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高山明×海法圭 不寛容な街でいかに「遊ぶ」か。設計と演出の余地

高山明×海法圭 不寛容な街でいかに「遊ぶ」か。設計と演出の余地

GAKU
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:豊島望 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

最近、街が窮屈な場所になっていないだろうか? 何をするにも許可がいり、目立つことをしたらすぐに白い目で見られる。誰もが自由に使える場所であるはずの公園では、もはやキャッチボールが禁止されている。一体、街とは誰のための場所なのか?

そんな硬化した都市との関係を、身体を使った「遊び」を通して変えていこうとするプログラム『Town Play Studies』が、渋谷パルコに新設された10代のための学び舎「GAKU」にてスタートする。「段ボールを使って街にパーソナルスペースを見つける」「さまざまな場所の温度や照度でビンゴをする」など、その内容はどれも簡単で少し変わったものばかり。普段とは違うその行為を通して、参加者の都市を見る眼差しは変化していく——。

今回は、同プログラムで講師を務める若手建築家・海法圭と、都市を舞台にそこに潜む多様な人の存在を感じさせる作品を手掛けてきた演出家・高山明の対談をセットした。最近の都市や公共空間に対する違和感から始まった対話は、各々のジャンルや経験を基点にしながら、縦横斜めに広がっていった。

短期間に都市が形成されるなかで、いろんなものが硬直化している。(海法)

―『Town Play Studies』は、12~18歳を対象に、「遊び」を通して都市や公共への意識を育むプログラムです。企画の背景にはどのような思いがあるのですか?

海法:ひとつは、いまの社会の不寛容さに対する疑問です。建築の世界にいるとよくわかるのですが、いま、デザインの多くは人間関係や責任問題で決定されています。たとえば、「このデザインにしたことで誰か怪我をしたらどうする?」「じゃあ安全にしよう」と、多くのことがリスク回避の思考で行われていて、新しいことに挑戦することが難しくなっている。

海法圭(かいほう けい)<br>1982年生まれ。2007年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。2010年海法圭建築設計事務所設立。人間の身の回りの環境と、人知を超えた環境や現象などとの接点をデザインすることをテーマに、壮大でヴィジョナリーな構想から住宅やプロダクトの設計まで、スケールを横断した幅広い提案を行う。
海法圭(かいほう けい)
1982年生まれ。2007年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。2010年海法圭建築設計事務所設立。人間の身の回りの環境と、人知を超えた環境や現象などとの接点をデザインすることをテーマに、壮大でヴィジョナリーな構想から住宅やプロダクトの設計まで、スケールを横断した幅広い提案を行う。

海法:また、コロナで少し状況は変わりましたが、多くの人が「職場」と「家庭」という二箇所を往復する生活をしていて、自らの所在が限定されることに息苦さを覚えている感覚があります。作り手としても生活者としても感じるこうした都市固有の問題を、普段の設計とは異なるアプローチから、中高生と一緒に考えられないか。そんな思いが、街での「遊び」を切り口にしたプログラムの背景にあります。

『Town Play Studies』
『Town Play Studies』(サイトで見る

高山:街の不寛容さという感覚に共感します。昨年、『TOKYO 2021』という展覧会で『個室都市 東京』という作品を展示しましたが、あれは2009年の『フェスティバル/トーキョー』で発表した作品。池袋の西口公園に仮設のプレハブを建て、24時間営業の個室ビデオ店を開くものですが、おそらく現在ではできないでしょう。あらゆる場所が管理の対象となり、都市で遊ぶことが難しくなった。

高山明(たかやま あきら)<br>1969年生まれ。2002年、演劇ユニットPort B(ポルト・ビー)を結成。実際の都市を使ったインスタレーション、ツアー・パフォーマンス、社会実験プロジェクトなど、現実の都市や社会に介入する活動を世界各地で展開している。近年では、美術、観光、文学、建築、都市リサーチといった異分野とのコラボレーションに活動の領域を拡げ、演劇的発想・思考によって様々なジャンルでの可能性の開拓に取り組んでいる。 / 写真は、2019年10月のインタビューで撮影されたもの 撮影:奥祐司
高山明(たかやま あきら)
1969年生まれ。2002年、演劇ユニットPort B(ポルト・ビー)を結成。実際の都市を使ったインスタレーション、ツアー・パフォーマンス、社会実験プロジェクトなど、現実の都市や社会に介入する活動を世界各地で展開している。近年では、美術、観光、文学、建築、都市リサーチといった異分野とのコラボレーションに活動の領域を拡げ、演劇的発想・思考によって様々なジャンルでの可能性の開拓に取り組んでいる。 / 写真は、2019年10月のインタビューで撮影されたもの 撮影:奥祐司(参考:高山明が抱く作家の使命。思考が硬化する時代の中でいかに乱すか

高山:僕は2009年以降、日本で劇場作品を作っていませんでした。それは劇場の外に自由と可能性を感じたからですが、今度は逆に街中が不自由になったため、2017年、自由を守ってもらおうと劇場に戻りました。そういう転倒があります。

海法:子供が自由に選択肢を見出して遊ぶべき公園でさえ、多くの行為が禁止されている状況がありますね。大人も、街ではカフェに行くとか買い物をするとか、消費を前提とした限られた選択肢のなかでしか行動できなくなっている。

それに対して『Town Play Studies』では、たとえば参加者にモノと人のスケール感を架橋する存在である段ボールを持って、渋谷の街に繰り出してもらいます。自分にとってのパーソナルスペースを見つけて、「都市に居場所を発見する」感覚を掴んでもらうプログラムなどを展開しようとしています。

