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越後妻有のアート探訪。「大地の芸術祭の里」の楽しみ方はこれだ

『「大地の芸術祭」の里 越後妻有2017夏』
テキスト
内田伸一
撮影:馬込将充 編集:宮原朋之、飯嶋藍子
越後妻有のアート探訪。「大地の芸術祭の里」の楽しみ方はこれだ

トリエンナーレの時期以外も楽しめる越後妻有

この夏は、各地でアートフェスティバルが花盛り。ここで新潟の「越後妻有」の話をすると、詳しい人なら「あれ、『越後妻有アートトリエンナーレ』は来年では?」と思うかもしれない。たしかに、老舗芸術祭である同トリエンナーレは、来たる2018年。でも今回はあえて「トリエンナーレの時期以外も楽しめる越後妻有」を紹介したい。

あわただしい日常から少しはなれ、穏やかな空気のなかで、歴代の名作アート群や、次回トリエンナーレに向け先行公開された新作も体験。季節のイベントや、里山の美食、温泉、ユニークな宿泊体験など、気負わずゆったりとアートを楽しめる夏の旅をどうぞ!

『「大地の芸術祭」の里』を訪ねて。アートだけに留まらない越後妻有旅の足取り

この夏の始めに、越後妻有を訪れた。目的は、来年のトリエンナーレに向けた新作を一足早く公開したアーティスト、レアンドロ・エルリッヒの取材。その様子はインタビュー記事(「常識」をひっくり返す楽しさをレアンドロ・エルリッヒが語る)でお届けしたので、ここではその際の体験から、この地域の旅の魅力を紹介したい。

新潟県の十日町市・津南町は、3年ごとに開かれるスケールの大きな国際芸術祭『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』の舞台として知られる。美しい風景や地域の歴史にリンクするように、世界中のアーティストによる作品が屋内外のあちこちで見られるのが大きな特徴だ。

『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』代表作品イリヤ&エミリア・カバコフ『人生のアーチ』(2015年)photo by Osamu Nakamura
『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』代表作品(サイトで見る) イリヤ&エミリア・カバコフ『人生のアーチ』(2015年)photo by Osamu Nakamura

もうひとつユニークなのは、芸術祭が終わった後も、広いエリアの屋内外に名作が残るケースも多いこと。それがこの『「大地の芸術祭」の里』に豊かな息吹を与えている。つまり、いつ訪れても出会いや再会があり、変化し続ける芸術の里としての魅力だ。

廃校をまるまる使った作品や、棚田に展示された作品。土地と溶け合うアート群

旅の玄関口は、十日町駅。『FUJI ROCK FESTIVAL』のお膝元=上越新幹線の越後湯沢駅からローカル線に乗りかえ、1時間弱の場所にある。ここからすぐの越後妻有里山現代美術館[キナーレ]では、国内外のアーティストがこの地にインスパイアされて生まれた作品を体験できる。

越後妻有里山現代美術館[キナーレ]展示風景
越後妻有里山現代美術館[キナーレ]展示風景

越後妻有里山現代美術館[キナーレ]に常設されているレアンドロ・エルリッヒ『トンネル』
越後妻有里山現代美術館[キナーレ]に常設されているレアンドロ・エルリッヒ『トンネル』

建物中央に広がる40×40mのシンボリックな池は、「入ってじゃぶじゃぶ遊んでみたい……」と思う人も多そうだが、この夏はこれが実現! 水を体感するアート作品が楽しめる特別企画『水あそび博覧会』が開かれる。

越後妻有里山現代美術館[キナーレ]内にある池 photo by ANZAï
越後妻有里山現代美術館[キナーレ]内にある池 photo by ANZAï

越後妻有里山現代美術館[キナーレ]ではこの夏、池に水を体験するアート作品が登場。じゃぶじゃぶと水に入って遊びながら作品を鑑賞する特別企画『水あそび博覧会』を開催する photo by Osamu Nakamura
越後妻有里山現代美術館[キナーレ]ではこの夏、池に水を体験するアート作品が登場。じゃぶじゃぶと水に入って遊びながら作品を鑑賞する特別企画『水あそび博覧会』を開催する photo by Osamu Nakamura

ここはインフォメーションセンターもあるので、「思い立って来てしまった!」という旅人にも優しい場所。最新版ガイドブックのモデルコースなども参考に、お目当ての作品をめぐるプランを立てるのがおすすめだ。電車で来た際は、ここからレンタカーやタクシーを活用しよう(目的地によってはバスも使える)。

筆者はまず、信濃川をわたって山道をすすみ、「絵本と木の実の美術館」を訪ねた。ここでは絵本作家の田島征三が、廃校になった小学校校舎をまるごと「空間絵本」に変身させている。

「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」物語にそって作品が展示される「空間絵本」となっている
「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」物語にそって作品が展示される「空間絵本」となっている

空間絵本のもとになっている絵本『学校はカラッポにならない』と、物語に登場するおばけ・トペラトトの絵本
空間絵本のもとになっている絵本『学校はカラッポにならない』と、物語に登場するおばけ・トペラトトの絵本

体育館、教室、更衣室などをめぐると、流木や木の実によるカラフルで巨大なオブジェが、ときに機械じかけで動きながらストーリーを紡いでいく。物語は、廃校時の「最後の生徒」三人を主人公に、思い出を食べるユーモラスなおばけがからむもの。それは「思い出は、なくならない」という作家からの優しく力強いメッセージであり、現地・鉢集落の人々に愛され続けている。

思い出を食べるおばけ「トペラトト」が教室から顔を覗かせる
思い出を食べるおばけ「トペラトト」が教室から顔を覗かせる

教室の外にある自転車をこぐと、流木で作られた人形の腕が動き太鼓を叩く
教室の外にある自転車をこぐと、流木で作られた人形の腕が動き太鼓を叩く

じつは筆者はこの施設が誕生した2009年の第4回トリエンナーレでも訪れたことがあったが、今は校庭に小さなヤギたちの暮らす小屋が建ち、川の水を引き込んでのビオトープづくりなど、人々の手で変化してもいた。そんな再会と移り変わりを楽しめるのも、越後妻有の魅力だろう。

他にも、現代アートの巨匠、クリスチャン・ボルタンスキーとジャン・カルマンによる『最後の教室』(2006年)は、やはり旧校舎を使いつつも対照的。ミステリアスな神聖さに包み込まれ、吸い込まれそうな作品で、この夏は期間限定で公開される。

クリスチャン・ボルタンスキーとジャン・カルマン『最後の教室』(2006年)photo by Takuboku Kobayashi
クリスチャン・ボルタンスキーとジャン・カルマン『最後の教室』(2006年)photo by Takuboku Kobayashi

一方、何千枚もの丸い鏡におおわれた家屋作品『再構築』(行武治美、2006年)のように、里山の風景に溶け込みつつ幻想的なイメージを放つ屋外作品も、旅の醍醐味といえる。

行武治美『再構築』(2006年)photo by Masanori ikeda
行武治美『再構築』(2006年)photo by Masanori ikeda

なお同作は、老朽化などを理由に、この夏を最後に公開終了になるという。残念だが、それもまた「生きている芸術の里」の一面といえる。思い入れのある人や見逃してきた人は、ぜひこの機会に訪れてみてはどうだろう。

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イベント情報

『「大地の芸術祭」の里 越後妻有2017夏』

2017年8月5日(土)~8月20日(日)
会場:新潟県 越後妻有エリア各所
料金:共通チケット 大人2,000円 小中学生500円

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