特集 PR

コムアイの東東京開拓ルポ 多国籍な移民との出会いから始まる調査

BLOOMING EAST
インタビュー・テキスト
宮田文久
撮影:江森康之 編集:山元翔一、宮原朋之
コムアイの東東京開拓ルポ 多国籍な移民との出会いから始まる調査

母国には帰れず、難民認定はおりない……エチオピアの人々が置かれる緊迫した現状

自慢の料理に舌鼓をうちながら、コムアイによるインタビューが始まった。「なぜ、日本に来たのですか?」「先に日本に来ていた兄を頼って来たんです――」

エチオピアでは2005年、与党のエチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)が勝利をおさめた総選挙の後、不正があったと抗議した野党の支持者たちと当局が衝突。多くの死亡者を出し、その後も反政府運動にかかわる者への弾圧が続いている。「(与党の獲得票が)99%だと言われた。そんなの、アフリカでも、どこだってありえないですよ」とエフレムさんが語るように、彼ら家族も政府に異議を唱え、その結果として国外に難民として逃れざるを得なくなった。

現在20歳ほどになっているはずの甥っ子は、3度目の逮捕・収監の後、「どこにいるかもわからない」と言う。今年2月には反政府抗議運動の激化により首相が辞任、非常事態宣言が出されたことを受け日本の外務省が注意喚起を呼びかけるほど、状況は緊迫し続けている。

 

 

16年ほど前にエフレムさんは来日。広島を撮るインディペンデントな映画の制作で来ていたティババさんと日本で出会い、二人でレストランをオープン。お店は主にティババさんが切り盛りし、エフレムさんは近所で働く。使用済み天ぷら油をバイオ燃料などにリサイクルする「TOKYO油田」というプロジェクトの工場だ。運営する株式会社ユーズの代表取締役・染谷ゆみはこう話す。

染谷:1980年代半ば以降、徐々に海外の方が日本にやってきて、うちでも働くようになりました。そのときどきによって、「今はイラン人の方が多い」といったような波があるんですよ。エチオピアの方がいらっしゃるようになったのは最近ですね。みなさん、とてもジェントルマンなんですよ。

コムアイに工場の説明をする染谷ゆみ
コムアイに工場の説明をする染谷ゆみ

工場内の様子
工場内の様子

 

 

日本の難民制度は、短期滞在ビザで来日し難民申請すれば、最初の半年間は就労できないものの、その後は仕事も認められる「特定活動」という在留資格に切り替えられる仕組み。しかし、日本では難民申請はほぼ認定されない。

彼らは異議を唱え何度も申請し、その間も日々の暮らしのために働き続ける(2018年1月、日本の法務省はこの難民申請を厳格化すると発表。就労目的の申請を抑制し、本来の目的である不安定な立場に置かれている難民保護を迅速化するというが、しかし難民認定はほぼおりず、これまでの在留資格者のうちの多くが資格を失うと推計されている)。

エフレム夫妻の店が、仲間内で「関所」と呼ばれることに託されたユーモア

もちろん、エチオピアに比べれば、安心して暮らせる日本。しかし一方で、「日本の法律は、外国人のためのシステムがあまりない。それは大変」とエフレムさんは言う。

特に難しいのが、婚姻の届け出だ。「エチオピアの書類がないと結婚できないと言われた。でも帰ったら捕まってしまう」。だから、ティババさんとは今も内縁の関係だ。「法律は、人間が人間のために作ったものなのにね」――エフレムさんは静かに思いの丈を口にする。

エフレム:娘がときどき、私のことを「パパじゃない」って言うんですよ。パパだと言ってしまうと、証明できなくて困ることもあるから……だから、子どもを新たに作るのはやめました。

エフレムさん
エフレムさん

ティババさん
ティババさん

コムアイは、エフレムさんの話にじっと耳を傾けていた。母国との関係、日本での環境、目の前の美味しい料理、はしゃぎまわるベタちゃん。すべてが東東京のリアルだ。取材後、「具体的な話が聞けてよかった」とコムアイは語った。彼女のアンテナは、きっとそんなリアリティーのすべてをキャッチしていたはずだ。

 

 

 

どんなに大変でも、日々は流れる。そこに生まれる喜びもある。エフレムさんも休日には近所のエチオピア人仲間とサッカーに興じるという。そんな友人たちが立ち寄るこの店は、エフレムさんが着るTシャツに書かれた言葉のようなものなのだそうだ。

