特集 PR

太賀がリニューアルした写真美術館へ。杉本博司展に圧倒される

東京都写真美術館
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:菱沼勇夫 編集:野村由芽、飯嶋藍子
太賀がリニューアルした写真美術館へ。杉本博司展に圧倒される

写真ファン、アートファンにとって恵比寿といえば、「東京都写真美術館のある街」と言っても過言ではありません。国内外の有名作家の回顧展、『恵比寿映像祭』など、この街を発信源として日本の写真と映像のムーブメントは盛り上がりを見せてきました。しかし大規模改修工事のため、2014年9月から同館は長期休館に突入。多くのアートラバーは、恵比寿に来るたび、胸にぽっかりと穴が開いてしまったような喪失感を感じていたのでした……。

そんな写真美術館が、9月3日についにリニューアルオープン。英語名称を「TOKYO PHOTOGRAPHIC ART MUSEUM」(愛称「TOP MUSEUM(トップミュージアム)」)に変更し、こけら落としの展覧会である『杉本博司 ロスト・ヒューマン』展と共に、新たな旅立ちを迎えるのです。そこでお招きしたのが、ドラマ『ゆとりですがなにか』で熱演を見せた俳優の太賀さん。プライベートでは数台のフィルムカメラを愛用するなど、なかなかにディープな写真ファンであるという情報はキャッチしていましたが、どうやらこの場所との縁はそれだけでないらしく。そんな太賀さんと共に、一足お先に展覧会を巡りました。

骨董の目利き、写真家、建築家……多彩な顔を持つ杉本博司による意外なアプローチ

約1か月後にリニューアルオープンを控えた8月初旬。まだ開館準備が進行中の東京都写真美術館にやって来た太賀さんは、懐かしそうに館内を見回しています。

太賀:初めて主演した映画『那須少年記』(2008年)が、1階のホールで上映されていたんですよ。さっき上映室の前を通りかかりましたが、懐かしかったです。受付の場所も変わっていますし、本当に新しい美術館に生まれかわるんですね。

東京都写真美術館 1階メインエントランス
東京都写真美術館 1階メインエントランス

東京都写真美術館 2階ロビー
東京都写真美術館 2階ロビー

出演作に思いを馳せながら、新たに設置されたエレベーターで3階へ。本日の目的地である『杉本博司 ロスト・ヒューマン』展は、このフロアからスタートします。ここで、合流した学芸員の丹羽晴美さんから太賀さんに、「杉本博司とはどんな人物なのか?」のミニレクチャーです。

杉本博司は、国際的に活躍するアーティスト。26歳にニューヨークへ移住し、なんと28歳の若さでニューヨーク近代美術館(MoMA)に作品が収蔵された実力の持ち主です。それと並行して、ソーホー地区に骨董店「MINGEI」をオープンし、日本の古美術を収めるなど骨董の目利きとしての才能も発揮していました。メトロポリタン美術館が収蔵する日本古美術コレクションの大半は、杉本が見つけてきたものです。写真作品を軸とする作家活動を継続しつつ、近年では建築家や舞台演出家など、多彩な展開を見せています。

太賀:杉本さんのお名前と作品は知っています。「劇場」シリーズが特に好きなのですが、スクリーンに映画を投影して、上映時間と同じだけの時間にわたってシャッターを開き続けて、長時間露光で撮影していますよね。

写真には白く発光したスクリーンが写っているだけですが、そこには映画1本分の時間が封じ込められている気がする。写真を使って、そんなふうに「時間」を感じる体験ははじめてだったので、強烈に覚えています。だから、今日の取材も楽しみにしていたんですよ。

太賀
太賀

参考図版:「劇場」より 『Radio City Music Hall, New York』1978年 東京都写真美術館蔵 ※本展での出品はありません
参考図版:「劇場」より 『Radio City Music Hall, New York』1978年 東京都写真美術館蔵
※本展での出品はありません

太賀さんが言うように、杉本は自身の写真表現を通じて「時間」や「歴史」へと広範な眼差しを向けています。しかし、今回の展覧会は、かなり意外なアプローチで構成されているそう。太賀さんと共に、いよいよ会場へと足を踏み入れます。

文明が終わる33のシナリオにもとづいた、インスタレーションを巡り歩く

視界に飛び込んできたのは、トタン波板で作られた巨大な壁! 下町の古い工場などでよく目にする錆びついた壁がどこまでも立ち並び、まるで迷宮のようです。太賀さんも、思わず「すごい……美術館じゃないみたい……」と言葉を漏らします。

最初の壁にかけられているのは、キリストがその上を歩いたという伝説が残るガリラヤ湖を撮影した写真。杉本の代表作「海景」シリーズの一枚です。左右に伸びる水平線が、空と湖面とを正確に二分割した完璧な構図が、見る者に迫ってきます。

『ガラリヤ海,ゴラン』 1992年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Sugimoto Studio
『ガラリヤ海,ゴラン』 1992年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Sugimoto Studio

「劇場」シリーズと同じように、海には、湖面と空以外のものは写っていません。船や灯台といった人工物のないその風景は、ひょっとすると数千年前、数万年前の人類が見た風景と同じかもしれません。

