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都築響一が語る、日本のファッションの面白さ、本当のかっこよさ

都築響一が語る、日本のファッションの面白さ、本当のかっこよさ

東京オペラシティ アートギャラリー『ドレス・コード? ―着る人たちのゲーム』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

いまが、ファッションってものを考え直す時期。みんなが「このままでいいの?」と思い始めている。

―言い換えると、3割の世界は東京に象徴される「都会」のファッションで、7割の世界は地域や個人に根ざしたファッションのように思います。

都築:そうですね。そして、地方のファッションを本当にカッコいいと思ってる人が増えている気がします。都会にはない地方にあるもののよさを若い人たちが意識するようになってきている。

これって、現在の新型コロナウイルス対策にも当てはまることだと思いませんか? 過密で身動きのとれない東京よりも、地方の自治体のほうが迅速で的確な対策ができている。今回の流行で、東京の優位性が揺らいでいますが、そこにもファッションの動向と符合するものがあると感じます。

僕自身、地域の町おこしに関するトークに呼ばれたりするんですけど、結局そういうのを企画してるのは東京のプランナーとかで、「いかに賑わいを創出するか」みたいな、本人が主体的に考えたわけでもない適当なことを言って儲けてる人ばかり。そういう東京モデルを地方に輸出してビジネスしよう、っていう発想も今後揺らいでいくのではないでしょうか?

都築響一
都築響一『ニッポンの洋服』より『異色肌』2017年 撮影:ラマスキー ©ラマスキー / 『ドレス・コード? ―着る人たちのゲーム』展
都築響一『ニッポンの洋服』より『異色肌』2017年 撮影:ラマスキー ©ラマスキー / 『ドレス・コード? ―着る人たちのゲーム』展

―展覧会のタイトルに紐づけるならば、それも「コード(規範)」なんでしょうね。ファッションやカルチャーの発信の仕方、流通モデルは東京中心であるべきだ、という規範にとらわれている。

都築:いまが、ファッションってものを考え直す時期なんだと思います。みんなが「このままでいいの?」と思い始めている。たった数回しか着ずに着なくなるものがあまりにも多いファッション業界は環境汚染の一大汚染源になっているし、貧しい人に分け与えるようなサイクルも慣行的に生み出しにくい。そういったいろんな歪みが、ここ数年で一気に噴出しています。

その意味でいうと、この展覧会にファッションの「これから」を無責任に定義するようなものがないことに好感を持っています。僕たちが洋服とともに考えたり感じたりしてきたことを、ここでは立ち止まって振り返ってみよう、という意思を僕は受けました。

メディアが言いたい「メジャー」と、大衆が支持する「マス」を混同しないことが大事。

―都築さん自身はファションの現在をどのようにとらえていますか?

都築:これはファッションに限らずですが、トレンドってものが通用しない世界になりつつあると思います。音楽の場合だと、昔のようなハードロック、パンク、ニューウェーブのような時代を代表するトレンドがなくなって、一人ひとりが自分の好きな曲をミックスして聴いている、全部がぐちゃぐちゃになった時代。流行色やスタイルを示せなくなったファッション業界も同様じゃないでしょうか?

marc jacobsコレクターの部屋、2019年 撮影:都築響一
marc jacobsコレクターの部屋、2019年 撮影:都築響一

―しかし、その雑多な状況はポピュリズム(大衆主義)の台頭ともリンクしているようで、不穏さも感じます。

都築:自分の仕事に引き寄せて言うと、僕がずっと取材してきたのは「マス(集団・大衆)」なんですよね。それはトレンドに関連してメディアがよく言う「メジャー」とは微妙にニュアンスを異にするもの。

例えばオリコンのランキングを見るとランキングはごく一部のアイドルに席巻されているけれど、飲み屋やカラオケでは中島みゆきの“糸”(1998年)とかが歌われ続けて、いまだにカラオケチャートの最上位に入ってたりする。そういう事実が、メディアによって脚色されてない「マス」だと思います。メディアが言いたい「メジャー」と、大衆が支持する「マス」を混同しないことが大事です。

