インタラクティブアート『Magical Shores』 自然と人間の共生を表現
ワントゥーテン、Lighting Planners Associates『Magical Shores』- インタビュー・テキスト
- 多田亜矢子
- 編集:柏井万作(CINRA.NET編集長)

インタラクティブな演出で、ビーチそのものが「生きている」かのよう
昨年1月、シンガポール・セントーサ島のシロソビーチに、シンガポール初となる常設型インタラクティブランドアート『Magical Shores(マジカルショア)』がオープンした。400メートルにわたるビーチを舞台に、光と音、霧によってナイトタイムを盛り上げるこのアトラクション、注目なのは、クリエイティブAIを導入していることだ。
『Magical Shores』は19時半から22時半まで、年中開催。光と音で描いた「生命の循環」の15分間の物語が、ビーチ上の人の状況や周辺の気候によって演出を変えながら繰り返し、変化し続ける
クリエイティブ集団「ワントゥーテン」が独自開発したこのAIは、来場者がビーチ上にどのくらいいて、どのように動いているのかといった活動状況や、ビーチ周辺の天候などの環境状態をビッグデータとして蓄積し、それらのデータをもとに最適なライティング、プロジェクションマッピング、サウンドの演出を行う。いわばDJ、VJのような役割を果たすAIで、ビーチそのものが「生きている」かのように感じさせられる。
そしてもう1つ重要なのは、このインタラクティブなランドアートが「生命の循環」をテーマにしていることだ。銀河の爆発によって世界がはじまり、躍動するマグマに激しい雨が降り注ぐ。雨は川となり、海となり、そこに生命が生まれ、その小さな命が分裂を繰り返すことで、次第に植物が芽生え、魚や虫、鳥が発生する。それぞれの命は生を全うすると花火のように散るが、また新しい命が生まれ、再生してゆく……。この生命が織りなす一連の物語が、光と音によって表現されている。
たとえば足もとに水流を思わせるプロジェクションマッピングが映し出され、こちらが歩くことによって水面が揺れたり、心地よい鳥のさえずりが聞こえてきたりする。
シンガポールといえば、自然というより「都市」をイメージする人も多いだろう。実際、街中にはマリーナベイ・サンズに代表されるような、思わず目を奪われる造形の建築物が多く建ち並ぶ。そのシンガポールにあって、「生命の循環」をコンセプトにしたランドアートを完成させたのはなぜなのか。制作を行ったワントゥーテンのクリエイティブディレクター・引地耕太に話を聞いた(本取材は、2020年2月に実施しました)。
イベント情報
- 『Magical Shores』
-
場所:センソーサ島・シロソビーチ(シンガポール)
時間:19:30~22:30(現在は、金曜日、土曜日、日曜日のみオープン)
料金:無料