レビュー

元ビークルのケイタイモ率いる豪華13人のプログレ吹奏楽バンドによる会心の初作

渡辺裕也
2012/05/17
元ビークルのケイタイモ率いる豪華13人のプログレ吹奏楽バンドによる会心の初作

それにしても素敵なバンド名である。思わず何度も口に出したくなる発語感のよさもさることながら、どことなく非西洋圏の陽気でエキゾチックなサウンドを想起させるこのWUJA BIN BIN(ウジャビンビン)という名前だけで、筆者はこのビッグバンドへのそこはかとない期待を胸に秘めていた。たかが名前と侮るなかれ。名は体を表すとはよく言ったもので、その集団が自分たちをどう名乗るかは、時として本人たちの意識を越えてその音楽性をも左右していくのだ。そしてその予想は、見事にそれを上回る形となって目の前に現れた。

さて、そのWUJA BIN BINとは元BEAT CRUSADERSのケイタイモが自らの音楽的な志向をより大きく反映させるべくスタートさせた新プロジェクトだ。ビークルの解散とほぼ入れ替わるようにして始まったこのバンドの前身にあたるのが、同じくケイタイモがかつて在籍していたMONGHANG(モンハン)。メンバーの死という不慮の事態によって活動終了せざるを得なかったこのバンドのストーリーを引き継ぎつつ、WUJA BIN BINではケイタイモが楽曲制作のイニシアチブをより強く握っているようだ。


ビークルでは鍵盤奏者として活躍していたケイタイモだが、このバンドでは本職であるベーシストとして大いにその手腕を振るいながら大所帯をまとめていて、その様はまさにジャコ・パストリアスさながらだ。実際に彼がここで目指したのはそのジャコやフランク・ザッパのようにプレイヤーとコンダクターの両方を担うことにあったようだが、彼が束ねているメンバーの錚々たる顔ぶれを見れば、それが一朝一夕にできないことは容易に想像できるだろう。なにせこのバンドを構成しているのは、前述したMONG HANGのメンバーはもちろん、toe、DCPRG、EGO-WRAPPIN'、SCAFULL KING等といった名だたるバンドで活躍している総勢13人の奏者達。やはり彼らのスケジュールを合わせるのは至難の業だったようで、リハーサルやライブはおろか、レコーディングでもメンバー全員が集まった時間はとてもわずかなものだったという。

しかし、実際にこうして届けられた彼らのデビュー作を耳にすると、そうした手練の演奏家達によるアンサンブルからは片手間で参加したようなぬるさが微塵も感じられない。むしろそれぞれが凌ぎを削り合っているような緊張感と、遊び心も多分に含めた各プレイヤーの色が滲み出ていて、とにかくどこを切ってもスリリングなのだ。かといっていわゆるセッション音源のようなラフさもなく、なによりも楽曲の構成がよくできているので、これはもはや一枚岩のバンドとして見た方が正しいだろう。

ちなみにここで大役を担っているのが、在日ファンクやホテルニュートーキョーなど、多数の場で活躍するサックス奏者のゴセッキーこと後関好宏。彼がケイタイモの作ったデモを譜面に起こして各パートに回していることによって、このバンドは円滑に動くことができているようだ(恐らくものすごい労力)。しかし、それを置いても特筆すべきなのがケイタイモのソングライティングスキルにあることは言うまでもないだろう。彼の手による、どこかブラジル音楽の巨匠エルメート・パスコアールを思わせるフリーキーな発想に満ちた楽曲が、各メンバーのモチベーションに火を付けたことはまず間違いなさそうだ。ビークルやMONG HANGでのキャリアを知る人も、彼が作曲家としてここまでの才能を秘めていたことにはきっと驚きを感じるはずだ。


そしてこのバンドの音楽がユニークなのは、これだけ現在のポップス/ロックシーンに精通したメンバーを擁していながらも、いわゆる西洋のギターロック的な要素がほとんど見当たらないところ。ジャズやボサノヴァを通過して吹奏楽を全面に出したアンサンブルは現在の国内ポップシーンでもそうは見当たらないもので、たとえばこれが邦楽ロックフェスなどで披露されたら、リスナーに与えるインパクトは相当なものなんじゃないだろうか。

かくしてケイタイモは、かねてから構想にあったという音像を見事イメージ以上の形にしてみせた。ちなみにこのWUJA BIN BINというバンド名、ボーカルのBAがカエターノ・ヴェローゾ『LIBRO』の収録曲をテキトーに口ずさんだのが「ウジャビンビン」と歌っているように聞こえたところから名付けられたのだそうだ。このバンドの風通しのよさが窺えるいいエピソードだし、なによりもそうしたセンスがこのバンドの楽しげなムードを物語っているように思えて仕方がない。『WUJA BIN BIN』という作品は、ミックス・エンジニアを担当したA×S×Eを含めて、ケイタイモを中心に形成されたコミュニティの賜物とも言えるかもしれない。

