8年目のchayが人生の分岐点で見直す、本当に愛するものと素の自分

前作から2年5か月ぶり、シンガーソングライターchayの通算3枚目となるフルアルバム『Lavender』がリリースされる。ここに収録される14曲は、どれも「少し大人になった私たち」という共通のテーマを持っている。「繊細」「疑い」「期待」そして、「許し合う愛」など、ラベンダーの花言葉を想起させる歌詞には、30歳を目前にしたchayの「迷い」や「葛藤」がそのまま刻まれており、同世代の女性はきっと共感するところも多いはずだ。

「明るく元気なchay」という、これまでのパブリックイメージから一転。デビュー時からの師ともいえる武部聡志をプロデューサーに迎え、深沼元昭や尾崎亜美、多保孝一ら気鋭のソングライターとともに作り上げた楽曲で、等身大の自分をさらけ出したchay。よりしなやかに、より力強く歌う彼女は今、何を思うのだろうか。

『CanCam』でも、今や私がモデルとして最年長という噂もあり……(笑)。

―アルバムができ上がってみて、今の率直な感想から聞かせてもらえますか?

chay:1stアルバム『ハートクチュール』(2015年)も、2ndアルバム『chayTEA』(2017年)も、バラエティーに富んだ内容でした。一貫したテーマというのはなくて、その時々の瞬間を切り取った楽曲が多かったんですけど、『chayTEA』から書きためてきた曲やこのアルバムのために書き下ろした曲たちを並べてみた時に、ほとんどが「20代後半の漠然とした焦りや不安、迷い」というものがテーマになっていたんです。

前作からの2年5か月で、年齢でいうと27歳から28歳になり、10月で29歳になるんですけど、そういう年齢の積み重ねを経ての気持ちというか。これは女性ならではなのかもしれないですが、そんなふうに、ひとつの作品のなかで共通点を感じたのは初めてのことでした。

chay(ちゃい)
1990年10月23日生まれ。幼少の頃から歌手を目指し、小学生の頃からピアノで曲を作り始める。大学に入学すると同時にギターを始め、路上ライブなどを重ね、本格的に音楽活動を始める。2012年10月に『はじめての気持ち」でワーナーミュージック・ジャパンよりCDデビュー。

―それだけ大きなテーマだったのでしょうね。

chay:だと思います。同世代のお友だちと久しぶりに集まって話していると、やっぱりお仕事のことや、結婚や出産のことなどが話題に上ることが多くて。歌詞を書いてみたら、まさにみんなが悩んでいることとリンクしていました。

意図して書いたわけではなかったのですが、でき上がった曲を並べてみて初めて「そうか、自分はこういう気持ちだったのか」と気づきました。だったらそれをタイトルにしたいと思ったのですが「アイデンティティークライシス」みたいにするのはちょっとchayっぽくはないかなと。

chayらしい表現でつけられないかな……と思って考えていたら、ラベンダーの花言葉が「期待」や「繊細」「疑い」「沈黙」「許し合う」という、まさに今の自分の気持ちや曲のテーマにも合っているなと思ったので、そこからアルバムタイトルを『Lavender』にしたんです。

chay『Lavender』を聴く(Apple Musicはこちら

―今作の資料には「少し大人になった私たちの心にあるもの」とありました。

chay:もちろん、仕事や結婚のことでいえば女性だけでなく男性だっていろいろ考える時期ってあるだろうし、感じる気持ちには共通する部分もあると思うので、同世代の女性に限らずいろんな人に聴いてもらえたらいいなと思っています。

―chayさんが「大人になった」と感じるのはどんな時ですか?

chay:現場で年下が増えてきた時かな(笑)。お仕事を始めたころは最年少のことが多かったのが、気づけば最年長なこともあって。例えば雑誌『CanCam』でも、今や私がモデルとして最年長という噂もあり……(笑)。そんなことに日々びっくりしています。スタッフの方も年下が増えてきましたしね。

でも、自分が20代前半のころって、周りにいる大人たちがものすごく「大人」だと思っていたのに、いざその年齢になってみると「あの時に憧れてた29歳になれているのだろうか」と焦ります。

