中納良恵×原田郁子 音楽バカの若者が歌で大人になるまでの20年

今年結成20周年を迎えたEGO-WRAPPIN'(中納良恵 / 森雅樹)を祝うべく、同じく1996年に結成し、先頃20周年を迎えたばかりの3ピースバンド、クラムボンを招いて実施する対談企画の第二弾。大阪と東京、クラブジャズとポップミュージック――まったく異なるコンテクストの中で生まれながら、結成当初からブレのない一貫した音楽を追求していること、記名性の高い女性ボーカルを擁していることなど、実は共通点も多い。

その音楽性において鍵を握るEGO-WRAPPIN'の森雅樹(Gt)とクラムボンのミト(Ba)の対談に続き、それぞれのバンドのフロントマンとして、さらにはバンドが生み出す世界観の中心に位置するボーカルとして、艶やかな歌声を響かせてきたEGO-WRAPPIN'の中納良恵(Vo)とクラムボンの原田郁子(Vo,Key)の対談をお届けする。同じ時代を並走してきた二人は、お互いに対してどんなイメージを持っているのか? そして、バンドメンバーとの独特な関係性から、さらには歌い続けることの意味まで、彼女たちならではのトークを披露してくれた。

エゴにはエゴの、クラムボンにはクラムボンの持ち場がある。でもずっと並走しているような感覚はあるんですよね。(原田)

―同じ時期に結成したほとんど同世代のバンドであるものの、実際のところ、二人のお付き合いはどんな感じなのでしょう?

中納:イベントやフェスとかで一緒になることがたまにあって。去年は結構多かったよね?

原田:うん、多かったね。

左から中納良恵、原田郁子。緊張してお酒を買ってきてもらった二人。「乾杯!」のあと対談がおこなわれた
左から中納良恵、原田郁子。緊張してお酒を買ってきてもらった二人。「乾杯!」のあと対談がおこなわれた

中納:でまあ、お互い20周年ということで、活動期間も同じくらいやし、年齢もほとんど同じやし……。郁子ちゃんが、私の一個下か。

原田:うん。あ、20周年おめでとうございます。今日は、ミト氏は森くんに、私はよっちゃん(中納良恵)に、呼び出しをくらって、「何言われるんだろう」ってビクビクしながら来ました(笑)。嘘……すごく光栄です。ありがとうございます(笑)。エゴの二人に会えると、嬉しいんですよね。イベントで出番が近いときとか、ステージの袖や裏からライブを見せてもらったりするんですけど、声もパフォーマンスも圧倒的で。それにいつも痺れています。

―嬉しいっていうのはなぜでしょう?

原田:一緒に何かをやるとか、すごく近いわけじゃなくて、エゴにはエゴの、クラムボンにはクラムボンの持ち場があって。「そっちはそっちで、こっちはこっちで、がんばろう」っていうような。新曲を聴くと「おぉ、攻めてるなー」って思ったり。照明さんやライブスタッフが同じだったりするので、「エゴは今、ツアー中なんだ」とか、動きは感じつつ。でも、たまに会えると、ものすごく濃いところでしゃべったりもします(笑)。

中納:うん。イベントで一緒になったときは、裏で一緒にお酒を飲んだりとかして。

―どんなことを話すんですか?

原田:やっぱり、お互いに歌っている身だから、どうしても身体の話とかが多いですね。「最近、体調どう?」とか「今日、めちゃめちゃ声出てたよ」とか。よっちゃんが薦めてくれたハーブのオイルを買って試してみたり。そういうやりとりができることがすごく嬉しいんですよね。今のライブを見せてもらって、少し話して、で、またそれぞれの持ち場に戻るっていう。だから、ずっとエゴとは並走しているような感覚はあるんですよね。

クラムボンは、郁子ちゃんの柔らかい感じに全体が包まれているような気がして、それが私にはすっごく強く見えるんですよね。(中納)

―中納さんは、クラムボンのことを、どんなふうに見ているのですか?

中納:私らは最初からメンバー以外のバンドを入れてやっているんですけど、クラムボンは三人だけでずっとやっているじゃないですか。その中でも、郁子ちゃんの柔らかい感じが印象的というか、その感じに全体が包まれているような気がして、それが私にはすっごく強く見えるんですよね。

原田:……これ、照れるね(笑)。すごく嬉しいです。

中納:その強さみたいなのは、ずっといいなって思っていて。パッと見、儚そうやけど、実はものすごく強いというか。そういうイメージがありますね。

左から:中納良恵、原田郁子

―どちらのバンドも、デビュー以来一貫したイメージを持っているような気がしますけど、それについてはいかがですか?

