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鹿野淳に訊く、日本のフェスの課題、『VIVA LA ROCK』の理想

鹿野淳に訊く、日本のフェスの課題、『VIVA LA ROCK』の理想

『VIVA LA ROCK 2017』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人 編集:柏井万作

時代は塗り変わっていくと同時に、一定の周期で回っているとも思っている。

―さきほど「既存のロックジャーナリズムの限界」という問題提起をさせてもらったひとつのきっかけが、先日CINRA.NETにアップされたドレスコーズのインタビュー記事(ドレスコーズ志磨遼平が、長髪に別れを告げた理由を語る)です。そのなかで志磨さんは「音楽メディアのテンプレート化」をひとつの問題として挙げていたのですが、これと似た感覚を持っている若い世代は多いように思います。もしくは、それをハナから必要としなくなっているというか。

鹿野:僕は時代は塗り変わっていくと同時に、一定の周期で回っているとも思っているんです。今の話に乗せてみると、例えば1980年代にバンドブームがあって、新宿を中心にラジカルというか、奇天烈な音楽が流行った。電気グルーヴの前身の「人生」とか、筋肉少女帯の大槻ケンヂとか、あの人たちは高いIQや批評精神を持っていたから、ジャーナリズムは彼らを扱いやすかったし、彼らもジャーナリズムを必要として、上手く関係性が作られていた。

鹿野淳

鹿野:その一方で、奥田民生のような、何をやるわけでもなく、楽曲も誰でも書けそうなんだけど、でも絶対に誰も書けない究極にハイブリッドな平々凡々としたフリをしている優れた音楽家が出てくると、ときにジャーナリズムを凌駕してしまう。そういうものがせめぎ合ってシーンが作られていくのは、すごく健全なことだと思うんです。

―今起こっているジャーナリズムに対する議論も、移り変わりの周期が来たことの表れだと。

鹿野:2日目のラインナップで言うと、今の時代これだけネットやSNSが出てきて、選択肢が増えているにもかかわらず、それを活かしてない音楽が多過ぎないか? っていう意識を持ち、それをちゃんと形にしていこうって人たちが出てきたのは、やっぱり時代へのカウンターであり、必然だと思うんです。

そういうなかで、Suchmosが今年極端にブレイクした理由のひとつとして、「あの音楽性でありながら、フロントマンにYONCEというスターがいる」っていうのは明確ですよね。一時期の小沢健二さんがそうであったように、誰かがアイコンとしてお茶の間に出てきたときに、またさらに新たなカウンターが生まれる。そういう意味で、今はまた輪廻の過程にいて、今年がその一番面白い時期なんじゃないかっていう感覚なんです。

Suchmos(『VIVA LA ROCK 2017』5月4日出演)

―では、そういった状況に対して、『MUSICA』としてはどう向き合っていこうとお考えですか?

鹿野:ここまで話してきたように、現在の状況を音楽メディアとしてキャッチはできてるつもりなんだけど、もっと音楽メディア自体がかっこよくならないといけないっていう自覚は編集部全体であります。Suchmosは好きだけど、『ビバラ』に行こうとは思わないし、『MUSICA』を読もうと思わない人がいたとすれば、それはそのフェスや雑誌をかっこいいと思わないからですよね。それはあまりにも悔しいし、でも実際にそういう部分はあると自覚しています。

例えば、YONCEの着てるアディダスのジャージみたいに『MUSICA』がかっこいいものに見えたら、きっと買って読んでくれるわけじゃないですか? もしそう思われてないとしたら、それはとてもマズイ。我々が推したい、聴いてもらいたいアーティストのリスナーとハグできていない状況が、こちら側の編集性やデザイン性やライティング性にあるなら、そこは直していかないといけない。その点に関しては、危機感を持ってやっているつもりです。

鹿野淳

返ってきた答えの半数以上が「(フェスは)多すぎない」だったんですよ。フェスが好きっていう人が、この国には今もとても多い。

―『ビバラ』の今年のロゴはグラフィティー風で、これはさきほどおっしゃったことに関連して、デザイン性の面で新たなアプローチをしたということでしょうか?

鹿野:そうとも言えるんですけど、埼玉県ってヒップホップが強いんです。『サイタマノラッパー』って映画もあるし、『フリースタイルダンジョン』に出てるDOTAMAくんとかもいるし。だから、あれは埼玉愛の表れです(笑)。

『VIVA LA ROCK 2017』ロゴ
『VIVA LA ROCK 2017』ロゴ

鹿野:埼玉ってすごく面白くて。東京と群馬・栃木の間にあるわけですけど、単純にそのブレンドではなくて、それぞれの感性がちゃんとぶつかり合って、カオスになってるんですよ。そういう場所で2日目のようなブッキングを成功させることができれば、東京や神奈川に新たな風を送れるんじゃないかっていう、希望的観測も持ってるんです。

―今の話はすごく示唆的に感じるというか、今の日本のフェスに対して「どこもラインナップが同じ」っていう指摘があって、要は既得権益を守ろうとして囲い込んでしまうような状態だと思うんですね。

でも、それって経済的にもクリエイティブの面でもマイナスの連鎖を起こしてしまう危険性を孕んでいて、そうじゃなくて、さっきの埼玉の話のように、外側と緩やかに繋がってる方が未来がある。鹿野さんが「ほどきたい」とおっしゃったのはそういうことだと思うし、2日目のラインナップはその実践でもあるというか。

