特集 PR

ボカロ文化の歴史を次世代に繋ぐ試み 『プロジェクトセカイ』鼎談

ボカロ文化の歴史を次世代に繋ぐ試み 『プロジェクトセカイ』鼎談

『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』
インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:前田立 編集:久野剛士

ボーカロイド文化に、新たな広がりが生まれている。YOASOBIを筆頭にボカロP出身のクリエイターが音楽シーンで目覚ましい活躍を見せていることを知る人は多いと思うが、その一方で、スマートフォン向けゲームの世界でも大きなムーブメントが生まれている。

それが、2020年9月30日のリリースから約半年でユーザー数300万人を突破したゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下『プロジェクトセカイ』)だ。リズム&アドベンチャーゲームという体裁で、ボーカロイド楽曲をプレイできるリズムゲームのパートをメインにしつつ、初音ミクと出会い、音楽をつむいでいくオリジナルキャラクターである少年少女たちの青春物語を描くアドベンチャーゲームとしても楽しめるようになっている。

ゲームにはDECO*27やピノキオピー、Mitchie Mなどボカロシーンで活躍するクリエイターたちがオリジナル曲を書き下ろし、既存のボーカロイド楽曲も多数収録。そして、この『プロジェクトセカイ』の音楽制作において重要な役割を果たしているのが、これまでボカロシーンにはそれほど関わってこなかったシンガーソングライターの入江陽だ。

今回は『プロジェクトセカイ』のプロデューサーであるColorful Paletteの近藤裕一郎、「初音ミク」の総合プロデューサーでゲームの開発にも細かく携わったクリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉、そして入江陽の3名に、『プロジェクトセカイ』のあらましから、ボカロシーンの今とこの先について、語り合ってもらった。

ヒットコンテンツとインディーシーンが交差する、ボカロ界のスリリングさ

―まずは今の音楽シーンと『プロジェクトセカイ』についてのお話から聞かせてください。去年から今年にかけては、YOASOBIやAdoのヒットもあり、日本の音楽シーン全体の中でボーカロイドへの注目が大きくなっているという状況があると思います。佐々木さんは、そのあたりの動きについてはどんなふうに感じていますか?

佐々木:昨今盛り上がってるインターネット発のミュージックシーンは、お隣さんみたいなところなんですよね。たとえば“うっせぇわ”を作曲したsyudouさんには、あの曲が盛り上がる前から『プロジェクトセカイ』で書き下ろしをお願いしています。

Adoさんがsyudouさんの作った曲を歌ったり、YOASOBIのikuraさんがAyaseさんの作った曲を歌われているというのは、まさに『プロセカ』が参照した「ボカロ以降の歌の世界」であり、ボカロ曲の共感力の高さと人間の歌表現に自然な繋がりがある。そういう調和は『プロジェクトセカイ』の「一緒に歌おう」というコンセプトにも繋がっていると思います。

左から:近藤裕一郎、佐々木渉、入江陽
左から:近藤裕一郎、佐々木渉、入江陽
『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』
リズム&アドベンチャーゲーム。物語の舞台は「現代のシブヤ」と、想いから生まれた不思議な場所「セカイ」。ボーカロイド楽曲のジャンルを「バンド(Leo/need)」「アイドル(MORE MORE JUMP!)」「ストリート(Vivid BAD SQUAD)」「ミュージカル(ワンダーランズ×ショウタイム)」「アンダーグラウンド(25時、ナイトコードで。)」の5つに分類しており、それぞれの物語を紡ぐ5つのオリジナルユニットが展開される。

―『プロジェクトセカイ』のシナリオには、「25時、ナイトコードで。」というユニットのストーリーもありますよね。ここで描かれている世界観は、まさに2020年にYOASOBI、ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。のファンが「夜好性」というキーワードで可視化された現象と繋がるものだったと思うんです。これは今のボーカロイドシーンの中でなにが起こっているかをリアルに捉えているからこそのポイントだったと思うんですが。そのあたりはどうでしょう?

