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Ryohuが追求するヒップホップのフォルム 立役者・冨田ラボと語る

Ryohuが追求するヒップホップのフォルム 立役者・冨田ラボと語る

Ryohu『DEBUT』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:小田部伶 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

ヒップホップクルー・KANDYTOWNのメンバーであり、ズットズレテルズのメンバーだったことでも知られるラッパーのRyohuが、初のソロアルバム『DEBUT』をリリースした。自身のバンドAun Beatzでの活動や、Base Ball BearやSuchmos、ペトロールズといったアーティストたちの作品にも客演するなど、もはや「ラッパー」や「ヒップホップ」といったカテゴライズでは捉えきれないほどに様々な場所でその才能を発揮してきたRyohuだが、そんな彼にとって待望の、ソロ名義によるフルアルバムである。

エレクトロニクスと生演奏がなめらかに溶け合い、歌とラップが絶妙に混ざり合う。そしてフィーチャリングボーカルや仲間のラッパーの客演もない、その「声の少なさ」ゆえにRyohuという「個」の存在が際立つ――そんな新鮮なフォルムを持つ本作には、これまでも関わりが深かったTENDREやAAAMYYY、荒田洸(WONK)などが制作に参加している。なかでも多くの楽曲にプロデュース、あるいはコ・プロデュースで携わっているのが、「冨田ラボ」こと冨田恵一だ。

冨田ラボのアルバム『M-P-C "Mentality, Physicality, Computer"』(2018年)にRyohuはラッパーとして大々的にフィーチャーされていたが、そのお返しと言わんばかりに、冨田は本作『DEBUT』で、そのポップマエストロとしての手腕をいかんなく発揮している。結果として本作は、長年、日本のポップスの最前線を走ってきた冨田の技術と経験値、そして飽くなき「変化」に対する嗅覚と、Ryohuの本能的にボーダレスな佇まいとが合致した、パワフルでハイブリッドな日本語のポップアルバムに仕上がっている。

今回、CINRA.NETでは、Ryohuと冨田恵一の対談を敢行。アルバム『DEBUT』の制作の裏側から、「音楽になりすぎてはいけない」と語る、世代を超えたふたりに共通する美学まで、存分に語り合ってもらった。

左から:Ryohu、冨田恵一
左から:Ryohu、冨田恵一

トラックメイクもするRyohuと冨田ラボが共有するポップセンス。共にプロデューサー視点で語り合う

―Ryohuさんと冨田さんの初対面は、冨田さんのアルバム『M-P-C "Mentality, Physicality, Computer"』にRyohuさんが参加されたときですよね。

Ryohu:そうっすね。『M-P-C』が2年前なんですけど、あれは、ここ最近で一番楽しい客演だったんですよ。それで、レーベルも一緒だし、自分の作品を作るとなったときに、「ぜひ、お力添えをいただけたら」という話をさせてもらったんです。

前は冨田さんの作品に僕が参加する形でしたけど、自分の作品に冨田さんに参加してもらうのは、緊張というか、「どうなっていくんだろう?」っていう楽しみがすごくありました。初めてなんです、他の人にプロデュースしてもらうの。

冨田:そうだよね、Ryohuさんは自分でトラックも作れるし。そもそも、僕は全然ヒップホップ・プロパーな人間ではなくて。『M-P-C』が、ラッパーを迎えて自分の音楽を作った初めての経験だったし、あの頃、ラッパーとの作業をどうやっていくのか、自分の中の定型もなかった。それでも、こうやってRyohuさんがご自分の作品を作るときに僕を呼んでくれたのは嬉しかったです。

Ryohu:今回のアルバム、収録曲の半分くらいは冨田さんに触ってもらっていますけど、もちろん、冨田さんがヒップホップの畑の人ではないことは理解していて。だからこそ、一緒にやっていくことの面白さを感じましたね。今回のアルバムで最初に作りはじめたのが“The Moment”でしたけど、これは1年前くらいに一緒に作ったじゃないですか。

冨田:そうだよね。まだコロナもなにもなかった頃だったから、スタジオに人を集めてコーラスを録って。Ryohuさんがフックの部分のリリックをレコーディングの現場で書いていたのを覚えてる。

