あの人の音楽が生まれる部屋

あの人の音楽が生まれる部屋 Vol.14 BOOM BOOM SATELLITES

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あの人の音楽が生まれる部屋 vol.14:BOOM BOOM SATELLITES

二人に襲いかかった大きな試練
それ故に生むことのできるハードな音楽

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そんな彼らに大きな試練がやってきたのは、通算8枚目のアルバム『EMBRACE』(2013年)をリリースする直前でした。川島さんが脳腫瘍を発症し、すでに決まっていたツアーを全てキャンセルという苦渋の選択をすることに。実は川島さんにとって3回目の発症だった脳腫瘍を初めて公表し、治療に専念するための活動休止を乗り越えたことによって、彼らの音楽への向き合い方は如何に変化したのでしょうか。

川島:自分自身の人生観とか、もちろん大きく変わったところはありますけど、それを音楽の中にドラスティックに持ち込むようなことは、むしろしたくないと思っています。例えば弱音を吐いてみたり、ネガティブな言動で共感を得ようとしたりというのは、ロックミュージックのあり方として魅力を感じていた時期もあったし、そういうやり方が支持を集めやすいのも分かるんですけど……僕はそういうやり方はしたくないんですよね。むしろ、聴き手を鼓舞するような存在でありたいと思っています。それは言葉で直接じゃなくてもいいと思うし、僕らは僕らなりのやり方で、サウンドやライブの見せ方でそれをやりたいと思う。

中野:それがロックンロールの「新しいカタチ」とも言えるんじゃないかな、と思ってます。川島くんは脳腫瘍で3回も手術を受けているという、とても稀なミュージシャンですよね。例えばドラッグやアルコールなど、退廃的なライフスタイルとロックは、常に密接に結びついてきたところはあるじゃないですか。じゃあ、「それとは逆の方向へ進むと、ロックンロールじゃなくなっていくのか?」と考えると、「いや、むしろ、その稀な人生との向き合い方や、その都度起こった彼の気持ちの変化を通して、全く別のハードな音楽を生むことができるんじゃないか?」と思うんです。それを、この先の作品やライブで示すことが出来たらいいなと思ってます。ステージに上がって歌っているときとか、川島くんの隣で見てるとなんだか不思議なんですよね。大勢の人たちの前で、大きな声で歌うっていうのは、この人にとってどんな意味があるのだろうとか、そういうことを考えながら一緒にライブをしたり、レコーディングをしたりしているんですよ。僕は、そんな川島くんの人生そのものに、興味がある。

現在新しいアルバムを制作中
説得力ある温かさとフィジカルさに期待

BOOM BOOM SATELLITESのピック

そんな彼らは現在、新しいアルバムを発表するべく、着々と準備を進めています。収録曲の中から一足先に発表された“ONLY BLOOD”は、気鋭の若手クリエーター山本太陽(Flapper3)がPVを担当。また、アルバムのキービジュアルともなる生花の映像を、フラワークリエイター篠崎恵美が手がけて発表しました。他にも、様々なジャンルのクリエイターとのコラボレーションを通じて、新たなBOOM BOOM SATELLITESの一面を次々と見せてくれる予定です。

中野:ニューアルバムは、現状6、7割くらい出来上がっています。前作『EMBRACE』の延長線上にあるサウンドで、より温かみのある内容に仕上がりそうですね。出来上がっている曲を人に聴かせると、「明るい」って言われるんです。まあ、底抜けに明るいってわけじゃないんですけど(笑)、音楽を通して誰かを幸せにしたいという気持ちは、よりダイレクトに表現していると思います。もちろん、僕らが作る音楽だから、フィジカルな機能を持っているかどうかもすごく重要で、それとどうバランスを取っていくか、メロディアスな楽曲が、どうすれば肉体性を持ち得るかを考えていきたいですね。先日、乃木坂46のライブオープニング曲を作る機会をもらったんですけど、その曲では、僕らのポップさを全開にしてみたんです。それが予想以上にいい出来で、評判も良くて。そういう要素も次のアルバムに加えられたら、東京からブラジルくらい、振り幅の大きなアルバムになりそうですね(笑)。

いつ途絶えても悔いなき日々を
本気で意識する二人が作る音

BOOM BOOM SATELLITESの機材

乃木坂46への楽曲提供はもちろん、最近は異ジャンルの若手アーティストとの対バンなど、「意外」と思えるような様々な分野のアーティストと、積極的に交流を図っている彼ら。結成から24年の間に築き上げてきたストイックな美学は、「もはや何をやっても揺るがない」という、確固たる自信があるからこそ、ここまで振り幅を大きく活動することが出来るのではないでしょうか。

中野:そんな、達観できてるわけでもないですけどね(笑)。でも、例えば「あれをやったらこう思われるんじゃないか」とか、「誰と何をしたら、ファンはどう思うだろう」とかを考え過ぎちゃうと、自分たちの経験値が上がらないだけだから。それって結局、自分たちが枯れていくだけだと思うんですよ。若いバンドと共演すれば、彼らから学ぶことは山のようにあるし、自分たちの活動も風通しが良くなる。過度なこだわりは持たず、そういうことには今後も積極的に取り組んでいきたいと思っています。

川島:とにかく、目の前のことを精一杯やりたい。ライブでは最高のステージを見せたいし、今作っている新作は最高のものに仕上げたい。そうやって一つひとつ丁寧にやっていけば、さらに先の道が開けると思うんですよね。そうしていれば、たとえ何かのきっかけに立ち消えたとしても、それまで聴いてくれた人たちはきっと満足してくれると思うし、僕も、このバンドも、満足だと思える気がします。目の前のことを丁寧に、思い残すことのないように取り組んでいきたい。

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