たちからの知名度が低い。それを考えると、僕たちが好む「ファッション」ってなんだろうか、って思っちゃいますよね。

ハンス・エイケルブーム『フォト・ノート 1992–2019』 1992–2019年 ©Hans Eijkelboom / 『ドレス・コード? ―着る人たちのゲーム』展
ハンス・エイケルブーム『フォト・ノート 1992–2019』 1992–2019年 ©Hans Eijkelboom / 『ドレス・コード? ―着る人たちのゲーム』展

―ハイブランドとインディペンデントとファストファッションしか存在しないかのような。

都築:「お水スーツ」は製造環境も優れています。岐阜や大阪に本社がある場合が多いんですけど、それはいろんな業者が県内に集まっているからでデザインをおこしてサンプルを作るまでの工程がわずか3日くらいで済んじゃう。東京だったら1週間以上かかるかもしれないのに。さらに日本中の水商売のお店に無料のカタログを配布して、日英中韓4か国語対応のコールセンターが24時間動いてる。物流としてもはるかに進んでいるんです。そういった7割側の世界を知らずに、3割側の世界だけでファッションについてごちゃごちゃ言うのはすごくカッコ悪いことだと思うんですよ。

『HEAVEN 都築響一と巡る社会の窓から見たニッポン』の展覧会メインビジュアルに登場したのは、広島太郎さん / 広島で太郎さんを知らない人はいないというほどの有名人。都築響一をして「世界でいちばんファッショナブルなホームレス」 撮影:都築響一
『HEAVEN 都築響一と巡る社会の窓から見たニッポン』の展覧会メインビジュアルに登場したのは、広島太郎さん / 広島で太郎さんを知らない人はいないというほどの有名人。都築響一をして「世界でいちばんファッショナブルなホームレス」 撮影:都築響一
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イベント情報

『ドレス・コード? ―着る人たちのゲーム』
『ドレス・コード? ―着る人たちのゲーム』

2020年7月4日(土)~8月30日(日)
会場:東京都 初台 東京オペラシティ アートギャラリー
時間:11:00~19:00(入場は18:30まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌火曜)、8月2日(日)(全館休館日)
料金:一般1,200円、大高生800円
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料

プロフィール

都築響一(つづき きょういち)

1956年、東京生まれ。1976年から1986年まで『POPEYE』『BRUTUS』誌で現代美術、建築、デザイン、都市生活などの記事を主に担当する。1989年から1992年にかけて、1980年代の世界の現代美術の動向を包括的に網羅した全102巻の現代美術全集『アート・ランダム』を刊行。以来、現代美術、建築、写真、デザインなどの分野での執筆活動、書籍編集を続けている。1993年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』刊行。1996年発売の『ROADSIDE JAPAN』で『第23回 木村伊兵衛賞』受賞。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続行中である。

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