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VRの超体験はここまできた 『NEWVIEW AWARDS』レポート

『NEWVIEW EXHIBITION 2018』
テキスト
内田伸一
撮影:鈴木渉 編集:宮原朋之
VRの超体験はここまできた 『NEWVIEW AWARDS』レポート

ユニークな発想でVR空間を「展覧会」に見立てた作品たち

一方で、同じ回遊型でもVR空間を「展覧会」に見立てるタイプの作品群がある。『EMMA VR: PAINTING LIFE』(作者:Wyatt Roy、アメリカ)は、友人のアーティストの展覧会を訪れるという設定。「絵画の中に入る」などVRならではの仕掛けを通じ、美術作品の背後にあるものについて考えさせる。なお作者は別の作品『WHISPER NATIONAL PARK: GLOWWORM』でもファイナリスト入りしていて、どちらも現実の営みとVRを接続する手つきがユニークだった。

Wyatt Roy『EMMA VR: PAINTING LIFE』
Wyatt Roy『EMMA VR: PAINTING LIFE』(作品の詳細を見る)(STYLYで作品を見る

『IMMERSIVE PHOTO EXHIBITION "美少女は目で殺す"』(作者:chiepomme & Albina Albina & APOLIA、日本)は、こちらを見つめ返す謎めいた少女たちの写真や、オリジナルの衣装を展示する。一見すると実空間でも可能そうな構成だが、フォトグラメトリー(複数の写真群から対象の形やサイズを求める測量法)や、立体視写真を撮影できるMirage Cameraを取り入れ、写真と3次元表現が奇妙に交錯した世界となった。

chiepomme & Albina Albina & APOLIA『IMMERSIVE PHOTO EXHIBITION 美少女は目で殺す』
chiepomme & Albina Albina & APOLIA『IMMERSIVE PHOTO EXHIBITION 美少女は目で殺す』(作品の詳細を見る)(STYLYで作品を見る

同じ写真展でも『prints』(作者:Yuki Matsuoka、日本)はまた異なるアプローチで、被写体との距離情報を取得できる「深度カメラ」による写真群を使い、その画素を奥行き付きで3次元にマッピングしていくというもの。結果、鑑賞者はある地点に立ったときだけ、そこに何が写っているのかを知ることになる。これにゲーム性を感じて楽しむこともできるし、作者が目指したであろう「この世界のもうひとつのとらえ方」として体験することもできる。

Yuki Matsuoka『prints』
Yuki Matsuoka『prints』(作品の詳細を見る)(STYLYで作品を見る

他にも、バーチャルYoutuberのえもこ(日本)が彼女のVRアート作品と、その制作過程を同時に見せる『EMOCO'S FIRST PRIVATE EXHIBITION』などがファイナリストに選出されている。

えもこ『EMOCO'S FIRST PRIVATE EXHIBITION』
えもこ『EMOCO'S FIRST PRIVATE EXHIBITION』(作品の詳細を見る)(STYLYで作品を見る

自由回遊型と展覧会型のハイブリッド的な作品が、『身体の形状記憶装置 -SHAPE MEMORY OF YOU-』(作者:Discont、日本)。都市や水辺、庭園など現実世界の断片とCG表現が絡み合う空間で、現実にはあり得ない視覚効果を活かしたインスタレーションを巡っていく構成だ。建築学のバックグラウンドを持つ作者は、「VRの中で喪失してしまった身体と身体感覚を取り戻す」ことを目指したという。

Discont『身体の形状記憶装置 -SHAPE MEMORY OF YOU-』
Discont『身体の形状記憶装置 -SHAPE MEMORY OF YOU-』(作品の詳細を見る)(STYLYで作品を見る
渋谷GALLERY X BY PARCOで開催された『NEWVIEW EXHIBITION 2018』会場内の様子

