Caroline×鹿野友美(4 bonjour's parties)対談

2月24日の『exPoP!!!!!vol.47』で共演を果たすキャロラインと4 bonjour's partiesのボーカル/フルート奏者・鹿野友美。両者はレーベルメイトであることをはじめ、共にかつて音大に通い、またキャロラインはUSの人気バンドであるmice paradeにシンガーとして参加しているため、共に国境をまたいで活躍する大所帯バンドのメンバーでもあるなど共通点が多いのだが、中でも1番の共通点は、2人が共に自分のペースで音楽を続けることの重要性を体現しているということだ。メジャーの道を蹴ってインディで自身の音楽を作り続ける道を選んだキャロラインと、かつては自分が岐阜に、現在は他のメンバーがオーストラリアにいながらも、東京を拠点としたバンド活動を続けている鹿野の活動姿勢は、将来を見据えて自身と音楽の関わり方を模索する多くの若者たちを大いに勇気付けるものではないかと思う。そんな2人の対談は微笑ましいエピソードが数多く飛び出す実に楽しいものに。これまでは深い交流がなかったという両者もインタビュー終盤にはすっかり打ち解け、24日の共演がますます楽しみになった。

(インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作)

申し訳ないとは思ったんですけど、「私のやりたいことは違うの」って涙ながらに説得した(鹿野)

―お2人の共通点というとまずひとつは音大に通っていたということで。キャロラインさんはバークリー音楽大学に通っていたんですよね? その頃から自分は音楽をやっていくんだっていう強い意志があったのでしょうか?

キャロライン:はい、自分はバークリーに行きたいっていう気持ちが強くあったんですけど、両親には「あそこは難しい」って言われてて、奨学金を貰えるような他の学校に行くっていう選択もあったりはしたんですね。でも自分がそっちに行くことは想像できなくて、「バークリーでしか自分のやりたいことはできない」って説得したんです。

―一方で鹿野さんは音大でクラシックをやっていて、でも途中でミューズ音楽院に移ったんですよね?

鹿野:大学の試験があって、先生に「どういうのやりたい?」って言われたときに、クラシックの曲じゃなくて、ジャズをやってみたいって言ったら、「そういうのはダメだ」って断られたんですね。音楽って広いのに、ここではクラシックしかできないんだなって思ったら急に熱が冷めちゃったんです。あと人間関係もあんまり好きじゃなくて、上下関係がすごくて、体育会系の部活みたいなんですね。

Caroline×鹿野友美(4 bonjour's parties)対談
左:Caroline、右:鹿野友美(4 bonjour's parties)

―へえ、そうなんだ。

鹿野:みんなおっとりしてる感じなんだけど、実はやりあってるみたいな(笑)。そういう堅苦しい関係も嫌で、違う音楽の学校ないかなって分厚い専門学校の本を買ってペラペラめくって、ミューズ音楽院に行ってみようと思って。でも大学を中退したいって言ったら親にものすごく怒られました(笑)。申し訳ないとは思ったんですけど、「私のやりたいことは違うの」って涙ながらに説得して、そうしたら親も応援してくれるようになって。

―お2人とも親の説得という難関をくぐり抜けてきてるわけですね(笑)。キャロラインさんも、大学での人間関係とかって大変でした?

キャロライン:やっぱりコンペの争いとかはすごかったけど、バークリーは「自分でいること」を大切にしてくれる環境も整っていたので、私自身はあんまりそういう戦いには参加せずに、どちらかという勉強に集中して、自分のやりたいことをやろうっていう感じでした。あと、自分の身近にいる友達の雰囲気で、自分もすごく変わってくると思うんです。競争してるグループもあったけど、私のいたグループはみんなが違うことをやってて、1番の親友はピアノのアコースティックな音楽をやってる子だったり、みんなで刺激し合えるすごくいい環境でした。

―鹿野さんにとってはミューズに入ってからがまさにそうですよね。そこで今のバンドメンバーとも出会ってるわけだし。

鹿野:やりたいことがみんな違うけど、違うのがいいねって言い合える、認め合える環境だったからすごく楽しくて、いろんな刺激を受けましたね。

私たちコラボレーションすれば上手くいくね(笑) (キャロライン)

―鹿野さんも昔から音楽をやって行きたいっていう気持ちがあったんですか?