人生、選択肢の連続じゃないですか。

―“ブーケの行方”は、まさに「結婚」がテーマになっていますね。

chay“ブーケの行方”を聴く(Apple Musicはこちら

chay:<さりげないプレッシャーに 深いため息つくお年頃>というラインがあって。おそらくプレッシャーをかけている本人は悪気もないし無意識だと思うし、自分が勝手にプレッシャーだと思っているだけなのかもしれないけど、「このままじゃいけない」みたいな焦りを感じてしまうんですよね。

―もしかしたら、違う選択肢もあったのかもしれないって思うことはありますね。

chay:人生、選択肢の連続じゃないですか。「あっちの選択肢もあったのかな」と思いつつ、でも「自分が選んできた道は間違ってない」という気持ちもあるし。そういう誰しもが抱えているであろう複雑な感情を、このアルバムには詰め込みたかったんですよね。

―「答えを見出す」というよりは、迷いや焦り、葛藤をそのまま刻み込むというか。

chay:毎回、曲作りの時には「その時にしか感じられない気持ち」や「その時にしか書けない言葉」を大切にしてきました。だからこそ、デビュー当時の楽曲や、ちょっと前の楽曲を聴くと「あー、こんなこと思ってたな」って思えるんです。当時は真剣だったけど、今は笑けるくらい懐かしく思うし。じわーっと温かい気持ちになることもあって。今回は特に、今の等身大の気持ちを封じ込められたんじゃないかなって思っています。

「伝えたいことは、伝えられる時に伝えないと、伝わらない」ということを、すごく思う出来事があって。

―逆に、大人になってよかったことってありますか?

chay:10月24日でデビュー8年目に入るんですけど、少しずつキャリアを重ねていって、決定権を委ねていただけるようになりました。以前より意思決定が自由にできるようになったのは、よかったことのひとつです。

ただ、そうなることをずっと望んでいたはずなのに、いざなってみるとプレッシャーもあって。とにかく、迷っていられない。もちろん、以前のインタビューでも話したように、自己プロデュースするのは昔から好きなので、やりがいも感じていますけど(参考:chayが語る、いま求められるシンガーソングライターのあり方)。

―自由が増えていくと、孤独なことも多いんじゃないですか?

chay:そうなんですよ! 20代前半のころは、誰かのお仕着せをそのままやるのに抵抗があったんですけど、いざ決定権を与えられると不安になるという矛盾が生じています。なので、以前よりも第三者のアドバイスや意見に耳を傾けるようになりました。むしろ、積極的に意見を聞くようにしていて。幸いなことに、私の周りには様々な年代のスタッフがいるので、あえて自分より若い人に相談してみたりすることもあります。

―アルバムの冒頭曲“伝えたいこと”と、続く先行シングル曲“大切な色彩(いろ)”は、どちらも同じテーマを歌っていますよね。それだけchayさんにとって大きなテーマだったのかな、と。

chay:そうですね。アルバムの冒頭にこの2曲を持ってきたのは、まさに今自分が伝えたいことだったからです。もちろん、これをラブソングと受け取ってもらってもいいのですが、例えば自分の大切な家族やペット、親友……そういう「当たり前」だと思っていた存在が、いかに尊いものであるかについて歌っているんです。

年齢を重ねていくと、当たり前だと思っていたことの大切さや重みが分かってくるし、本当にいつ何があるか分からないという経験を、これまでたくさん重ねてきて……。「伝えたいことは、伝えられる時に伝えないと、伝わらない」ということを、すごく思う出来事があって書きました。

チャレンジするのは勇気のいることだけど、そこに立ち向かっている時って私は好きなんです。

―“私が私になるために”も、「現状維持」ではなく「挑戦」を選び続けているchayさんだからこそ出てきた言葉だと思いました。

chay:おっしゃる通り、「このままでいいのかな?」という迷いがテーマになっています。個人的に辛い時は、包み込んでくれるような優しい曲が聴きたくなるんですけど、“私が私になるために”は現状に対して迷いや葛藤を抱えている人の背中を、強く押してあげられるような歌詞にしたいという気持ちで書きました。

