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佐々木敦×限界小説研究会トークショー

佐々木敦×限界小説研究会トークショーをdel.icio.usに追加 このエントリーをはてなブックマークに追加 佐々木敦×限界小説研究会トークショーをlivedoorクリップに追加 佐々木敦×限界小説研究会トークショーをlivedoorクリップに追加 (2009/08/26)

2009年7月、南雲堂より評論集『社会は存在しない ――セカイ系文化論』が刊行されたのを記念して、8月2日(日)、青山ブックセンターにてトークショーが行われた。登壇したのは、著者である限界小説研究会から蔓葉信博、渡邉大輔、そして1980年代以降の日本思想について概観した『ニッポンの思想』を上梓したばかりの批評家・佐々木敦の各氏だ。トークショーでは、論集のテーマともなった「セカイ系」と呼ばれる、2000年代を代表するキーワードを巡り、白熱した議論が展開された。テン年代(2010年代)に批評が向かう道とはどこなのか、その方向性を示唆した貴重なセッションを、ぜひご一読いただきたい。

(テキスト・撮影:小林宏彰)

PROFILE

佐々木敦
1964年生まれ。批評家。HEADZ主宰。雑誌エクス・ポ/ヒアホン編集発行人。BRAINZ塾長。早稲田大学および武蔵野美術大学非常勤講師。『ニッポンの思想』『批評とは何か?』『絶対安全文芸批評』『テクノイズ・マテリアリズム』など著書多数。


蔓葉信博
1975年生まれ。ミステリ評論家。『ジャーロ』『メフィスト』『ユリイカ』などに寄稿。「ケイオス・メルヘン――古野まほろ論」(『メフィスト』09年VOL.1)、「菅野よう子と広告音楽」(『ユリイカ』09年8月号)など。


渡邉大輔
1982年生まれ。文芸批評家。『群像』『ユリイカ』『メフィスト』などに寄稿。論文に「<セカイ>認識の方法へ」(『波状言論』22号)、「ポスト・ハリウッドは規約で遊ぶ。」(『ユリイカ』08年7月号)、「現代ミステリは「希望」を語る」(『メフィスト』09年VOL.2)など。

「限界小説研究会」って、なかなかカッコいいネーミングですよね?(佐々木)


『今日の日はさようなら』(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の挿入歌)の流れる中、登壇者たちが登場。


渡邉:なんか、この音楽を聴きながら登場すると、俺、なにかを卒業するのかなっていう気分になってきましたね…(笑)

山田:(無視して)本日の司会を務めます、山田和正です。よろしくお願いします。まずは登壇者の紹介をさせていただきますと、右端に座っていらっしゃるのが、批評家の佐々木敦さんです。その隣が限界小説研究会から、蔓葉信博さん、そして渡邉大輔さんです。皆さん、本日はよろしくお願いします(会場から拍手)。

本日のイベントは、7月に南雲堂さんから刊行された書籍『社会は存在しない ――セカイ系文化論』(著・限界小説研究会、以下『社会は存在しない』と表記)の、刊行記念トークショーなのですが、まだ読んでない方もいらっしゃると思いますので、まずは自己紹介をしつつ、この本の内容について簡単に説明していただければと思います。

佐々木敦×限界小説研究会『社会は存在しない ――セカイ系文化論』刊行記念トークショー
蔓葉信博

蔓葉:蔓葉と申します。僕はミステリ評論を主戦場にしています。今回の論集では軸となっている「セカイ系」というテーマですが、そもそも「セカイ系」とは、2000年代前半にネット上で誕生した言葉で、「物語の主人公(ボク)と、彼が思いを寄せるヒロイン(キミ)の二者関係を中心とした小さな日常(キミとボク)と、「世界の危機」「この世の終わり」といった抽象的かつ非日常的な大問題とが素朴に直結している作品群」のことを指します。この「セカイ系」という言葉をキーワードに、さまざまな作品を星座のようにつなげて見ることができるし、またそうすることが重要なんじゃないかと考えています。

たとえば、ミステリ業界で言えば、綾辻行人さんが1987年に著した『十角館の殺人』に始まったとされる「新本格」というミステリ界の新たな潮流には、「セカイ系」的な感性と通底するものがあると感じたんです。この感覚を出発点として、本書では日本のミステリ史における金字塔と言われている中井英夫の『虚無への供物』という作品を論じました。

佐々木敦×限界小説研究会『社会は存在しない ――セカイ系文化論』刊行記念トークショー
渡邉大輔

渡邉:はじめまして、渡邉です。まず「セカイ系」ということでいうと、実は僕は今から4年前に、批評家の東浩紀氏が配信されていたメールマガジン『波状言論』誌上で、ほかならぬ「セカイ系」についての評論(「<セカイ>認識の方法へ」)でデビューしているんですね。その後も、折に触れて「セカイ系」を論じてきたので、このテーマについては割と年季が入っている(笑)。評論家としては商業誌デビューがたまたま文芸誌(「群像」)だったので、これまで文芸やミステリについて書くことが多かったのですが、普段は映画研究をしているということもあり、今回の評論集では日本映画についての評論を書きました。

蔓葉:具体的な話に入っていく前に、まずはわれわれ「限界小説研究会」という謎めいた組織について解説しておかなければならないと思います(笑)。そもそもの始まりは、作家であり評論家でもある笠井潔さんが中心となった読書会でした。僕は笠井さんからお誘いいただき、参加するようになったのですが、その会では月に一回、会合の場を設け、社会批評やエンタテインメント作品についての評論などをレジュメを作って輪読し、あれやこれやと話し合ったりしています。そうするうちに、何か自分たちでも物を書いて発信しようと思い至り、2008年1月に「限界小説研究会」として単行本『探偵小説のクリティカル・ターン』を南雲堂さんから刊行しました。

山田:僕も簡単に自己紹介をすると、ふだん出版社の編集の仕事をしていまして、むかし『QUICK JAPAN』という雑誌で佐々木さんの連載(「ISMISM」。単行本『絶対安全文芸時評』に収録)を担当していたんですね。また、個人的に「限界小説研究会」の方々と交流があることもあって、今回のトークショーでは両者を仲立ちするかたちで「司会」をさせていただいています。

なぜトークのお相手が佐々木さんなのかというと、この『社会は存在しない』は「セカイ系」論集と銘打たれていますが、いままでは「セカイ系」といえば『ほしのこえ』とか『イリヤの空、UFOの夏』、『AIR』といったアニメやライトノベル、美少女ゲームといったオタク系のジャンルの話だと思われていたわけです。しかしこの本では、それらに加えて映画やダンス、青木淳悟や中井英夫の小説、新本格ミステリなども「セカイ系」論の題材として扱われている。これらを網羅的に語れる人といえば、佐々木さんくらいしかいないだろう…ということでこのトークショーが実現しました。

佐々木:それにしても「限界小説研究会」ってカッコいいネーミングですね!

渡邉:そうですか? 僕は一度もカッコいいと思ったことはないですけど(笑)。

佐々木:限界小説って、いったいどんな小説だよ?、とか思うじゃないです か。

渡邉:ああ、それはそうですよね。ちょっと持ってきて読ませろよ、みたいな感じはありますよね(笑)。

2/5ページ:『ゼロ年代の想像力』にアンチを突き付けた本だなと(佐々木)

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