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山田智和が語る、変貌する世界への視線 映像作家が見た2020年

山田智和が語る、変貌する世界への視線 映像作家が見た2020年

山田智和
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:山本華 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

2020年の終わりに公開されたサントリーBossのウェブCM『365 STEPS』。ひとりの看護師の1年を、一篇のドキュメンタリーのように綴ったこのCMは、単なる「広告」ではなくこの困難な時代のひとつの「記録」であり、同時代を生きる人々に向けた「エール」だった。本作を監督したのは山田智和。新垣結衣をフィーチャーしたGMOクリック証券の一連のCMシリーズや、米津玄師、あいみょん、KID FRESINO、最近では藤井風の“青春病”や宮本浩次の“夜明けのうた”のMVなどを手がけたことでも知られる映像作家だ。

CMやMVはもちろん、ショートフィルムやスチール写真など、さまざまな方法によって「いまを生きる人間」の姿を表現してきた彼は、2020年、すべての状況を一変させた「コロナ禍」の中で、何を考えながら、どんな映像作品を生み出していったのだろうか。

「記録」と「記憶」、その狭間で溢れ出る人々の「エモーション」。それを手がかりとしながら生み出していった彼の一連の映像作品を読み解きながら、2020年という特異な1年を改めて振り返ってみることにしよう。その果てに彼は、どんな「未来」を見ているのだろうか。

映像作家・山田智和が描き出すエモーションの奥にあるもの。一人ひとりの毎日の中にも「美しさ」は宿っていることに、目をこらす

―CINRA.NETでは、2019年3月に山田監督の2018年の活動を通じて「作家性」を読み解く記事を掲載しましたが、今回もそれと同じように山田監督の活動を振り返りながら、2020年というこの特異な1年の中で監督が感じたこと、そして変化を追っていけたらと思っています(関連記事:映像作家・山田智和の時代を切り取る眼差し。映像と表現を語る)。

山田:はい、よろしくお願いします。

山田智和(やまだ ともかず)<br>映画監督、映像作家。東京都出身。クリエイティブチームTokyo Filmを主宰、2015年よりCAVIARに所属。水曜日のカンパネラやサカナクションのミュージックビデオを手がけ、徐々に頭角を現して行く。2018年にはKID FRESINO“Coincidence”や、米津玄師“Lemon”、あいみょん“マリーゴールド”、星野源“Same Thing (feat. Superorganism)”など、数々の話題となったミュージックビデオを演出する。また、NIKE、SUNTORY、GMOクリック証券、TOD'S、PRADA、GIVENCHY、Valentino × undercover等の広告映像や、ファッション誌のビジュアル撮影も行うなど、その活動は多岐に渡る。渋谷駅で行われたエキシビション『SHIBUYA / 森山大道 / NEXT GEN』にて「Beyond The City」を発表。伊勢丹にて初の写真展『都市の記憶』開催。2020年はギャラクシー賞CM部門大賞、ACCディレクター賞、MTV VMAJ 2020の『最優秀ビデオ賞
山田智和(やまだ ともかず)
映画監督、映像作家。東京都出身。クリエイティブチームTokyo Filmを主宰、2015年よりCAVIARに所属。水曜日のカンパネラやサカナクションのミュージックビデオを手がけ、徐々に頭角を現して行く。2018年にはKID FRESINO“Coincidence”や、米津玄師“Lemon”、あいみょん“マリーゴールド”、星野源“Same Thing (feat. Superorganism)”など、数々の話題となったミュージックビデオを演出する。また、NIKE、SUNTORY、GMOクリック証券、TOD'S、PRADA、GIVENCHY、Valentino × undercover等の広告映像や、ファッション誌のビジュアル撮影も行うなど、その活動は多岐に渡る。渋谷駅で行われたエキシビション『SHIBUYA / 森山大道 / NEXT GEN』にて「Beyond The City」を発表。伊勢丹にて初の写真展『都市の記憶』開催。2020年はギャラクシー賞CM部門大賞、ACCディレクター賞、MTV VMAJ 2020の『最優秀ビデオ賞 "Best Video of the Year"』を受賞している。

―まずは昨年12月23日に公開されたサントリーBossのウェブCM『365 STEPS』についてですが、あれはすごくいいCMでした。

山田:ありがとうございます。いまのような状況下で、改めて「広告とは何か? 映像にできることは何か?」ということを考えたというか、どういうメッセージを送ることができるのかってところから始まったCMでした。

―CMの中でも時間が経過していきますが、実際かなり前から撮り始めていたのですか?