鹿野:私はちっちゃい頃にピアノが欲しいって駄々をこね(笑)、小学校の鼓笛隊ではトランペットをやったり、中学では吹奏楽でフルートを始めて、それが今もずっと続いてるって感じです。

キャロライン:いろんな楽器ができるのって凄い!

―でもキャロラインさんもいろんな楽器を演奏しますよね?

キャロライン:いろんな楽器を試すんだけど、ちょこちょこっとしかできないんです(笑)。私の場合はお母さんに半ば無理やりピアノを始めさせられて、お姉ちゃんと一緒にやってたんですけど、お姉ちゃんはピアノをやめてアクターズ・スクールに行って(キャロラインの姉はシンガーのオリヴィア)、踊りと歌をやってたから、私には絶対ピアノを続けさせたかったみたい。私も歌って踊りたかったんだけど(笑)。

―(笑)。

キャロライン:それで、中学に入ってからは実は私も4年間フルートをやっていて、高校の頃からエレクトロニック・ミュージックに興味を持ち始めて、今までずっと続いてるって感じです。でも、ずっとエレクトロニック・ミュージックをやってて、4bonを観たり、mice paradeに参加したりすると、「私も生の楽器を入れたい!」って気持ちになってきてる。コンピューターって画面との格闘だから目も痛くなるし、技術的なトラブルがあると気が狂いそうになるの!

鹿野:逆に私はダメなんですよ、電気が入っちゃうと(笑)。わけがわからないんで、未だに不思議なんですよね。だから、私からすればコンピューターを使えるのがすごくうらやましい。

キャロライン:じゃあ私たちコラボレーションすれば上手くいくね(笑)。

安定できる方向に進みかけることもあるんだけど、そうするとやっぱり幸せじゃなくなっちゃう(キャロライン)

―うん、ぜひやって欲しいですね。あとお2人共、自分のペースで音楽を続けて、オリジナリティー溢れる音楽を作っているのが面白いなと思っていて。キャロラインさんは、一時メジャーとの契約寸前まで行ったものの、それを拒んで自身の音楽を追求する道を選んだんですよね?

キャロライン:いつも自然体で進むっていうのが私のモットーなんですけど、メジャーに行くのは自然なことではなかったんです。1作目の『Murmurs』のレコーディングを日本で進めていく中で、レコーディング自体は楽しかったんですけど、事務所もいてレコード会社もいて、ひとつやるごとに向こうの意見が足されていって、どんどん自分の作品じゃなくなっていく過程に嫌気が差して、「私にはこれ(メジャーでの活動)はできない」って言ってやめたんです。

―なるほど。

キャロライン:私はお姉ちゃんを見て育ってるから、自分が同じ道に行くことが想像できなかったんですね。お姉ちゃんと私は性格も対照的で、お姉ちゃんは人を引きつける力を持ったエネルギッシュなシンガーで、みんなの前で自分を表現できる人だけど、私は内向的で、ひとつのことを集中してやるのが好きなんです。だから、与えられたメジャーっていう道じゃなくて、自分の道を進むべきだと思ったんです。

―キャロラインさんの作品からは実際にすごくパーソナルな世界観が感じられますもんね。

キャロライン:ホントにその通りで、私は自分というものを音楽を通して表現してるつもりです。生活のすごく細かいことも反映されていて、例えば、目についたキーホルダーの音を入れたりとか、新作に入ってる“Swimmer”っていう曲は、「Swimmer」っていうブランドのキャラクターが机の上に置いてあって、「この曲は“Swimmer”にしよう」って思ったり、ホント無意識に自分の生活とか人生を取り込んでて、いろんな感情が曲に出てきてるんだと思う。

―じゃあ、メジャーを蹴るっていうのは難しい選択だったとは思うけど、現状には満足してる?