そんなことを考えている自分から見ると、『個室都市』をはじめとする高山さんの活動は制約のなかでかなりギリギリを攻めているな、と。

『個室都市 東京』Port B(2009年) / 東京、池袋西口公園に出現した24時間営業の個室ビデオ店 ©蓮沼昌宏
『個室都市 東京』Port B(2009年) / 東京、池袋西口公園に出現した24時間営業の個室ビデオ店 ©蓮沼昌宏

高山:いろいろ追いかけられた経験がありますから。

海法:(笑)。それはアートや演劇だからこそ可能だと思っていて、良くも悪くも建築基準法などの法律を知っている建築家が同じことをやるのは難しい。今回、「遊び」を謳うのもそれと関連していて、一種のパフォーマンスにすることで自由度が上がると思っているんです。

―真面目に街中でやると誰かに怒られるようなことでも、「遊び」、つまり一種の遊戯性をまとうことで、都市ともう少し柔らかい関係を結べる可能性がある、と。

海法:そうですね。人が過密に集まる現代の「都市」は、いわゆる近代化で生まれたもので、たかだか150年程度の歴史しかない。そこに大量の資本が投入され、短期間に都市が形成されるなかで、いろんなものが硬直化していると思うんです。

そこに介入して都市を揉み解したいという思いは、近年の若手建築家によるリノベーションの隆盛や、「パブリック」と「プライベート」の二元化に対し、その境界にさまざまな人たちが独自の集合をつくる「共」や「コモンズ」と呼ばれる領域を再び見出そうとする動きにも現れています。

『Tobacco stand』海法圭建築設計事務所(2015年) / 世界中のタバコを扱うタバコバーと休憩所の設計 ©︎Soichiro Suizu
『Tobacco stand』海法圭建築設計事務所(2015年) / 世界中のタバコを扱うタバコバーと休憩所の設計 ©︎Soichiro Suizu

高山:いま、建築倉庫ミュージアムで『模型都市東京』という展示をしているのですが、そこではシェアハウスに住む人や、移動しながら生活するアドレスホッパーと呼ばれる人に注目しています。彼らを見ても思いますが、どの都市にも不自由さは当然あるけど、管理するのが人間なら、そこに自由を見出すのもまた人間なんですよね。

『模型都市東京』高山明 / Port B
『模型都市東京』高山明 / Port B(サイトで見る

高山:僕は、マクドナルドの店舗で難民による講義を聴く『マクドナルドラジオ大学』というプロジェクトを行っていますが、実際にマクドナルドは難民や移民にとって重要な居場所になっている。資本にがっつり抑えられた場所であっても、ユーザーの創意工夫によってその場をハッキングして自分なりに上手く使いこなす人は必ず現れるんです。

『マクドナルドラジオ大学』はフランクフルトで始まりましたが、ユーザーの創意工夫による場所の読み替えの例は、ヨーロッパよりも東京の方が多い気がします。背景には、東京の街における、ヨーロッパに比べて圧倒的に曖昧な公私の区別や、治安の良さといった特徴もあるかもしれない。その意味で、東京は「遊び」と相性が良いとも言えると思います。

『マクドナルド放送大学』Port B ©蓮沼昌宏
『マクドナルド放送大学』Port B ©蓮沼昌宏
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プログラム情報

『Town Play Studies』
『Town Play Studies』

隔週火曜日 16:30-18:00
対象年齢:12~18歳(中学生・高校生)
渋谷を舞台に、都市と建築、人のダイナミックなインタラクション<遊び>を生み出すことから、これからのまちの可能性を探ります。

施設情報

GAKU
GAKU

10代の若者たちが、クリエイティブの原点に出会うことができる「学び」の集積地。アート、映像、音楽、建築、料理など、幅広い領域で、社会の第一線で活躍するアーティストやデザイナー、先進的な教育機関が、10代の若者に対して、本質的なクリエイティブ教育を実施する。10代の若者が、本物のクリエイターと実際に出会い、時間を過ごし、ともに考え、試行錯誤をしながらクリエイションに向き合うことで、まだ見ぬ新しい自分や世界、すなわち、原点のカオスに出会うことを目指す。ディレクターには、writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)のデザイナー山縣良和を迎え、世界的評価を受けるファッション・スクール「ここのがっこう」、カルチャーWEBメディアCINRAによるオンラインラーニングコミュニティ「Inspire High(インスパイア・ハイ)」などが集まり、感性、本質的な知識、自己と他者の原点を理解する精神を育むプログラムを構成する。

プロフィール

海法圭(かいほう けい)

1982年生まれ。2007年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。2010年海法圭建築設計事務所設立。人間の身の回りの環境と、人知を超えた環境や現象などとの接点をデザインすることをテーマに、壮大でヴィジョナリーな構想から住宅やプロダクトの設計まで、スケールを横断した幅広い提案を行う。

高山明(たかやま あきら)

1969年生まれ。2002年、演劇ユニットPort B(ポルト・ビー)を結成。実際の都市を使ったインスタレーション、ツアー・パフォーマンス、社会実験プロジェクトなど、現実の都市や社会に介入する活動を世界各地で展開している。近年では、美術、観光、文学、建築、都市リサーチといった異分野とのコラボレーションに活動の領域を拡げ、演劇的発想・思考によって様々なジャンルでの可能性の開拓に取り組んでいる。

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