―挑戦し続ける気持ちって大事だなって、歳を重ねるたびに思いますね。

chay:本当に。新しいことにチャレンジする時は誰でも怖いし勇気のいることだと思うんですけど、でもそこに立ち向かっている時って私は好きなんです。楽しいし、今まで見たことのない景色を見たり、達成感を味わったりするのって、挑戦した時にしか味わえないじゃないですか。

それに、失敗はいくらしてもいいと思うんです。最近は映画(『ダンスウィズミー』矢口史靖監督作品)に挑戦したり、『chay's BEAUTY BOOK』という本を出したりしているんですけど、そもそも音楽自体なかなか手に取ってもらえない状況が続き、音楽番組などもどんどん減っていく中、より多くの人に聴いていただくための入口というものは、いくつあってもいいと思っていて。

実際、映画を観てライブに来てくださったり、CDを手に取ってくださったりする方もいらっしゃるんです。こんな時代だからこそ、挑戦していく気持ちはこれからも持ち続けていきたいですね。

『chay's BEAUTY BOOK』
『chay's BEAUTY BOOK』(Amazonで見る

愛と恋がこんなにも違うということは、この年代になったからこそ実感できることだと思います。

―“砂漠の花”は松尾潔さんによる歌詞ですが、「許し合う愛」や「疑い」がテーマになっていますよね。以前、Crystal Kayさんとの対談でも、愛と恋の違いなど話してもらいましたが(参考:chayとCrystal Kayが語り合う、女性の悩みと男性が知らない本音)、chayさんの恋愛観を聞かせてもらえますか?

chay:ここに書かれていることは、20代前半では理解できなかった気持ちです。<ときめくだけならば それは恋 砂漠の花 愛とは許すこと>というサビにハッとさせられました。今回のアルバムで改めて「恋」というのは瞬発的に気持ちが高ぶることで、「愛」はどんなことがあっても味方でいたり、寄り添っていたり、支え合っていくというニュアンスの違いがあるのかなと。この年代になったからこそ実感できることだと思います。

―それは、楽曲にも少なからず影響してきますよね。

chay:そう思います。これまでのchayは「恋」を歌っているイメージが強かったと思うんですけど、今回のアルバムは「恋」よりも「愛」に重きを置いているので。

誰かのために何かをしてあげたいと思う無償の気持ちは「愛」だと思いますね。

―愛って、どんな時に感じるものなんでしょう?

chay:何の見返りもないのに親身になってもらったり、自分のことのように考えてもらったり……それはスタッフやお友だちなんですけど、結局は赤の他人なわけじゃないですか。それでも誰かのために何かをしてあげたいと思う無償の気持ちは「愛」だと思いますね。

―無償の愛を注いだことってありますか?

chay:そうだなあ……愛犬の小次郎は、心から愛する存在ですね。それと幼稚園のころからの親友が2人いて、いまだに3人で集まっているんですけど、彼女たちが困っている時や悩んでいる時は、できることは全てしたいと思うくらい愛しています。

幼馴染なので育ってきた環境も近いし、一緒にいる時間が長いから考え方や価値観も近いので、お互い「絶対に嘘なんかつかない」という固い信頼関係が成り立っているというか。その中で無償の愛が育まれてきた気がしますね。

―“Girl Friends”でも歌われていますね。

chay:そうです! 私、何をするにも「距離感」が大事だと思っていて、あまり人に深入りしないようにしているんですね。だからこそ、本当に心の底から信頼できる友達の存在はとても大きい。この世界にいると、どうしても感覚がズレちゃうところがあるので、それをリセットする意味でも大切なんです。ちゃんと叱ってくれるし。

chay“Girl Friends”を聴く(Apple Musicはこちら

弱い部分やかっこ悪い部分もさらけ出していいんじゃないかと思っています。

―“HIKARI”は、多様性について歌われています。<誰でも 誰かの光>、<私は要らないとか 思ったりしないで>というフレーズが印象的です。

chay“HIKARI”を聴く(Apple Musicはこちら

chay:年齢を重ねていくたびに、「みんな違ってみんないい」ということを痛感するんですよね。「こういう人はよくて、こういう人は悪い」みたいな考え方は好きじゃないんです。向き不向きもあったり、性格的なものもあったり、人って本当にそれぞれだから、誰かと比べて自分を卑下したり、逆に相手を卑下したりするのは違うんじゃないかなって。

