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人の優しい言葉に救われた。BOY・奥冨直人が語るコロナと街

人の優しい言葉に救われた。BOY・奥冨直人が語るコロナと街

YOU MAKE SHIBUYA クラウドファンディング
インタビュー・テキスト・撮影・編集
黒田隆憲
編集:柏井万作(CINRA.NET編集長)
奥冨直人

人の優しい言葉に救われ、ようやくネガティヴな感情から今は抜けきったところです。もう充分に時代は狂っているので、僕自身は正常に、周りと時代に向き合っていく。

―新型コロナウイルスの感染拡大は、お店と奥冨さんにどのような影響を及ぼしたのでしょうか。

奥冨:まず2月の半ば頃に、DJ出演予定だったイベントからキャンセルの連絡がありました。そこからズルズルと20本以上はキャンセルになりましたね。ただ正直、3月後半までは「5月には落ち着くかな」とか呑気に考えていたんです。それが3月最終週の土日に外出自粛要請が出て、それ以降はBOY店頭の様子も随分と変わってきて、「これはまずいな」と。緊急事態宣言以降はしばらく営業出来なかったので、独立して初めて家でゆっくりする時間ができて、最初のうちはすごくソワソワしていました。

―お店のオープン以降、ずっと走り続けている状態だったのですね。

奥冨:BOY店頭には必要最低限立って、年に300本くらいライヴへ行き、DJも80本位はあった生活が20代の当たり前だった。休みという休みがなかったので、そういう点でも今後の生き方を見つめ直すきっかけになりましたね。仕事とプライベートの垣根がほぼなかったのは、いずれも人とのコミュニケーションで生まれる何かを楽しんでいた気持ちの面が大きかったので、人に会わないというのも随分と妙な感覚で。

そして、店舗には「家賃」という最大の出費がありまして。普通に営業するだけでも大変ですが、営業出来ないってなったら場所を維持する事もできなくなるんです。それで、まずはオンラインショップの古物商申請をして許可範囲を広げるなど計画を進めていきました。まだ給付金の話が不明確だったころですね。

BOYまで行ってオンライン作業して、夕方店舗の外に出ても目に映る人は1、2人で。悩んだ選択でしたが、家に居ても出来る事が少なかったので、ほぼ毎日店まで行って作業や計画をして、その計画も来月や再来月の状況が以前より全く見えない状況のなか、斜線を入れ続ける日々でした。

BOYの店内風景
BOYの店内風景

―オンライン販売の反応はいかがでしたか?

奥冨:想像以上の反応の良さで、「なんで今までやってこなかったんだ」と(笑)。全国各地から毎週注文があって嬉しい限りです。大反省するとともに、始めて良かったことしかないなという思いしかないですね。

―奥冨さんご自身の活動としては、やはり配信が増えていきましたか?

奥冨:5月からは配信のDJも増え、最近はお客さんを数名入れた場所でのDJもやりました。僕自身はフィジカル強めでカメラアピールも得意なので、配信DJは向いていましたね(笑)。ハコは特にまだまだ厳しい状況だと思いますが、出来る限り密に連絡を取って状況や意見を話すなど、コミュニケーションだけは絶やさずいたいです。

もちろん、様々な職種や活動の方々とも更にフラットに繋がっていきたい。そういう時代なんじゃないかなと思うんです。今回の事はウイルスの存在が発端だけど、毎日報道が転がり続けている中で、それぞれの考え方が日によって変わり、それによってすれ違ったり落ち込んでしまったりする人がいて。その「連鎖」や「心の揺らぎ」が辛かったことかなと思います。それは、7月に入った最近まで自分の中にも多少ありました。もともとお酒好きだった分、飲み過ぎて悪酔いするようになってましたし。

―分かります。正常な状態でいられる人の方が少ない状況でしたよね。

奥冨:人の優しい言葉に救われ、ようやくネガティヴな感情から今は抜けきったところです。もちろん、コロナのある日々はまだ始まったばかりだとは思いますが。社会の状況も、最初のうちは「戻る」という認識だったのですが、途中からは「変わる」だなと。もう、以前の日常と100パーセント同じことはないんですよ。

とはいえ、よく考えればどんな時代でも変化しながら今に至る。コロナの影響を感じ始めた当初は反発から物事を生み出したい気持ちもありましたが、日々が進むにつれ「受け入れる」ことで生まれる発想もあると思い、環境とともに感情も変化していきました。今は強い気持ちが生まれています。今回感じて学んだ事はとっても大きいです。強い気持ちなら、周りにも遠くにももっと優しくなっていけるはず。もう充分に時代は狂っているので、僕自身は正常に、周りと時代に向き合っていく気持ちです。

BOYの店内風景
BOYの店内風景

沢山の人の沢山の感情を受け入れ続ける街であってほしいです。それでいて安心も安全も保障されないこの感じ、マジで闘っていくしかないですね。

―ご自身の日常生活の中で、変わったことはありますか?

