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『YEN TOWN BANDは、なぜ20年ぶりに本格的に復活するのか?』 Vol.2 岩井俊二も駆けつけた復活ライブ。「架空のバンド」が鳴らした音楽

『YEN TOWN BANDは、なぜ20年ぶりに本格的に復活するのか?』 Vol.2 岩井俊二も駆けつけた復活ライブ。「架空のバンド」が鳴らした音楽

柴那典
撮影:太田好治
2015/10/13
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ついにYEN TOWN BANDが再始動を果たした。9月12日に『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015』で12年ぶりのライブが行われ、10月からはツアー、12月2日にはこの日に初披露された新曲“アイノネ”がシングルとしてリリースされる。

前回のインタビューで、小林武史はこの日のライブを「始まりの場にしたい」と語っていた。今の時代にYEN TOWN BANDがやるべき役割があるという意志を見せていた。果たしてそれはどのようなものだったのか。幻想的な空間を作り上げたこの日のライブの模様、そして「見立て」というキーワードから、その意義を探っていく。

里山の特設ステージで無数の羽虫にも大歓迎された、幻想的なYEN TOWN BAND復活ライブ

「これが蝶々だったらいいのにね」。ライブ中、純白のドレスを身にまとったCharaはそう言って笑みを見せた。無数の羽虫がその周りを羽ばたき、スポットライトを浴びて青や緑に光っていた。伝説的ともいえる架空のバンド、YEN TOWN BANDの約12年ぶりの復活。それは、とても神秘的な体験だった。単なる懐古では全くない。2015年の今に、新しい「幻想」のあり方を響かせていた。そのことが、何より印象的だった。

『大地の芸術祭 2015 YEN TOWN BAND @NO×BUTAI produced by Takeshi Kobayashi』ライブ風景
『大地の芸術祭 2015 YEN TOWN BAND @NO×BUTAI produced by Takeshi Kobayashi』ライブ風景

9月12日。新潟県十日町市・津南町で約2か月にわたって開催された『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015』のクロージング前夜に、ライブは行われた。場所はローカル鉄道のほくほく線まつだい駅を降りた先にある、まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」。オランダの建築家グループMVRDVが設計した建物は四方に足が生えたような特徴的な形で、その周囲に現代アート作品が点在している。ステージはその1階部分の中庭に設けられた。円形の特設ステージが中央にあり、観客が360度ぐるりとそれを取り囲むような形だ。争奪戦となったチケットを手にした約千人のファンがそこに集まる。

まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」
まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」

17時半をすこしまわった開演前。筆者の居た位置からは、ステージの背景に、棚田と、そこに置かれた農作業をする人々の姿をかたどった彫刻作品が見えた。旧ソ連(現ウクライナ)に生まれたアーティスト、イリヤ&エミリア・カバコフが手がけた『棚田』というインスタレーションだ。さらにその向こうには森林と山々の雄大な緑が広がっている。自然とアートが1つになった空間という舞台。その瞬間、プロデュースをつとめる小林武史が『大地の芸術祭』を復活の場に選んだ理由が、少しわかった気がした。

『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』 Ilya & Emilia Kabakov『The Rice Field』2000年 Photo:Osamu Nakamura
『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』 Ilya & Emilia Kabakov『The Rice Field』2000年 Photo:Osamu Nakamura

「取り残されたもの」に新しい息を吹き込む、『大地の芸術祭』

その日は、早朝に出発して車を走らせ、午前中に新潟県十日町市に到着した。ライブを観る前に『大地の芸術祭』を実際に観て回ろうと思っていた。編集部からのオファーではない。ライブレポートを書くことまでは決まっていた。しかし、東京から開演時間に急いで駆けつけて、ライブだけを観てトンボ返りで帰っても、結局何もわからないんじゃないだろうか? そんな直感があった。ステージを目撃しただけでは、なぜYEN TOWN BANDが約20年の時を越えて甦り、何をしようとしているのか、その核心の部分を伝えることはできないんじゃないだろうか? そんな風に思って予定を組んだ。

その直感は正しかった。

2000年に始まった『大地の芸術祭』は3年に1度行われ、今年で6回目となる。回を重ねるごとに参加アーティストも動員も増え、今年の来訪者は、7月26日から9月13日までの開催期間で50万人を超えた。規模も広大だ。十日町市と津南町の市街地や里山地域に約380点のアート作品が点在する。エリア全体の面積は東京23区以上になる。とても1日で回りきれる規模ではない。

『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』展示風景 草間彌生『Tsumari in Bloom』2000年 photo:Osamu Nakamura
『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』展示風景 草間彌生『Tsumari in Bloom』2000年 photo:Osamu Nakamura

『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』展示風景 Richard Wilson『Set North for Japan(74°33’2”)』 photo:Shigeo Anzai
『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』展示風景 Richard Wilson『Set North for Japan(74°33’2”)』 photo:Shigeo Anzai

それでも、いくつかの作品を観てまわり、木々の緑と美しい景観の中を車で走り、地域の人たちやボランティアの人たちと言葉を交わすなかで、アート作品だけでなく、その場所にあった空気を少しだけ体感することができた。そして痛感したのは、この芸術祭が「取り残されたもの」に息を吹き込む試みだ、ということ。