中納:私たちの場合は、昔から何も考えずにやってきたところがあるというか、それこそ10年後、20年後のことなんて、考えたことがなかったですね。こういうスタイルでいこうっていう話を、森くんとしたこともないので。マナーもなければルールもない(笑)。逆にそれが独特な感じを出しているのかもしれないですけど。

原田:やっぱり、よっちゃんの隣には森くんがいて、私の横にはミトくんがいて、大ちゃん(伊藤大助)がいて……そうじゃなかったら、きっとこうはなっていないと思うんですよね。

中納:なってないな。

原田:だから、ソロのボーカリストとは、ちょっと違うんですよね。そう、エゴのライブを見ていつも思うのは、よっちゃんが行き切るときがあるじゃないですか? もう、会場全体が、よっちゃんの声になってしまっているような、K点を超えていく瞬間を何度か目撃したことがあるんですけど。「あぁ、これはきっと森くんがいるからこそ、だよなぁ」って。「どこまでも行けーーー」っていう安心感。ぼーーーんって行き切っても、帰ってこれるっていう。たった一人では、なかなか到達できないよね。

中納:うん、一人では無理やな(笑)。

―クラムボンの場合は?

原田:私たちの場合は、ミトくんっていう膨大な音楽の幅を持った人がいて、その中で各々うごめいているものがあるんだけど、もうちょっと、わかりづらいですよね、きっと。誰がフロントっていうわけでもないというか、ドラムが一番語っている曲もあるし、ベースがメロディーみたいに歌ってる曲もあるし、三人いないと成立しないってことを徹底してやってるわけなんだけど。エゴはもっと、広い感じがするんですよね。「気持ち良い」とか「かっこいい」ってことに直結してる気がする。バンドメンバーは、ずっと一緒?

中納:うん、もう結構長い。

原田:そうやって一つのビッグバンドがいて、バンドごとよっちゃんの背中を押すんだよね。その絆も見える。で、そこにはやっぱり森くんっていう存在のデカさがあるんだろうなぁと。

ただの音楽好きが、バンドをやって社会に出ていく過程っていうのを、まるまる一緒に体験しているから、みんなやっぱり変わりましたよね。(原田)

―今の話にも出てきましたが、中納さんと森さん、そして原田さんとミトさんというのは、それぞれどんな関係性なのですか?

中納:特別なんじゃないですかね。家族みたいやし、でも同志やし、めっちゃムカつくときもあるし(笑)。ただ、音楽的なところで言えば、私は森くんにいろいろ引き出されているようなところがあって。まあ、森くんは森くんで「よっちゃんに挑発される」って言っていたから、多分お互いがそういう感じでやっているのかもしれないですね。自分ではわからないところを、森くんがいっぱい見つけてくれたと思うし。「こういうボーカルが、かっこいいんちゃう?」とか。

EGO-WRAPPIN'
EGO-WRAPPIN'

―なるほど。

中納:郁子ちゃんの場合は、鍵盤を弾きながら歌うじゃないですか。それってむっちゃ頭脳を使うと思うんですよね。私もたまに鍵盤を弾きながら歌うんですけど、そうやって手放しではない状況っていうのは、冷静な部分がないとできないと思うんです。私、エゴは、手放しでやっているんですよね(笑)。で、森くんがとなりで「どこまでも泳げ!」って言っているみたいな。

原田:一ファンとしての勝手な妄想だけど、森くんはそういうよっちゃんを誰よりも見たいんじゃないかな? それはオーディエンスも同じで。よっちゃんがひたすら気持ち良さそうに歌ってるところを、ただただ見たいっていう。

中納:ふふふ。

―ミトさんと原田さんの関係性は?

原田:うちの場合は、もうちょっと戦いみたいなところがあって……。

中納:それは戦友ってこと?