暴力的ともいえる知覚体験も、VRのひとつの可能性

こうしたとりあえずの類型には当てはまらない作品もある。『MAILLOTS DE BAIN』(作者:Mask du Video、日本)は、19世紀に発明された古典的な映像装置「ゾートロープ」(回転のぞき絵。連続する静止画を並べた円筒を回すと、絵が動いているように見える)を、現代都市を疾駆する巨大美少女という形で再現した。なぜこれをVRで? という動機をふくめ、異色感は随一だった。

Mask du Video『MAILLOTS DE BAIN』
Mask du Video『MAILLOTS DE BAIN』(作品の詳細を見る)(STYLYで作品を見る

同作は、巨大ゾートロープが駆動する一連の流れをシナリオに沿って体験するもので、後半はその機構の裏側に鑑賞者を誘う。これは絶叫系アトラクションで逆さ吊りになるような感覚。いわゆる「VR酔い」しやすい人には要注意だが、この半ば暴力的ともいえる知覚体験も、VRのひとつの可能性であることは確かだ。

他に、VR空間の表現をドラッグ&ドロップなどで直感的に行えるSTYLYの特性を活かして「VRゲームをコーディングなしで作れるか?」に挑んだ『SOLVITUR AMBULANDO』(作者:Alejandro Zamudio S.、台湾)のような作品も。同アワードの背景を制作アイデアに結び付ける視点がユニークだった。

Alejandro Zamudio S.『SOLVITUR AMBULANDO』
Alejandro Zamudio S.『SOLVITUR AMBULANDO』(作品の詳細を見る)(STYLYで作品を見る

日々、よりポピュラーになりつつあるVR表現の制作環境と体験環境

ファイナリスト19作品は最終審査が行われ、10月上旬に受賞作品が発表される。3つの審査基準「新しさ / 独創性」「体験」「インパクト」をもとにグランプリに選ばれた作品には、2万ドル(約220万円)の賞金も用意された。

審査陣にはアーティストのデビッド・オライリーや、ミュージシャンのm-flo、編集者の伊藤ガビンなど多彩な面々の名が並ぶ。なお、CINRA.NETでは審査員のひとり、「寿司くん」ことこやまたくやのVR体験レポート(ヤバTこやまたくやがSTYLYでVR作り「これ絶対流行るでしょう」)も公開中だ。

会期2日目にはオープニングトークイベントも行われた
会期2日目にはオープニングトークイベントも行われた

VR表現の制作と体験する環境は日々、よりポピュラーになりつつある。将来的には、スマホで映像を楽しみ、買い物をするのに近い感覚で、日常に取り入れられることも夢物語ではないだろう。

来年以降も続く予定だという『NEWVIEW AWARDS』には、これからのVRコンテンツの質と多様さを豊かにする牽引役が期待される。その意味でも、初回となる今回の審査結果に注目したい。

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アワード情報

『NEWVIEW AWARDS』
『NEWVIEW AWARDS』

新たな表現やカルチャー、ライフスタイルを追求し、「超体験のデザイン」を牽引する次世代クリエイターを発掘することを目的として立ち上げられたアワード。世界7か国、応募総数219作品のなかから一次審査を通過したファイナリスト約20作品が決定。10月15日(月)には、公式サイトにてグランプリ以下各賞の受賞作品が発表される。

イベント情報

『NEWVIEW EXHIBITION 2018』

2018年8月30日(木)~9月2日(日)
会場:東京都 渋谷 GALLERY X BY PARCO
時間:11:00~20:00(8月30日は13:00~、8月31日は17:00まで)

サイト情報

NEWVIEW

Psychic VR Lab、パルコ、ロフトワークによる新たな表現の追求と、次世代クリエイターの発掘・育成を目的とするプロジェクト。ファッション、音楽、映像、グラフィック、イラストレーションなど、各分野で活動するクリエイターが参加し、3次元空間での新たな表現と体験のデザインを開拓していきます。

サービス情報

STYLY

アーティストに空間表現の場を提供するPsychic VR LabによるVRプラットフォーム

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