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塚原悠也×渡邉朋也 アーカイブは100年後の創造性を刺激する

塚原悠也×渡邉朋也 アーカイブは100年後の創造性を刺激する

EPAD
インタビュー・テキスト
島貫泰介
編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

これまで2回にわたって掲載してきたEPAD(緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業)に関するインタビュー(関連記事:「相馬千秋×石倉敏明 いま芸術に必要な「集まる」ことの新しい定義」「岡室美奈子に聞く、危機的状況の舞台芸術を再起動するための道標」)。今回はアーティストの目から見たアーカイブについてお届けしたい。

登場いただくのは、格闘技を思わせる接触的なパフォーマンスやサバイバルな環境での経験性を作品化することで知られるcontact Gonzoのメンバー塚原悠也と、インターネットの文化や事象を作品化するだけでなく、その知見を生かして、現在はYCAM(山口情報芸術センター)で記録やアーカイブに関わる渡邉朋也の2人。

独創的な視点で、アーカイブとその現在的発展に深く関わるインターネットカルチャーに触れてきたアーティストたちは、いかなるアーカイブ像を見せてくれるだろうか?

(メイン画像:『YCAM performance lounge #5 contact Gonzoパフォーマンス』contact Gonzo+梅田哲也 / 撮影:丸尾隆一(YCAM)、写真提供:山口情報芸術センター[YCAM])

塚原悠也(つかはら ゆうや)<br>contact Gonzo、メンバー。KYOTO EXPERIMENT共同ディレクター。関西学院大学文学部美学専攻修士課程修了後、NPO法人ダンスボックスのボランティア、運営スタッフを経て、アーティストとして2006年パフォーマンス集団contact Gonzoの活動を開始。2020年、演劇作品『プラータナー:憑依のポートレート』におけるセノグラフィと振付に対し「読売演劇大賞」スタッフ賞を受賞。同年より京都市立芸術大学彫刻科非常勤講師。 / 撮影:志賀理江子
塚原悠也(つかはら ゆうや)
contact Gonzo、メンバー。KYOTO EXPERIMENT共同ディレクター。関西学院大学文学部美学専攻修士課程修了後、NPO法人ダンスボックスのボランティア、運営スタッフを経て、アーティストとして2006年パフォーマンス集団contact Gonzoの活動を開始。2020年、演劇作品『プラータナー:憑依のポートレート』におけるセノグラフィと振付に対し「読売演劇大賞」スタッフ賞を受賞。同年より京都市立芸術大学彫刻科非常勤講師。 / 撮影:志賀理江子
渡邉朋也(わたなべ ともや)<br>1984年生まれ。東京都出身。2010年8月、YCAMのスタッフに着任。展覧会や公演など主催事業全般のドキュメンテーションのほか、「YCAM Re-Marks」などのプラットフォーム整備、各種関連ウェブサイトのプロデュース / ディレクションを担当。母の故郷でもあるここ本州最先端の地・山口で、山口らしいカッティングエッジなドキュメンテーションや情報発信のあり方について模索している。 / ©︎Gottingham
渡邉朋也(わたなべ ともや)
1984年生まれ。東京都出身。2010年8月、YCAMのスタッフに着任。展覧会や公演など主催事業全般のドキュメンテーションのほか、「YCAM Re-Marks」などのプラットフォーム整備、各種関連ウェブサイトのプロデュース/ディレクションを担当。母の故郷でもあるここ本州最先端の地・山口で、山口らしいカッティングエッジなドキュメンテーションや情報発信のあり方について模索している。 / ©︎Gottingham

アーティストにとっての記録を残す意識、技術者にとってのアーカイブの捉え方の現状

―今日は、まず「アーティストはアーカイブをどのように捉えているか?」についてお聞きしたいと思っています。contact Gonzo(以下、Gonzo)の場合はいかがでしょう?

塚原:僕らは2006年に活動を始めたんですけど、YouTubeが始まったのがその前年なんですよね。タイミングが合ったこともあって、自分たちのパフォーマンスや稽古の記録をそこにアップして遊んでいた、というのがGonzoなりのアーカイブの始まりな気がしてます。

僕は大学院に通ってたあたりから大阪の「DANCEBOX」(現在は神戸新長田に移転)という劇場に関わっていて、いろんな上演記録やアーティストの資料を保管している現場にいました。映像資料に関して言えば、大量のminiDVとかVHSが手付かずのまま大量にたまっている状態で、それをどうするかっていうのは頻繁に議題に上がってたんです。だから自分でもアーカイブをきちんと整備する必要は、かなり問題意識としてありました。

―そうすると、当初からGonzoはアーカイブを意識しながら活動していたんですね。

塚原:リハーサルとか公園で遊んでいるような映像も意識的に撮影して残していました。制作のために自分たちで見るためでもあるし、将来に向けて残して他の人に見てもらうことも意識してます。

