声優ユニット・イヤホンズが6年目の挑戦と原点回帰を語る

イヤホンズは2015年に放送されたテレビアニメ『それが声優!』をきっかけに誕生した声優ユニットだ。『それが声優!』は、声優・浅野真澄(執筆活動時は、あさのますみ名義)が原作、畑健二郎(代表作『ハヤテのごとく!』)が作画を担当して制作した4コマ漫画で、声優業界や声優の仕事について赤裸々に描いている。

「イヤホンズ」は、作中で主人公たちが結成した架空の声優ユニットであり、アニメ版のメインキャラクター3人の声優を務めた高野麻里佳、高橋李依、長久友紀による現実の声優アーティストユニットでもある。アニメから派生・誕生したユニットは、アニメの終了と同時に活動を終えることも少なくないが、イヤホンズは放送終了後も活動を止めず、2021年で6周年を迎えた。

その音楽性も年を経るごとに変化し、結成当初はアニメの世界観やキャラクターを表現した曲が中心だったが、ここ数年は声優ユニットだからこそできる「声」にフォーカスした実験的な楽曲にもチャレンジしている。2020年に発表した3rdアルバム『Theory of evolution』でのポエトリーリーディング的アプローチはその象徴とも言えるだろう。

そして、そんな彼女たちが2021年9月に発表するConcept EP『identity』で挑んだのは、アニメ『それが声優!』の同名オープニング主題歌のリメイクだ。人気声優・アーティストに成長した高野麻里佳、高橋李依、長久友紀のために、原作者・あさのますみが歌詞を書き下ろしたという。

デビューから6年、原点ともいえる楽曲と向き合い、彼女たちは何を考えたのだろうか。メンバー3人とあさのますみによる久しぶりの座談会で、イヤホンズの現在地に迫った。

イヤホンズ“それが声優!2021”トレーラー

アニメ終了後も独自の活動を継続した珍しい声優ユニット・イヤホンズ

―イヤホンズとあさのさんが会うのはいつ以来ですか?

高野:めちゃくちゃ久しぶりですよね!

長久:私たちのインターネットラジオ『イヤホンズの三平方の定理』のゲストに来てくださった以来じゃないですか?

あさの:そうそう。イヤホンズ5周年のときだから2020年の6月かな? そのときに「私をイヤホンズの作詞家として使ってくれてもいいんじゃないですか?」みたいな話をしたのを覚えてる(笑)。

高橋:そこは相思相愛なところもあって。あさのさんが作詞してくださった『それが声優!』の主題歌をリメイクしたいっていうのは、もともと私たちも言っていたんですよ。

―それが今回、“それが声優!2021”で、お互いの念願が叶ったわけですね。アニメから派生したユニットが、アニメが終わっても続くことは珍しいと思いますが、原作者としてはイヤホンズをどうご覧になっていたんですか?

あさの:アニメ終了後も続いたのはすごく嬉しかったですね。声優・アーティストとしての三人の意志を大事にしたいという気持ちがあったので、原作者の私に気を使わずに、自分たちがやりたいように、やりたいときまでやればいいんだからねっていつも言っていました。

長久:あさのさんがそういうスタンスで私たちのことを見守ってくださったからこそ、イヤホンズの活動を通していろんなチャレンジをしたいって考えられたんだと思います。

高橋:アニメから派生したこともあって、本来「原作者さんからユニットをお借りしている」みたいな感覚はもっとあったと思うんです。それでもいま、こうして「私たちのユニットだ」って自主的に考えられるのは、あさのさんの距離感のおかげだなって。ここが自分たちの居場所だって思えるし、創作意欲が湧いてくる感じがしています。

あさの:そう言ってもらえてよかったです(笑)。アニメ放映中の頃よりも、作品やパフォーマンスのクオリティーがどんどん高くなっているので、新しい作品が届くたびに、嬉しい半分、羨ましい気持ちがあるくらいです。

「キャラクターではなく、自分自身の声として発信するのは、緊張感が全然ちがう」(高野)

―今回のリメイクは、メロディーや編曲だけでなく歌詞も2021バージョンに書き下ろされていますね。

あさの:6年前の“それが声優!”は、テレビアニメのオープンニング曲でもあったので、作品の世界を表現するものとして作詞しました。原作の一部として書いたというか。でもリメイク版は、声優・高野麻里佳、高橋李依、長久友紀の思いや考えを表現するものでなくてはならないと思いました。

