インタビュー

入江陽×柴田聡子 YouTubeやドキュメントに潜むアブない「真実らしさ」

入江陽×柴田聡子 YouTubeやドキュメントに潜むアブない「真実らしさ」

インタビュー・テキスト
松井友里
撮影:タケシタトモヒロ 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

入江陽と柴田聡子が、動画配信サービスに関する話題を皮切りに、縦横無尽に語りつくす連載企画「2人は配信ヘッズ」。第3回となる今回のテーマは「YouTubeとドキュメンタリー」。「リアル」を映し出したコンテンツの多いYouTubeと、現実の出来事を題材にとるドキュメンタリー。親和性の高い両者について、ドキュメンタリーとYouTubeの両方を熱心に見ている柴田と、YouTubeとNetflixの共通性に関心を持つ入江が、日頃から視聴しているYouTubeチャンネルや、いくつかのドキュメンタリー作品を通じて、その魅力を考察した。

よく聞く声に安心する。YouTube独特の魅力

―今回は「YouTubeとドキュメンタリー」をテーマにお話しできればと思います。たとえば昨年末、ニューヨークさんのYouTubeチャンネルで公開されたドキュメンタリー作品『ザ・エレクトリカルパレーズ』が話題を呼んだりしましたね。

入江:ドキュメンタリーとYouTubeの親和性って面白い視点だと思います。

柴田:YouTubeはドキュメンタリー的な要素が強いと思います。YouTuberたちは「今日は無印に行ってこれ買ってきました」とか「今日のご飯はこれです」とか、とにかく自分の行動の記録を残すんですよ。普段の生活の記録がみんなの心をくすぐるんですよね。

左から:入江陽、柴田聡子
左から:入江陽、柴田聡子

入江:そういう愛おしさや体温感に似たものを感じたのが、子どもの頃に見たテレビ版の『リング』(1995年)に出てきた、「呪いのビデオ」に映り込んでいる貞子のまばたきなんですよ。

柴田:えーっ⁉︎

入江:貞子は怖いけど、もともとは普通の生きていた人間なんだということを、そのまばたきから感じたんです。生きていることって、それだけで結構愛おしいと思うんですよ。YouTubeにはそういう息遣いを摂取できる気持ちよさがある気がして。

柴田:それは大いにあると思います。たとえばSNSで人の子育て日記を見かけたりすると、いいなって思うんですよ。

入江:誰の記録でも見ていられるような気がするんだけど、それって結局なにが見たいんでしょうね? 覗き見感がいいのかと思いきや、そうでもなさそうな気がします。

柴田:たとえば仲里依紗さんのYouTubeの動画には「女優なのにこんな感じなんだ、嬉しい安心する!」みたいなコメントがよくついていて、それはかなり多くの人がまず思うことなんでしょうけど、そのさらに深層で感じているものはあると思うんですよ。なにに対して気持ちよさを感じているんでしょうね。

柴田聡子(しばた さとこ)<br>1986年札幌市生まれ。恩師の助言により2010年より音楽活動を開始。最新作『がんばれ!メロディー』まで、5枚のオリジナルアルバムをリリースしている。また、2016年に上梓した初の詩集『さばーく』では現代詩の新人賞を受賞。雑誌『文學界』でコラムを連載しており、歌詞にとどまらない独特な言葉の力が注目を集めている。『がんばれ!メロディー』アナログ盤が5月12日発売。
柴田聡子(しばた さとこ)
1986年札幌市生まれ。恩師の助言により2010年より音楽活動を開始。最新作『がんばれ!メロディー』まで、5枚のオリジナルアルバムをリリースしている。また、2016年に上梓した初の詩集『さばーく』では現代詩の新人賞を受賞。雑誌『文學界』でコラムを連載しており、歌詞にとどまらない独特な言葉の力が注目を集めている。『がんばれ!メロディー』アナログ盤が5月12日発売。
「柴田聡子のシャムゴッド・トーク・ドリル」ひなまつり

入江:同じ人の声を、習慣的に同じ音質で聞く気持ちよさというのは要素としてありませんか?

柴田:声の要素は大きいです! 人気のあるYouTuberは、大体声がすごくよかったり、滑舌が気持ちよかったりするんです。

―習慣性という意味では更新される頻度も大事ですよね。

入江:年1だとちょっと(笑)。

―それは……巨匠ですね(笑)。

柴田:「今年も新作来た!」みたいな。YouTuberを養成する学校では、毎日投稿するのが基本だとまず教わるらしいですよ。YouTubeって、ほかの誰かがやったネタを全員がやっていいのが面白いですよね。コンテンツが完全にシェアされている感じ。

みんなと同じことをするから個性が際立つ。YouTuberの独自性

―柴田さんがよく見ているというリアクション動画も、みんながやっているからこそ、個々のリアクションの違いを味わえて、面白い気がします。

入江:リアクション動画を見るときって、自分のリアクションとの比較をするんですか?