ヨーロッパのフェスティバルだとオフィシャルでは記録映像を撮らないものもけっこうあるんですね。でもやりっぱなしではもったいないから、記録班がいたとしても自前で小さな三脚を立ててGonzo側でも記録は残しておく、っていうのはいまもずっとやってます。

で、撮ったものは全部Vimeoに放り込んでおいて、いつでも見られるようにしておく。記録映像のマスターはメンバーの松見(拓也)くんが管理していて、データがいっぱいになると「ハードディスク買ってください」と言ってくれる。

『contact Gonzo at Kinosai / Seika Univ. 2012』 / Vimeoで見られるcontact Gonzoの一番古い映像
『contact Gonzo at Kinosai / Seika Univ. 2012』 / Vimeoで見られるcontact Gonzoの一番古い映像(Vimeoで見る

塚原:そう言う感じのシステムですね。そうは言っても、みんなで昔の映像見返して「お前若いなあ~」なんて言って笑いあうためのものでもありますけど(笑)。

渡邉:自分の作家活動からアーカイブについて言うと、インターネットは保管のための場所というだけじゃなく、作品の素材や主題にもなるんです。例えば作ったものを比較的オープンなかたちで共有可能にしておいて、それをどこかの誰かが再利用する。そういうインターネットだから可能になるプロセスも、僕は自分の作品の要素として定義しています。

―例えばどんな作品ですか?

渡邉:例えば、食事の時に使ったわりばしの、その片方がなくなってしまう。そのなくなった部分を3Dプリンターで補填する作品があります。

これはただ直すだけではなくて、なくなったわりばしの3DデータをThingiverseっていうオンラインのプラットフォームで誰でも利用可能なように公開し続けてます。いつか同じ形状にわりばしが割られ、それを補填する必要がある人が現れた時に備えているわけです。インターネット固有のものすごく長いタイムスケールや、事実上無限にある容量、みたいなところに個人的に魅力を感じて、そんなことばっかりやってます(笑)。

渡邉朋也『荒んだ食卓を極力直そう』 2015年
渡邉朋也『荒んだ食卓を極力直そう』 2015年

―渡邉さんは、作家活動と並行してYCAM(山口情報芸術センター)で記録やアーカイブ、作品修復に関わる仕事をしていますよね。技術者目線ではアーカイブをどう考えていますか?

渡邉:YCAMでは、展覧会や公演などのイベントの模様だったり、その制作プロセスを記録し、アクセス可能な状態に置くことは重要な作業として位置付けています。2010年ごろから記録映像は従来のminiDVからファイルベースに置き換わったので、こうした作業はだいぶ楽になりましたが、それ以前のminiDVは塚原さんがおっしゃったように、YCAMにも大量に残されていまして、デジタイズ(アナログからデジタルへの変換)するのは一苦労でした。

もちろんアーティストによっては制作プロセスみたいなものは公開したくないという人もいますから非公開のものもありますが、少なくとも記録映像や記録写真は全てデジタル化してクラウドに保管しておくそして将来必要になったときにパッと出せるようにしておくための整備をずっとやっている感じです。近年は、そういったアーカイブ整備も比較的低コストでできるので、かなりやりやすくなっていると思います。

文化庁より令和2年度戦略的芸術文化創造推進事業「文化芸術収益力強化事業」として採択された「緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業(EPAD)」。舞台芸術等を支援、収益強化に寄与することを目的に設立された
文化庁より令和2年度戦略的芸術文化創造推進事業「文化芸術収益力強化事業」として採択された「緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業(EPAD)」。舞台芸術等を支援、収益強化に寄与することを目的に設立された(サイトで見る
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緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業(EPAD)
緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業(EPAD)

文化庁より令和2年度戦略的芸術文化創造推進事業「文化芸術収益力強化事業」として採択された「緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業」。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い困難に陥っている舞台芸術等を支援、収益強化に寄与することを目的に設置され、新旧の公演映像や舞台芸術資料などの収集、配信整備、権利処理のサポートを行っている。

プロフィール

塚原悠也(つかはら ゆうや)

KYOTO EXPERIMENT共同ディレクター。関西学院大学文学部美学専攻修士課程修了後、NPO法人ダンスボックスのボランティア、運営スタッフを経て、アーティストとして2006年パフォーマンス集団contact Gonzoの活動を開始。2020年、演劇作品『プラータナー:憑依のポートレート』におけるセノグラフィと振付に対し「読売演劇大賞」スタッフ賞を受賞。同年より京都市立芸術大学彫刻科非常勤講師。

渡邉朋也(わたなべ ともや)

1984年生まれ。東京都出身。2010年8月、YCAMのスタッフに着任。展覧会や公演など主催事業全般のドキュメンテーションのほか、YCAMが発表した作品の再制作のプロデュースを手がける。主な著書に『SEIKO MIKAMI-三上晴子 記憶と記録』(2019年/NTT出版/馬定延との共編著)がある。

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