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のん×能町みね子のトークショーと展示で振り返る『SNS展』

『SNS展』
テキスト
麦倉正樹
撮影:豊島望 編集:木村直大
のん×能町みね子のトークショーと展示で振り返る『SNS展』

『SNS展』の各キュレーター、アーティストたちの作品をおさらい

さてここで、『SNS展』に出品された各作品及び、各キュレーターが選出した作品を、ざっと振り返ってみることにしよう。

『SNS展』の会場入り口でたなかみさきによるメインビジュアルが来場者を出迎えた
『SNS展』の会場入り口でたなかみさきによるメインビジュアルが来場者を出迎えた / 特集「小山健×たなかみさき、SNSを語る。いいね!の数より大事なこと」を読む

「#もしもSNSがなかったら」というテーマで自由に生み出された作品群。受付を抜けた正面に設置されているのは、『透明人間』と題された、たなかみさきによるメインビジュアルだ。原画も展示されたこのビジュアルには、以下のようなキャプションが付いていた。

こちらを見ているのか見ていないのか? 存在するのかしないのか? 数字に現る透明人間
見ている人が数字になって現れるので、本当にそこに人が1人いるのかいないのか、ときどきわからなくなるんです。透き通ったパラレルワールドの住人のような感じで人物を描きました。(たなかみさき)

会場内は、「Feed」「Message」「Photo」「Tweet」という4つのエリアに大きく分かれている。まずは、正面左手に広がる「Feed」のエリア。

「Feed」エリアの全景
「Feed」エリアの全景

ここには、先に紹介したのんと能町の作品をはじめ、藤原麻里菜による『インスタ映えを台無しにするマシーン』などこれまでの作品から構成された『#もしもSNSがなかったら、こんなに捻くれた物を作っていなかった』のほか、SNSで自身に寄せられたメッセージを写真と共に作品にした菅本裕子(ゆうこす)による『仲間からのメッセージ』、塩谷舞によるSNSと自身の歴史を辿る年表と架空日記『#SNSと私とパラレルワールド』といった作品が展示されていた。

藤原麻里菜『#もしもSNSがなかったら、こんなに捻くれた物を作っていなかった』
藤原麻里菜『#もしもSNSがなかったら、こんなに捻くれた物を作っていなかった』

菅本裕子(ゆうこす)『仲間からのメッセージ』
菅本裕子(ゆうこす)『仲間からのメッセージ』

塩谷舞『#SNSと私とパラレルワールド』 / 年表の左にある台座に上に架空日記が置かれている
塩谷舞『#SNSと私とパラレルワールド』 / 年表の左にある台座に上に架空日記が置かれている

一方、正面右手に広がる「Tweet」エリアには、一般から寄せられた公募作品のツイートと並んで最果タヒの作品(青色)が、垂れ幕のように展示されていた。

「Tweet」エリアの全景
「Tweet」エリアの全景

最果タヒ『#もしもSNSがなかったら』
最果タヒ『#もしもSNSがなかったら』

ちなみに、最果タヒは、本展に次のようなコメントを寄せてくれた。

インターネットにSNSがなかったころ、すれ違うように、他人同士のままで、「あなたは孤独ではない」と伝えることができなかった。愛の形をしていなければ、友情の形をしていなければ、関わり合うことができなかった、ほんとうは、それだけじゃ、息苦しすぎるとわかっているのに、親愛の情を込めずに、優しくすることもできない。あのころのインターネットが、懐かしいこともある。今が完璧なわけもなくて、いいねの積み重ねが、他者の存在など関係なく染み付いた「孤独」を浮き彫りにしてもいる。SNSがなかったら、孤独は違う形をしている、けれど決して消えてはいないし、私はきっとそこでも、詩を書いている。(最果タヒ)

天井から釣り下がる、さまざまな「言葉たち」のあいだを縫うように進んだ先を左に曲がると、「Photo」のエリアが広がっている。

「Photo」エリア全景
「Photo」エリア全景

「Photo」エリアに置かれたベンチは、公募された無数の画像で覆われた
「Photo」エリアに置かれたベンチは、公募された無数の画像で覆われた

一般から公募した作品がコラージュのように敷き詰められた、巨大なベンチを取り囲むように作品が展示されたこのエリア。そこには、Instagramで最も想定外の「いいね」を獲得したという一枚の写真を、さまざまな方法で見せることによって「良い写真」の意味を人々に問う濱田英明の作品をはじめ、たなかみさき、小山健の原画が展示された。

