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ドレスコーズ志磨遼平が、長髪に別れを告げた理由を語る

ドレスコーズ志磨遼平が、長髪に別れを告げた理由を語る

ドレスコーズ『平凡』
インタビュー・テキスト
宇野維正
撮影:森山将人 編集:野村由芽

問題1:『他の人とまったく違う人間』は、はたして大衆から支持されるんだろうか?

―先ほど言っていた「このまま流されていくとまずい」という危機感ですね?

志磨:そうです。だから、それを解決するために、結局5年間かかったということですね。そういう意味では、今回の『平凡』はロックでもなく、ポップミュージックでもなく、自分にとっての文明批評、ロック批評みたいな作品なんです。

志磨遼平

―ほぉ!

志磨:ちょっと整理して話しますね。今、自分が抱えている問題というのは、3つに分けられると思うんです。1つめは「個性の問題」。僕は、ずっと人と違うことがしたくて、14歳の時にロックンロールを発見したんです。

10代の頃に「自分は周りの人間とは違う存在なんだ」と何の根拠もなく思っていて、何を武器にすればそれを証明できるのかって悩んでいた時に、そこで手に取った武器がロックンロールだったんです。僕はロックンロールを聴ける人間なんだ、ロックンロールのすごさを理解できる人間なんだ、そう思えたことが、自分にとって最初のアイデンティティーとなったわけです。

―そこには、ボウイの存在もいたわけですよね。

志磨:そうです。ボウイのような存在が扉となって、僕は同世代の人間が知らない音楽をたくさん聴いている、知らない本や漫画をたくさん読んでいる、知らない映画をたくさん見ている。そこで得た膨大な知見によって、いつか絶対に他の人とはまったく違う個性を持った天才になるんだって思い込んでいたわけです。

―よくわかります(笑)。

志磨:そこから10何年経って、確かに他の人とはまったく違う人間がこうして完成したわけです。でも、ある日ふと一つのことに気づいたんです。「『他の人とまったく違う人間』は、はたして大衆から支持されることがあるんだろうか?」と。「あれ? これでよかったんだっけ? 僕が憧れていたボウイやプリンスは大衆から支持されていたけど、僕はそういう人間にはなれていないじゃないか」って。

―なるほど。

志磨:その時まで僕がずっと考えていた「秀でた人間」というのは、たくさんの音楽を聴いて、たくさんの本を読んで、たくさんの映画を見て、そうやってたくさんのことを知った上で、自分の中で体系化した思想のようなものを作り上げて、それによって他の人とはまったく違う存在となった人間だったんです。でも、自分がいざそういう「個性的な人間」になってみると、人から理解されないような人間になってしまっていた。

問題2:あれだけ『個性的な人間』であったはずの自分が、いとも容易く『テンプレート』の中に押し込まれていく現状。

―つまり、20世紀は「個性的な人間」が個性的であればあるほど大衆から憧れの対象となり得た時代だったけれど、21世紀においてはそんな「個性的な人間」は大衆からは見向きもされないと。まさに、今作『平凡』のテーマへとつながる。

志磨:そうです。そして、2つめの問題。それは「テンプレートの問題」。

―テンプレートの問題?

志磨:はい。そうやって「個性的な人間」として完成した自分は、バンドを組んで、デビューをして、ライブをやって、フェスに出たりするわけです。そうすると、ライブレポートみたいなものがネットにアップされたりするわけじゃないですか。

―はい。

志磨:これは特定のメディアについての話ではなく、音楽メディア全体の話なんですけど、そういうライブレポートでは、「個性的な人間」である自分のライブが音楽ライターさんによってたとえばこんなふうに書かれるわけです。

「志磨はステージに登場するやいなや拳を突き上げると、『いくぞー! なんとか!』」。あ、この「なんとか」っていうのは地名ですけど。で、「そして、クライマックスに入ると、今やすっかりライブアンセムとなった◯◯◯を投下!」みたいな。

―確かにテンプレート問題だ(笑)。

志磨:そうなんです。あれだけ「個性的な人間」であったはずの自分が、いとも容易くこうしてテンプレートの中に押し込まれていく。

志磨遼平

―それはライブレポートだけじゃなくて、ディスクレビューでもそうですよね。

志磨:そうです。念のため言っておくと、自分はここで音楽メディアや音楽ライターの方を批判したいわけじゃないんです。むしろ、「あぁ、文字にして書かれると自分はこういう存在なんだな」と、客観的に自分がどう見えているのかを気づかせてもらえる。

―そこで自省モードに入るところが、志磨さんの知性だと思います(笑)。

志磨:あるいは、ドレスコーズとしてデビューした時、いくつかのメディアに「ロックの正統な後継者」みたいな、これまたテンプレート的なコピーをつけられて、自分は「そんなことがしたいわけじゃないのに」と頭を抱えたわけです。でも、それも自分のそれまでのパブリックイメージのせいで。だから、その時のメンバーには本当に申し訳なかったと思ってます。彼らは、そんな枠に収まるようなミュージシャンじゃなかったのに。

―そうですね。

問題3:どうして毎年、自分は新しいアルバムを作らなくてはいけないのか?