原田:いや、戦友と言うよりも、音を出しているときは、ちょっと武道みたいな感じがあるんですよね。武道をやったことはないんですけど(笑)。

中納:ああ、フェスとかのライブ前に、裏で音合わせをしているのを見ていても、確かに三人の音とは思えないぐらい広がりがありますもんね。「そう言えば、ギターおらんねんや」とか「今、ベースレスや」ってハッとする。そうやって、一人ひとりの音が際立っていて……でも、それが調和してないと、やっぱりああいう感じにはならんし。あと、郁子ちゃんのふわーんとした感じのMCとか。あれはなかなか出せないですよね。

原田:ぶはは(笑)。

―クラムボンって、ふわっとしているようで、アンサンブルはかなりタイトだったりしますよね。

中納:そうですよね。だから、それは確かに「戦い」なのかもしれないけど、決して鋭利な感じではないんですよね。「柔よく剛を制す」じゃないけど、柔らかさがそこにあって。いわゆるパンクみたいなトゲトゲしい感じではないんですよね。

―武道は武道でも、合気道みたいな?

中納:そうですね。そのへんはちょっと女性的な感じがするというか。ミトくんもその感じがありますよね。

原田:あぁ、初めて会ったとき女の子かと思った。「自分が一番男っぽいかも」って思ったり、そういう性別じゃないところって、あるかもね。二人の方がセンシティブというか、ずっと繊細です。三人しかいなくても、すごく考え抜かれているサウンドの厚みや広がりがあって、ミトくんは徹底して構築する人なんですよね。彼の思う音像を目指すには、すごく練習が必要。でも、せーので音を出したときに、何とも言えない、ぶつかりとか、うねりが生まれてくる。アンバランスな、アンサンブル、というか。そんな中で、私はわりと漂ってて(笑)。ライブのときは特に、演奏して歌っているんですけど、ずっと空気しか見ていない。空気担当みたいなところもあるんですよね。

左から:中納良恵、原田郁子

―そういう関係性って、この20年で、それぞれ変わってきましたか?

中納:うーん、ちょっとは変わってきたんかな? 昔はもっと、お互い干渉していたかもしれないですね。音楽に向かう姿勢も、もっとガムシャラだったから。でも、だんだん必要以上に干渉しなくなって。でも、それが良かったんだと思うんですよね。

原田:クラムボンが出会ったのは、学生のときのクラスなんですよね。といっても、そんなに仲良くいつもつるんでいたわけではなく、たまたま一緒に演奏したら面白かった。10代の頃に出会って、20代、30代をともに過ごして、ミトくんのところには、3人の子どもが生まれて、そうやって変わっていくのを一緒になって見ているところがあるというか。もともとは、人の目も見られないような、閉じ閉じの三人だったんですよね(笑)。

中納:そうなんや。私、ドラムの人(伊藤大助)といまだにしゃべったことないかもしれない(笑)。

原田:うわぁ(笑)。でも、マンツーマンで話すと、結構しゃべってくれるよ。だから、学生だった、ただの音楽好きの三人が、バンドをやって社会に出ていく過程っていうのを、まるまる一緒に体験しているから、みんなやっぱり変わりましたよね。個別の関係性というよりも、それぞれ大人になっていくっていう。

物を作るっていうのは、いつでも真剣やから。何かを作って「どう、これ?」って初めて見せるのは、すごく勇気がいることだと思います。(中納)

―もともと仲が良くてバンドを組んだわけではないということは、やっぱり一緒に鳴らす音楽が魅力的だったということですか?

原田:魅力的というか、仲良くなる前に一緒に演奏を始めちゃったんですよね。二人はすごく勘が良くて、何でもすぐにパッと反応できるような人で、クラスの中でも抜きん出て上手だったんです。だけど、どういう性格なのか、どこに音楽的なルーツがあるのかっていうのは、全然知らなかったんですよ。

中納:ミトくんとケンカしたりするの?

原田:するする(笑)。最初の頃は、コミュニケーションが上手く取れなかったので、バチバチやっていましたね。特に、ミトくんと私は、しょっちゅうぶつかっていました。でも、そういうのはあるよね。やっぱり、お互い真剣だから。

中納:あるね。そう、こないだのレコーディングでも、大泣きしながら森くんとケンカしましたもん(笑)。

―あ、いまだにそういう感じはあるんですね。

中納:そうですね。やっぱり、物を作るっていうのは、いつでも真剣やから。何かを作って「どう、これ?」って初めて森くんに聴かせるときも、いまだにちょっと恥ずかしいというか。そういうのは、勇気がいることだと思います。

原田:うん。でも、「まだまだ、そんなもんじゃないだろ?」って言われている感じが、いまだにありますね。

中納:ああ、わかる。

原田:いいときばっかりじゃないから、お互い引っぱりあげながら……やってるのかもしれないです。職人的な、鍛錬というか。華やかに見えるかもしれないけど、黙々と作業してることも多いので。

クラムボン
クラムボン

―エゴの二人は、どうやって知り合ったんですか?

