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橋本晶子が信じる絵の力。人の意識を遠くへ飛ばす、豊かな世界

橋本晶子が信じる絵の力。人の意識を遠くへ飛ばす、豊かな世界

『shiseido art egg』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:前田立 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

日本画に魅了され、そこから抜け出し、いまも強く固執しているわけ

―「儚さ」は橋本さんのインスタレーションにも通じている気がします。自室やカフェといった日常の空間に作品をぽんと置いていったりだとか。

橋本:1年間だけパリで暮らしたことがあったのですが、そのときに展示をしたのが、まさに暮らしていた部屋でしたね。それ以前から小さな住空間でのインスタレーションは試していたんですけど、ごはんを作ったり眠ったりする自分の生活のなかで、展示の構想を組み立てていくことを本格的に行ったのはこのときでした。

『Yesterday's story』(部分)2018 鉛筆、紙、部屋(撮影:Watson studio)
『Yesterday's story』(部分)2018 鉛筆、紙、部屋(撮影:Watson studio)

橋本:部屋がどんな状態であるのかが全部頭に入っている状態なので、部屋にあった棚や小物と自分の描いたドローイングを使って、どんな動線を作ろうかとずっと考えていました。コップとか透明ガラスをよく使うんですが、白い紙の上に置くと光が当たって影ができるんです。それから、割れてしまうかもしれないというイメージも儚さを喚起する。それ以来、ガラスは私の展示のレギュラー入りです(笑)。

―ドローイングで描いた線と、本物の影の線が混ざり合ってリアルとイメージが混濁するような印象も受けました。

橋本:「日常」と言ってしまうと言葉として簡単すぎちゃうので別の言葉を見つけたいところですが……。些細なことやもの、些細な現象、そういうのが自分には大切ですね。

―それが空間を結びつけるというか。

橋本:はい。空間のことはいつも意識していますし、目標にもしています。

いまの制作は、だいぶ日本画から離れたところで行なっていますけど、やっぱり日本画に対する気持ちはいまも強くあるんです。1枚の画面に向き合って作品の完成度を高めていくというのが画家の一般的な姿勢だと思うのですが、なぜ自分はそれをできないんだろうかと。そんな気持ちを持ちながら大学を卒業して、しばらく後に円山応挙(江戸時代の絵師)の障壁画を兵庫の大乗寺に観に行ったんです。「応挙寺」の別名で知られているお寺で、彼やその門下が描いた襖絵があるんです。

―応挙たちの作品が、一種の立体曼荼羅を形成しているとも言われるお寺ですね。

橋本:そこに行って、ものすごく腑に落ちたんですよ。応挙は立体的にものを描ける人で、絵を右から見ても左から見てもそれぞれが成立するような特殊な技法を確立しています。でも、美術館の展示で襖絵を観ても、その特殊な技法を使っている意味がよくわからないんです。

ところが大乗寺では、部屋の柱に対して直角にそれぞれの絵が配置されていて、観ている側も立体的・動的な経験として応挙の狙った効果を理解できます。さらに全部の部屋、それらを結ぶ廊下も彼によってディレクションされているので、ゆっくり廊下を歩いて、障子窓があって、そして風景が見える、みたいな経験を通して「なるほど、絵画体験ってこういうことなんだな」ってすごく腑に落ちたんです。これまでずっと日本画を勉強してきたのに、なぜ私はいままでそのことに気づけなかったんだろう、ってかなり衝撃でした。

橋本晶子

―1枚で世界が完結するのではなく、関係性や配置によって効果を生むものが日本の絵の歴史にはあったと。まさにインスタレーションですね。

橋本:そういう古くからあるスピリットに反応して、私は日本画を選び、そこから抜け出して、そしていまも強く固執しているんだってことがわかりました。それ以来、自信を持って作品を作れるようになったところがあります。

―応挙に背中を押されて。

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イベント情報

『shiseido art egg 14th』
橋本晶子展

2020年10月30日(金)~11月22日(日)
会場:東京都 資生堂ギャラリー
平日 11:00~19:00 日・祝 11:00~18:00
毎週月曜休(祝日が月曜にあたる場合も休館)
入場無料
事前予約制

作家によるギャラリートーク
橋本晶子展

作家本人が会場で自作について解説するギャラリートークを、各展覧会開始後に資生堂ギャラリーの公式サイトにてオンライン配信いたします。

※ご予約は10月23日(金)から開始となります。

プロフィール

橋本晶子(はしもと あきこ)

1988年東京都生まれ。2015年武蔵野美術大学大学院 造形研究科修士課程 日本画コース修了。東京都在住。主な活動として、『Yesterday's story』Cite internationale des arts(2018年 / パリ)個展、『It' soon.』Little Barrel(2018年 / 東京)個展などがある。

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