今週の編集部まとめ

毎週火曜日更新 2020年11月17日
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編集部員の、ちょっとひとこと

  • 佐伯享介(CINRA.NET編集部)
    佐伯享介(CINRA.NET編集部)

    古くて新しいもの

    「おどりは圧倒的にまちがっている。なんの役にもたちやしない」

    踊りながら念仏を唱える「踊り念仏」で有名な時宗の開祖・一遍。そのアナーキックな生涯を綴った、栗原康による評伝『死してなお踊れ 一遍上人伝』の一節です。

    今年はごくごく個人的に、「死」「生」「救い」みたいな、大きなテーマについて考えることが多かった1年でした。こういうテーマは古くて、でも、いつでも新しいものだと思います。自分自身にとっては、根源的なもの(だと自分が思っているもの)、をじっくりと探るような時期だったのかもしれません。そのついでに「死」に関する本を集めまくってしまい、同居人から不審がられてしまいました。

    そういうテーマを抱えていたときに手にとったこの本、めっぽう面白かったです。「僧侶の評伝、地味そう」というこちらの先入観を、パンチライン満載のリズミカルな文体でいとも爽快に破壊してしまう。全国を行脚しながら「踊り念仏」に行き着く一遍の生き様を史料をもとに物語っていくのだけど、読み進めていくといつのまにか一遍が少年漫画の主人公にみえてきて、それはもうアニメ化、ドラマ化、映画化だってできてしまいそうなほどわくわくする。

    でも読み終えるころには、やっぱりこれは文章だからこそできる芸当なのかもしれないとも思わされる。ようするにこの文は、まさに「文芸」というものなのかもしれません。おすすめです。河出文庫版の解説は武田砂鉄さんが執筆されてます。

  • 矢澤拓(CINRA.NET編集部)
    矢澤拓(CINRA.NET編集部)

    「唐突に理解する」という現象と、理解と反抗の狭間

    コロナ以降、元々好きだった庭遊びに拍車がかかってきています。今年は野菜を複数植えたりハーブを育てたり、庭でキャンプまがいのことをしたり、鳥用のエサ台を用意したりして、多くの時間を庭で過ごしています。そしてその変化に毎日驚かされます。楽しい。

    そのためか、これまでより朝早起きするようになり、起きるとまず庭へ。植物の変化、エサ箱のエサが減っているか、ナメクジの這ったあとはないか、テーブルに残っている夜露は。そうした毎日の細々とした変化がとても面白い。

    そんなことを感じていたつい先日、そういえば昔から父親が「休みの日にそんなに長く寝てもったいない」と、休日は遅くまで寝ている僕に言ってきて疎ましかったことを思い出しました。

    父親は、休日になると朝早く(6時とか)起きて、7時には外に出て菜園(実家は農家なのでとても広いです)の世話や、菜園のためのたくさんある農機具(ショベルカーとか耕作機とか)のメンテナンスをしています。僕からすると、なぜ休日にもかかわらず朝早くから仕事しているんだ……と謎でしかありませんでした。ですが、平日普通に仕事をしている父にとって、菜園や農機具いじりはよく考えれば趣味か、と唐突に気づきました。

    僕と変わらない会社員だった父にとっては、土日は遊びの時間で、やりたいことが溢れている。外の趣味だから明るい時間でしか楽しめない。そう考えると当たり前の話なわけですが、今更気づくという。時間を目一杯使いたいから明るい時間に眠っているなんてもったいない、と。

    これまで映画やお酒が趣味だった僕にとっては、むしろ夜の方が楽しめるのでその感覚はわかりませんでした。父親に対して、休日まで外に出て仕事をして、趣味はないんだろうか、と思っていましたが、いやいや、むしろ僕以上に、ストイックに楽しいことに時間を投じているじゃないか、と、痺れるような感覚がありました。唐突に、その言葉の意味を理解したわけです。

    何を楽しいと思うか、何にどんな時間を投じるか、何を大切にするかというのは当たり前に人それぞれ。自分以外の人の感覚を、自分の物差しではかることがどれだけ浅ましいのかということを思います。では、それが組織の視点ならどうか。唯一の価値観で何かを成し遂げようと人を集めたり排除することは、浅ましくないのか。理解と反抗の狭間で常にブレています。

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