近藤:まさに「25時、ナイトコードで。」というユニットの世界観や設定、ストーリーラインというのは、若い子たちが共感できるようにと生まれているので。そこのシンクロはあると思います。

近藤裕一郎(こんどう ゆういちろう)<br>ゲーム会社にてスマートフォンゲームのプロデューサー等を担当後、Craft Eggに入社し、取締役に。『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』のプロデューサーとして携わる。Colorful Palette設立とともに、代表取締役社長に。
近藤裕一郎(こんどう ゆういちろう)
ゲーム会社にてスマートフォンゲームのプロデューサー等を担当後、Craft Eggに入社し、取締役に。『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』のプロデューサーとして携わる。Colorful Palette設立とともに、代表取締役社長に。
25時、ナイトコードで。×初音ミク“携帯恋話”

佐々木:近藤さんと一緒にシナリオやコンセプトを考えている若いスタッフの方々が、「ここが肝だ」というポイントを直感的に選ばれていたのが大きかったと思います。逆に言うと、それをやらないと今までのミクの、色々なものが入っている幕の内弁当感と似通ってしまう。『プロセカ』で言うと「25時、ナイトコードで。」はまさにそうですね。あとは「Vivid BAD SQUAD」とか「ワンダーランズ×ショウタイム」とか、ひねりを加えたユニットが若い層に伝播していて、王道のアイドルポップスやロックは、旧来の初音ミク側の歴史のほうに伸びている。結果的にバランスが取れていたと思います。

佐々木渉(ささき わたる)<br>1979年、札幌市生まれ。クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、音声チームマネージャー。「初音ミク」歌声合成関連プロジェクトチーフプロデューサー。2005年、クリプトン・フューチャー・メディアに入社し,2007年、歌声合成ソフトウェア「初音ミク」の企画・開発を担当し大ヒット。その後,同社のVOCALOID製品や関連企画のプロデュースディレクションを手がける。
佐々木渉(ささき わたる)
1979年、札幌市生まれ。クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、音声チームマネージャー。「初音ミク」歌声合成関連プロジェクトチーフプロデューサー。2005年、クリプトン・フューチャー・メディアに入社し,2007年、歌声合成ソフトウェア「初音ミク」の企画・開発を担当し大ヒット。その後,同社のVOCALOID製品や関連企画のプロデュースディレクションを手がける。
Vivid BAD SQUAD×初音ミク“RAD DOGS”

ワンダーランズ×ショウタイム×初音ミク“ミラクルペイント”

―入江さんとしては、去年以降のそうした動きをどう見ていましたか?

入江:さっき佐々木さんがおっしゃっていた「お隣さん」という言葉が面白いなと感じたんですけど、僕のポジションはまた違う「お隣さん」だと思うんです。もともとは異なる音楽シーンにいるんですけど、僕の周りにいる音楽的につながっている仲間たちが、偶然ボカロシーンに関わってるんですよ。たとえば『プロジェクトセカイ』で制作した楽曲の演奏メンバーにも加わっていただいたGeorge(MOP of HEAD)さんは、YOASOBIの初ライブでマニピュレーターを担当されていたりする。思わぬところが繋がってゆく面白さがありました。

音楽の歴史に関する本を読んでいると「この人とこの人が実は一緒にやっていた」みたいな話が出てきますよね。ヒットしているものとアンダーグラウンドシーンというカテゴリーに分けるのも、もう意味はないかもしれませんが、ボカロとの繋がりが一見なさそうな人が、ボカロ関連のコンテンツに密接に関わっている。それを『プロジェクトセカイ』の制作に関わる中で、今まさに近くで体感している。そこにはびっくりしています。

入江陽(いりえ よう)<br>1987年、東京都新宿区生まれ。現在は千葉市在住。シンガーソングライター、映画音楽家、文筆家、プロデューサー、他。今泉力哉監督『街の上で』瀬々敬久監督『明日の食卓』(2021年春公開予定)では音楽を担当。『装苑』で「はいしん狂日記」、『ミュージック・マガジン』で「ふたりのプレイリスト」という連載を持つ。
入江陽(いりえ よう)
1987年、東京都新宿区生まれ。現在は千葉市在住。シンガーソングライター、映画音楽家、文筆家、プロデューサー、他。今泉力哉監督『街の上で』瀬々敬久監督『明日の食卓』(2021年春公開予定)では音楽を担当。『装苑』で「はいしん狂日記」、『ミュージック・マガジン』で「ふたりのプレイリスト」という連載を持つ。

佐々木:入江さんにお願いする中でも、たとえば「25時、ナイトコードで。」の特色に合わせてBEN FROST風のダブっぽい手法だったり、ノイズっぽい部分を耳障りじゃないレベルで引き上げていくような感じをお願いしたり、今までのリズムゲームでは余り使われないスパイスを加えることで差別化しようと思っていました。そういう風にいろんな要素を持ち寄って掛け合わせたのはよかったと思います。

