受賞作品が出揃った『MEC Award 2018 入選作品展』授賞式レポート

新しい映像表現の可能性を問う『MEC Award』。今年の大賞作品は?

映像表現の明日を担う才能を発掘・支援する『MEC Award 2018 入選作品展』が3月17日から4月8日まで開催された。SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザで入選5作品が展示され、初日には大賞の発表とライブパフォーマンス等を含む授賞式も。その様子をお届けする。

MECは「Media Explorer Challenge」の頭文字。新しい映像表現の可能性にチャレンジする多数の作品から入選5作を選出し、会場審査で大賞が決定される。今回も、アニメーション、ドキュメンタリー、映像インスタレーション、VR映像など多彩な作品がエントリーした。

まず入選5作品を簡単に紹介しよう。清水はるかの『I'm Alive』は、繊細な描線による生き物たちを通して「生きること」に思いをはせるドローイングアニメーション。展示では壁面プロジェクションにより、柔らかな描画を細部まで体感できる。

清水はるか『I'm Alive』 / 『MEC Award 2018』入選作品 ©2018 埼玉県 / SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
清水はるか『I'm Alive』 / 『MEC Award 2018』入選作品 ©2018 埼玉県 / SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ / 映像はこちら

藤倉麻子の『群生地放送図鑑』は、高速道路を構成する工業製品が意思を持ったかのように意味深な動きを見せる、3DCGの映像インスタレーションだ。展示ではその世界観がプロジェクション、モニター、バナーなどを組みわせて表現された。

藤倉麻子『群生地放送図鑑』 / 『MEC Award 2018』入選作品 ©2018 埼玉県 / SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
藤倉麻子『群生地放送図鑑』 / 『MEC Award 2018』入選作品 ©2018 埼玉県 / SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ

渡辺栞の『ワタヤ』は、教室で出席をとられるだけで異様に緊張してしまう少女の心理を、その体を覆っていくドローイングやロウで表現したストップモーションアニメ。展示では、実際に小学校の机と椅子に座って映像を体験する、という計らいもなされていた。

渡辺栞『ワタヤ』 / 『MEC Award 2018』入選作品 ©2018 埼玉県 / SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
渡辺栞『ワタヤ』 / 『MEC Award 2018』入選作品 ©2018 埼玉県 / SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ

今治建城の『10424』は、犬の殺処分をテーマにした社会派の実写映像作品。動物の姿ではなく、無機質な施設の風景をドキュメンタリータッチで追う。タイトルの意味はラストで明らかに。約10分の映像を、床に近い位置で座り、犬の目線に近付けて鑑賞するようになっている。

今治建城『10424』 / 『MEC Award 2018』入選作品 ©2018 埼玉県 / SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
今治建城『10424』 / 『MEC Award 2018』入選作品 ©2018 埼玉県 / SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ

最後の『CuBerry』は映像&音楽ユニット、CuBerry(河原雪花、小林奏子)による360度VRミュージックビデオ。実写と手描きアニメーションが融合したドリーミィな作品だ。展示ではゲーム用コントローラーや簡易VRゴーグルでこれを体験できるほか、映像とつながるような壁一面のドローイングも楽しい。

CuBerry『CuBerry』 / 『MEC Award 2018』入選作品 ©2018 埼玉県 / SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
CuBerry『CuBerry』 / 『MEC Award 2018』入選作品 ©2018 埼玉県 / SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ

この5作から栄えある『MEC Award 2018』大賞に選出されたのは、渡辺栞の『ワタヤ』。渡辺は「この作品の主人公と同じで、今すごく緊張して真っ白ですが、賞をもらうのは小学生の絵画コンクール以来なので嬉しいです」と笑顔で受賞挨拶。さらに以下のように語ってくれた。

渡辺:自分を構成する要素として「緊張」が大きな部分を占めているなと思ったことが、この作品に取り組んだきっかけです。ふつうウィークポイントとされがちな事柄をメインに扱った表現が賞を頂けたのは、これが私ひとりだけの感覚ではないのかなとも思えて嬉しいです。

表現にロウを使ったのは、自分の家にある古い燭台から垂れる蝋燭のフォルムが前から気になっていたから。今後も、表現したいことと気になる手法とを掛け合わせて、見たことのないものが作れたらと思います。

渡辺栞
渡辺栞

なお、同作では先生に返事をする子どもたちの声が前後左右から聞こえることも臨場感を高めている。彼女はその音環境作りのために「くじ引きで実際に生徒全員の席順を決めるところから始めた」という。こうした細かいこだわりも、作品体験を豊かなものにしている。

『MEC Award 2018』入選者。左からCuBerry(小林奏子、河原雪花)、渡辺栞、今治建城、清水はるか、藤倉麻子
『MEC Award 2018』入選者。左からCuBerry(小林奏子、河原雪花)、渡辺栞、今治建城、清水はるか、藤倉麻子

映像表現を軸としながらもパフォーマンスあり、実食イベントあり、ライブありの多様な受賞式

審査員4名の総評では、まず『トランスフォーマー プライム』『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』などの作品制作で知られるデジタルアニメーションスタジオ、ポリゴン・ピクチュアズの塩田周三代表が登壇した。