柴田:比較というよりは、純粋に人のリアクションを見て楽しんでいるかも。アメリカの人は「ワーオ!」だけど、アジア圏では5人くらいで見て「ワア……」って言うだけとか、お国柄を感じられるのも楽しい。ファンの集まりみたいな感覚でもあるのかな。

入江:単純に、人が楽しんでいる姿を見ると、明るい気持ちになりますもんね。同じものを見ている嬉しさもありますし。

入江陽(いりえ よう)<br>1987年、東京都新宿区生まれ。現在は千葉市在住。シンガーソングライター、映画音楽家、文筆家、プロデューサー、他。瀬々敬久監督『明日の食卓』、今泉力哉監督『街の上で』(どちらも2021年春公開予定)などで音楽を担当。『装苑』で「はいしん狂日記」、『ミュージック・マガジン』で「ふたりのプレイリスト」という連載を持つ。最新曲は“週末[202009]”。
入江陽(いりえ よう)
1987年、東京都新宿区生まれ。現在は千葉市在住。シンガーソングライター、映画音楽家、文筆家、プロデューサー、他。瀬々敬久監督『明日の食卓』、今泉力哉監督『街の上で』(どちらも2021年春公開予定)などで音楽を担当。『装苑』で「はいしん狂日記」、『ミュージック・マガジン』で「ふたりのプレイリスト」という連載を持つ。最新曲は“週末[202009]”。

柴田:入江さんがよく見ているのは『ざっくりYouTube』ですか?

入江:もともとテレビ番組から始まっているんだけど、おじさんたちがゆるく喋っている様子に癒されるんですよ。話術も巧みだし。でも、好きだけどYouTubeっぽくないなとは思っていて。面白さの割にチャンネル登録数が伸びていないことが、コメント欄でもずっといじられてるんですよ(笑)。テレビタレントが面白くても、YouTubeではそれほど刺さらないんですよね。

千原ジュニア・小籔千豊・フットボールアワーによるチャンネル「ざっくりYouTube」

―それってどうしてなんでしょうね。

入江:なんでかなあ。企画がしっかりしていて、きちんとオチがあるのがテレビっぽいんですよね。YouTubeでは、もっと適当にやってもらったほうが、見ている側としてもリラックスできるような気がします。

柴田:テレビの延長線上にあるような動画はいまひとつだと、いろんなトップYouTuberたちもよく話しています。一方で仲里依紗さんが参入してきたときには、そんなYouTuberたちが「仲里依紗さんはYouTubeをわかってる」「勘がいいよね」という話をしていて。

入江:仲里依紗さんの動画が好きとのことですが、どんなときに見ているんですか?

柴田:ギャルの話を聞きたいときですね。ギャルのみなさんは、ポジティブなんですよ。

入江:友達との会話を楽しむ感覚に近いんですかね。

柴田:そうかもしれない。最近友達にも気楽に会えないし、コロナによって、ギャルのチャンネルを見る頻度が増えました。仲さんはYouTubeをやりたくて始めた人だから、爆買いとか、Uber Eatsを頼むとか、いかにもYouTuberらしいことをやるんですよ。実は、最初はあまり頻繁には見ていなかったんだけど、あるときから一気に面白くなったのは、YouTubeらしいことをやってからな気がする。

仲里依紗によるチャンネル「仲里依紗です。」

入江:みんなと同じことをするからこそ、それぞれの個性が浮き立つのかな。

柴田:見る側にYouTubeコンテンツを嗜む能力がついているから、そのほうが消費しやすいのかもしれないですね。

入江:こちらもよく見ているという、関根りささんはどんな方なんですか?

柴田:日本の女性YouTuberの草分け的な存在で、2日に1回くらい動画をあげていて、私生活のほぼすべてが動画になっているような方なんです。最近ほかのYouTuberの方とご結婚されて、カップルチャンネルも始めたんですよ。……私YouTubeを見過ぎですね(笑)。

関根りさによるチャンネル「SekineRisa」

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連載情報

『2人は配信ヘッズ』

シンガーソングライターの入江陽と柴田聡子が、自身の気になる配信動画サービスの作品を語り合う。話題が逸れたり、膨らんだりするのも自由きままな、読むラジオのような放談企画。

プロフィール

入江陽(いりえ よう)

1987年、東京都新宿区生まれ。現在は千葉市在住。シンガーソングライター、映画音楽家、文筆家、プロデューサー、他。今泉力哉監督『街の上で』(2021年春公開予定)では音楽を担当。『装苑』で「はいしん狂日記」、『ミュージック・マガジン』で「ふたりのプレイリスト」という連載を持つ。最新曲は“週末[202009]”。

柴田聡子(しばた さとこ)

1986年札幌市生まれ。恩師の助言により2010年より音楽活動を開始。最新作『がんばれ!メロディー』まで、5枚のオリジナルアルバムをリリースしている。また、2016年に上梓した初の詩集『さばーく』では現代詩の新人賞を受賞。雑誌『文學界』でコラムを連載しており、歌詞にとどまらない独特な言葉の力が注目を集めている。2017年にはNHKのドラマ『許さないという暴力について考えろ』に主人公の姉役として出演するなど、その表現は形態を選ばない。2020年7月3日、4曲入りEP『スロー・イン』をリリース。2021年5月12日、『がんばれ!メロディー』アナログ盤の発売が決定している。

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