私もつい、ネガティブに物事を捉えてしまいがちなんですが、「もっと気楽な気持ちで生きていったほうがいいよね?」って。様々な経験を経て思ったことを伝えたかったんです。

―今のchayさんは、自分自身を受け入れられるようになったのですね。

chay:なったと思います。それこそ以前は誰かと比べては、自己嫌悪に陥ることの繰り返しでしたけど(笑)。でも、100人が100人「良い」と思うものなんて、この世に存在しないじゃないですか。「それで良いじゃない?」って。

―そう思えるようになったのは、いろんな悩みを乗り越えてきたからでしょうね。

chay:以前にもお話ししましたけど、デビュー5周年までは「いつも明るくて元気なchay」というパブリックイメージをとにかく確立させて、それを守ることに必死だったんです。今は、もっと人間味があっていいし、弱い部分やかっこ悪い部分もさらけ出していいんじゃないかと思っています。「素」のままの自分で仕事をしようと思うようになりました。

―飾らない、ありのままのchayさんも「幾億の星の輝き」のひとつであり、この世界を照らしあう存在として夜空に瞬いている。生きとし生けるもの全てに意味があることを歌った素晴らしいメッセージソングだなと思いました。

chay:星って、肉眼で見えるだけで2千億個あるんですって。しかも、どれひとつとして同じ輝きはないんですよ。小さく瞬いている星もあれば、大きく光り輝いている星もある。見えないくらい微かな光を放つ星もあるわけですよね、2千億通りも! でも、その2千億個が地球を照らしているなんて、なんだかとっても素敵なことだと思いませんか?

リリース情報
chay
『Lavender』通常盤(CD)

2019年11月13日(水)発売
価格:3,300円(税込)
WPCL-13116

1. 伝えたいこと
2. 大切な色彩(いろ)
3. 私かが私になるために
4. 砂漠の花
5. SNOW FLAKE
6. ブーケの行方
7. To Shining Shining Days
8. ずっときっと叶う
9. Fairy Tale
10. あなたの知らない私たち
11. Girl Friends
12. HIKARI
13. With
14. 小さな手

chay
『Lavender』初回限定盤(CD+オリジナルスマホリング付きICホルダー)

2019年11月13日(水)発売
価格:4,620円(税込)
WPCL-13117

1. 伝えたいこと
2. 大切な色彩(いろ)
3. 私かが私になるために
4. 砂漠の花
5. SNOW FLAKE
6. ブーケの行方
7. To Shining Shining Days
8. ずっときっと叶う
9. Fairy Tale
10. あなたの知らない私たち
11. Girl Friends
12. HIKARI
13. With
14. 小さな手

プロフィール
chay (ちゃい)

1990年10月23日生まれ。幼少の頃から歌手を目指し、小学生の頃からピアノで曲を作り始める。大学に入学すると同時にギターを始め、路上ライブなどを重ね、本格的に音楽活動を始める。2012年10月に「はじめての気持ち」でワーナーミュージック・ジャパンよりCDデビュー。2013年10月より2014年3月までフジテレビ系「テラスハウス」に出演し、各方面で話題に。2014年5月より「CanCam」専属モデルとしても活動開始。2015年2月にリリースされた「あなたに恋をしてみました」は、フジテレビ系月9ドラマの主題歌となり、50万DLを突破し大ヒット!その後、配信限定リリースを含めた9枚のシングルと、2枚のアルバムを発売。昨年12月にはフィーチャリングにCrystal Kayを迎え、シングル「あなたの知らない私たち」を発売。これまで歌ってきたピュアで一途な恋心とはうってかわって、女と女の戦いやスリリングな大人の恋の駆け引きを思わせる楽曲が話題を呼んだ。



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