―『プロジェクトセカイ』というゲームは若い世代にとってのボーカロイドの入り口になってほしいという思いで始まっているようですが、その奥を紐解いていくと、豊かな音楽カルチャーが広がっている、ということですね。

入江:まさにそうです。あと、近藤さんが元々ボカロPをされていて、そういう視点をお持ちだというのも大きいと思います。佐々木さんも含めて、根底の美意識というか、どういったものが世にあってほしいかというスタンスの部分が、とてもピュアなんです。それを具体的な判断の一つひとつを通して感じるんですよね。

Page 1
次へ

リリース情報

『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』
『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』

セガ×Colorful Paletteが贈る、iOS / Android向けリズム&アドベンチャーゲーム。物語の舞台は「現代のシブヤ」と、想いから生まれた不思議な場所「セカイ」。さまざまな想いを抱えた20人の少年少女たちが、ある日セカイに迷い込み、 初音ミクたちと一緒に物語と音楽を紡ぐ。リズムゲームは、おなじみの定番曲から最新の人気曲、さらに書き下ろし楽曲まで多数の楽曲で楽しめる。

プロフィール

入江陽(いりえ よう)

1987年、東京都新宿区生まれ。現在は千葉市在住。シンガーソングライター、映画音楽家、文筆家、プロデューサー、他。今泉力哉監督『街の上で』瀬々敬久監督『明日の食卓』(2021年春公開予定)では音楽を担当。『装苑』で「はいしん狂日記」、『ミュージック・マガジン』で「ふたりのプレイリスト」という連載を持つ。

佐々木渉(ささき わたる)

1979年、札幌市生まれ。クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、音声チームマネージャー。「初音ミク」歌声合成関連プロジェクトチーフプロデューサー。2005年、クリプトン・フューチャー・メディアに入社し,2007年、歌声合成ソフトウェア「初音ミク」の企画・開発を担当し大ヒット。その後,同社のVOCALOID製品や関連企画のプロデュースディレクションを手がける。

近藤裕一郎(こんどう ゆういちろう)

ゲーム会社にてスマートフォンゲームのプロデューサー等を担当後、Craft Eggに入社し、取締役に。『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』のプロデューサーとして携わる。Colorful Palette設立とともに、代表取締役社長に。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. 星野源、ドラマ『着飾る恋には理由があって』主題歌“不思議”ジャケ公開 1

    星野源、ドラマ『着飾る恋には理由があって』主題歌“不思議”ジャケ公開

  2. くるり・岸田繁と君島大空の共鳴するところ 歌と言葉とギターの話 2

    くるり・岸田繁と君島大空の共鳴するところ 歌と言葉とギターの話

  3. Honda新型VEZELのCMに井浦新、玉城ティナ、Licaxxxら 楽曲は藤井 風が担当 3

    Honda新型VEZELのCMに井浦新、玉城ティナ、Licaxxxら 楽曲は藤井 風が担当

  4. Puzzle Projectとは?YOASOBIの仕掛け人と3人の10代が語る 4

    Puzzle Projectとは?YOASOBIの仕掛け人と3人の10代が語る

  5. 君島大空が照らす、生の暗がり 明日を繋ぐよう裸の音で語りかける 5

    君島大空が照らす、生の暗がり 明日を繋ぐよう裸の音で語りかける

  6. 今泉力哉と根本宗子が決めたこと ちゃんと「面倒くさい人」になる 6

    今泉力哉と根本宗子が決めたこと ちゃんと「面倒くさい人」になる

  7. パソコン音楽クラブが語る「生活」の音 非日常下で見つめた自然 7

    パソコン音楽クラブが語る「生活」の音 非日常下で見つめた自然

  8. サブスク以降のバンド活動 97年生まれ、Subway Daydreamの場合 8

    サブスク以降のバンド活動 97年生まれ、Subway Daydreamの場合

  9. Huluの映像クリエイター発掘&育成企画『HU35』発足の理由とは? Pが語る 9

    Huluの映像クリエイター発掘&育成企画『HU35』発足の理由とは? Pが語る

  10. 「日本が滅びても残る芸術を作りたい」平田オリザ×金森穣対談 10

    「日本が滅びても残る芸術を作りたい」平田オリザ×金森穣対談