特集 PR

広告に冷めた時代のアプローチ。Hondaは「フラット」を提示する

広告に冷めた時代のアプローチ。Hondaは「フラット」を提示する

Honda『Life Sound Player』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:鈴木渉 編集:柏井万作(CINRA.NET編集部)

「モノ」ではなく「ココロ」。今の視点で取り組んだ新しい挑戦

―「フラット」をコンセプトに掲げた上で、実際のクリエイティブについてはどのようにプランを立てていったのでしょうか? 商品が本来の機能としては使われないというのもポイントですよね。

水谷:最初はHondaの商品のことがずっと頭にあって、「商品を使って何をするか?」と考えていたんです。ただ、ターゲットである「今どきを生きる人たち」は商品と接点のない人が多いので、ここは一旦振り切って、モノ軸ではなく、ココロ軸で考えてみようと思ったんです。

水谷正紘

―「ココロ軸」というのは、どんな考え方なのでしょうか?

水谷:人間の欲求は5段階のピラミッドで構成されているとする「マズローの法則」(人の欲求には下から順に、「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」があり、低次の欲求が満たされると、一つ上の欲求を持つようになるという心理学理論)を基に考えたんですけど、最近では5段階のさらに上に「自己超越」の欲求があるとされています。「自己実現」はもはや当たり前で、もっと社会全体の喜びに対して、自分の喜びを見出すようになっている。しかも、このご時世、国や世代関係なく生理的欲求や安全の欲求も感じていたりして、欲求や喜びが段階的でなく複雑で多面的になっているんじゃないかという仮説に至りました。それはもう、モノの喜びだけでは捉えられないと考えて、「ココロ軸」をHondaさんに提案して、承認いただきました。

Honda担当者:モノ軸から人を幸せにすることに関しては会社としてプライドを持っていますし、それなりのアプローチというのはこれまでにもさんざんやってきました。「モノづくり」でなく「コトづくり」というのも当たり前。そこに、ココロ軸という今までと違うアプローチを出してきてくれました。しかも、それは我々のようなメーカーとしては苦手としているところだという気付きがあって、今回一緒にやってみることにしたんです。

:今回のプロジェクトのメンバーの中で私が一番年下なんですけど、実際に自分の周りの人たちって、物質への興味が少なくなってきてるんですよね。最近は「モノからコト」とか「体験 / エクスペリエンスの重要性」という話がよく言われてますけど、体感としてもそう感じていたので、ココロ軸をHondaさんのようなメーカーが取り組まれるのは、世の中に対するアプローチとしてもすごく面白いと思いました。今までHondaさんのプロダクトに触れる機会がなかった人にも、届くんじゃないかなって。

郭春佳(かく はるか)<br>伊藤忠インタラクティブ株式会社 Art Director / Designer。1995年、東京生まれ。多摩美術大学にて、プロダクトデザインを専攻。インテリアメーカーのWebサイトデザイン、大手機械メーカーや総合大学のWebコミュニケーション戦略策定・クリエイティブ監修の他、大手シンクタンクとの合同事業コンソーシアム・実証実験など多くの事業創出を牽引。最近は『呪術廻戦』にはまっていて、人生で初めてマンガの単行本を大人買いした。
郭春佳(かく はるか)
伊藤忠インタラクティブ株式会社 Art Director / Designer。1995年、東京生まれ。多摩美術大学にて、プロダクトデザインを専攻。インテリアメーカーのWebサイトデザイン、大手機械メーカーや総合大学のWebコミュニケーション戦略策定・クリエイティブ監修の他、大手シンクタンクとの合同事業コンソーシアム・実証実験など多くの事業創出を牽引。最近は『呪術廻戦』にはまっていて、人生で初めてマンガの単行本を大人買いした。

水谷:もともとコンペの段階から若手中心で取り組んでいて、我々の感覚をぶつけてみようと思ったんです。それに対して「任せてみよう」と言ってくださったのは、Hondaさんの度量の大きさと言いますか。

Honda担当者:我々としても分からない部分に賭けているので、未だにドキドキはしてるんですけど、ブランディングは正解がないじゃないですか? 今回は我々にとっても気付きになる議論ができる相手だと思いました。例えば、郭さんは「私はiPhoneには興味がないけど、Apple Storeが好きだからiPhoneを使ってます」とおっしゃっていて、そういうところに食いついたり。

―まさにApple Storeという「体験の重要性」ですね。モノを扱うHondaからすると、その視点は意外というか。

Honda担当者:いや、今はモノと同様に体験が大事という事は知っていましたし、施策としても重要視してきました。ただ、知識で知っているのと、実際に「Apple Storeの店員さんが好きだから」という当人と話をすることは、全く違いますよね。そのココロをいろんな角度から聞けるわけですから。結論でなく、話の途中で気付きがあったり、「その観点でHondaを見たらどう見えるの?」と、自分たちが知らない自分たちの魅力を探ったりもできて。