なので、作詞のためにメンバー一人ひとりと1時間近くヒアリングさせてもらったんです。「最近の声優活動はどう?」「いま、仕事についてどう思ってる?」っていろんな話を聞いて、そこから歌詞を書いたので、それはそれは大変でした。3人とも思いはすごく強いのですが、言葉になっていないというか、説明が長いんですよ(笑)。

2015年にリリースしたイヤホンズ “それが声優!”のMV

高野:恥ずかしい……(笑)。

あさの:そのまま歌詞に書いても伝わらないから、私のなかで、きっとこういうことが言いたかったんだろうっていう言葉に置き換えていきました。あとは、やっぱりリメイクだから、過去の歌詞をちょっと彷彿させるような内容を入れたりもしています。

高橋:歌詞を見て、これは私が話したことが元になっているなとか、あさのさんからの私信だなって感じる言葉があって、すごく嬉しかったです。

長久:私も歌詞を見て、あらためて「自分、こんなこと話してたんだ」って気づかされました(笑)。うまくまとめてくださって、私の理解を超えたところにあさのさんはいてくださるんだなと思うとありがたかったです。

―今回はアニメのキャラクターではなく、イヤホンズのメンバー自身が主人公になった“それが声優!”が生まれたと。アニメの声優から生まれたイヤホンズならではの感覚ですね。

高野:今回は、私たち自身のことをそのまま書いていただいた歌詞なので、聴いてくださる方に届いたらいいなあと思いつつ、ちょっと気恥ずかしいところもありますね。キャラクターを通して表現するのと、自分自身の声として発信するのでは、やっぱり緊張感が全然違うなとあらためて感じています。

あさの:いまのイヤホンズのメンバー自身がモチーフになった新しい“それが声優!”を、いろんなところで歌ってもらえたら嬉しいです。また時間が経ったときに、違うかたちで、イヤホンズをモチーフに作詞できたらいいなとも思いました。

『identity』ジャケット写真。背後やテーブルには3人の好きなものが並ぶ

声以外の表現を考えるきっかけとなった「手話」への挑戦

―“それが声優!2021”が、『identity』というEPに収録されているのも象徴的ですね。このタイトルに込められた意味は何ですか?

高橋:きっかけは、2曲目に収録されている“はじめまして”という楽曲からです。私たち声優が普段活用している、声や日本語以外を扱っている方々に挨拶をしたい、という思いが1番初めで。

あえてこれまでと違う表現を取り入れることで、あらためて自分たちを見つめ直すきっかけにもなり、そこからEPのコンセプトとタイトルを「アイデンティティ」とすることになったんです。

イヤホンズ“はじめまして”MV

―イヤホンズは、メンバー全員が声優という強みを活かして、声を使ったさまざまな音楽表現をしてきたので、声を使わない表現に挑戦するのは大きな出来事ですね。

高野:ちゃんと伝わるか不安でしたし、思っていた以上に勇気のいることでした。

高橋:声優として声を使って表現する日々だったから、手話に挑戦したときにどんな感覚になるのか、最初は全然予想がつきませんでした。

でも実際に、手話を学ぶためにスタッフさんが用意してくれた講習会に行ってみたら、職業・声優の私としてではなく、ただの人間の私であればいいんだと思えたというか。どうして自分は声にこだわっていたんだろう? って思っちゃうくらい、目の前の会話を楽しんでいました。

長久:手話コーディネーター・手話通訳士の南瑠霞先生に手話を教えてもらったんですけど、手話って、言葉や文字を手の動きに置き換えているだけじゃなくて、目の動きや表情もフルに使って伝えているんです。

それに、ちょっとでも指の角度が違ったりすると、それだけで伝わらなかったりするんですよね。手話の講習を経験して、自分自身がいかに声以外の表現を使っていなかったのかがわかりましたし、イヤホンズとして何をどうやって表現するかを、あらためて考えるきっかけにもなりました。

「いまやってみたいことを」の精神がイヤホンズらしさをつくる

―イヤホンズは、これまでも作品ごとに新しい挑戦をしていますが、みなさんはイヤホンズらしさをどう考えていらっしゃいますか?