キャロライン:うん、もちろん幸せです。ただ、自分の好きな音楽をやってると、金銭的に難しいときがあるのも事実で、安定できる方向に進みかけることもあるんだけど、そうするとやっぱり幸せじゃなくなっちゃう。実は将来のことを考えて先生になる勉強をしていて、教育免許も取得して、教育実習も視野に入れたんだけど、それは今から10年後にやりたければやればいいし、今の自分にはやっぱり音楽が第一なので、ずっとやっていきたいなって。

(台湾に行くことになったときは)「小鹿ちゃん募金」みたいのを作ってくれました(鹿野)

―では一方で、鹿野さんは岐阜に住みながら4bonの活動に参加していた時期があるんですよね?

Caroline×鹿野友美(4 bonjour's parties)対談

鹿野:26ぐらいまではこっち(東京)で活動してたんですけど、私はひとりっ子で、親には早く帰ってきて一緒に住みたいって言われてて。岐阜だし通おうと思えば来れない距離でもないと思って帰ったんですけど、しばらくしたらCDが出せることになって、「おお!」と(笑)。4bonってホントにマイペースで活動してるから、まさかそういう転機が起こるなんて思わなくて。ライブの本数も増えてきて、そのたびに新幹線や夜行バスでこっちに来て、結局半分半分ぐらいの暮らしになっちゃったんですね。こっちに2週間いて、2週間帰って、またこっちに来て、みたいな生活を2年ぐらいしていて。

―体力的にも精神的にも、それこそ金銭的にも厳しかったと思いますが、それでも続けてこられたのはなぜだったんでしょう?

鹿野:ラッキーなことに周りのサポートがあって、岐阜ではカフェで働いてたんですけど、そこのスタッフもお客さんも応援してくれて、「休んでいいからツアー行ってきな」とか「岐阜に帰ってきたときだけ働いてくれればいいから」とかって言ってくれて。「台湾に今度行くんです」ってなったときも、岐阜では「小鹿ちゃん」って呼ばれてたんですけど(笑)、「小鹿ちゃん募金」みたいのを作ってくれて、本当に助けてもらってきました。

キャロライン:えー、すごい!

鹿野:そうやって周りに恵まれたから何とかやってこれたのかなって。あとはメンバーも、私はライブの前日にしか東京に来ないので、練習も1回のスタジオだけだし、新曲もなかなか練習できない、それをみんなが許してくれたからできたんだなって。

―なるほどね。そういう時期があったから今メンバーが2人オーストラリアに行っても動じずに活動を続けることができるわけですね。

鹿野:そうそう、やり方次第でどんな活動でもできるんだねって。

音楽はライフスタイルの一部というか、もっと言うと宗教みたいな感じなのかもしれない(キャロライン)

―mice paradeも国をまたいで活動してるバンドだから、やっぱり大変なことは多いですよね?

キャロライン:レコーディングは時間がかかりますね。自分がいいと思って送ったもの(データ)を相手が変えて欲しがったり、やり取りに時間がかかっちゃう。それでも今のスタイルが好きな理由は、自分のパートにひとりで集中できるってことで、もしmice paradeの全員がスタジオに入って、私が歌ってるのを聴いてたら、私は歌えないと思う(笑)。

鹿野:私たちの場合は元々メンバーみんな日本にいるときから時間かかってたんで、そんなに変わってない気もします(笑)。

―自分のパートに集中できるっていうのはどうですか?

鹿野:うーん…。

キャロライン:彼女は優秀だから大丈夫なのよ(笑)。

鹿野:(笑)。私は自分のパートよりも他の人のパートが気になっちゃって、「もうちょっとやり直したら?」とか色々言うので、私がいるとみんながやりづらいかもしれないです(笑)。

―今のmice paradeって、キャロラインさん以外みんな男性ですよね? それって大変じゃないですか?

