Eveの快進撃を考察 ボカロ文化発の才能が日本のロックを更新する
『Eveワンマンライブツアー[メリエンダ]』- テキスト
- ふくりゅう
- 編集:山元翔一

ネット発の新たな才能、Eveのプレミアム公演を目撃
ネット発の音楽シーンに新しい動きが起きはじめている。その中心となるアーティストがEve(イヴ)だ。
ネガティブとポップを行き交う冴えまくったソングライティング、繊細かつ文学的な歌詞の魅力、Eveの世界観をポップに表現したイラストとのシンクロ率の高さ、ロックシーンでも受け入れられるダンサブルな楽曲……そして何より、強さと弱さをアンビバレントに表現する本人のキャラクターに多くの支持が集まっている。
昨年、12月にリリースしたアルバム『文化』で高評価を得てロックシーンへも認知が広がったEve。2018年8月16日、ワンマンとしては初となる東名阪ツアー『メリエンダ』のTSUTAYA O-EAST公演を筆者は目撃した。
当日会場では、開演前からアルバム『文化』の世界観と連動したループ映像がスクリーンいっぱいに投影されオーディエンスを盛りあげていた。アニメーション作家のWabokuが手がけた「ちょっと不思議な日常」を描いた映像が非常に凝っていて、時間が経過するごとにシーンが変化していくのだ。時折、その差異に気がついたファンの悲鳴にも似た叫びが「きゃー!」とフロアに響く。開演5分前まではスマホで撮影可ということもあり、ライブへの期待感の高さがSNSのタイムラインへと波及していくのも見ていて楽しかった。
いま、凄まじい勢いで支持を集めるEveの歩みを振り返る
オープニングを飾ったのは、YouTubeで779万再生(2018年10月現在)を突破した人気チューン“トーキョーゲットー”。紗幕スクリーンに映像やリリック(歌詞)が投影され、動画を飛び越えリアルにメンバーと溶け合うシーンが鳥肌ものだった。また、3人のサポートメンバーを従えたEveバンドの演奏力は高く、安心して気持ちを委ねられるのも心地よさの理由の1つだったと言えるだろう。
そもそも、Eveはいわゆるニコニコ動画やYouTubeでの「歌ってみた」動画で注目された新しい才能だ。2016年10月には、人気ボカロP・ナユタン星人による詞曲のポップアンセム“惑星ループ”を収録した初の全国流通盤『OFFICIAL NUMBER』で注目を集め、作品ありきの独自性あるインディペンデントな活躍をみせている。
Eve『OFFICIAL NUMBER』を聴く(Apple Musicはこちら)
ターニングポイントとなったのは、2017年5月に作詞曲を手がけたオリジナル曲“ナンセンス文学”の発表だ。YouTubeで1280万再生(2018年10月現在)されるなど、大きな注目を集めた。続く10月に配信された“ドラマツルギー”は1750万再生(2018年10月現在)、“お気に召すまま”は、1530万再生(2018年10月現在)を突破するなど、 その人気を決定づけた。
同年12月、現時点での代表作となる、すべて自作曲で構成したオリジナルアルバム『文化』を発表。特筆すべきは、ライブハウスたたき上げアーティストではなく、ネットシーンから誕生し、再生回数やコメントなど第三者目線による評価で揉まれ、満を持してライブシーンへ台頭した新世代アーティストであることだ。シーンを見渡しても、ここ数年での成長度合いが半端ない逸材である。
Eve『文化』を聴く(Apple Musicはこちら)
イベント情報
- 『Eveワンマンツアー[メリエンダ]東京公演』
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2018年8月16日(木)
会場:東京都 TSUTAYA O-EAST
- 『Eveワンマンツアー[メリエンダ]追加公演』
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2018年11月4日(日)
会場:東京都 新木場STUDIO COAST
プロフィール
- Eve(いゔ)
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2枚の自主制作アルバムを経て、2016年に初の全国流通盤「OFFICIAL NUMBER」をリリース。本作から自身による作詞・作曲中心の作品構成となる。2017年12月13日に発売したインディーズアルバム「文化」は初の全自作曲のみで制作。収録曲「ナンセンス文学」「ドラマツルギー」「お気に召すまま」「あの娘シークレット」がYouTubeで軒並み1000万再生を超えるなどしたほか、オリコンインディーズチャート1位、iTunes2位を記録し話題に。2018年には「文化」を携えた東名阪ワンマンツアーを行い、11月4日に控える自身最大規模となるSTUDIO COAST公演も即完させている。