塩田:最近はコンテンツが優れているのは大前提で、それをどんな「箱」に入れて届けるかが大切になっています。『MEC Award』は一次審査でコンテンツを、最終審査でそれをどう展示するかを問う点で、時代に合った公募展。その点では、展示でもうひと驚きさせてほしかったというのが正直な感想ですが、『ワタヤ』は完成度の高さが評価されました。

塩田周三(ポリゴン・ピクチュアズ代表)
塩田周三(ポリゴン・ピクチュアズ代表)

続けて、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]や『札幌国際芸術祭2014』、メディアアートフェスティバル『AMIT』などで先見的な仕事を手がけ続けるキュレーターの四方幸子はこうコメントする。

四方:今年は「これを20歳の人がひとりで?」と驚かされたり、パフォーマンスや音楽などボーダーレスに諸要素を使いこなし、コラボする様子に従来からの変化を感じたりもしました。展示においても、大画面でディテールまで伝わるもの、会場に教室を再現したものなど、いずれも良かったです。

四方幸子
四方幸子

四方は入選作品の『群生地放送図鑑』について「インスタレーションをもう少し頑張れたら、と残念な思いもあった」という厳しい意見も。しかし、実はこの作品は彼女が審査過程で特に興味を抱いた作品でもあり、だからこその「これからへの期待を込めた叱咤激励」だったようだ。この後、作者の藤倉と話し込む姿も見られた。

3人目の審査員は、アーティストの森弘治。『恵比寿映像祭』『越後妻有アートトリエンナーレ』『ヴェネツィア・ビエンナーレ国際企画展』などに参加し、『MOTアニュアル2016 キセイノセイキ』展ではディレクション / キュレーションを主導したことでも知られる。

:私も実写を使った映像インスタレーションを作っています。その立場から言えば、『10424』のようにジャーナリスティックな視点とフィクションとしての映像が混ざることで知覚を揺さぶっていくような作品は、いま世界的にも注目されていると思います。また私自身、作家としての第一歩を踏み出すのにすごく苦労しましたが、今回の受賞がひとつのきっかけとなって、みなさんが今後活躍できることを楽しみにしています。

森弘治
森弘治

最後に、Perfumeやビョークとの仕事でも知られ、今年のゲスト審査員を務めた電通CDC / Dentsu Lab Tokyoの菅野薫が登場(特集記事:菅野薫が語る映像の力とは?「本当に起きたこと」に賭ける方法論)。

菅野:広告賞の審査をよくしますが、今回のように、まず純粋に作家さんのやりたいことがあり、そこから今後の可能性にフォーカスする議論は新鮮でした。「なぜこれを作ろうと思ったのだろう?」と思わせる作家さんたちの視点や美学は刺激にもなりました。

受賞を励みに次に進むのも良いし、評価が低いと感じた方は「審査員も古臭いな」「どうすればより評価されたのだろう」と、どちらの方向にせよ自分に問いかけるきっかけにしていただけたらと思います。

菅野薫
菅野薫

なお授賞式会場では、佳作に選ばれた13作品からも『リーゼントさんどこへいく?』の作者、しょーたがパフォーマンスを披露。ナマ歌と奇妙な動きで作品のオフビート感を増幅させるようなステージとなった。また同じく佳作から、佐藤瑠美のAR映像インスタレーション『サーモンちゃんのあじ』の体験コーナーも出現。専用ゴーグルを付けて実物の寿司をつまみ取ると、そこに奇妙な擬人化キャラが現れ、「キャラクターを食べる」という新体験が可能になる。

菅野薫『リーゼントさんどこへいく?』の作者、しょーたがパフォーマンスを披露
菅野薫『リーゼントさんどこへいく?』の作者、しょーたがパフォーマンスを披露

佐藤瑠美のAR映像インスタレーション『サーモンちゃんのあじ』の体験コーナー
佐藤瑠美のAR映像インスタレーション『サーモンちゃんのあじ』の体験コーナー

ラストに登場したのは、入選作『CuBerry』の作者、CuBerryによるライブ。この日はバンド形態で、数曲を映像と共に演奏した。映像表現を軸としたパフォーマンスあり、実食イベントあり、ライブあり。新しい表現者たちによる自由で多彩なイベントが繰り広げられたこの日は、今後の「MEC Awardらしさ」を指し示すもののように感じた。

入選作『CuBerry』の作者、CuBerryによるライブパフォーマンス
入選作『CuBerry』の作者、CuBerryによるライブパフォーマンス

イベント情報
『MEC Award 2018(Media Explorer Challenge Award 2018)入選作品展』

2018年3月17日(土)~4月8日(日)
会場:埼玉県 川口 SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム
参加作家:
今治建城
CuBerry(河原雪花、小林奏子)
清水はるか
藤倉麻子
渡辺栞
小林颯
平野正和
久保雄基
松島友恵
佐藤洵佑
鷲尾怜
楊秦華
西片例
鈴木隆斗
佐藤瑠美
古本一樹
吉田真也
しょーた

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