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D.A.N.櫻木、本能を触発するテレンス・マリックの最新作を熱弁

D.A.N.櫻木、本能を触発するテレンス・マリックの最新作を熱弁

『ボヤージュ・オブ・タイム』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:田中一人 編集:飯嶋藍子

テレンス・マリック監督の最新作『ボヤージュ・オブ・タイム』が、3月10日より公開される。『シン・レッド・ライン』や『ツリー・オブ・ライフ』などの作品で、美しく壮大な情景と詩的なメッセージを独自の視点で融合させ、数々の賞を受賞してきたマリックが、40年のライフワークを集大成した本作。宇宙や地球、人体の成り立ちを、実際に撮影されたフッテージと、最新技術による緻密なCGをミックスした圧倒的な映像美で描き出す。

さらに、「人はどこから来て、どこへいくのか」という哲学的な命題が、ケイト・ブランシェット(日本語版語りは中谷美紀が担当)によるシンプルな言葉と、まるで時間軸を操るような間やタイミングによって浮き彫りにされていく。この90分の「映像体験」は、観る人によって様々な解釈や受け止め方が可能であり、鑑賞後に誰かと語り合いたくなること必至だ。

そこで今回、ダンスミュージックを基軸にメロウかつミニマルなサウンドを鳴らす、若きスリーピースバンドD.A.N.の櫻木大悟に本作を観た感想を伺いながら、自身の作品作りや人生観との共通点にも迫った。

情報を浴びることに慣れ過ぎて、能動的に思考することが少なくなってきている。そんな僕らに、この映画は警鐘を鳴らしている。

―まずは、本作を観た、櫻木さんの率直な感想をお聞かせください。

櫻木:すごく良かったです。いわゆる普通の映画とは全く違う「映像体験」を味わえました。ある種、ミニマルテクノを聴いたときの体験と似ているところもあって、90分という時間が、引き伸ばされたり縮んだり、ものすごく濃密で、ちょっと時空が歪む感じもありました。こういう映像体験って、今まで僕はあまりなかったから嬉しかった。

それと、とても感銘を受けたのは音の使い方です。フィールドレコーディングした自然界の音などを使って展開していく感じがとても良かったですね。これは絶対に、映画館の大きな画面と大きな音で観るべき作品だなと思いました。

―普段はどんな映画を観ることが多いですか?

櫻木:普段は割と展開のわかりやすい映画が多いです。ストーリーがしっかりあって、登場人物たちの人間模様があるような。『ボヤージュ・オブ・タイム』は、そういう映画とは全く違いますよね。抽象的な映像が多いぶん、考えさせられる余白がある。逆にいうと、油断すると眠くなってしまうんですけど(笑)、それって現代人の良くないところだなと思います。

―良くない、というのは?

櫻木:映画にせよテレビにせよ、あまりにも情報量が多くて、それを浴びることに僕らは慣れ過ぎていると思うんです。能動的に思考することがどんどん少なくなってきて、脳の動きが鈍っている状態というか。この映画は、そんな僕らに対して「もっと頭を使え」というふうに、警鐘を鳴らしているようにも感じました。

櫻木大悟
櫻木大悟

―とてもシンプルで余白があるぶん、観ている側が自由に解釈できるんですよね。なので、観ながら思考を巡らせていけばどんどん覚醒していくし、思考が止まると途端に眠くなってしまうのかなと。

櫻木:たしかにそうですね。覚醒するという感覚はあると思います。

―ケイト・ブランシェットによるナレーションは、シンプルながら哲学的な内容が含まれていると思うのですが、それについてはどのように感じました?

櫻木:特に印象的だったのは「Mother」というワードです。「母」という言葉を聞いたときに想起するイメージは人ぞれぞれだと思うのですが、ここでいう「母」は、生命そのものというか……。この地球、ひいてはこの宇宙を作り出したエネルギーのことだと思うんです。僕はそこに自分の母親のことも重ね合わせましたね。

櫻木大悟

―それはどうしてでしょうか。

櫻木:僕は小学生のときに母親を亡くしていて。映画の中で、「母よ、どうしてあなたは黙っているのでしょう」みたいな言葉があったと思うんですけど、そうやってずっと問いかけていく感じが、個人的には自分の母親に語りかけているような、そんな気持ちになってしまうところがあって。

―この映画の中の「母」と、櫻木さんのお母様が結びつく感じ?