キャロライン:タイヘン! ツアーに出たりすると、やっぱり男性の時間で動くので、女性が必要とする時間を理解してもらえないの。洋服もせめて洗濯ぐらいしたいけど、男性は毎日同じものを着てたり(笑)。一応私のことを考えてくれて、オープニングアクトに女性のアーティストを呼んで、一緒に過ごす時間を作ったりはしてくれてます。

―その点4bonは3人女性メンバーがいるからいいですよね。

鹿野:4bonは女性が全員年上の姉さんバンドなんで、女性が「こうしたい」って言うと、(男性は)「はい!」って感じなんです(笑)。私のあだ名は「姫」なんですけど、1番わがまま言ってます(笑)。

―大奥みたいな感じだ(笑)。キャロラインさんはmice paradeの中では1番年下ですよね?

キャロライン:でも私が1番年上のように感じる(笑)。他のメンバーはみんな幼くて、勝手で…。

―男性代表として代わりに謝っておきます(笑)。でもやっぱり大勢いるっていうのはその分楽しいですよね。

キャロライン:もちろん! ツアーの最後になるといつも「帰りたくない!」って思う。

―では最後に大きな質問です。お2人がそれぞれ自分のペースで続けている「音楽」とは、それぞれにとって一体どんなものでしょうか?

キャロライン:ライフスタイルの一部というか、もっと言うと宗教みたいな感じなのかもしれない。いつでも音楽のことを考えてるし、いつでも何らかの形で音楽に関わることをやってる、ホントに生活の一部です。

鹿野:唯一続けてるものかな。「続けたい!」と思って続けてるわけではないんですけど、やめたいと思ったことはないし、音楽だけはやってもやってももっともっとっていう気になるから、どうしても続けちゃうものなのかなって。なぜかと言われるとわからないんですけどね。

―そういうものですよね。今日はどうもありがとうございました。2月の共演楽しみにしてます。

キャロライン:イェー! 私もすっごく楽しみ!

イベント情報
viBirth × CINRA presents
『exPoP!!!!! volume47』

2011年2月24日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷O-nest

出演:
Caroline
SOUR
4 bonjour's parties
Schroeder-Headz

料金:無料(2ドリンク別)
※ご予約の無い方は入場できない場合があります。ご了承下さい。

リリース情報
4 bonjour's parties
『okapi horn』

2010年12月8日発売
価格:2,400円(税込)
YOUTH-107

1. skipping birds & stones
2. pins and needles
3. optical song
4. yottie
5. o-micron
6. ventilation
7. hypnosis
8. valzer di onesti
9. tap tap
10. oma

CAROLINE
『VERDUGO HILLS』

2011年1月12日発売
価格:2,400円(税込)
YOUTH-112

1. Balloon
2. Swimmer
3. Sleep
4. Seesaw
5. Words Flutter
6. Pink Gloom
7. Waltz
8. Lullabye
9. Snow
10. Gone
11. Seesaw(Dntel Mix)
12. Waltz(Her Space Holiday's Far Away Friends Mix)

プロフィール
Caroline

沖縄出身の女性SSW。J-POPシンガーOLIVIAの実妹。2006年、ファーストアルバム『Murmurs』リリース。その透明感溢れる歌声が、Björk、múmなどを引き合いに出されながら高く評価される。2007年以降、Mice Paradeのボーカルを務める。2011年1月、セカンドアルバム『Verdugo Hills』リリース。前作同様、ミニマルなエレクトロニカを基調としながら、芳醇さを増したオーガニックで温かみのあるトラックが、表現力にさらなる広がりが生まれた歌声を包み込み、天上の音楽とでも言うべき荘厳な美しさを湛えた作品に。

4 bonjour's parties

2001年より自由で良質な音楽を追求する大所帯室内開放音楽集団。男女混声のハーモニーが、ビブラフォンや、フルート、トランペット、クラリネットなど、オーガニックでエレクトロなサウンドに優しく包まれる。USでのリリース、Her Space Holidayのバックバンド、フランスのTake Away Show出演、オーストラリアでのツアーや台湾の大型フェス出演など、国際的に活躍。音楽への愛情、好奇心、探究心、喜びが溢れまくった、まばゆいばかりの傑作セカンドアルバム『okapi horn』を2010年12月にリリース。



フィードバック 0

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • Caroline×鹿野友美(4 bonjour's parties)対談

Special Feature

Crossing??

CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?

詳しくみる

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて