
Netflix、Amazon Prime Video、U-NEXT、Hulu……などなど、いまやすっかり浸透した動画配信サービス。外出を自粛する雰囲気が続いた2020年は特に、視聴時間が増えた人も多いのではないだろうか。この連載企画「2人は配信ヘッズ」では、そんな動画配信サービスを愛好する入江陽と柴田聡子の2人が、最近鑑賞した配信作品について、ときに脱線しながら、毎回気ままに語りつくしていく。
初回となる今回は、「2020年に2人が観たお気に入りの作品」をテーマに、『クイーンズ・ギャンビット』『バチェロレッテ・ジャパン』『コブラ会』など2020年の話題作や、「海外ドラマ、2話目以降から面白い現象」などについて、たっぷり話しあった。地元のレンタルビデオ店の棚に貼られたお店の手書きPOPが、その日の1本の手がかりになっていたように、2人の熱のこもった言葉から、あなたがまだ見ぬ1作に出会うことを願って。
人間が受け止められる供給量を超えている? 2人の配信との向き合い方
―2019年の『NEWTOWN』(CINRA.NET主催のカルチャーフェス)の際に、楽屋で配信作品の話題で非常に盛り上がっていたことがきっかけで、柴田さんとともに配信作品について語り合う連載をぜひやりたいという入江さんたっての希望で始まった企画です。
柴田:うれしいです! あれは楽しいひとときでした。
入江:こちらこそ。出番直前なのにかなりギリギリまで話していましたよね。あのとき柴田さんがおすすめしてくれた『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』は、大好きな作品になりました。

入江陽(いりえ よう)
1987年、東京都新宿区生まれ。現在は千葉市在住。シンガーソングライター、映画音楽家、文筆家、プロデューサー、他。今泉力哉監督『街の上で』(2021年春公開予定)では音楽を担当。『装苑』で「はいしん狂日記」、『ミュージック・マガジン』で「ふたりのプレイリスト」という連載を持つ。
柴田:ギリシャ神話くらい登場人物が多いからスルーしがちなのに、見てくれてうれしかった。
―日々かなり配信作品を見ていそうですね。
入江:続きもののドラマとかは、はまるとシーズン3くらいまで2、3日で一気に見ちゃったりします。
柴田:見終わりたくなくて、もったいない気持ちになったりしますよね。

柴田聡子(しばた さとこ)
1986年札幌市生まれ。恩師の助言により2010年より音楽活動を開始。最新作『がんばれ!メロディー』まで、5枚のオリジナルアルバムをリリースしている。3月24日、『がんばれ!メロディー』が2LP、45rpm、Wジャケットの豪華仕様で発売決定。
入江:シーズン7くらいまであると、なかなか終わらないからほっとします(笑)。日常の中に、面白いことはほかにもいろいろあるはずなのに、情報量が多くてドラマに持っていかれちゃうんですよね。ほかの娯楽より濃度が高いものが大量に供給され続けるこの状況は、人間が受け止められる量をもはや超えている気がします。
柴田:見ている時間よりも、なにを見るか悩む時間のほうが長いって聞いたことがあります。
入江:うわ、怖い。そんなことのために生まれてきたはずじゃないのに……。ちょっとSFっぽい話ですね。
―時間を無駄にしたくないという気持ちに端を発しているはずなのに(笑)。ちなみにどうやって見る作品を探していますか?
入江:お節介なことに、自分に向けたおすすめの作品が表示されるじゃないですか。自分が消費されているような感じもしますけど、そこからサムネイルに流されて見ることが多いですね。自分の場合、ちょっとひねくれた気持ちもあって、あまり知られていない作品を掘ったりもします。例えば、Netflixオリジナルの『ジプシー』というドラマは、ナオミ・ワッツみたいに有名な人が出ているのに、あまり話題になっていないんですよ。
一方でみんなが「いい」と言っているものは、いったん見なくていいかなと思ってスルーしつつ、あとから見ると、だいたいすごく面白いんですけどね(笑)。『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』もそのパターンでした。
『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』予告編裕福な家庭で育ったお嬢様の主人公パイパー(テイラー・シリング)が、10年前に犯してしまった罪のため刑務所に収監される。不自由な刑務所の暮らしになんとか順応しようと努力する姿をコミカルに描く。
柴田:音楽と一緒ですね。みんなが知らないものをディグりたい気持ちもありつつ、大ヒット曲は聴いてみたらやっぱりめちゃくちゃよかったり。
入江:あと、配信サービスの公式YouTubeチャンネルを見ると、いま運営側が推している作品がわかるので結構参考になりますよ。
柴田:へえ、それいいですね!
連載情報
- 『2人は配信ヘッズ』
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シンガーソングライターの入江陽と柴田聡子が、自身の気になる配信動画サービスの作品を語り合う。話題が逸れたり、膨らんだりするのも自由きままな、読むラジオのような放談企画。
プロフィール
- 入江陽(いりえ よう)
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1987年、東京都新宿区生まれ。現在は千葉市在住。シンガーソングライター、映画音楽家、文筆家、プロデューサー、他。今泉力哉監督『街の上で』(2021年春公開予定)では音楽を担当。『装苑』で「はいしん狂日記」、『ミュージック・マガジン』で「ふたりのプレイリスト」という連載を持つ。最新曲は“週末[202009]”。
- 柴田聡子(しばた さとこ)
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1986年札幌市生まれ。恩師の助言により2010年より音楽活動を開始。最新作『がんばれ!メロディー』まで、5枚のオリジナルアルバムをリリースしている。また、2016年に上梓した初の詩集『さばーく』では現代詩の新人賞を受賞。雑誌『文學界』でコラムを連載しており、歌詞にとどまらない独特な言葉の力が注目を集めている。2017年にはNHKのドラマ『許さないという暴力について考えろ』に主人公の姉役として出演するなど、その表現は形態を選ばない。2020年7月3日、4曲入りEP『スロー・イン』をリリース。2021年3月24日、『がんばれ!メロディー』アナログ盤の発売が決定している。