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羊文学を形づくる「音」 6つの日本語曲を選んで3人で語り合う

羊文学を形づくる「音」 6つの日本語曲を選んで3人で語り合う

AVIOT「TE-D01m」
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:川島悠輝 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
2021/05/31

『POWERS』は「新しい羊文学」をリスナーと共有した一枚

―リリースから約半年が経ちますが、発表してみての手応えはどうですか?

河西(Ba):オンラインライブで『POWERS』の曲をやったんですけど、そのときに「聴いてくれた方それぞれが思う『POWERS』」みたいなものが実感として伝わってきた感覚があったんです。このアルバムには「新しい羊文学」がたくさん入っているんだなと。

フクダ(Dr):「新しい羊文学」ってことでいうと、実際に演奏やアレンジ面でもバラエティー豊かな内容になっていると思います。ドラムでいえば、たとえば“mother”はほとんどタムだけで構成しているのは自分としても新しい試みで。The Jesus and Mary Chainを意識しつつイメージを膨らませて、全体的にはドリームポップっぽい曲調にしています。

羊文学“mother”を聴く(Apple Musicはこちら

The Jesus and Mary Chainはシューゲイザーの始祖とされるバンドで、“Just Like Honey”は彼らの代表曲のひとつ

フクダ:“Girls”はbloodthirsty butchersさんみたいなエモーショナルなドラムを意識して叩いたのも、いままでにない要素になってると思います。

歌詞の面でも、たとえば“ロックスター”や“ghost”のような、いままで扱わなかったようなテーマの楽曲もあって。

―<ロックスターは知らない場所で今日も / 本当は怖いよって泣いている>(“ロックスター”)や<見えないものの声を信じる / たとえあながたもういなくても>(“ghost”)という歌詞は印象的ですよね。

フクダ:そういった部分を感じ取ってくれた人たちから、感想もちらほらもらっているのでつくってよかったなと思っています。

―改めて『POWERS』は、みなさんにとってどんなアルバムだったと思いますか?

塩塚:いい曲たちだなとは思うんですけど「これが本当に私のやりたいことか?」と言われると、ちょっとわからないところがあって。

まあ、いつもわかっていないし、毎回やりたいことは違うのですけど(笑)。もっといろんなものを取り入れられる気がするし、逆にもっとコンセプチャルな作品もつくれる気がする。

羊文学『POWERS』を聴く(Apple Musicはこちら

河西:とにかく『POWERS』は「そのときやりたいこと全部入れてみた!」みたいなアルバムだったよね。

塩塚:そう、だからすごくバラエティーに富んでいて、伝えたいメッセージもちゃんと入っているんですけど。

―レコーディング=「記録」という意味でいえば、その時点での羊文学、そのときの3人の「いま」が『POWERS』には刻み込まれているけど、現在はすでに違う場所にいるということですよね。

塩塚:そうですね。たしかに今回はドキュメンタリー的というか、私たちのこの1年ちょっとのことが曲になっていて。それはそれでいいと思う。でもストーリー仕立てのものをつくってみたい気持ちもありますね。

左から:河西ゆりか、塩塚モエカ、フクダヒロア
羊文学“ラッキー”(2021年)を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

羊文学の3人が自分の音楽観を形成する6曲をセレクト。1曲目はサカナクション“ナイトフィッシングイズグッド”

―今回は3人のルーツになっている、あるいはいまの羊文学に影響を与えた邦楽作品を1人2曲ずつセレクトしてもらいました。

▼羊文学の選曲リスト
・サカナクション“ナイトフィッシングイズグッド”(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く
・ハヌマーン“リボルバー”(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

・ゆらゆら帝国“ソフトに死んでいる”(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く
・相対性理論“小学館”(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

・おとぎ話“少年”(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く
・uri gagarn“IJDB”(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

日本語を聴き慣れた人の耳に合わせてチューニングされている、というAVIOTのブランド特性にちなんで、3人には日本語の楽曲をセレクトしてもらった(製品をサイトで見る

―サカナクションの“ナイトフィッシングイズグッド”(2008年)と、ハヌマーンの“リボルバー”(2010年)を選んだのはどなたですか?