:Hondaさんとお話をする中で、自分が当たり前だと思っていたことに対して、「そうなの?」と問い返されることが多かったんです。そこで「今どきの人たちとは?」ということを掘り下げて議論できたのはすごくいい経験でした。それぞれが考える幸せの形が全然違ったのも、面白かったですね。

左から:Honda担当者、水谷正紘、郭春佳

―「ジェネレーションギャップ」の一言で済ませるのではなく、その背景にはどんな社会の変化があるのかを掘り下げて考えることが重要だったということですね。

水谷:ブランディングというと、「社会と企業が交わる接点を作っていく」という考え方が基本だと思うんですけど、今回のプロジェクトを通じて、必ずしも世の中全体を見なくてもいいのではないかという気付きもありました。1つの物事に対して、全員が共感 / 共鳴することはありえないし、今日と来週で感じ方が違ったりもするじゃないですか? Appleの話でも、Apple Storeに共感する人、iPhoneに共感する人もいれば、Appleのどんなコミュニケーションにも反応しない人もいて、それが当たり前だし、それでいいわけですよね。だったら、広く受け入れられるものを目指すよりも、共感の深度をより深めていくことの方が大事なんじゃないかと思ったんです。

Page 2
前へ 次へ

ウェブサイト情報

『Life Sound Player』
『Life Sound Player』

日常は、音であふれている。暮らしに少しだけ耳のピントを合わせてみたら、どんなことが感じられるだろう。
暮らしの音とHondaの音を楽しむムービーとともに、実際に音を自分なりに組み合わせて遊んでいただけます。

プロフィール

水谷正紘(みずたに まさひろ)

伊藤忠インタラクティブ株式会社 Creative Director / Copywriter。1984年、長崎生まれ。東京大学 機械情報工学科卒業。大手シンクタンクで金融系のシステム開発に携わる中、ふと頭に降ってわいた「コピーライターってなんか面白そう」という直感を信じ、2015年より現職。ウェディングサービスのブランドステートメント開発、大手精密機器メーカーのWebプロモーション企画、製薬関連企業のインナーブランディング、オンライン書店企業の企業理念策定など、コトバを使ったコミュニケーションデザインの実績多数。

郭春佳(かく はるか)

伊藤忠インタラクティブ株式会社 Art Director / Designer。1995年、東京生まれ。多摩美術大学にて、プロダクトデザインを専攻。インテリアメーカーのWebサイトデザイン、大手機械メーカーや総合大学のWebコミュニケーション戦略策定・クリエイティブ監修の他、大手シンクタンクとの合同事業コンソーシアム・実証実験など多くの事業創出を牽引。最近は『呪術廻戦』にはまっていて、人生で初めてマンガの単行本を大人買いした。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. cero高城晶平×折坂悠太 10年代のインディ音楽の萌芽と開花の記録 1

    cero高城晶平×折坂悠太 10年代のインディ音楽の萌芽と開花の記録

  2. 『鬼滅の刃』オリジナルアイテム第4弾 全13キャラクターのアウター&傘 2

    『鬼滅の刃』オリジナルアイテム第4弾 全13キャラクターのアウター&傘

  3. 広告に冷めた時代のアプローチ。Hondaは「フラット」を提示する 3

    広告に冷めた時代のアプローチ。Hondaは「フラット」を提示する

  4. 大滝詠一『A LONG VACATION』40周年記念盤がオリコンデイリー1位獲得 4

    大滝詠一『A LONG VACATION』40周年記念盤がオリコンデイリー1位獲得

  5. 『ノマドランド』が映すアメリカの姿。過酷な状況とノマドの精神 5

    『ノマドランド』が映すアメリカの姿。過酷な状況とノマドの精神

  6. 『森、道、市場』第1弾でアジカン、cero、折坂悠太、カネコアヤノら 6

    『森、道、市場』第1弾でアジカン、cero、折坂悠太、カネコアヤノら

  7. 中国Z世代を虜にする漢服ブーム。愛好者やデザイナーが語る 7

    中国Z世代を虜にする漢服ブーム。愛好者やデザイナーが語る

  8. 『そして、バトンは渡された』映画化 永野芽郁、田中圭、石原さとみ共演 8

    『そして、バトンは渡された』映画化 永野芽郁、田中圭、石原さとみ共演

  9. 松坂桃李、菅田将暉、賀来賢人が共演 花王「アタックZERO」新CM放送 9

    松坂桃李、菅田将暉、賀来賢人が共演 花王「アタックZERO」新CM放送

  10. GU×UNDERCOVERが初コラボ キーワードは「FREEDOM/NOISE」 10

    GU×UNDERCOVERが初コラボ キーワードは「FREEDOM/NOISE」