鹿野:でもね、それは結構難しいとも思うんだ。音楽業界の体力が下がっているなかで、フェスっていうマーケットは利益を上げる場所としてとても大きなものになっている現状があるから、その利益の取り合いはものすごくシビアなんだよね。ただ、これまで3年やってきて、一回やり切った感があるというか、このフェスの第一期を勉強させてもらえたので、今年から始まる第二期では、もっと踏み込んでいきたいとは思ってる。

―最初にもおっしゃったように、フェスは興行だから、当然その運営はすごくシビアに考える必要がある。逆に言えば、そうであるにもかかわらず、今年大きなチャレンジをしているんだということは伝わってほしいと思います。

鹿野:ありがとうございます。先日サカナクションの山口一郎くんと、一般リスナーの方から意見を公募して、ディスカッションする番組(『サカナクションのNFパンチ』と『MUSICA』の山口一郎連載の連動企画)の収録をしたんですけど、そのときのテーマのひとつが「フェス、多すぎない?」だったんです。で、返ってきた答えの半数以上が「多すぎない」だったんですよ。

けして今のフェスの状況がオッケーというわけではなく、「もっといろんな表情のフェスがあってほしい」っていうのもありつつ、でもやっぱりフェスっていうものが好きだっていう人がこの国にはとても多いんですよね。ビジネス的な理由だけじゃなくて、音楽リスナーにとって必要な場所としてフェスが今も認知されている。

サカナクション(『VIVA LA ROCK 2017』5月4日出演)

―なるほど。

鹿野:ただ、この状況が続くのは東京オリンピックの前後くらいまでだと個人的には思っていて。それまでにちゃんとフェスとしてのアイデンティティーを築いておかないと、そこから先は淘汰されるフェスの一つになると思うんです。願わくば、『ビバラ』はいい音楽を提示できるフェスとして、淘汰されることなく残っていたい。そこもシビアに考えながら、今準備をしているところです。

―4年目で新たな季節に突入したこと、2020年という区切りが見えたこと、そして、新たな音楽シーンが築かれつつあること。いろんなタイミングが合致して、今年のチャレンジが行われるというわけですね。

鹿野:ブッキングって、ある意味、妄想を現実にすることで、そこにどういう景色を作って、そこに参加した人がその後に音楽リスナーとしてどういうアクションを起こすか、どんなメッセージを発信するかが大事だと思うから、今年のこの流れをぜひ成功させたい。「邦楽のロックフェスはダサい」と思ってる人がいたら、そういう人の受け皿にもなれるような場所を絶対に作るから、ぜひ遊びに来てほしいです。

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イベント情報

『VIVA LA ROCK 2017』
『VIVA LA ROCK 2017』

2017年5月3日(水・祝)~5月5日(金・祝)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
5月3日出演:
アルカラ
THE ORAL CIGARETTES
KANA-BOON
KEYTALK
クリープハイプ
Getting Better(片平実、神啓文、斎藤雄)
go!go!vanillas
SHISHAMO
SiM
SUPER BEAVER
パノラマパナマタウン
04 Limited Sazabys
BRADIO
BLUE ENCOUNT
フレデリック
Base Ball Bear
PELICAN FANCLUB
ポルカドットスティングレイ
yonige
LAMP IN TERREN
LEGO BIG MORL
Lenny code fiction
and more
5月4日出演:
雨のパレード
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)
Gotch & The Good New Times
サカナクション
Suchmos
シンリズム
水曜日のカンパネラ
SKY-HI
菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)
SPECIAL OTHERS
cero
DADARAY
D.A.N.
DJピエール中野(凛として時雨)
DJやついいちろう(エレキコミック)
DENIMS
東京スカパラダイスオーケストラ
VIVA LA J-ROCK ANTHEMS
フレンズ
THE BAWDIES
ぼくのりりっくのぼうよみ
yahyel
UNISON SQUARE GARDEN
lovefilm
and more
5月5日出演:
Ivy to Fraudulent Game
ACIDMAN
175R
UVERworld
打首獄門同好会
Age Factory
ENTH
Ken Yokoyama
G-FREAK FACTORY
DJダイノジ
10-FEET
Dragon Ash
NUBO
爆弾ジョニー
the band apart
BIGMAMA
HEY-SMITH
Bentham
My Hair is Bad
MONOEYES
MOROHA
ヤバイTシャツ屋さん
ROTTENGRAFFTY
LONGMAN
and more
料金:1日券10,000円 2日券18,000円 3日券(5月3日~5月5日)24,000円 4日券(5月3日~5月6日)30,000円

プロフィール

鹿野淳(しかの あつし)

1964年、東京都生まれ。2007年に音楽専門誌『MUSICA』を創刊。これまでに『ROCKIN'ON JAPAN』』、『BUZZ』、サッカー誌『STAR SOCCER』の編集長を歴任。各メディアで自由に音楽を語り注目を集め、音楽メディア人養成学校「音小屋」を開講。2010年には東京初のロックフェス『ROCKS TOKYO』、2014年にはさいたま初の大規模ロックフェス『VIVA LA ROCK』を立ち上げるなど、イベントプロデュースも手がける。

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