レビュー

My Hair is Badが描く人生のドラマ。『boys』に捧ぐ徹底レビュー

撮影:Masanori Fujikawa 編集:矢島大地(CINRA.NET編集部)
My Hair is Badが描く人生のドラマ。『boys』に捧ぐ徹底レビュー

アラフォー(♂)はどうやってマイヘアに惚れたのか テキスト:阿刀“DA”大志

自分はMy Hair is Badの音楽にはわりとフラットな距離感で接していて、アルバムこそ『woman's』から購入しているものの、メンバーともまだ話したことはないし、ステージ上以外で彼らが話しているところも一切見たことがない。なので、今回こういったレビューを綴る機会を与えてもらう資格があるのかどうかもわからない。

山田淳
山田淳

とは言え、彼らの音楽は当然好きだ。自分がマイヘアの音楽に初めて触れたのは2016年の『SWEET LOVE SHOWER』。あのときの“フロムナウオン”の熱演は今でも覚えている。椎木知仁の独白に静まり返る数千人。あのヒリヒリした空気感にはパンク的なものがあったし、ただのギターロックバンドではないんだろうなと直感的に感じさせた。恋愛の曲が多いのに、「全員ぶっ飛ばしてやる」ぐらいの荒ぶり方でライブする姿が好きだ。

自分の中での評価が固まったのは、その年の秋にリリースされた『woman’s』。偏見も多少混じってはいるが、最近の20代のギターロックバンド(に限らないが)は音源がつまらないと感じることが多い。レコーディング技術の進歩を存分に発揮し、サウンドが過度に装飾されていたり、演奏がやけに整っていたり、ボーカルも非常にキレイに仕上がっている。そうすることで聴こえはよくなるし、ものすごい音圧によって演奏に迫力も出る。ただ、人間味溢れるスリリングな要素が一切削り取られてしまう。常日頃、もったいないと思っている。

しかしどういう判断でそうなったのかはわからないが、マイヘアの音源にはそういった箇所がない。3ピースが鳴らす音に余計な混ぜものはなく、ボーカルも演奏も変に整頓されていない。どの楽器も臨場感たっぷりに鳴っている。そんな生々しさがいいのだ。聴感的には1990年代風の雰囲気で、各楽器が自然なバランスで成り立っている。今のメジャーシーンでここまで剥き出しの音を音源に収めているバンドは少ないんじゃないか。だからと言って、他のバンドが彼らのマネをしようとしても、きっと同じようにはならないだろう。なぜか。マイヘアは、椎木知仁のソングライターとしての能力が高く、一聴すればそれとわかる声がずば抜けて魅力的だから。椎木の歌を聴いていると、某ミュージシャンが語っていた話を思い出す。勢いのあるバンドならばZeppクラスまでは行ける。それより上に行けるか行けないかはボーカルの声次第だ、と。

椎木知仁
椎木知仁

話は逸れたが、椎木のボーカル、シンプルながらも卓越したメロディ、そして彼らのもうひとつの持ち味である、自分の青春時代を重ね合わせたくなるような青臭い歌詞がサウンドの質感との相乗効果を生み出し、よりグッとくる仕組みになってるんじゃないかと思う。まあでもこれは後づけの理屈で、自分はメロディと声の組み合わせの時点で十分にヤラれてしまっていた。

バンド自身もそこが自分たちの生命線であることは当然わかっているはずだし、そこに絶対的な自信を持っているんだろう。その証拠に録音の方向性はメジャーデビュー以降一貫している。それだけでなく、中盤にショートチューンを配置するアルバム構成、アルバムタイトルやアートワークに至るまで強固なフォーマットが出来上がっていて、誰が言い出しっぺかはわからないが、チームとしての偏執的な性格もうかがえる。aikoのスタイルに通ずるところがあるなと。

左から:1stフルアルバム『narimi』、2ndフルアルバム『Woman’s』、3rdフルアルバム『mothers』
左から:1stフルアルバム『narimi』、2ndフルアルバム『Woman’s』、3rdフルアルバム『mothers』

ということで、最新作『boys』もサウンド面における劇的な変化はなく、相変わらずいい歌が並んでいる。だが、これまでよりも楽曲に幅が生まれ、より豊かになった印象だ。“ホームタウン”は歳を重ねてきたからこそ生まれた歌だろうし、人としての成長が素直に作品に反映されているのは健全だと思う。“化粧”で導入されているストリングスもごく自然に3人の音に溶け込んでいて違和感がない。そうやって、My Hair is Badというバンドの音楽はこれからも完成されることはなく、そのときそのときの自分たちの現実と正直に向き合って、足したり引いたりを繰り返していくんだと思う。そんな心の揺れを、なんのフィルターも通さずに見せてくれる3人の姿を、これからも適度な距離感で見つめていたい。

山本大樹
山本大樹
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リリース情報

My Hair is Bad『boys』初回限定盤
My Hair is Bad
『boys』初回限定盤(紙ジャケット仕様 / CD+DVD)

2019年6月26日(水)発売
価格:4,536円(税込)
UPCH-29333

[CD]
1.君が海
2.青
3.浮気のとなりで
4.化粧
5.観覧車
6.ホームタウン
7.one
8.愛の毒
9.lighter
10.怠惰でいいとも!
11.虜
12.舞台をおりて
13.芝居

[DVD]
LIVE at LIVE HOUSE「心斎橋BRONZE」2019年1月12日
『boys』レコーディングドキュメント

My Hair is Bad『boys』通常盤
My Hair is Bad
『boys』通常盤(CD)

2019年6月26日(水)発売
価格:3,024円(税込)

1.君が海
2.青
3.浮気のとなりで
4.化粧
5.観覧車
6.ホームタウン
7.one
8.愛の毒
9.lighter
10.怠惰でいいとも!
11.虜
12.舞台をおりて
13.芝居

プロフィール

My Hair is Bad
My Hair is Bad(まい へあー いず ばっど)

椎木知仁(Vo,Gt)、山本 大樹(バヤ / Ba,Cho)、山田淳(やまじゅん / Dr)による、新潟県・上越市出身の3ピースロックバンド。2008年結成。2013年にTHE NINTH APOLLOより『昨日になりたくて』をリリースし、2016年には『時代をあつめて』でEMI Recordsからメジャーデビュー。2019年6月26日の『boys』リリースに伴う「サバイブホームランツアー」では、最終公演をさいたまスーパーアリーナで2days開催することを発表した。

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