Ryohu:その場で思いついた言葉をただ書いた感じだったから、もうちょっと思考したほうがいいのかなって不安もあったんですけど、冨田さんが「これがストレートでいいと思うよ」と言ってくれたし、自分でも考えた末、「これがすべてで、これを超えるものはないな」と思えて。結果的にこの曲ができたことによって、このアルバムで歌う内容が定まった感じがあるんですよね。

Ryohu“The Moment”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

冨田:確かに、このアルバムはリリックで歌われていることはバラバラだけど、前提として、ひとつの方向に向かっていく感じがあるなと思った。あと今思い出したんだけどさ、“The Moment”のレコーディングときに、「Ryohuさんって、自分で歌うのも嫌じゃないんだな」と思った。この曲を作っているときに、「最後のほうに、もうちょっと歌メロ的な要素も欲しい」っていう意見をRyohuさんからもらって。Ryohuさんはメロディを歌うことに対して違和感がない人だったんだよね。

Ryohu:そうかもしれないです。特に、今回は僕ひとりのアルバムなので。これは僕の個人的な考え方ですけど、ラップだけで1枚のアルバムってツラいような気がするんです。歌パートみたいなものがないと最後まで聴けないというか。

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リリース情報

Ryohu『DEBUT』初回限定盤
Ryohu
『DEBUT』初回限定盤(2CD)

2020年11月25日(水)発売
価格:4,180円(税込)
VIZL-1824

[CD1]
1. The Moment
2. GMC
3. Heartstrings
4. You
5. Tatan's Rhapsody
6. Somebody Loves You
7. No Matter What
8. Foolish
9. Anytime, Anywhere, Anyone
10. True North
11. Level Up
12. Eternal
13. Rose Life

[CD2]
1. Flower
2. Thread
3. Cloud

Ryohu『DEBUT』通常盤
Ryohu
『DEBUT』通常盤(CD)

2020年11月25日(水)発売
価格:3,300円(税込)
VICL-65438

1. The Moment
2. GMC
3. Heartstrings
4. You
5. Tatan's Rhapsody
6. Somebody Loves You
7. No Matter What
8. Foolish
9. Anytime, Anywhere, Anyone
10. True North
11. Level Up
12. Eternal
13. Rose Life

プロフィール

Ryohu
Ryohu(リョフ)

ヒップホップクルー・KANDYTOWNのメンバーとしても活動するラッパー / トラックメーカー。10代より音楽活動を始める。OKAMOTO'Sのメンバーと共にズットズレテルズとして活動。2016年、KANDYTOWNとして1stアルバム『KANDYTOWN』をリリース。2017年にはソロとして本格始動し、EP『Blur』(2017年)、ミックステープ『Ten Twenty』(2018年)を発表。Base Ball Bear、Suchmos、ペトロールズ、OKAMOTO'S、あいみょんなど様々なアーティストの作品に客演する。2020年11月、1stアルバム『DEBUT』をリリースした。

冨田ラボ
冨田ラボ(とみた ラボ)

音楽家、音楽プロデューサー。冨田ラボとして今までに6枚のアルバムを発表、最新作は2018年発売の『M-P-C “Mentality, Physicality, Computer”』。冨田ラボの元に今の音楽界に欠かせないアーティストたちが集結、次の時代のPOPSを提示する名盤として話題となる。音楽プロデューサーとしても、キリンジ、MISIA、平井堅、中島美嘉、ももいろクローバーZ、矢野顕子、RIP SLYME、椎名林檎、木村カエラ、bird、JUJU、坂本真綾、夢みるアドレセンス、Uru、藤原さくら、Negicco、鈴木雅之、VIXX、スガシカオ、新しい地図、Naz、kiki vivi lily、高野寛、数多くのアーティストにそれぞれの新境地となるような楽曲を提供する他、自身初の音楽書「ナイトフライ -録音芸術の作法と鑑賞法-」が、横浜国立大学の入学試験問題にも著書一部が引用され採用されたり、音楽ファンに圧倒的な支持を得るポップス界のマエストロ。

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