櫻木:うーん、なんて言ったらいいのだろう……。人は「母性」に包まれる、つまり「母の元に帰る」ことで精神の安定が得られると思うんです。でも、僕にはその実感がない。この映画でいうところの人類が「母の元に帰る」というのは、自分たちが生まれたこの地球の「根源に立ち返る」ということですよね。

でも、ここまで文明が進んでしまった人間には、完全に根源に立ち返ることは、もうできない。もしかしたら破滅に向かっているのかもしれない、でも進んで行くしかないっていう、ある種のジレンマが描かれているというか。そういう、後戻りできないことへの「切なさ」みたいなものが、僕にとって一番グッときたポイントでした。

映画『ボヤージュ・オブ・タイム』より。人間の瞳と宇宙の風景がよく似ている / ©Voyage of Time UG (haftungsbeschrankt). All Rights Reserved.
映画『ボヤージュ・オブ・タイム』より。人間の瞳と宇宙の風景がよく似ている / ©Voyage of Time UG (haftungsbeschrankt). All Rights Reserved.

映画『ボヤージュ・オブ・タイム』より / ©Voyage of Time UG (haftungsbeschrankt). All Rights Reserved.
映画『ボヤージュ・オブ・タイム』より / ©Voyage of Time UG (haftungsbeschrankt). All Rights Reserved.

―先ほど、「根源に立ち返る」という言葉が出ましたけど、この映画を含む多くの作品は、「人はどこから来て、どこへゆくのか」をテーマにしていると思うんです。音楽でもたとえばダンスミュージックは、フレーズを延々と反復させることによって、「始まり」と「終わり」のない時間軸、つまりは根源へと立ち返っていくような感覚を想起させるというか。

櫻木:ああ、なるほど。

―D.A.N.の音楽も、それに似たところがあるのかなと。

櫻木:おっしゃっていることもそうだと思うし、僕自身がD.A.N.とこの作品を関連づけるとするなら、作品から「不純物」を極力排除しているところです。自然がなんでこんなに美しいのかというと、自然にはエゴのようなものがないからだと思うんです。人間が地球上で唯一、思考を手に入れ、貨幣や文明、宗教などを打ち立てることができたのは、エゴがあるからだと思う。

でも本来は、エゴのない状態が自然であり、劇中のセリフでもあった「Creating yourself changing shapes」というように、万物は自然の中で形を変えながら調和し続けているのではないかと。そこにただただ身を置く状態が、一番美しいように思うんです。

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作品情報

『ボヤージュ・オブ・タイム』

2017年3月10日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で順次公開
監督:テレンス・マリック
語り:ケイト・ブランシェット
日本語版語り:中谷美紀
配給:ギャガ

イベント情報

D.A.N.
ONE MAN TOUR 2017
『TEMPEST』

2017年5月11日(木)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La

2017年5月12日(金)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2017年5月14日(日)
会場:東京都 恵比寿 LIQUID ROOM

料金:各公演3,500円(ドリンク別)

プロフィール

櫻木大悟(さくらぎ だいご)

D.A.N.のボーカル、ギター、シンセサイザーを担当。2014年8月より、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)と3人で活動開始。様々なアーティストの音楽に対する姿勢や洗練されたサウンドを吸収しようと邁進し、いつの時代でも聴ける、ジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求したニュージェネレーション。『FUJI ROCK FESTIVAL '15《Rookie A Go Go》』『FUJI ROCK FESTIVAL '16』に出演。2016年9月からは、レギュラーパーティー『Timeless』を開催。2017年5月より初のワンマンツアー『TEMPEST』をスタートさせる。

関連チケット情報

2017年5月11日(木)
D.A.N.
会場:Shangri-La(大阪府)
2017年5月12日(金)
D.A.N.
会場:名古屋クラブクアトロ(愛知県)
2017年5月14日(日)
D.A.N.
会場:LIQUIDROOM(東京都)

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