レビュー

金子由里奈監督『眠る虫』 幽霊の声を聞き、手を繋いで生きていく

テキスト
高島鈴
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

全ての「いないけれどもいる」ものたち。「幽霊」は何千何万と積み重なって存在している

死者は幽霊であるが、死者の魂だけが幽霊ではない。場所に介在した誰かの記憶、その土地を通り過ぎていった人々のざわめき、本来そこに存在するべきであったけれどもそうならなかった誰かの影、それら全ての「いないけれどもいる」ものたちを含めて、幽霊である。幽霊はすでに常に、われらのそばにひしめき合っている。

私にとっては初めて乗るバスの座席でも、誰かにとっては30年間通勤の際に腰掛け続けた定位置であり、誰かにとっては人生で初めてバス酔いして嘔吐したとき座っていた椅子かもしれず、また別の誰かにとっては「ねえ今日佐々木さん調子…