志磨:そうやって「個性的な人間」であったはずの自分は、「個性的な人間」という「テンプレート」に押し込まれていった。そして、「個性的」という「テンプレート」に収められた自分が直面している3つめの問題。それは、「世の中にはこんなにたくさん音楽が溢れているのに、どうして毎年自分は新しいアルバムを作らなくてはいけないのか」問題。

―おぉ、それはより本質的な話ですね。まだ1年とか2年とかしか経ってないものを「古い」と消費者に思い込ませて、「新しい」ものを買わせないと経済が回らないという、資本主義の原則ですね。

志磨:その通りです。でも、これもレコード会社とか事務所とかに対する批判じゃないんですよ。もっともっと大きな問題。毛皮のマリーズでデビューしてから約10年経ちましたが、僕はその10年で10枚のアルバムを作っているんです。

―そっか。もうそんなになりますね。

志磨:いや、アルバムは作れるんです。僕は曲を作れますし、それをレコーディングしていけばいいわけで、アルバムは作れるんです。作れるんですけど……「作れますけど?」という気持ち。

志磨遼平

―(笑)。

志磨:前作の『1』を作る前に、一回それまでの自分のキャリアを自分で総括してみたんですよ。マリーズ時代からのすべてのCDを並べてみて、「うむ、いろんな曲があるな」「よく作ってきたな、自分」って。で、「じゃあ、次の新しいの作りましょうか」って言われて作ってみて、「おぉ! いいですねぇ!」と言われて。

―いや実際、『1』は本当に素晴らしい作品でしたよ(笑)。

志磨:そうなんです。あれは素晴らしい作品なんです。でも、それからちょっと時間が経つともう周りのスタッフは「さぁ、もう1枚アルバムいきましょう!」って。

―「もういっちょ!」みたいな感じで(笑)。

志磨:さすがに、ちょっとそういう状況に戸惑いを覚えて。去年、デビューしてから初めて「今年だけ、ちょっとアルバム出すのは止めてみていい?」って自分から相談したんです。僕は音楽を作るのが大好きだし、アルバムを作るのも大好きだから、出そうと思えば出せるんですけど。

―はい。志磨さんが言うその言葉が虚勢でないことはよくわかります。

志磨:でね、そういうことに疑問を感じているミュージシャン、バンドマンは僕だけじゃないと思うんですけど、一度、徹底的にその仕組みについて考えてみたんですよ。で、出た答えは簡単でした。

―その答えは?

志磨:アルバムを出さないと忘れられる。

―なるほど。

志磨:僕も、そうやっていくつものバンドを忘れてきたからわかるんです。

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リリース情報

ドレスコーズ『平凡』初回限定盤Type A
ドレスコーズ
『平凡』初回限定盤Type A(CD+DVD)

2017年3月1日(水)発売
価格:7,344円(税込)
KICS-93476

[CD]
1. common式
2. 平凡アンチ
3. マイノリティーの神様
4. 人民ダンス
5. towaie
6. ストレンジャー
7. エゴサーチ・アンド・デストロイ
8. 規律/訓練
9. 静物
10. 20世紀(さよならフリーダム)
11. アートvsデザイン
12. 人間ビデオ
[初回限定盤Type A DVD]
1. Opening(Silent Night)~序曲(冬の朝)
2. 恋するロデオ
3. Lily
4. 新 Trash
5. ダンデライオン
6. あん・はっぴいえんど
7. 贅沢とユーモア
8. みなさん、さようなら
9. 弦楽四重奏曲第9番ホ長調「東京」
10. common式
11. エゴサーチ&デストロイ
12. Sleigh Ride
13. Jingle Bells
14. 愛のテーマ
15. クリスマス・グリーティング

ドレスコーズ
『平凡』通常盤(CD+DVD)

2017年3月1日(水)発売
価格:3,780円(税込)
KIZC-374

[CD]
1. common式
2. 平凡アンチ
3. マイノリティーの神様
4. 人民ダンス
5. towaie
6. ストレンジャー
7. エゴサーチ・アンド・デストロイ
8. 規律/訓練
9. 静物
10. 20世紀(さよならフリーダム)
11. アートvsデザイン
12. 人間ビデオ
[通常盤DVD]
・“人間ビデオ”PV
・“エゴサーチ・アンド・デストロイ”PV

イベント情報

『the dresscodes 2017“meme”TOUR』

2017年3月17日(金)
会場:新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE

2017年3月18日(土)
会場:宮城県 仙台 CLUB JUNK BOX

2017年3月20日(月・祝)
会場:北海道 札幌 PENNY LANE24

2017年3月25日(土)
会場:広島県 CAVE-BE

2017年3月26日(日)
会場:福岡県 BEAT STATION

2017年4月1日(土)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2017年4月2日(日)
会場:大阪府 BIG CAT

2017年4月9日(日)
会場:東京都 新木場 STUDIO COAST

料金:前売3,800円 当日4,300円(共にドリンク別)

※小学生以上はチケット必要。
※小学生未満は保護者同伴に限り入場可。

プロフィール

ドレスコーズ
ドレスコーズ

1982年3月6日生まれ。和歌山県出身。毛皮のマリーズのボーカルとして2011年まで活動、翌2012年1月1日にドレスコーズ結成。シングル『Trash』でデビュー。12月に1stアルバム『the dresscodes』、2013年、2ndシングル『トートロジー』、2ndアルバム『バンド・デシネ』を発表。2014年、キングレコード(EVIL LINE RECORDS)へ移籍。1st E.P.『Hippies E.P.』をもって志磨遼平のソロプロジェクトとなる。現体制になって初のアルバム『1』を発表。その後、ライブ・作品毎にメンバーが変わるという稀有な存在となり、4thアルバム『オーディション』を発表。2016年に俳優業開始。WOWOW連続ドラマW『グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-』、映画『溺れるナイフ』に出演。2017年3月1日、5thアルバム『平凡』を発表する。

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