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谷口彩子らが作曲家座談会 職人性と作家性で異なるスタンス

谷口彩子らが作曲家座談会 職人性と作家性で異なるスタンス

Ayako Taniguchi『obsess』
インタビュー・テキスト
小室敬幸
撮影:前田立 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

作曲家仲間が聴いた、Ayako Taniguchiの作家性

―こうしてお話をうかがっていくと、谷口さんの出自であるクラシック的な要素が根幹にあるアルバムなんですね。他のみなさんは、このアルバムをどのように聴かれたのでしょう?

鈴木:アルバムの3~4曲目ぐらいに真打ちがくるなんてことも多い中、1曲目から「ザ・彩子さん(笑)」と期待した通りの曲がくるし、全体の流れも気持ちいい。打楽器ではじまる10曲目が一番意外で、トリッキーとまでは言わないけど、かなり攻めていて驚きました。ピアノをシーケンシャル(自動演奏的)に聴かせる使い手というのが彩子さんの第一印象だったので、スローな曲でも彼女の新しい一面を見たなと思いましたね。……あかん、真面目に話してもうてる(笑)。

カンガルー鈴木(かんがるーすずき)<br>1977年生まれ。2005年フリーの作曲家としてデビュー、CM・TVなどの番組・広告音楽に携わって早15年。日テレ『ストレイトニュース』NHK『プレシャスブルーシリーズ』等。自由に音楽で遊ぶレーベル「ガルラボ!」を主催。
カンガルー鈴木(かんがるーすずき)
1977年生まれ。2005年フリーの作曲家としてデビュー、CM・TVなどの番組・広告音楽に携わって早15年。日テレ『ストレイトニュース』NHK『プレシャスブルーシリーズ』等。自由に音楽で遊ぶレーベル「ガルラボ!」を主催。

谷口:普段、こんな話はしないもんね。みんなで飲んでいるだけで(笑)。

一同:(笑)。

小野:僕は正直、谷口さんの仕事は何件かしか聴いたことがなかったんですが、今回のアルバムを聴かせていただいて、いきなり1曲目から飛ばされました。特に中盤から最後の曲にかけての流れが本当に素晴らしかった。1曲1曲の中に膨大な情報量があるのに、それぞれの要素がちゃんと意味を持って整理されてるんですよね。完璧な和声感、かつ攻撃的な情報量でガーッとこられると、それはもうたまらないわけですよ(笑)。そんなアルバムです。あと個人的に思ったのは、谷口さんの音楽を聴いているとものすごく映像が頭に浮かぶんですよね。映画のサウンドトラックとかも聴いてみたいなと思いました。

小野雄紀(おの ゆうき)<br>作編曲家、音楽プロデューサー。岩手県出身。5歳よりクラシックピアノを学び、大星美子、藤井一興、有森博の各氏に師事。2001年よりNutopia Productionsとして活動、2枚のアルバムをリリース。2003年に渡米し、現地の様々なクライアントへ楽曲を提供。帰国後はCMを中心に、映画・舞台・テレビ番組・ゲーム・インスタレーションなど、制作する音楽はメディアを問わない。CANNE LIONS、D&AD、CLIO、THE ONE SHOWなど、受賞歴多数。株式会社ワンダラス主宰。
小野雄紀(おの ゆうき)
作編曲家、音楽プロデューサー。岩手県出身。5歳よりクラシックピアノを学び、大星美子、藤井一興、有森博の各氏に師事。2001年よりNutopia Productionsとして活動、2枚のアルバムをリリース。2003年に渡米し、現地の様々なクライアントへ楽曲を提供。帰国後はCMを中心に、映画・舞台・テレビ番組・ゲーム・インスタレーションなど、制作する音楽はメディアを問わない。CANNE LIONS、D&AD、CLIO、THE ONE SHOWなど、受賞歴多数。株式会社ワンダラス主宰。

