あの人の音楽が生まれる部屋

あの人の音楽が生まれる部屋 Vol.21 SAKANAMON

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あの人の音楽が生まれる部屋 vol.21:SAKANAMON

仲よくなれるはずがないと思った同級生と
今日までバンドが続くことに

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再びバンドを始めようと決意した藤森さんは、同じクラスだったベースの森野光晴さんと、一緒に上京してきた高校時代のバンドのドラマーに声をかけます。バンド名は、以前から決めていたという「SAKANAMON」に。こうして、音楽専門学校を卒業するギリギリのタイミングで、宮崎に帰省しないことを決めました。

藤森:森野さんは、専門学校の中にギターロックを聴いてる人がほとんどいない中、音楽の趣味が合ったんですよね。「羊毛とおはな」が好きだということも意気投合しました。ただ、友達にすらなれないと思ってたし、僕とバンドをやってくれるなんて思わなかった。僕は学校に行ってなくて、友達も本当に少ないし、教室の後ろの隅っこの方に座ってるタイプ。でも森野さんは、友達もたくさんいて、教室の最前列の真ん中でちゃんと授業を受けるタイプで。休み時間もみんなとワイワイしている、完璧なキャンパスライフを送る優等生だったから。そんな身分の違う人と仲よくなれるなんて思わなかった(笑)。

SAKANAMONの要である「常識への反抗」
きっかけは母親の日常的な言葉

SAKANAMONの機材

結成から1年たった2009年、初期ドラマーが脱退し、木村浩大さんが加入。新宿や高円寺、下北沢のライブハウスで精力的に活動を開始します。そして2012年、1stアルバム『na』でメジャーデビューを果たしました。藤森さんが手がけるSAKANAMONの楽曲は、とにかくメロディーと歌詞のギャップが強烈な印象を放っています。疾走感あふれる爽快なメロディーに乗って歌われるのは、アイドルに夢中になった男性についてだったり(“花色の美少女”)、変態な自分を肯定するような内容だったり(“TSUMANNE”)。このように、ひねくれたテーマを選ぶのはなぜでしょうか。

藤森:聴く人に衝撃を与えたいんですよ。美しい曲のイントロが流れ出し、美しい歌詞がついているような、そんな予想のつくものにはしたくない。「なんでその言葉乗せちゃったの?」「なんでこんな展開になるの?」って思わせたいんです。みんなが歌いそうなことを歌うんだったら、別にSAKANAMONじゃなくていいと思う。同じテーマでも、違う角度から歌いたい。それで笑わせたり、イラッとさせたり(笑)、「でも結構いいこと言ってるな」って思わせたりしたいんです。

世の中で「常識」や「普通」とされていることに、藤森さんは疑問を投げかけます。<善し悪し決める浮世の基軸は乱暴で内臓煮え繰り返る>と歌う“幼気な少女”、<自信を持てば成功か 勝つ気で行けば優勝か 人望が有れば善人か>と歌う“アリカナシカ”に代表されるように、「みんな当然と思ってるけど、本当にそう? ちゃんと考えたことあるの?」と、聴く者に問いかけます。

藤森:実家にいた頃、母親によく「風呂に入れ」って言われてたんですけど、それが本当に許せなかったんですよ。僕にとって「思春期の反抗」って、風呂のことしかなかったんですけど(笑)。「なんで風呂に入らなきゃいけないの?」って聞いても、「常識でしょ」「当たり前でしょ」って言われるのがすごく嫌で。そこから常識に対して反発するようになったんです。世の中で「しなきゃいけない」と言われていることは、「本当にそうなのか?」って。

がらくたとされる人間であっても
美しく輝けるような音楽を

SAKANAMONの機材

予想以上にパーソナルなところから生まれたテーマだとわかりましたが、それが多くの人の心を動かす普遍的な歌詞に昇華されているのが、SAKANAMONの魅力。そんな彼らが、通算3枚目のアルバム『あくたもくた』をリリースしました。「何の役にも立たないもの」「がらくた」を意味するこのタイトル。あくたもくた、イコール、自分?

藤森:自分も含めた人間の弱さや卑屈さ、悪態を、これまで以上に伝わりやすく歌詞に落とし込んだつもりです。なので、より人間味あふれるアルバムになったと思いますね。僕が歌詞の中で描くのは、日陰にいる人たちが多い。そういう人たちは、役に立たないゴミかもしれないけど、音楽を通すことで美しく輝ければいいなって。世の中の尺度や常識に縛られて、無理しなくていい。ありのまま、かっこ悪いままでいいじゃんって。まあ、言ってることは、SMAPの“世界に一つだけの花”と同じかもしれないですね(笑)。

“東京フリーマーケット”では、夢を追いかけて東京に出てきた人が、力を尽くしても夢が叶わないのは、「冷たい街」と言われる街のせいではなく、「あくまで自分のせいである」とはっきり歌います。宮崎から上京し、紆余曲折がありながらも、この街でプロデビューの夢を手にした藤森さんに、今後の展望を聞いてみました。

藤森:とにかく、僕は音楽を続けていきたい。あとは、最低限、死なないくらいに頑張って生きたい。夢は……「SAKANAMON(=肴者)」という居酒屋を出すこと。でもその前に、もうちょっとSAKANAMONの音楽が売れてもいいんじゃないですかね!?(笑) サカナクションのパクリと言われないように、早くなりたいです!

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