塩塚:私です。サカナクションさんは小学生の終わりか中学1年生くらいの頃に、朝のテレビ番組で流れているのを聴いて、そこからずっと好きでした。“ナイトフィッシングイズグッド”は、曲の展開が1曲とは思えないくらいどんどん変わっていく感じとか、声がどんどん重なっていく感じとか、バンドというフォーマットでバンドを超えていくような、壮大なスケールに感動して。

自分がいままで聴いてきた音楽とも全然違うなと思ったんですけど、思えば父がプログレとか好きだったので、展開の多さは私ももともと好きだったのかなとも思います。「そういう曲が日本の音楽にもあるのか!」という驚きもありましたね。

塩塚モエカ(羊文学)
塩塚モエカ(羊文学)

塩塚:あと、サカナクションさんの『DocumentaLy』(2011年)というアルバムに、レコーディングのドキュメンタリー風景などが入っていて、当時から自分はなんとなくミュージシャンになりたいと思っていたから、付属されている映像を見て「レコーディングってこういう感じなのか」「山口(一郎)さんは、こんなに苦しみながら歌詞を書いているのか」みたいなことに感動したことも覚えています。

河西:私もサカナクションさんは好きです。特に草刈愛美さんのベースは憧れますね。

塩塚:超かっこいいよね。

フクダ:塩塚からすごくおすすめされたことがあって。シンセのアレンジや打ち込みとか、僕らのバンドでもいつか取り入れられたらいいんじゃないかな、みたいなことをみんなで話したこともあります。

―実際に羊文学の曲のなかで、サカナクションに影響を受けていると感じるのは?

塩塚:それでいうと“ナイトフィッシングイズグッド”よりも、“目が明く藍色”(2010年発表の『kikUUiki』収録曲)のほうが直接影響を受けた曲がありますね。特に別にコードとかを研究したわけではないけど、私たちの“Blue.2”(2017年発表の『トンネルを抜けたら』収録曲)という曲は“目が明く藍色”みたいな曲ができたらいいなと思ってつくりました。結果、全然違う曲になりましたけど(笑)。

羊文学“Blue.2”を聴く(Apple Musicはこちら

サカナクション“目が明く藍色”を聴く(Apple Musicはこちら

2曲目は3人とも大好きなハヌマーンから“リボルバー”。ギターサウンドと独特の譜割に、その影響が

―ハヌマーンの“リボルバー”は、彼らの『RE DISTORTION』(2010年)に収録されていました。

塩塚:CINRAさんからお題をいただいて、自分のルーツを全部振り返ったんですよ。そしたら130曲くらい候補に上がってきて(笑)。自分のルーツにあるはずなのにこれまであまり話せてなかった曲があって、今回はそういう曲を選んでいます。

そのなかでもハヌマーンさんは、初めて聴いたときの衝撃がすごく大きくて。歌詞もすごく独特で、“リボルバー”も文字としては何を言っているのかわかるんだけど、頭のなかですぐ日本語に変換されないような感じがある曲で。それがなんか不思議というか。いままで自分が聴いていた歌詞とは違ったんですよね。

ハヌマーン“リボルバー”を聴く(Apple Musicはこちら

―それって譜割が独特だからってことが理由だったりするんですかね?

塩塚:そうなんだと思います。私もよく「譜割が独特だね」と言われることがあって、あんまり意識はしていないんですけど、ハヌマーンさんのこの曲が入っている『RE DISTORTION』と『World's System Kitchen』(2009年)をずっと聴いていたので、なんとなく影響は受けていたのかもしれないですね。

河西:私もハヌマーンさん、すごく好きだし“リボルバー”がいちばん好きですね。

フクダ:僕も大好き。

塩塚:いいよね! 歌詞、不思議じゃない?

河西:不思議。あの曲はなんとなく、羊文学っぽいなと思いました。メロディーラインもそうだし、ギターをジャキジャキ鳴らしている感じとか(笑)。

フクダ:音がデカくてオルタナっぽいところとか、初期の羊文学はハヌマーンさんに通じるところがあるかなと僕も思いました。

羊文学“雨”を聴く(Apple Musicはこちら

塩塚:当時は3ピースのバンドってあまり知らなかったから、そこに惹かれたところもあったと思います。さっきも言ったように、自分で130曲くらい集めて改めて聴いてみて、「ああやっぱ影響受けてるんだな」って思った。本当にいろんな要素が混ざって羊文学の音になっている気がします。

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製品情報

AVIOT「TE-D01m」
AVIOT「TE-D01m」

静寂と高音質とを両立する2つのノイズリダクションを搭載したアクティブノイズキャンセレーション搭載モデル。

プロフィール

羊文学
羊文学(ひつじぶんがく)

塩塚モエカ(Vo,Gt)、河西ゆりか(Ba)、フクダヒロア(Dr)からなる、繊細ながらも力強いサウンドが特徴のオルナティブロックバンド。2017年に現在の編成となり、これまでEP4枚、フルアルバム1枚、そして全国的ヒットを記録した限定生産シングル『1999 / 人間だった』をリリース。2020年8月19日に「F.C.L.S.」より『砂漠のきみへ / Girls』を配信リリースし、メジャーデビュー。2020年12月9日にはメジャー1stアルバム『POWERS』をリリース。しなやかに旋風を巻き起こし躍進中。

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