リリース情報

WUJA BIN BIN
『WUJA BIN BIN』

2012年4月18日発売
価格:2,500円(税込)
HICC-3429 / ハイウェーブ

1. MIDDLE AGE RIOT
2. NUCLEAR SCIENCE
3. SAFE DRIVING
4. ORQUESTA YOUNG
5. AUGUST 3
6. NO KING KONG TONIGHT
7. DISTANCE EDUCATION
8. YACHIROCK
9. RAVE ANDERSON
10. IT WAS A SLOW DAY

イベント情報

『「BETRAYAL」〜WUJA BIN BIN 1st ALBUM発売記念TOUR〜』

2012年5月18日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 WWW
出演:
WUJA BIN BIN
スガダイロートリオ
DJ:原昌和(the band apart)
料金:前売3,000円 当日3,400円(共にドリンク別)

プロフィール

WUJA BIN BIN

ケイタイモ(ATOM ON SPHERE/ex.BEATCRUSADERS/ex.Mong Hang)が抱き続けた 妄想の中から生まれた楽曲を具現化する為に結成された総勢13名の大所帯プログレッシヴ吹奏楽バンド、その名も「WUJA BIN BIN(ウジャビンビン)」。2010年より少しづつ活動を続けてきた彼らが2012年に本格始動。ケイタイモ自身も本来のベーシストとしてのプレイは圧巻。プラス、多方面で活躍中の豪華メンバーが集まり、形に捕われず好き放題演奏しているスタイルにより、JAZZ、FUNK、ブラジル音楽、映画音楽、等々を内包した、唯一無二の「WUJA BIN BIN」という音楽ジャンルを確立:フランク・ザッパなどの変態性とデューク・エリントンなどの正統性、ジャコ・パストリアス・ビッグ・バンドのような確かな演奏力を武器に、ROVO、菊地成孔 DCPRG、渋さ知らズなどに対する次世代の解答というべき音楽を展開している。この度プロデューサー兼レコーディングエンジニアとしNATSUMENよりAxSxEを迎え、磐 石の体制で1stアルバムを創り上げた。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

yahyel“TAO”

音楽と映像、そしてその相互作用によって完成するyahyelの芸術表現が完全に別次元に突入したことを証明するミュージックビデオ。クライムムービーとそのサントラのような緊迫感に終始ゾクゾクする。一体いつ寝てるんですかと聞きたくなるが、監督はもちろん山田健人。「崇高」という言葉を使いたくなるほどの表現としての気高さに痺れる。(山元)

  1. 香取慎吾が「慎吾母」に ファミマ「お母さん食堂」メインビジュアル公開 1

    香取慎吾が「慎吾母」に ファミマ「お母さん食堂」メインビジュアル公開

  2. 森山未來が蒼月潮、山本美月がウテナに、テレ東『このマンガがすごい!』 2

    森山未來が蒼月潮、山本美月がウテナに、テレ東『このマンガがすごい!』

  3. 安室奈美恵の引退日に1回限りのCM放送 安室の「笑顔」集めた60秒映像 3

    安室奈美恵の引退日に1回限りのCM放送 安室の「笑顔」集めた60秒映像

  4. 乃木坂46が『anan』ジャック 表紙は白石麻衣、西野七瀬、齋藤飛鳥ら7人 4

    乃木坂46が『anan』ジャック 表紙は白石麻衣、西野七瀬、齋藤飛鳥ら7人

  5. 「女の子は皆めんどくさい」コレサワが伝える、女子の本性と本音 5

    「女の子は皆めんどくさい」コレサワが伝える、女子の本性と本音

  6. 渡辺あや脚本『ワンダーウォール』、静かに話題呼ぶ京都発ドラマ地上波再放送 6

    渡辺あや脚本『ワンダーウォール』、静かに話題呼ぶ京都発ドラマ地上波再放送

  7. 崎山蒼志が戸惑い混じりに語る、『日村がゆく』以降の喧騒の日々 7

    崎山蒼志が戸惑い混じりに語る、『日村がゆく』以降の喧騒の日々

  8. 高畑充希×山崎賢人がオタク役、福田雄一監督の実写『ヲタクに恋は難しい』 8

    高畑充希×山崎賢人がオタク役、福田雄一監督の実写『ヲタクに恋は難しい』

  9. Corneliusが世界で認められるまで。海外進出のカギは何だった? 9

    Corneliusが世界で認められるまで。海外進出のカギは何だった?

  10. 『ULTRA JAPAN 2018』開催。日本におけるEDM人気の立役者が5周年 10

    『ULTRA JAPAN 2018』開催。日本におけるEDM人気の立役者が5周年