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小林武史が訴える「経済の合理性を追求すると多様性が失われる」

小林武史が訴える「経済の合理性を追求すると多様性が失われる」

YEN TOWN BAND『diverse journey』
インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:森山将人 編集:矢島由佳子

「世の中にリバイバルはいっぱいあるけど、そういうつもりでは全くない。懐かしむためにやっているわけではないし、今の時代に意味があると思って始めたことだから」

約10か月前、YEN TOWN BANDを再始動させた小林武史は、本サイトのインタビューでこう語っていた。1stアルバム『MONTAGE』から20年の時を経て届いたアルバム『diverse journey』は、まさにそういう感触を持った一枚に仕上がった。シングル“アイノネ”には大木伸夫(ACIDMAN)、尾崎世界観(クリープハイプ)、Salyu、清水依与吏(back number)、miwaの五名がコーラスに参加。「東京メトロ」CMソングに決定した“my town”ではKj(Dragon Ash)とのコラボが実現。様々なフィールドのミュージシャンを巻き込みつつ、時空を超えた「旅」のイメージを感じさせるアルバムになっている。

小林武史は、2017年に開催される『Reborn-Art Festival』のプロジェクトも進めている。宮城県石巻・牡鹿半島でおよそ50日間にわたって計画されている音楽・食・アートの総合的なフェスティバルだ。どんな思いが彼を突き動かしているのか。改めて訊いた。

「お金の理屈、経済の合理性だけで物事は動かないんじゃないか」という思いは、(20年前から)ものすごくあった。

―去年の9月に『大地の芸術祭』で初ライブを行ってから10か月が経ち、YEN TOWN BANDの20年ぶりのアルバム『diverse journey』が完成しました。約1年プロジェクトを動かしてきて、どんな実感がありますか?

小林:去年やった一連のライブがすごくよかったのと、比較的若い子たちから“アイノネ”や“my town”という曲が好きだという声が聴こえてきたり、そういう手応えはありますね。

自分で言うのもなんだけど、アルバムは行間のあるものになったと思っています。最近ACIDMANの大木くんと会って話したんだけど、彼がアルバムの感想として面白いことを言っていて。

―どんなことを言ってたんですか?

小林:「YEN TOWN BANDは、どこか別の次元で20年間続いていたんじゃないか」って。『diverse journey』は、宇宙的な空間を超えたいろんな次元への旅が詰まっているアルバムなんじゃないかって彼は言っていたんです。それはまさに僕も思っていたことで。

人の内面のようなものに、想像力を持ってアプローチをしている作品だと思うんですよね。僕としては、意識しているしていないかかわらず、そういう世界と確実にイメージをつないでいた。それらが音楽として形になったというのは、僕自身も思うところなんです。

―YEN TOWN BANDは、そもそも架空のバンドとして始まったわけですよね。だから、現実の世界ではプロジェクトとして一度終わっていたけれど、逆に言えば、架空の世界ではずっと存在していたかもしれない。

小林:そうだね。

小林武史
小林武史

―だからアルバムには時空を超えた不思議な聴き応えがある。大木さんが言っていたことも踏まえると、そんな感じがします。

小林:そうですね。架空だからこそなんだと思います。ただ、1995年や96年当時、たとえば資本主義というものと深く向き合うことによって『スワロウテイル』という映画ができたり、YEN TOWN BANDができたかっていうと、正直岩井くん(岩井俊二 / 『スワロウテイル』の監督)や僕はそこまで自覚していなかった気がするんです。

ただ、「お金の理屈、経済の合理性だけで物事は動かないんじゃないか」という思いはものすごくありました。いろんな形で世界はギシギシ音を立てていて、そこに何ができるのかはわからなかったけれど、そういう思いだけはあった。

―映画『スワロウテイル』は、円がまだ強かった時代に円を求めて無国籍な人々が集まった架空の街「円都」(=YEN TOWN)を舞台にしていました。あの映画にあった問題意識は、その後も小林さんと岩井監督の間で共有されていたものなのでしょうか?