原田:僕の印象としては、タイトルの「取り憑く」という意味がしっくりきたんですよ。いい意味でBGMであることを許さない。たとえばヘビーメタルとかハードロックを聴いているときみたいに、音楽の中に入っていく感じ。すごいドライブ感を覚えたんですね。それがアーティストとしての彼女の個性なんだろうなと思いました。あと谷口さんの音って、テンポが速いのではなく、音の伝達スピードが速いっていうイメージがあって、それが広告のディレクターさんにリスペクトされるひとつの魅力なのかなって思ったんですけど、それもアルバムの中に出ている気がします。この勢いとスピード感は、今の中国で人気出るんじゃないかな?

原田亮(はらだ りょう)<br>音楽を中心としたクリエイティブ・プロダクション、ラダ・プロダクション代表取締役。タワーレコードにてbounce.com、ナップスタージャパンなどの編集、企画制作職を経て独立。SONY、YAMAHA、日清フーズなどのCM音楽、インタラクティブ展示といった広告音楽をてがけたほか、近年は自社レーベル部門を立ち上げ、アナログレコードから配信音源までの制作、プロデュースも行う。
原田亮(はらだ りょう)
音楽を中心としたクリエイティブ・プロダクション、ラダ・プロダクション代表取締役。タワーレコードにてbounce.com、ナップスタージャパンなどの編集、企画制作職を経て独立。SONY、YAMAHA、日清フーズなどのCM音楽、インタラクティブ展示といった広告音楽をてがけたほか、近年は自社レーベル部門を立ち上げ、アナログレコードから配信音源までの制作、プロデュースも行う。

小野:テクノも感じるから、ドイツとかいいんじゃない? ベルリンとかね。寒い国のほうが合うような気がするよ。

谷口:確かに南国ではないですね(笑)。

―城さんは、今回のレーベルのプロデューサーを務められたわけですけれど、その立場からはどのように聴かれていますか?

:クラシックは聴くだけでしっかりと勉強してはこなかったので、キリスト教の宗教音楽的な部分とか、根底にあるクラシック音楽的な響きや「間」に新鮮さを覚えましたね。音の情報量が多くても、テクノやエレクトロニカとは異なる、クラシックに根ざした祈りや世界観の奥深さが脈々と聴こえてくるんです。そして谷口さんって音楽とクールに接しているイメージがあったんですけど、最終的に伝わってくるのは、猛烈なエモーショナルさというか、ヒューマニズムみたいなもので、それが技術的な部分とこれだけ渾然一体になった作品はなかなかないと思います。

no.9 / 城隆之(なんばーないん / じょう たかゆき)<br>Steve* Music エグゼクティブ・プロデューサー。「音と共に暮らす」をテーマに、日々の暮らしに寄り添う豊かでメロディアスな楽曲を生み出すソロプロジェクト「no.9」として活動。広告や映像音楽を生業としながらアーティスト活動も並行して継続。2007年より始動したバンドセット「no.9 orchestra」では、no.9の音楽にギターやドラム、ヴァイオリンやピアノといった フィジカルな音楽性が加味され、フルオーケストラを想起させる壮大なライブパフォーマンスを披露している。
no.9 / 城隆之(なんばーないん / じょう たかゆき)
Steve* Music エグゼクティブ・プロデューサー。「音と共に暮らす」をテーマに、日々の暮らしに寄り添う豊かでメロディアスな楽曲を生み出すソロプロジェクト「no.9」として活動。広告や映像音楽を生業としながらアーティスト活動も並行して継続。2007年より始動したバンドセット「no.9 orchestra」では、no.9の音楽にギターやドラム、ヴァイオリンやピアノといった フィジカルな音楽性が加味され、フルオーケストラを想起させる壮大なライブパフォーマンスを披露している。

谷口:確かにクラシックで「間」はすごく大事で、それが全てと言ってもいいぐらい。音色も大事ですけれど、それは個人が練習の中で仕上げてくるものなので、リハーサルでなにを合わせるかといえば「息」や「間」なんですよね。そこは自分のオリジナリティとして入れたいと常々思っているし、だから機械にやらせるだけでは面白くないんです。

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リリース情報

Ayako Taniguchi
『obsess』(CD)

2020年10月1日(木)発売
価格:2,750円(税込)
SAM002

1. 0094 - f moll
2. 0100 - c moll
3. 0103 - e moll
4. 0098 - G dur
5. 0090 - cis moll
6. 0086 - Des dur
7. 0092 - es moll
8. 0095 - As dur
9. 0107 - b moll
10. 0088 - F dur
11. 0109 - g moll

サービス情報

Steve* Music by Steve* inc.
Steve* Music by Steve* inc.

Steve* Music by steveinc.jpは、シンプルに、ミニマルに、ポジティブに。をテーマに、音楽の本質と向き合っていくことを目指した音楽レーベルです。

Steve* inc.

ブランディングや商品開発を、その瞬間だけではなく「未来にどのような影響を与えるか」を考えてお客様と共に併走することを目指すクリエイティブカンパニー。時代の潮流を研究し続けながら、長期的な企業成長を共に考えるクリエイティブパートナーとして、多くのお客様からすでに信頼を得始めています。音楽レーベル「Steve* Music」空間デザインレーベル「Steve* House」も展開。

プロフィール

Ayako Taniguchi(あやこ たにぐち)

3歳よりピアノ、6歳より作曲を習い始める。滋賀県立石山高等学校音楽科ピアノ専攻を経て、相愛大学音楽学部器楽学科創作演奏専攻卒業。現在、クラシックの演奏家への作・編曲、WEBや映像作品、インスタレーション等の楽曲制作を中心に活動。作品では和声や対位法を基礎とするクラシカルな手法と、ミニマル的多重ピアノなどの機械的要素を併せた、独自の世界観を作り出す。

カンガルー鈴木(かんがるーすずき)

1977年生まれ。2005年フリーの作曲家としてデビュー、CM・TVなどの番組・広告音楽に携わって早15年。日テレ「ストレイトニュース」NHK「プレシャスブルーシリーズ」等。自由に音楽で遊ぶレーベル「ガルラボ!」を主催。

小野雄紀(おの ゆうき)

作編曲家/音楽プロデューサー。岩手県出身。5歳よりクラシックピアノを学び、大星美子、藤井一興、有森博の各氏に師事。2001年よりNutopia Productionsとして活動、2枚のアルバムをリリース。2003年に渡米し、現地の様々なクライアントへ楽曲を提供。帰国後はCMを中心に、映画・舞台・テレビ番組・ゲーム・インスタレーションなど、制作する音楽はメディアを問わない。CANNE LIONS、D&AD、CLIO、THE ONE SHOWなど、受賞歴多数。株式会社ワンダラス主宰。

原田亮(はらだ りょう)

音楽を中心としたクリエイティブ・プロダクション、ラダ・プロダクション代表取締役。タワーレコードにてbounce.com、ナップスタージャパンなどの編集、企画制作職を経て独立。SONY、YAMAHA、日清フーズなどのCM音楽、インタラクティブ展示といった広告音楽を手がけたほか、近年は自社レーベル部門を立ち上げ、アナログレコードから配信音源までの制作、プロデュースも行う。

no.9 / 城隆之(なんばーないん / じょう たかゆき)

音楽レーベルSteve* Music エグゼクティブ・プロデューサー。「音と共に暮らす」をテーマに、日々の暮らしに寄り添う豊かでメロディアスな楽曲を生み出すソロプロジェクト「no.9」として活動。広告や映画音楽を生業にしながらもアーティスト活動も並行して継続。2007年より始動したバンドセット「no.9 orchestra」では、no.9の音楽にギターやドラム、ヴァイオリンやピアノといったフィジカルな音楽性が加味され、フルオーケストラを想起させる壮大なライブパフォーマンスを披露している。

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