エフレム:これはアムハラ語(エチオピアの公用語)で、関所という意味。みんな帰るときに立ち寄るから、すぐに帰れない(笑)。でも、エチオピアの人はそれがみんな好きなの。ちょっと話して、ちょっと飲んで。

 

「すごくいい名前!」と笑うコムアイ。その愛すべき「関所」への再訪を約束して、彼女はこの日の旅の最終地点へと向かった。

 

Page 3
前へ 次へ

プロジェクト情報

BLOOMING EAST x コムアイ サーヴェイ

本サーヴェイは、これからも続きます。今後も東東京を軸にして、多様な価値観や文化と出会いながらプロジェクトを進めていくにあたって、お話を伺わせていただける方や訪問場所についての情報を募集しています。現在東京に住まわれている(または過去に住んでいたことがある)外国にルーツを持つ方、様々な文化や背景を持つコミュニティ、外国籍の方々と一緒にプロジェクトを実践されている方、関連するイベント情報など、メールにてお寄せください。

プロジェクト情報

BLOOMING EAST

「BLOOMING EAST」は、東京都、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、NPO法人トッピングイーストの三者共催により「東京アートポイント計画」の一環として実施されています。

プロフィール

水曜日のカンパネラ(すいようびのかんぱねら)

2012年の夏、初のデモ音源“オズ”“空海”をYouTubeに配信し始動。「水曜日のカンパネラ」の語源は、水曜日に打合せが多かったから……と言う理由と、それ以外にも、様々な説がある。当初グループを予定して名付けられていたが、現在ステージとしてはコムアイのみが担当。「サウンドプロデュース」にKenmochi Hidefumi、その他、「何でも屋」のDir.Fなどが、活動を支えるメンバーとして所属。以降、ボーカルのコムアイを中心とした、暢気でマイペースな音楽や様々な活動がスタートしている。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

LUMINE ART FAIR - My First collection / Art of New York City

10月12日、13日にルミネ新宿で開催する『LUMINE ART FAIR -My First Collection』のために制作された動画。現地アーティスト2名の言葉と、リアルな空気感とともにNYのアートシーンを紹介している。「NY、かっこいい!」という気持ちがムクムク膨れ上がってくるはずだし、アートに触れるきっかけはそれくらいがちょうどいいと思う。(石澤)

  1. 東京パラリンピック開会式の演出はKERA、閉会式は小林賢太郎 出演者募る 1

    東京パラリンピック開会式の演出はKERA、閉会式は小林賢太郎 出演者募る

  2. 『ONE PIECE』×カップヌードルCMの第3弾 ビビが仲間への想いを語る 2

    『ONE PIECE』×カップヌードルCMの第3弾 ビビが仲間への想いを語る

  3. 平野紫耀、永瀬廉、高橋海人が『婦人公論』で座談会 タキシード姿も披露 3

    平野紫耀、永瀬廉、高橋海人が『婦人公論』で座談会 タキシード姿も披露

  4. 有安杏果、結婚を発表。その経緯、お相手など、赤裸々に語る 4

    有安杏果、結婚を発表。その経緯、お相手など、赤裸々に語る

  5. 神木隆之介が母子で「au PAYで!」特訓&松本穂香の姿も 「高杉くん」新CM 5

    神木隆之介が母子で「au PAYで!」特訓&松本穂香の姿も 「高杉くん」新CM

  6. 『アナと雪の女王2』の歌に注目。エルサのメイン曲など新曲多数 6

    『アナと雪の女王2』の歌に注目。エルサのメイン曲など新曲多数

  7. 大友良英が『いだてん』音楽で伝える「敗者がいて歴史ができる」 7

    大友良英が『いだてん』音楽で伝える「敗者がいて歴史ができる」

  8. ソフトバンク新CMで岡田准一と賀来賢人が教師、リーチマイケルが校長に 8

    ソフトバンク新CMで岡田准一と賀来賢人が教師、リーチマイケルが校長に

  9. ポン・ジュノ『パラサイト』が東京&大阪の2劇場で先行上映、特別映像付き 9

    ポン・ジュノ『パラサイト』が東京&大阪の2劇場で先行上映、特別映像付き

  10. 星野源、Apple Music『歌詞のままに生きる』登場 日本のアーティストは初 10

    星野源、Apple Music『歌詞のままに生きる』登場 日本のアーティストは初