豪雪地帯でもある十日町市と津南町の人口は約7万人。過疎化はかなり進行している。道を走っていても、打ち棄てられ朽ちかけた家屋がところどころで目に入る。作品のほとんどは、そういう里山の自然の中に置かれている。廃校になった小学校、再生した古民家そのものが作品になっていたり、そこに宿泊できたりもする。国際的に活躍する著名なアーティストの作品が、地域の風景と、その場所に住む人たちの暮らしに根付いている。

『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』 James Turrell『光の館』2000年 photo:Tsutomu Yamada
『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』 James Turrell『光の館』2000年 photo:Tsutomu Yamada

なるほど、と思った。いかにアート作品があったからといって、少子高齢化や過疎化の流れ自体を食い止めるのは難しい。大きな現実を芸術の力で変えることはできない。しかし、それを「見立てる」ことはできる。目の前にある対象を別のものになぞらえることで、実在しないものを、あたかもそこにあるかのように思い描くことができる。それを想像させることで「取り残されたもの」に新しい価値や新しい息吹を宿すことができる。そもそも日本庭園における枯山水などに顕著なように、日本文化はそういう「見立て」が得意だ。

だからこそ、『大地の芸術祭』に立つべきは「架空のバンド」だったのだろう。

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インフォメーション

イベント情報

『JFL presents LIVE FOR THE NEXT supported by ELECOM』

2015年10月17日(土)
会場:北海道 札幌 Zepp Sapporo
出演:
YEN TOWN BAND
ACIDMAN
Lily Chou-Chou

2015年10月22日(木)
会場:東京都 お台場 Zepp Tokyo
出演:
YEN TOWN BAND
amazarashi
Lily Chou-Chou

2015年10月25日(日)
会場:福岡県 Zepp Fukuoka
出演:
YEN TOWN BAND
クリープハイプ
Lily Chou-Chou

2015年10月26日(月)
会場:愛知県 名古屋 Zepp Nagoya
出演:
YEN TOWN BAND
miwa
藤巻亮太

2015年10月28日(水)
会場:大阪府 Zepp Namba
出演:
YEN TOWN BAND
スキマスイッチ

リリース情報

YEN TOWN BAND
『アイノネ』初回限定盤(2CD)

2015年12月2日(水)発売
価格:1,620円(税込)
UMCK-9796/7

[DISC1]
1. アイノネ
2. タイトル未定
3. アイノネ(instrumental)
4. タイトル未定(instrumental)
[DISC2]
・“Swallowtail Butterfly ~あいのうた~”を含む、『大地の芸術祭 2015 YEN TOWN BAND @NO×BUTAI produced by Takeshi Kobayashi』のライブ音源3曲収録予定

YEN TOWN BAND
『アイノネ』通常盤(CD)

2015年12月2日(水)発売
価格:1,080円(税込)
UMCK-5588

1. アイノネ
2. タイトル未定
3. アイノネ(instrumental)
4. タイトル未定(instrumental)

YEN TOWN BAND
『MONTAGE』デジタルリマスター盤 初回限定盤(CD+DVD)

2015年12月2日(水)発売
価格:6,264円(税込)
UMCK-9798

[CD]
1. Sunday Park
2. Mama's alright
3. She don't care
4. Swallowtail Butterfly ~あいのうた~
5. 上海 ベイベ
6. してよ してよ
7. 小さな手のひら
8. My way
[DVD]
・映画『スワロウテイル』(監督:岩井俊二)

YEN TOWN BAND
『MONTAGE』デジタルリマスター盤 通常盤(CD)

2015年12月2日(水)発売
価格:2,160円(税込)
UMCK-1529

1. Sunday Park
2. Mama's alright
3. She don't care
4. Swallowtail Butterfly ~あいのうた~
5. 上海 ベイベ
6. してよ してよ
7. 小さな手のひら
8. My way

リリース情報

YEN TOWN BAND
『MONTAGE』デジタルリマスター盤(アナログ12inch)

2015年12月2日(水)発売
価格:2,160円(税込)
UMCK-1529

1. Sunday Park
2. Mama's alright
3. She don't care
4. Swallowtail Butterfly ~あいのうた~
5. 上海 ベイベ
6. してよ してよ
7. 小さな手のひら
8. My way

プロフィール

YEN TOWN BAND(いぇんたうんばんど)

岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』(1996年)の音楽を担当した小林武史のプロデュースにより、劇中に登場した架空のバンド。ボーカルは、主人公グリコ役を演じたChara。シングル『Swallowtail Butterfly ~あいのうた~』、そしてアルバム『MONTAGE』はオリコンチャートでもシングル / アルバム同時1位となり大ヒットを記録した。9月12日、新潟で開催される『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015』にて、12年ぶりのライブを行い、10月13日からは、19年ぶりの新曲“アイノネ”が全国JFL5局のラジオにて独占オンエア開始となる。さらに10月からは全国5都市を巡るライブイベント『JFL presents LIVE FOR THE NEXT supported by ELECOM』に出演することも発表された。

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