高野:イヤホンズの音楽って「これって音楽なの?」っていうような楽曲もあるんですよね。たとえば、テレビアニメ『それが声優!』のエンディングテーマ“あなたのお耳にプラグイン!”は、曲中でラジオ番組風の語りが入っていて、しかもリスナーからのリクエスト曲として“残酷な天使のテーゼ”が曲中で流れるんです。

なので、私自身は作品をつくるたびに新しいものと出会って、毎回勉強しているような気持ちです。たとえば今回だったら、手話を扱う方にとっての音楽があるんだなあって思いましたし。そういった発見があるのが、イヤホンズらしさかなと思っています。

イヤホンズのプレイリストを聴く(Spotifyを開く

高橋:イヤホンズは、いまやってみたいことやつくりたいものに一球入魂していくグループなのかなと。ペースはゆっくりかもしれませんが、一曲一曲丁寧に長く続けてきたことが、イヤホンズらしさに繋がっているかもしれないですね。

―あさのさんから見たイヤホンズらしさはいかがでしょう?

あさの:私も同じ意見です。どんどん新しいことに挑戦しているし、歌い方も洗練されていって、三人それぞれが歌い手として違うかたちで進化しているんだなと感じます。だから、イヤホンズが新しい作品をリリースするたびに、今度はどんなことをして楽しませてくれるんだろう、みんなどんなふうに成長しているのかな、みたいにワクワクするんです。で、毎回想像を超えたクオリティーの作品が届くので、目が離せないなと思っています。

―毎回新しいことにチャレンジし続けるのは大変ではないですか?

長久:そうですね(笑)。私は基本ネガティブなので、私にできるのかな? っていう不安から毎回始まるんです。完成した音源とかMVとかジャケットを見て、まわりの反応をいただいたときに、ようやくやってよかったってホッとしたり、達成感を感じたりしています。

高橋:私はもう、楽しくてしょうがないです。毎回いろいろな題材を持ち寄ったり、プロデューサーさんが提案してくださったりするんですけど、きっとイヤホンズに合うだろう、私たちがどう調理するのかを見てみたい、っていう気持ちがほんとに嬉しくて。早く次のお題ちょうだい! みたいな感じです(笑)。絶対その期待に応えたいし、予想も超えたいといつも思って制作に入っています。

高野:私はさっきとかぶっちゃいますけど、いつも新しいことを吸収させていただいているな、成長させていただいているな、という気持ちですね。

―見事に三者三様のとらえ方ですね(笑)。

あさの:たしかに、そういう根底にある個性やそれぞれの良さはずっと変わらずあり続けている3人だなと思いますね。

―あさのさんから毎回楽しみにしているという言葉もありましたが、イヤホンズとしてこの先楽しみにしてることや、期待してほしいことはありますか?

高野:やっぱり今回のコンセプトEPをひっさげたライブをすることが、いちばんやりたいことですね。目と耳だけじゃなくて、肌で伝わる気持ちも大切にしていきたいので。コロナ禍の状況ですが、いつかみなさんと一緒に共有できる時間がつくれたら嬉しいなと思っています。

高橋:そうですね。しっかり『identity』の曲たちを大切にする時間を設けたいですね。

長久:私もまったく同じ気持ち。去年からライブが延期になったり中止になったりを繰り返して、新曲発売でライブができるのは当たり前じゃないという経験をしたんですよ。

だから、あらためてライブをやれるときがきたら、そのときにこみあげてきた気持ちを大事にして、メンバーや応援してくださる皆さんと共有したいですね。なので、いまは作品をもっと深く歌い込んで、自分のなかで曲の解釈だったり世界観だったりを拡げていきたいです。

イヤホンズ×あさのますみ -Dialogue Teaser-
リリース情報
イヤホンズ
『identity』

2021年9月22日(水)発売

[Online Show版]
CD+Blu-ray ※ELRStore限定商品
価格:7,150円(税込)
NKZX-5〜6

[通常版]
CD+Blu-ray
価格:3,300円(税込)
KIZX-499~500

プロフィール
イヤホンズ

高野麻里佳、高橋李依、長久友紀による3人組声優ユニット。テレビアニメ『それが声優!』の放送とともに2015年6月18日、シングル『耳の中へ』でデビュー。2021年で6周年を迎える。声優ならではの言葉のスキルを活かした楽曲が話題を呼び、CDはこれまでに6枚のシングル、3枚のアルバムをリリースしている。

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