中納:友達に紹介してもらったんですよね。私がすごくバンドをやりたくて。当時森くんは、男の子と2人でThe Style Council(ポール・ウェラーがThe Jamの解散後、ミック・タルボットと共に結成したイギリスのポップロックバンド)みたいな弾き語りのバンドをやっていて、そのバンドでやっていくみたいな感じだったところを、私が無理やり引っこ抜いたっていう(笑)。

―(笑)。そうまでして森さんと一緒にやりたいと思った理由は何だったんですか?

中納:うーん、好きな音楽が一緒やったとか……やっぱり人間性も大きいんかな。当時、スタジオとかライブハウスに貼ってあった「メンバー募集」の紙をちぎって、何人か連絡を取ってみたりとかしていたんですけど、お互い何となく合わないみたいなことが続いて。だけど森くんとは、しゃべっていてすごくしっくりきたんですよね。考え方が柔軟なところとか。

原田:最初に会ったときのことって覚えてる?

中納:うん。背の高いモッズくんみたいな感じやった。ちょっとポール・ウェラーを意識したような。

原田:そうなの? ミトくんも、スーツを着てスクーターに乗ってたよ。

中納:そうなんだ(笑)。

原田:よっちゃんは、それまでは他のバンドをやっていたの?

中納:いや、やってなかった。大学で軽音サークルには入っていたけど、バンドでご飯を食べたいって思っていたから、大学ではバンドをやってなくて。

―森さんと一緒に始めた当初は、どんなバンドをやろうと思っていたのですか?

中納:CDを出してテレビに出て……みたいなことは、いっさい考えてなかったですね。その頃は、クラブシーンが盛り上がっていた時代だったから、テレビはアンチみたいなところがあって(笑)。ライブをやる場所も、ちょっとしたDJイベントとか、そういうところが多かったんですよね。

ずーっと同じメンバーだから、いくらでも煮詰まることはできるんだけど、だからこそ、それぞれいろんなことをしていていいというか。(原田)

―「バンドで歌うこと」に関して、この20年の間で、何か意識が変わってきたりはしましたか?

原田:意識は変わったと思うけど、状況が違うから、比較したことはないかな。

中納:郁子ちゃんは、ソロもやってるじゃない? ソロとバンドの違いってある?

原田:ソロの場合は、もうちょっとサボるよね(笑)。サボるというか、「ああ、きれいな音だなあ」って思ったら、しばーらく次の音を出さない。とか、自分の間で弾いたりできる。クラムボンは、もっと零コンマ何秒の世界。

中納:ああ……じゃあ、どっちもやっとかんと。

原田:うん。バランスがね、保てないところがあるかもしれない。開いているところと閉じているところの両面があるんだけど、それを一回音にしてみないとわからないところがあって。いっつもクラムボンの原田郁子みたいな感じではないというか、ふてくされていることもあるしさ(笑)、誰にも会いたくないときもある。だから、ソロをやることによって、そういう見えないバランスを取ろうとはしているんだと思う。

左から:原田郁子、中納良恵

左から:原田郁子、中納良恵

―中納さんは、どんな意識でソロをやっているのですか?

中納:私がソロをやっているのは、やっぱりピアノの音が好きだからかな。曲を作る段階で、ギターから作るのと、ピアノから作るのでは、ちょっと違うんですよね。なので、ときどきピアノから作るのが楽しいというか。森くんは何かに合わせるよりも、何かを生み出したり広げたりするほうが好きやから。あんまり合わせられる人やないんで、私がピアノで作った曲だと、あんまり伸び伸びできる感じじゃないんですよね。

原田:なるほど。よっちゃんのソロは、エゴよりも内省的というか、部屋でピアノを弾きながら歌っている感じがするもんね。

―原田さんの場合は?

原田:クラムボンは、一番戦いの場所でもあるからなぁ……。一旦「行ってきまーす!」って違う場所で空気を吸ったり、違うミュージシャンと音出したりすることは必要で。だから、プライベートっていうよりも、外に出かけていくような感じなのかもしれない。そうやって外の空気を吸って、またクラムボンに戻ってくるっていう。それは私だけじゃなくて、三人ともそういう感覚なんじゃないかな。できるだけ干渉し合わず、できるだけ新鮮に(笑)。ずーっと同じメンバーだから、いくらでも煮詰まることはできるんだけど、だからこそ、それぞれいろんなことをしていていいというか、「バンドだからこうじゃないと」っていうのは、なるべくなくしたいんですよね。

―それがバンドを長く続ける秘訣の一つでもある?