吸い込まれるように作品をじっと見つめる太賀さん。「何時間でも観ていられそう。静かなのにドラマを感じます」
吸い込まれるように作品をじっと見つめる太賀さん。「何時間でも観ていられそう。静かなのにドラマを感じます」

太賀:超シンプルだけど、すごいですね……! この一枚の質感に、長い時間が封じ込められているのを感じます。杉本さんは、このシリーズを撮るためにカメラを改造してまで取り組んだそうですが、そこまでして撮りたいという気持ちは自分も感じたし、そのストイックさに圧倒されます。

「海景」を序章として、『杉本博司 ロスト・ヒューマン』展は全33章で構成されています。共通して示されているのは「人類が絶滅した後の、文明が終わった後の世界」。つまり展示室全体を、未来の廃墟に見立てているのです。

このシリーズは、そもそも2014年にパリで開催された『今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない』展の日本バージョンとして、33のシナリオにもとづき、杉本の作品のみならず、本人が蒐集した古美術、化石などの考古遺物、さらには古道具や人形をミックスした、巨大なインスタレーション空間でもあります。

Page 1
次へ

イベント情報

『杉本博司 ロスト・ヒューマン』

2016年9月3日(土)~11月13日(日)
会場:東京都 恵比寿 東京都写真美術館 2・3階
時間:10:00~18:00(木・金曜は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(ただし月曜が祝日の場合は開館、翌火曜休館)
料金:一般1,000円 学生800円 中高生・65歳以上700円

連続対談
2016年9月3日(土)14:00~16:30
会場:東京都 東京都写真美術館 1階ホール
出演:
浅田彰×杉本博司
都築響一×杉本博司
料金:無料(要入場整理券)
※当日10:00から1階ホール受付にて入場整理券を配布
定員:190名(整理番号順入場、自由席)

ワールドプレミア『廃墟劇場』初公開記念 特別上映
2016年10月15日(土)~10月21日(金)
会場:東京都 YEBISU GARDEN CINEMA(恵比寿ガーデンプレイス内)
上映作品:『羅生門』
※10月19日19:00から杉本博司によるトーク有り。トーク終了後より上映。
※10月19日を除く、10月15日~10月21日の上映時間は、決定次第、劇場ウェブサイトに掲載。
※各上映日の3日前より販売(オンライン販売は3日前のAM0:00から、劇場での販売は3日前の劇場オープン時間から)
問い合わせ:0570-783-715(24時間自動音声案内、オペレータ受付時間全日10:00~20:00)

2016年10月29日(土)14:00~ / 18:00~(各回入替制・開場は上映30分前) 会場:東京都 写真美術館 1階ホール(定員190名)
上映作品:『杉本博司 作 朗読能「巣鴨塚」』
料金:1,000円
※当日10:00から1階ホール受付にて販売(入場整理番号付)
※未就学児の入場不可
問い合わせ:小田原文化財団 03-3473-5235(平日11:00~17:00)

展覧会担当学芸員によるギャラリートーク
2016年9月9日(金)14:00~
2016年9月23日(金)14:00~
2016年10月14日(金)14:00~
2016年10月28日(金)14:00~
2016年11月11日(金)14:00~
※会期中の第2・第4金曜日14:00から、担当学芸員による展示解説あり。
※要展覧会チケットの半券(当日消印、3階展示室入口に集合)

プロフィール

太賀(たいが)

俳優。1993年生まれ、東京都出身。2006年に俳優デビュー。その後、多くの映画やドラマ、CM、舞台などで活躍し演技の幅を広げ、2014年『第6回TAMA映画賞』にて最優秀新進男優賞を受賞。2016年、宮藤官九郎脚本の『ゆとりですがなにか』で一躍脚光を浴びる。趣味はカメラ。映画『淵に立つ』『闇金ウシジマくん ザファイナル』『アズミ・ハルコは行方不明』が公開待機中。

杉本博司(すぎもと ひろし)

現代美術作家。1948年東京生まれ。立教大学卒業後、1970年に渡米、1974年よりニューヨーク在住。徹底的にコンセプトを練り上げ、8×10インチの大型カメラで撮影する手法を確立。精緻な技術によって表現される作品は世界中の美術館に収蔵。2008年建築設計事務所「新素材研究所」設立。IZU PHOTO MUSEUM(静岡)他、建築分野でも活動。2017年2月5日リニューアル・オープン予定のMOA美術館(熱海)では改装にあたり展示室等の設計を担当。同年秋には小田原文化財団江之浦測候所がオープン予定。今秋11月25~27日開催予定の同財団公演『肉声~ジャン・コクトー「声」より』では、構成・演出・美術を手がける。2009年高松宮殿下記念世界文化賞、2010年紫綬褒章、2013年フランス芸術文化勲章オフィシエ、2014年第一回イサム・ノグチ賞等受賞多数。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

Got a minute ? 動画これだけは

Suchmos“PINKVIBES”

Suchmosがアルバム『THE KIDS』より“PINKVIBES”のPVを公開。山田健人(dutch_tokyo)との久々のタッグとなるこの映像。余裕すら感じるシュアな演奏シーンやふとした表情が絶妙なバランスで映し出される。燃え盛るピンクの炎と、それに向けるメンバーの強い眼差しを見ると、Suchmosがこれからどんな風景を見せてくれるのか期待が高まる。(飯嶋)