濱田英明『What is a good photography?』
濱田英明『What is a good photography?』

たなかみさき『無題』
たなかみさき『無題』

小山健『知り合いかも』 / 5枚セットの原画の一部
小山健『知り合いかも』 / 5枚セットの原画の一部

また、同エリアには各キュレーターが一般から選出した作品も、それぞれの選評と合わせて展示されていた。

Makoto Tanimoto @mt_portrait『時間軸の旅』 / 濱田英明によって選出された公募作品。公募作品はipadで展示された
Makoto Tanimoto @mt_portrait『時間軸の旅』 / 濱田英明によって選出された公募作品。公募作品はipadで展示された

「Tweet」のエリアを抜けたいちばん奥にある「Message」のエリアでは、作家である燃え殻が、ブラウン管テレビを使った大掛かりなインスタレーションを制作。

燃え殻『生き延びてしまった気持ちのアーカイブ』
燃え殻『生き延びてしまった気持ちのアーカイブ』

去年の今日、自分が思っていた不安と、期待と、どーでもよさが、
文字と写真と短い動画で記録される世界に僕たちは生きている。

SNSで繋がった誰か、気持ち、命があると思う。
SNSで分断された誰か、気持ち、命もまたあると思う。

僕と私とあの人の忘れるはずだった出来事、生き延びてしまった気持ちが、
今日もアーカイブ化されていく。(燃え殻)

「Message」エリアにはほかに、SNSによって人目に触れることになった自作の洋服や小物をズラリと並べた東佳苗、Instagramのストーリーズで遠距離恋愛のやり取りをする恋人たちを追ったビデオインスタレーションを展開したUMMMI.などの作品が設置され、各展示を来場者が身を乗り出しながら、食い入るように鑑賞している姿が印象的だった。

東佳苗『see you later.』
東佳苗『see you later.』

東佳苗『see you later.』のドレス
東佳苗『see you later.』のドレス

UMMMI.『ローズシティー』
UMMMI.『ローズシティー』

リアルな場でそれぞれのSNS観に思いを馳せる体験

「#もしもSNSがなかったら」というテーマのもと、それぞれが自らの実体験を踏まえながら、さまざまな思いをめぐらせ、それを言語化あるいはアート作品として具現化した本展。そこに並べられた作品群をひと通り眺めて思ったのは、その表現方法の自由度と、それぞれのSNS解釈の多様さだった。それもそのはず。本展は「SNSとは何か」を問うものではなく、SNSがそれぞれの意識にもたらした「変化」を、多角的に表現した展覧会なのだから。

一つひとつの作品を眺めながら、いつしか自身のSNS観に思いを馳せる来場者たち。その胸の内には、いったいどんな「思い」が去来していたのだろうか。しかも、それをSNSの中ではなく、実際に存在する「場所」に足を運び、その目で見て、感じて、考えること。その「体験」こそが、実は本展のいちばんの肝だったのかもしれない。

 

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イベント情報

『SNS展 #もしもSNSがなかったら』

2018年5月19日(土)~5月27日(日)

会場:東京都 秋葉原 3331 Arts Chiyoda メインギャラリー
時間11:00~20:00
参加アーティスト・キュレーター:
のん
菅本裕子
小山健
能町みね子
燃え殻
濱田英明
たなかみさき
最果タヒ
塩谷舞
UMMMI.
藤原麻里菜
東佳苗

プロフィール

のん

女優、創作あーちすと。 1993年兵庫県生まれ。アニメ映画『この世界の片隅に』で主役すずの声を担当。写真集『のん、呉へ。 2泊3日の旅』、ムック『創作あーちすとNON』、刊行。音楽レーベル『KAIWA(RE)CORD』発足。のん公式ファンクラブ『NON KNOCK』開設。4月には渋谷GALLERY Xにて、のんひとり展「女の子は牙をむく。」開催。

能町みね子(のうまち みねこ)

北海道出身。近著「雑誌の人格」「雑誌の人格2冊目」(共に文化出版局)、「ほじくりストリートビュー」(交通新聞社)、「逃北」「言葉尻とらえ隊」(文春文庫)、「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)など。ほか雑誌連載多数、テレビ・ラジオにも出演。

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