レビュー

バイオリンとダンスの「神業」的融合を成し遂げた、新しいパフォーマーが誕生

黒田隆憲
2013/08/30
バイオリンとダンスの「神業」的融合を成し遂げた、新しいパフォーマーが誕生

「Billboard LIVE Tokyo」にてリンジー・スターリングのライブがおこなわれ、バイオリンを弾きながらアクロバティックなダンスを披露する彼女のパフォーマンスに、音楽好きの若者はもちろん、アフター5のサラリーマンやOLなど年代問わず幅広いオーディエンス層が酔いしれた。

リンジー・スターリング
リンジー・スターリング

シンセサイザーを数台積んだスタンドと、ドラムセットが置かれただけのシンプルなステージ。開演時間の20時を回ると、スクリーンに映し出されたオープニングムービーのカウントダウンが客席を煽る。彼女の声(?)によるナレーションが突然暴れ出し、映像も混沌としてきた頃に、ステージ脇からサポートメンバーが登場。力強いドラミングとスリリングなシンセベースが鳴り始めると、黒いバイオリンを抱えたリンジーが後から姿を現した。大きなピンクのリボンを頭に飾り、星座をモチーフにしたTシャツに黒いスカートというルックス。想像していたよりも小柄な体型に驚く。こんな、少女のような女性がステージ狭しと動き回りながら、「まるでエディ・ヴァン・ヘイレンのようだ」と形容された速弾きを披露するのだ。冒頭曲は“Anti Gravity”。曲名どおり、重力から解放されたように舞い踊るリンジーに、早くもオーディエンスからは大きな歓声が沸き上がった。

続いて“Spontaneous Me”では、自然発生的な手拍子に触発されたのか、リンジーのダンスがさらに激しくなる。スキップしたかと思えばホッピング、さらにはバレリーナのような片足立ちまで飛び出した。

リンジー・スターリング

「みなさんこんばんは、リンジー・スターリングです! みなさんの笑顔と美味しそうな食事を見ていたら、私までお腹空いてきちゃった(笑)。日本に来たのは今回が初めてなので、とっても興奮しています!」

カリフォルニアガールらしい屈託のないチャーミングな笑顔に、会場の雰囲気もさらになごむ。“Electric Daisy Violin”では、ドラムのブレイクに合わせてブリッジを決めながらのロングトーン。それにしても、これだけ動き回りながら高速パッセージを繰り広げているのに、ピッチがほとんど狂わないのは「神業」としか言いようがない。“Shadows”ではスクリーンにPVが映し出されたが、そこで踊っているリンジーと、目の前にいるリンジーの踊りがほぼシンクロしていることから、その曲はほとんどがその場で思いついたアドリブではなく、しっかりと決め込んだコレオグラフィー(振り付け)だということが分かる。その方がより難易度が高いのは明らかだ。片足立ちのままブリッジしてリズムを取るなんて、バイオリンを弾いてなくても難しそうなことを、涼し気な笑顔でやってのける。

リンジー・スターリング

「続いては、誰もが知っているアーティストのカバーをやります。分かった人は一緒に歌ってね」そう言って弾き始めたのは、なんとマイケル・ジャクソンのカバー。“今夜はビート・イット”から“ビリー・ジーン”、“スタート・サムシング”そして“スムーズ・クリミナル”へとつなげていくメドレーに、オーディエンスからは割れんばかりの喝采が上がった。

ドラマーとキーボーディストが退場し、完全に一人きりになった彼女が『ゼルダの伝説』のテーマソングを弾き始めると、客席は異様な熱を帯び始める。やはりゲーム音楽は人気があるようだ。まるでアイスリンクを滑るフィギュアスケート選手のような、しなやかで華麗な動きに、あちこちから溜息が漏れる。かと思えばスパニッシュなガットギターに合わせて踊る姿はフラメンコダンサーのように情熱的だ。次の曲“Skyrim”で、再登場のタイミングを間違えて出てきてしまったドラマー&キーボーディストに、リンジーが慌てて「Not Yet!」と叫ぶハプニングも、会場の雰囲気をよりなごませ結果オーライに。この曲は、迫力たっぷりの男性コーラスが徐々に積み重なっていき、軽やかなバイオリンと大変ユニークなハーモニーを生み出していた。

リンジー・スターリング

オーディエンスの一人から「I Love You!」と声が挙り、即座に「I Love You,Too」と返す。そんな気さくな彼女が、「踊るバイオリニスト」という夢に向かって進みだしたとき、周囲からは「そんな夢、諦めなよ」と散々言われたという。それでも諦めずにいたからこそ、ここまでこれたのだ。そんなエピソードをMCで明かしつつ“Transcendence”へ。途中、ムーンウォークやブリッジを交えたコレオグラフィーには、フロアからどよめきにも似た歓声が。“My Immortal”を経て、ラスト曲は“Crystallize”。ダブステップのリズムと、美しくも切ないバイオリンの音色&旋律が有終の美を飾った。

およそ1時間のステージを通して、「バイオリン・エレクトロニック・ダブステップ」という、前人未到のスタイルを確立しようと奮闘する、若き才女リンジー・スターリングの健気な姿に心を打たれた一夜だった。

リリース情報

リンジー・スターリング
『Lindsey Stilring』

2013年8月7日からiTunes Storeほかで配信リリース

1. Electric Daisy Violin
2. Zi-Zi's Journey
3. Crystallize
4. Song of the Caged Bird
5. Moon Trance
6. Minimal Beat
7. Transcendence
8. Elements
9. Shadows
10. Spontaneous Me
11. Anti Gravity
12. Stars Align

プロフィール

Lindsey Stirling(リンジー・スターリング)

2012年9月にセルフタイトル・アルバム『Lindsey Stirling』でデビューし、”violin-electronic-dubstep(バイオリン・エレクトロニック・ダブステップ)”という独自のスタイルで大成功をおさめる。アルバムをリリースする前にすでに、リンジーは300,000以上のダウンロードを記録しており、デジタル・エレクトロニック・チャートにおいてTop100にはいるなど、世界中でまさに”知る人ぞ知る”アーティストであった。リンジーは楽曲はもちろんのこと映像制作まで自分で行う。彼女が自信のYouTubeページにアップしている動画の視聴者数は2,700,000人を超え、動画の総再生回数は3,750,000,000を超える驚異的な数字を記録。YouTubeチャンネルやFacebookなどをはじめとする各SNSでの驚異的な"口コミ"により、リンジーの名は世界中に響き渡ることになる。わずか5歳のときからヴァイオリニストとしてクラシックの教育を受けはじめ、踊ることが大好きだった少女が今、世界を舞台に駆け巡る。

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