奥冨:動画チャンネルを見るようになって、現代の作品の面白さにしっかり触れたり。過去の名作も改めて見たりと。あと、緊急事態宣言以降はとある方と文通を始めて。中学生の頃には携帯を持っていた世代なので、メール慣れしすぎていたけどもともと字を書くのも絵を描くのもすごく好きな少年だったんです。ひとつひとつ想いを寄せながら書く、返事がポストに届くという感覚は、緊迫した社会の空気の中でとても優しい気持ちになれました。

―僕もコロナ禍で文通を始めましたから、おっしゃることは本当によく分かります。

奥冨:テクノロジックな仕組みで昔のアナログ的作品に触れたり、アナログな行為の文通で今のテクノロジーに触れたり。面白い体験です。

―先ほどもお話ししてくださったように、奥冨さんは現在スペースシャワーTVの番組『スペトミ!』を担当されています。そこで発信することの意義は、コロナ禍でどう変わっていきましたか?

奥冨:『スぺトミ!』は、スペースシャワーTVさんからお話を頂いた時はまだコロナ以前の時期だったので、個人的には「お散歩番組」というか、色んな街や職業の方の魅力をお伝えできたらいいなと思っていました。単純にもう、一つの職業で文化間が成り立つ話ではなくなってきているし、冒頭で話したようにBOYは多目的や多文化を肯定していきたい気持ちが強いんです。

BOYの店内風景

奥冨:「こういう人はこういう音楽を聴いて、それを聴いている人はこれも好きで」みたいな決めつけや、それによって安心することがずっとしっくりこなくて。「別に、違って良くない?」と思うんですよ。僕らはもっと複雑な感覚や感情で生きているはずだし、一寸先の物事の重なりで、今までなかった感情が生まれたり崩れたりする。色んな仕事や活動、生活があってなんとか成り立っている今を、みんなで楽しんでいきましょう、と。

―現在はリモートで番組を進行しているのですよね?

奥冨:はい。これからいよいよ街に出られるかどうか? という状況ですね。先ほど述べた色んな街や職業、そして人の魅力というのは、丁寧に砕いていかないと伝わりづらい。しかも、コロナ以前とは違うベクトルで届けられるような方法を考えています。そのあたりは「秘策」なので、ここではシーッで!

―分かりました(笑)。今回お話を聞いて、奥冨さんの「覚悟」に勇気をもらいました。今、コロナ禍で困っている人たち、苦しんでいる人たちにアドバイスはありますか?

奥冨:それぞれの環境によって随分感情が違うと思うので、1つ適切な言葉を述べるのは難しいですが、ちゃんと対策をした上で、気持ちが穏やかな時は外に触れられるのが良いかと思います。無責任に言っているわけではなくて、各々のケアと意識でこの空気は変えられると思うんです。体育の授業の前って準備運動していたじゃないですか。そういうストレッチ気分で対策すると気が楽かと。もうマスク生活にもだいぶ慣れましたしね。不思議ですよ。この4ヶ月間にしていることは、今までもずっとしてきたかのようにしてる気がします。

BOYの店内風景

―今回の出来事で、渋谷の文化にはどのような変化があると思われますか?

奥冨:少なくともこの数年に関しては、明確な文化はあるようでなかったとも思っているので、「好き勝手かつ同時多発的に生まれるのが渋谷なんじゃねえかな」って思っております(笑)。色んな感覚の人が表現したい街なら、そうなって普通なんじゃないかなと。ずっとグルグルしている街だし、やっていく人はやっていくんじゃないでしょうか。あと、東京に関しては耐震の事も含めて数年で空きビルや取り壊しも増えると思うので、『ストリートファイター』的に様々なロケーションで闘い合えるような気もしています。

―はははは! では、最後に守りたい渋谷の魅力や、その理由を教えてください。

奥冨:本当に沢山の時代の混沌を受け入れてきた街だと思うんです。とっ散らかってるけど、それが一番の魅力じゃないでしょうか。この数年はオリンピックに向けた都市開発で、本当に色々な建設やシステムが変わってしまったけど、こんなサバイバルみたいな状況で店や活動を進めていくのも、なんだかんだ自分自身は楽しんでいるんだろうなって。

沢山の人の沢山の感情を受け入れ続ける街であってほしいです。それでいて安心も安全も保障されないこの感じ、マジで闘っていくしかないですね。あと「街は人ありき」とも思うので、それぞれの魅力こそ大事に守ってあげてくださいと思います。ありがとうございました。

奥冨さんから提供いただいたお写真
奥冨さんから提供いただいたお写真
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『YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング』
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23万人の渋谷区民と日々訪れる300万人もの人たちが支えてきた渋谷の経済は“自粛”で大きなダメージを受けました。ウィズコロナ時代にも渋谷のカルチャーをつなぎとめるため、エンタメ・ファッション・飲食・理美容業界を支援するプロジェクトです。

プロフィール

奥冨直人(おくとみ なおと)

渋谷宇田川町にあるファッションと音楽のコンセプトショップ“BOY”ショップオーナー。DJとして年間100本程のイベントに出演。スペースシャワーTVにて配信番組“スペトミ!”のVJを担当。他、やりたいようにやりながら日々活動中。

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