原田:うーん、どうだろ。全部が全部、一つのバンドに収まりきらないっていうのは、ミトくんを見ていてすごく思っていて。だから、各自がどんどん活動の場を広げていることは頼もしいし、「もっとやれ~」って思うんですよね。「それぞれ違う」っていう自由があっていいよなぁって。

音楽を作っている以上、外よりも内のものを探し続けるべきやと思うんですよね。本当に創造的なものは、流行り廃りじゃないというか、そこは信じてやっている。(中納)

―先ほど「身体」の話が出てきましたが、普段どんなふうに身体をリフレッシュさせているのですか?

中納:私は風呂ですね。あとサウナ。で、寝る(笑)。

原田:(笑)。でも、ちゃんと寝ること、食べることって、すごく必要だよね。だから、私も何もないときは寝てます(笑)。やっぱり、歌っていうのは、どうしても身体を酷使するというか。全部差し出すようなことだから。

中納:この間、誰かが言っていたんですけど、歌っていうのは形のないものやから、ある種エネルギーと絡み合うものなんやと。って、別にスピリチュアルとかそういうことではなくて……でも、確かに歌って、いろんなものを引っ張ってくるところがあると思うんですよね。だから、「これ、おかしいんちゃうかな?」っていうくらいドーンと身体が疲れてくるときもあって。そういうときは、塩サウナに行っています(笑)。

左から:原田郁子、中納良恵

―原田さんも、そういう切り替えの仕方ってあるんですか?

原田:そうだな……スパッと切り替えられないほうかも。ライブのあとも余韻の中にいたりして、なかなか戻ってこれない。学生のときバイトをしていて、合わないと思ったらパッて辞めちゃう人がいたんですけど、私はどうもそれができないんですよね。自分に合うか合わないかなんて、ある程度、長くやってみないとわからない。それはバンドも同じかも。20年ってすごいと思う反面、ようやく地盤ができてきて、やっとここからいろんなことができるんじゃないかって思っているところもあって。

中納:郁子ちゃんは、粘り強いんやな。

原田:うーん。そうなのかな。

―2バンドとも、とてもマイペースに活動されているという印象がありますが、それについてはどうでしょう?

原田:……マイペースって何だろう(笑)。

中納:まあ、マイペースに見られているのはわかるけど、そうは言っても毎回戦っているし。

―ただ、世の中の流行りにおもねるみたいな感じは、2バンドともないような気がします。

中納:そういうのは、社会とちゃんと付き合ったら、多分そうなるんやと思うけど……やっぱり、音楽を作っている以上、外よりも内のものを探し続けるべきやと思うんですよね。流行はあくまでも流行でしかないから、それは気にしないっていう意識はありますね。本当に良いものっていうのは、流行り廃りに関係なく、ずっと残っていくわけだから。本当に創造的なものは、流行り廃りじゃないというか、そこは信じてやっていると思います。

―中納さんが言うと、ものすごく説得力があります(笑)。

中納:いやいや(笑)。逆に言えば、流行り廃りをやっていない人がいるからこそ、きっと流行りってものがあるわけなんやろうし。

―原田さんは、どう思いますか?

原田:あ、今、全然違うことを思いついてしまったんですけど……エゴを見ていると、いい音楽をいっぱい聴いてきたんだろうなって思うんですよね。今回リリースしたベスト盤をカバーアルバムも含めて聴かせてもらって、この濃さ、かっこ良さはエゴにしか出せないなぁと思ったんですけど。二人の中に、いろんな時代のかっこいい音楽がぱんぱんに詰まってて、それが「旨味」っていうか、EGO-WRAPPIN'っていう音楽になっていってる感じがしたんです。他にも素晴らしいものはいっぱいあるけど、でも音楽じゃないとダメだったんだろうなって。強烈に音楽にやられちゃって、それが今でもずっと続いているんだろうなって。

中納:音楽には、いっぱい救われてきたから。絶対、音楽は間違いないっていう確信はありますね。

原田:うん、エゴは、音楽に対して、すごく真面目だと思う。

中納:それは郁子ちゃんも同じでしょ?

