レビュー

「泣けるCM」15分もの動画に込められたインテルの想いと広告戦略

宮崎智之
2014/02/25
「泣けるCM」15分もの動画に込められたインテルの想いと広告戦略

ガンで亡くなった友人の意思を継ぐために

世界的な半導体メーカー・インテルは、約15分にも及ぶ長さのCM『キャッチボール』をインターネット上に公開した。誰でも無料で試聴することが可能である。最近ではevianやVolvo Trucksなどの企業も、テレビではなくYouTubeなどのネット上にプロモーション動画を投稿し、6千万回以上の再生回数を記録するなど、ネット動画は新たなマーケティング戦略として注目を集めている。しかし、インテルが公開した『キャッチボール』の約15分という長さは異例だ。まるで1つの短編映画のような作品となっているこのCMで、インテルはなにを伝えたかったのだろうか。

『キャッチボール』は、同じ少年野球チームに所属する友人をガンで亡くした少年が主人公の物語。悲しみに沈み、野球の練習にも出られないでいた少年だったが、友人が遺した「野球ノート」に心を動かされ、友人を死に追いやったガンについてインターネットで調べ始める。

そこで発見したのが、日本の研究者が提唱する「コンピューターの利用により、ガン治療の標的となる物質を効率よく探し出す」という学説。少年は少年野球などの友人たちから協力を得てパソコンをかき集め、研究者のもとを訪れてある行動を起こす、というストーリーだ。

インテルがFacebookページで「世界をもっとよくしたい。インテルのテクノロジーにはこんな気持ちがつまっている。そんな切なくて、でも勇気のでる、ちょっと長いコマーシャル」と紹介するように、大切な友人を亡くした失意の淵から前へ踏み出す勇気が描かれている。


作中で何度も流れる歌の「ひとつになれば、みんなでやれば、なにかができる」という歌詞は、少年たちが亡き友人のような患者を二度と出したくないという気持ちで知恵を絞り、研究者に協力を申し出るストーリーとリンクしている。また、作中で2回ほど、友人の幻と少年がキャッチボールするシーンが描かれているが、投げられたボール(課題)をキャッチして投げ返すという行為を、テクノロジーの進歩に投影させた表現だと解釈することもできる。

インテルが伝えたかったテクノロジーの本質

インテルと言えば、「インテル、はいってる」のキャッチコピーに象徴されるように、コンピューター内部に搭載されるマイクロプロセッサー製品を主力とする企業だ。テクノロジー追求という、ともすれば消費者に冷たいイメージを抱かれることもあるだろう。しかし、CM『キャッチボール』で描かれているのは、そうしたスペックの重要性だけではなく、人間の想いが起こすイノベーションの大切さである。そのことをCMの最後で「すぐれたアイデアは、心の奥からやってくる」「テクノロジーに心を」という言葉で視聴者に伝えている。約15分のインターネットCMという新たなマーケティング手法とともに、「心の奥からやってくるアイデア」によってインテルがどんな明るい未来を見せてくれるのか、今後も注目が集まりそうだ。

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