山田:そうですね。撮影は自分たちでもやったんですけど、ほかにドキュメンタリーチームにも動いてもらっていて。僕らでは入ることのできないところの映像を撮ってきてもらったり、彼らでも入れないところは、実際に現場で働く看護師の方々にお願いして、スマホで映像を撮ってきてもらったり。最終的にそれらを合わせて編集していきました。

―このCMに限らず、山田監督の作品にはいつも心を強く揺さぶられるところがあって……端的に言うと「エモい」という(笑)。

山田:(笑)。そう言ってもらえるのは、むちゃくちゃ嬉しいです。悪い意味での「ファッション」的な映像にはしたくないといつも思っているので。「ファッション」ってカッコいいし、ビックリはするんですけど、ある意味表層的なものであって、根本的に人の心を動かすものではないんじゃないかって思うんです。それよりも、見てくれた人の心を揺り動かして、単純に「もう1回見たい」って思ってもらえるような映像を作りたいんですよね。

あと、いわゆる「美しさ」みたいなものについても最近考えていて。一般的に「美しい」とされているものは、本当に美しいのか。それよりも、毎日一生懸命働いている人のほうが美しいと思えたりもするわけで。特にいまのような状況では。

―山田監督の作品には、ちゃんと「人間」が映っている気がするんです。その背景に、自分のストーリーを持った「人間」というものが。だから、「エモい」と感じるのではないかと。

山田:嬉しいです。もちろん、被写体に恵まれていることも大きいと思います。その状況にちゃんと反応できる人たち――反応というのは、そのとき着ている衣装から立っている場所、その映像のテーマ、あるいはそのときの光だったり風だったり、そのすべてに対するリアクションで。そういうことができる人たちと一緒に仕事ができるのはすごく面白いし、自分たちもそれに合わせてちゃんと反応していかなきゃいけないんですよね。その繰り返しというか。

山田智和

山田:だから、いわゆる「作家性」みたいなものって、僕は実はどうでもいいと思っていて。それよりも、その都度その都度、ベストだと思える映像を撮っていくことが大事で、それをあとから総体として見たときに、何か浮かび上がるものがあったら嬉しいなっていう感じなんですよね。

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書籍情報

『虹の刻』
『虹の刻』

2020年12月24日(木)発売
著者:村上虹郎、山田智和
価格:3,080円(税込)
発行:CCCメディアハウス

プロフィール

山田智和(やまだ ともかず)

映画監督、映像作家。東京都出身。クリエイティブチームTokyo Filmを主宰、2015年よりCAVIARに所属。2013年、『WIRED Creative Huck Award』にてグランプリ受賞、2014年、『ニューヨークフェスティバル』にて銀賞受賞。水曜日のカンパネラやサカナクションのミュージックビデオを手がけ、徐々に頭角を表していく。2018年にはヒップホップシーンのみならず幅広い世代に衝撃を与えたKID FRESINOの“Coincidence”や、YouTube再生回数が6億回以上を記録した米津玄師の“Lemon”、あいみょんの“マリーゴールド”、星野源“Same Thing (feat. Superorganism)”など、数々の話題となったミュージックビデオを演出する。また、NIKE、SUNTORY、GMOクリック証券、TOD'S、PRADA、GIVENCHY、Valentino × undercover等の広告映像や、ファッション誌のビジュアル撮影も行うなど、その活動は多岐に渡る。渋谷駅で行われたエキシビション『SHIBUYA / 森山大道 / NEXT GEN』にて「Beyond The City」を発表。伊勢丹にて初の写真展『都市の記憶』開催。

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何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

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