小林:そうですね。なんだかんだで、岩井くんとはずっと関係がありますからね。『スワロウテイル』の後に、『リリイ・シュシュのすべて』(2001年公開の映画。岩井俊二が監督を務め、小林武史が音楽を手掛ける)があって。あれも物事を深く探りにいかざるを得ないものだったんだけれど、やっぱり今思うと、『リリイ・シュシュ』も「円都」とは無関係じゃないのかもしれない。YEN TOWN BANDから離れたとしても、「円都」という入れ物、装置のようなものはずっとあったような気がします。

―すべてつながっていると。

小林:岩井くんとそう話しているわけではないし、今、初めて言ったけれどね。ただ、岩井くんと僕の関係性は時々ブラッシュアップされていくんですよ。

宮城県の塩竈市に杉村惇美術館という公民館を改造した美術館があって、そこで去年6月に『まちと 記憶と 映画館 ~岩井俊二編~ 花とアリスのもうひとつの物語』という展覧会があったんです。そこで僕とSalyuのライブも企画されていて、Lily Chou-Chou(『リリイ・シュシュのすべて』に登場するシンガー。Salyuが演じる)の曲をやったんですね。

僕のキーボードとSalyuの歌だけだったけれど、小さな教会みたいなすごくいい空間で、残響もすごくよかった。それをもちろん岩井くんも観に来ていて。で、今度は僕らが行う『Reborn-Art Festival』に塩竈市にも関わってもらうことになっているんです。そうやって、いろんなところでつながっている感じはありますね。

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リリース情報

YEN TOWN BAND『diverse journey』初回限定盤
YEN TOWN BAND
『diverse journey』初回限定盤(CD+DVD)

2016年7月20日(水)発売
価格:4,536円(税込)
UMCK-9852

[CD]
1. Fantasy
2. コオルS.O.S
3. イェンタウンクラブ
4. EL
5. 君が好き
6. I'll Love You So
7. my town / YEN TOWN BAND feat. Kj(Dragon Ash)
8. アイノネ(diverse journey mix)
9. Kiss me with your eyes
10. オレンジ色
11. Romance
[DVD]
『大地の芸術祭 2015 YEN TOWN BAND @NO×BUTAI produced by Takeshi Kobayashi』
・Gold Rush
・Sunday Park
・Mama's alright
・上海ベイべ
・My way
・She don't care
・してよ してよ
・アイノネ
・Swallowtail Butterfly ~あいのうた~

YEN TOWN BAND
『diverse journey』通常盤
YEN TOWN BAND
『diverse journey』通常盤(CD)

2016年7月20日(水)発売
価格:3,240円(税込)
UMCK-1547

1. Fantasy
2. コオルS.O.S
3. イェンタウンクラブ
4. EL
5. 君が好き
6. I'll Love You So
7. my town / YEN TOWN BAND feat. Kj(Dragon Ash)
8. アイノネ(diverse journey mix)
9. Kiss me with your eyes
10. オレンジ色
11. Romance

YEN TOWN BAND
『diverse journey』アナログ盤(LP)

2016年9月14日(水)発売
価格:4,104円(税込)
UMJK-9064/5

1. Fantasy
2. コオルS.O.S
3. イェンタウンクラブ
4. EL
5. 君が好き
6. I'll Love You So
7. my town / YEN TOWN BAND feat. Kj(Dragon Ash)
8. アイノネ(diverse journey mix)
9. Kiss me with your eyes
10. オレンジ色
11. Romance

イベント情報

『Reborn-Art Festival×ap bank fes 2016』前夜祭

2016年7月29日(金)
会場:宮城県 石巻港 雲雀野埠頭

『Reborn-Art Festival×ap bank fes 2016』

2016年7月30日(土)、7月31日(日)
会場:宮城県 石巻港 雲雀野埠頭

プロフィール

YEN TOWN BAND
YEN TOWN BAND(いぇん たうん ばんど)

岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』(1996年)の音楽を担当した小林武史のプロデュースにより、劇中に登場した架空のバンド。ボーカルは、主人公グリコ役を演じたChara。シングル『Swallowtail Butterfly ~あいのうた~』、そしてアルバム『MONTAGE』はオリコンチャートでもシングル / アルバム同時1位となり大ヒットを記録した。一切活動を行っていなかったものの、昨今の世界情勢や日本の各地域における過疎、そして『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』からのオファーにより、昨年復活を遂げた。約19年振りの新曲“アイノネ”は、JFL5局合同キャンペーン2015年テーマソングに。また、その後も新曲”my town“が石原さとみ出演「東京メトロ」CMソングに起用されるなど、話題を振りまき、7月20日には『MONTAGE』以来の約20年ぶりとなるファン待望のニューアルバム『diverse journey』を発表した。

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