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東京とバンコク。対面できない交流の果てに行き着く身体の表現

東京とバンコク。対面できない交流の果てに行き着く身体の表現

『フェスティバル/トーキョー20』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

自分の所属している都市から、視点を遠くへと飛ばすと見えてくるもの

―コロナ禍になり、舞台芸術方面ではZoom演劇といったオンラインでの試みが多く行われています。それに対する軽い批判として「やっぱり実際に対面して鑑賞することが演劇やダンスの醍醐味なんだ!」という声もあるようです。

曽根:難しいところですよね。たしかにコロナ禍で舞台芸術業界でも「身体警察」というような言葉も聞きました。身体性がないものを演劇と呼べるのか。そのことは舞台芸術に関わる誰もが考えていたはずのことで、大きな悩み、不安としてありました。

でも正直に言うと、それってすごくナンセンスだと思うんです。身体が目の前にあることだけが演劇の定義なのか? それは決して必要十分条件じゃないだろう、という風に若い世代はとらえていたと思います。

例えばアバター同士の会話であっても演劇的な瞬間は生じるし、SNS上のインスタントなやりとりにも演劇的な要素は発見できる。交流とか関係性の構築には、必ずしも身体を介さなくても可能だ、というのが世代的な実感としてあるはずです。

だからこそ、今回のプロジェクトの交流でも、距離の隔たりや会えないことは大きな問題にはならなかったわけですから。ひょっとすると、私たち(1990年代生まれ)はその隔たりに抵抗を持たない最初の世代なのかもしれない。

タイム:もちろん直接的な体験にこだわりを持つアーティストはたくさんいますし、いなくなることもない。でも重要なのは、アートというのは常に生きているもので、時代や環境の条件に応じて進化していくものだということです。そして進化しなければ死んでしまうというのもアートであって、それは人間も同じ。

左から:チャナポン・コムカム、曽根千智

―たしかに。そのお互いの認識を踏まえて、今回のプロジェクトがどのような成果を得られればよいと考えていますか?

タイム:こんな状況ですから、バンコクで暮らす人たちに対しては、展示に来てくれるだけで本当に感謝です。バンコクチームの展示って、じつはギャラリーの外に広がる街の風景と大きく違うものではないと考えているんです。

そこらじゅうにあるボコボコの歩道と地続きに、僕らの展示はある。そこを往き来したり、展示を見てから街に戻るときに、街の大切さを再確認できるようなものでありたいと考えています。

曽根:展示での経験を経て、都市を発見してほしいというのは東京チームもまったく同じです。そのうえで、まったく違う都市の見方を獲得してもらえたらとても嬉しい。

東京チームが行なっているのは、東京の持つ曖昧さに対して、望遠鏡でディテールに迫るやり方ではなくて、巨視的に全体をぼーっと眺めるという方法なんですね。東京に住んでいると、せいぜい自分が住んでいる地域、働いている地域、よく遊びに行く地域ぐらいしか意識されません。でも、それ以外の場所も漠然と把握し直してみることには、東京を考え直すきっかけになると思うんです。

チャナポン・コムカム

―そういった視点がほぼ同時期に東京とバンコクに同時発生する、というのが面白いですね。そこに行くことはできないけれど、ある特異な視点が発生しているのを想像する経験はユニークだと感じます。

曽根:展示を作り始めた頃、宇宙からエイリアンが東京とバンコクを見ていたとしたら? というアイディアがありました(笑)。

自分たちに可能な視点に拘束されず、もっと遠くへと発想を飛ばしていく。そうやって自分の所属している国や都市を越えた場所に視点を飛ばしていくことは、コロナ禍を経た現在について考える意味でも重要だと思いますね。

左から:チャナポン・コムカム、曽根千智

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イベント情報

『フェスティバル/トーキョー20』
『フェスティバル/トーキョー20』

会場:東京都 池袋 東京芸術劇場、トランパル大塚、豊島区内商店街、オンライン会場ほかで開催

『トランスフィールド from アジア F/T × BIPAM 交流プロジェクト The City & The City: Divided Senses』

10月30日(水)~11月1日(日)13:00~18:00

会場:
・東京芸術劇場 シアターウエスト
・F/T remote(オンライン配信)※11/2以降に予定。スケジュールなどの詳細は決まり次第、F/T公式HPにて発表します
金額:参加無料・予約優先

プロフィール

曽根千智(そね ちさと)

1991年生まれ、兵庫県出身。青年団演出部所属。大学在学中に受けた平田オリザの演劇の授業に衝撃を受け、観劇を始める。卒業後、人材系IT企業にて研究開発職につく傍ら、無隣館3期演出部に所属。現在は退職し、演出、劇場制作、ドラマトゥルクとして活動している。出演作品に『よみちにひはくれない』(2018年、世界ゴールド祭)作・演出作品に『遊行権』(2019年、アトリエ春風舎)など。2019年度、セゾン文化財団創造環境イノベーションプログラム採択。

チャナポン・コムカム(ニックネーム:タイム)

1995年生まれ、バンコク出身。ポーチャン芸術大学で絵画の学士号、シルパコーン大学で視覚芸術の修士号を取得。絵画、写真、サウンドアート、ビデオアート、インスタレーションアート、レディ・メイドのオブジェクトなど多様な手法を用い、2017年以後はグループ展、パフォーマンスアートのショーケース、実験的サウンドアートのショーケースなどで作品を発表している。既成の芸術手法と自然による偶発的な要素、ファウンド・オブジェを組み合わせ、隣り合わせにある芸術と日常の関係を表現、現在は、2021年5月の初個展に向けて準備中。

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