原田:うん。そうだね。その人の命ごとやっている、鳴っている音楽が好きなんですよね。だから、ちょっとずつでも、そうありたいなっていうのは思っています。

左から:原田郁子、中納良恵

―では最後、お互いの今後に対して何かひと言ずつ。

中納:身体にだけは気をつけて……。

原田:ほんとにそうだよね、お互い(笑)。あと、やっぱりその歳だからこそ歌える歌っていうのがあると思うから、よっちゃんは、それがすごく楽しみですね。年齢を積み重ねて、いよいよこれから歌うブルースというか。どんな声になっていくんだろう? って。お婆ちゃんになっても歌っていてほしいなって、一ファンとして思います。

中納:郁子ちゃんは、やっぱりいつまでも柔らかい感じで……ここまで柔らかくなれるのって、すごいと思うんですよね。歌詞一つとっても、すごいなあと思うし。女性だからこそできることを、ちゃんと表現してはるなあって思うんです。もちろん、日々いろんなことがあるというか、そんなええことだけじゃないとは思うんですけど、このままずっとふんわりやけどちゃんと芯がある、そんな感じでやっていってもらいたいですね。

リリース情報
EGO-WRAPPIN'
オールタイムベスト&カバーアルバム
『ROUTE 20 HIT THE ROAD』通常盤(3CD)

2016年4月20日(水)発売
価格:3,996円(税込)
TOY'S FACTORY / TFCC-86547

[太陽盤]
1. love scene
2. くちばしにチェリー
3. GO ACTION
4. a love song
5. 天国と白いピエロ
6. 満ち汐のロマンス
7. Dear mama
8. human beat
9. 10万年後の君へ
10. サイコアナルシス
11. BRAND NEW DAY
12. サニーサイドメロディー
※デジタルリマスタリング
[月盤]
1. 水中の光
2. かつて..。
3. 色彩のブルース
4. Neon Sign Stomp
5. Nervous Breakdown
6. アマイ カゲ
7. 下弦の月
8. admire
9. Fall
10. 雨のdubism
11. BYRD
12. inner bell
※デジタルリマスタリング
[星盤]
1. 異邦人
2. Move on up
3. Inbetweenies
4. 曇り空
5. Fever
6. 謎の女B
7. What's Wrong With Groovin'
8. ZIGGY STARDUST
9. By This River
10. さよなら人類

イベント情報
クラムボン
『clammbon 2016 mini album 会場限定販売ツアー』

2016年5月12日(木)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
料金:2,500円(ドリンク別)

2016年5月16日(月)OPEN 18:15 / START 19:00
会場:大阪府 心斎橋 BIG CAT

2016年5月17日(火)OPEN 18:00/ START 19:00
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
料金:2,500円(1ドリンク別)

プロフィール
中納良恵 (なかの よしえ)

1974年、大阪生まれ。EGO-WRAPPIN’ボーカリスト。1996年、森雅樹(G、作曲)とともにEGO-WRAPPIN’結成。関西を中心に活動を続けたのち、現在は拠点を東京においている。2000年に発表された“色彩のブルース”は、戦前のジャズから自然に行き着いたキャバレー音楽や昭和歌謡を消化し、エゴ独自の世界観を築きあげた名曲として異例のロングヒットとなり、その名を全国区で知られるようになる。EGO-WRAPPIN’の活動と並行して2007年にはソロ1st Albumとなる『ソレイユ』を2015年には2ndアルバム『窓景』をリリースした。またYuji Ohno & Lupintic Fiveに招かれ『ルパン三世のテーマ』の歌唱や、東京スカパラダイスオーケストラ、セルジオ・メンデスなど国内外様々なアーティストの作品にボーカリストとして参加している。

原田郁子 (はらだ いくこ)

1975年、福岡生まれ。1995年にスリーピースバンド「クラムボン」を結成。歌と鍵盤を担当。バンド活動と並行して、ソロ活動も精力的に行っている。昨年で結成20周年を迎えたクラムボンは、メジャーレーベルを離れ、自身のレーベル「トロピカル」よりミニアルバム『モメントe.p.』を発表。可能な会場すべてでサイン会を行う、初の「手売りツアー」を開催した。現在、オフィシャルサイトにてCD販売店を募集中。ジャンルを問わず100店舗以上が取り扱っており、独自の広がりを見せている。5月に東京・大阪・名古屋で追加公演を行う。

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