―たしかに政治的に言われるポピュリズムの台頭も、メディアが先行してイメージづけている感覚はありますね。

都築:「見ろ」と誘導されるものだけを見てる場合じゃないよ、ってことでしょうね。『鶴と亀』のじいさんばあさんたちのファッションも、目を開けばそのあたりにたくさんあるわけです。でも「見ろ」と誰かに誘導されてこなかったから、とくにファッションやアートの人たちは見てこなかった。

『捨てられないTシャツ』
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―いっぽうで情報が過剰に溢れすぎていて、キュレーションと呼ばれるような「見ろ」の誘導なしには迷ってしまう人も多くいる気がします。

都築:そうですか? 情報が過剰であると考えてるのは、日常的に新しい情報、他とは違う情報に触れることを仕事にしている編集者みたいな人種だけのニッチな悩みだと思いますよ。例えばイオンタウンで生活も遊びも補うような地方の子たちにとって、情報過多で頭がパンクするような感覚はないんじゃないでしょうか。

むしろ自分がアクセスできるものが限られてることでえられる洗練のほうが面白いと僕は思います。地方にはユニクロとしまむらぐらいしかないだろうと都会の人間は言いますが、イオンタウンでうろうろしている女の子のジャージの着こなしはめちゃくちゃかっこいいですよ。

上下でサイズを変えたり、アクセサリーを加えたりして自分なりのDIYを楽しんでいる。洗練っていうのは、お金や情報のあるなしじゃないんですよ。自分が着ることについて自信を持つのが本当の洗練。大きな犬が付いてるジャージだって、かわいいなと思って30年間着続けたら、それはめちゃくちゃ似合うスタイルになっている。

都築響一『独居老人スタイル』より、アーティスト / ハプナーのダダカン 撮影:都築響一
都築響一『独居老人スタイル』より、アーティスト / ハプナーのダダカン 撮影:都築響一

―たしかに。

都築:結局ハイファッションって、お手本着こなし、お手本体型に基づいてるんですよね。どれだけ財産をはたいてお手本に近づけるか、高い服を無理して着て、雑誌に載ってるようなカフェに行って優雅に足を組んでお茶を飲めってことになっちゃう。

でも、そういう誘導から逃れて、自由になれたらもうお手本なんて関係ないわけです。自分は全身ヒョウ柄で行きます、みたいな。それを見た他人は一瞬「え!」って奇異な視線を向けるけれど、それを跳ね返す力さえあれば、それは「着こなせてる」ってこと。

半世紀近くド派手なお水スーツを着たスナックのおばあちゃんがかっこいいのも、農作業のために孫のジャージや帽子を着てるじいさんばあさんがかっこいいのもそういうことですよ。ズボンのチャック全開でも堂々としているかっこよさがある。僕はそれを見て欲しいわけです。表面的な珍しさの奥にあるに自信を見出してもらえたら、いちばん嬉しいですね。

都築響一『独居老人スタイル』より、画家の美濃瓢吾 撮影:都築響一
都築響一『独居老人スタイル』より、画家の美濃瓢吾 撮影:都築響一
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イベント情報

『ドレス・コード? ―着る人たちのゲーム』
『ドレス・コード? ―着る人たちのゲーム』

2020年7月4日(土)~8月30日(日)
会場:東京都 初台 東京オペラシティ アートギャラリー
時間:11:00~19:00(入場は18:30まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌火曜)、8月2日(日)(全館休館日)
料金:一般1,200円、大高生800円
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料

プロフィール

都築響一(つづき きょういち)

1956年、東京生まれ。1976年から1986年まで『POPEYE』『BRUTUS』誌で現代美術、建築、デザイン、都市生活などの記事を主に担当する。1989年から1992年にかけて、1980年代の世界の現代美術の動向を包括的に網羅した全102巻の現代美術全集『アート・ランダム』を刊行。以来、現代美術、建築、写真、デザインなどの分野での執筆活動、書籍編集を続けている。1993年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』刊行。1996年発売の『ROADSIDE JAPAN』で『第23回 木村伊兵衛賞』受賞。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続行中である。

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