欲望を発信し始めた少女たち、『シブカル祭。2015』レポート

清 竜人25、篠崎愛らによる雨の中の壮絶なライブで、今年も『シブカル祭。』が開幕

「女子が集えば世界が変わる~!?」「『シブカル祭。2015』、開会~!」。女子クリエイターと観客の熱いコール&レスポンスで幕を開けた今年の『シブカル祭。』は、あいにくの小雨で始まった。

『シブカル祭。2015~女子が集えば世界が変わる!?~』開会式
『シブカル祭。2015~女子が集えば世界が変わる!?~』開会式

須藤絢乃、BOMI、南阿沙美、苅田梨都子、篠崎愛の五名が『シブカル祭。2015』参加者を代表して登壇した開会式に続き、レセプションパーティー&ライブがスタートするも、どんどん強くなる雨。それに対抗するかのように1番手のTEMPURA KIDZは、この季節にあえての夏曲“はっぴぃ夏祭り”をぶつけ、観客と続くアーティストたちにエールを送る。

TEMPURA KIDZ
TEMPURA KIDZ

続いて登場した蒼波純と吉田凛音の14歳限定ユニット、ずんね from JC-WCは、いかにも中学生らしいたどたどしい自己紹介とパフォーマンスで男子たちを「か、かわいい……!」とほんわかさせ、3番手の篠崎愛にバトンタッチ。

ずんね from JC-WC
ずんね from JC-WC

『シブカル祭。』初参戦となる篠崎は、肩見せの大胆な浴衣姿で“Rainy Blue”を歌う。「<雨上がりの空は~>とか歌っちゃってるけど、大雨じゃないですか!」と天候いじりで笑いをとり、人気曲“A-G-A-I-N”のサビを観客と一緒に大熱唱した。

篠崎愛
篠崎愛

大トリは、みんなお待ちかねの一夫多妻制アイドル、清 竜人25の登場だ。髪を赤毛に変えた第1夫人の清咲乃、60cm髪を切ってライブにのぞんだ第4夫人の清美咲、同じく25cm切ったという(グループ名にちなんだとか)第6夫人の清可恩と、なぜか髪にまつわるイメージチェンジをかぶせて来た嫁たちと竜人くんは、特設ステージがぐわんぐわん揺れっぱなしになるくらいの熱いステージで観客全員を魅了。最後は、本人たちもびしょ濡れになりながら“Will ♡ You ♡ Marry ♡ Me?”を激唱し、雨を吹き飛ばす勢いで、今年の『シブカル祭。』に祝福を送った。

清 竜人25
清 竜人25

かくして、10月25日まで続く怒濤の10日間、女子による女子のための祝祭が始まったのだった。

『TOKYOシブカルランド。』に見られた、女子的で「シンメトリー」な美的感覚

今回の『シブカル祭。』も、バーリトゥード(なんでもあり)の多彩な企画で全体が構成されている。土日祝日を中心に行われるライブはその1つだし、「ファッション市。(マーケット)」に、ケータリングに、外壁を鮮やかに飾るウォールペインティング、変わったところでは公開撮影会なんてものもある。

店内にもアート作品の展示が
店内にもアート作品の展示が

その中でも主要な部分を占めているのが、パルコPART1の3階パルコミュージアムで開催される展覧会『TOKYOシブカルランド。』だ。会場内には、床一面がグリーンの芝生が敷き詰められ、美術館やギャラリーでは見ることのない解放感を実現している。

『TOKYOシブカルランド。』
『TOKYOシブカルランド。』

今年も、写真、ペインティング、映像、ファッションなどジャンルはさまざまだが、会場をゆっくり回遊しているとある共通項に気づく。幸洋子のポップな来迎図風映像作品『ロスト・サマー・ベイケイション』や、ピンクのイラストが目に突き刺さってくる、さいあくななちゃんの『夢という字がどんどんダサくなるとき』など、素材を左右対称のシンメトリーに配置した、様式性の強い作品がなぜか多いのだ。

そこでふと思い出すのは、マンガやアニメに度を越してハマる女子たちがしばしば作る「祭壇」の佇まいである。彼女たちはフィギュアなどキャラグッズを大量購入(同じものをいくつも!)して、それを自室の一角に配置して「祭壇」と称する。これは特定のキャラへの自分の愛の深さを示そうとする行動・習性に他ならないが、まったく同じことが『シブカル祭。』に参加する女性アーティストたちの内面でも起きている気がする。

『TOKYOシブカルランド。』

『TOKYOシブカルランド。』
『TOKYOシブカルランド。』

彼女たちの作品には、しばしば幼年期の記憶、ファッション、美、身体へのオブセッション(強迫観念)が主題として現れる。その対象に憧憬を覚えているか、憎しみを覚えているかはアーティストごとにそれぞれ異なるが、それらを「特別なもの」として彼女たちは奉じている。その想いが、祭壇という儀式性の強い形態として現れるのだろう。そこには躁的な装飾に見られるスキゾフレニア(分裂的・非定住的)と、それらを無理矢理に手に入れようとするパラノイア(偏執的・統合的)が同居する独自の「美的&バランス感覚」が宿っている。

その視点で『TOKYOシブカルランド。』を観て行くと、かたちや表現メディアの違いを超えて、どれも女子クリエイターたちの内面を凝縮した祭壇のように見えてくる。人の手で作られる「表現」や「作品」には、多かれ少なかれ祭壇的な佇まいが生まれるのかもしれない。けれども、コンセプトや文脈を踏まえての政治ゲームを意識して、時にシニカルさやアイロニーが勝ってしまう現代美術の表現に比べて、ここに並ぶ作品たちは、いい意味で粗野で、危ういくらい純粋で、そして喧しいくらいに多声的だ。そんなスキゾでパラノな風景は、爽快ですらある。

1人の女の子の「生き様すべて」を、後押しするのが『シブカル祭。』

『シブカル祭。』が始まって今年で5年。ずっと変わらずに『シブカル祭。』が続けてきたのは、「自分を表現したい&発信したい」女の子を応援し、フックアップすることだ。ある運営スタッフは「ある意味、作品よりも本人のキャラクターが濃いのが特徴。1人の女の子の生き様すべてを後押しするのが『シブカル祭。』の役目かなって気がします」と言う。実際、この5年で『シブカル祭。』に登場し、その後さらに活躍の幅を広げたクリエイターはキラ星のごとく輝いている。ももいろクローバーZ、平野紗季子、水曜日のカンパネラ、etc……。

オープニングの日、印象的な風景を目にした。女の子と愛犬を撮る写真家・北田瑞絵のブースに、作品にも参加したモデルの兎丸愛美が来場していた。彼女のまわりには、どちらかという地味目な、校則にうるさい女子校に通っていそうな制服姿の女の子たちが集まり、ちょっと緊張気味に会話したり、ツーショット写真を撮ってもらったりしていた。

『TOKYOシブカルランド。』
『TOKYOシブカルランド。』

彼女たちの中から、ひょっとしたら2年後、3年後に『シブカル祭。』に登場するクリエイターが現れるかもしれないと思った。自分を発信したい、引っ込み思案な自分を変えたい、憧れのアイドルみたいに私もなりたい、という気持ちを胸に秘めた、今は無名の少女たち。でも、今年の『シブカル祭。』に参加しているクリエイターたちだって、すこし前までみんな普通の少女だったのだ。

ちょっとの勇気を持って、自分を主張してみること。その一歩のために、背中をぽんと押してあげるチャンスの場である限り、『シブカル祭。』は支持され続けるだろう。

イベント情報
『シブカル祭。2015~女子が集えば世界が変わる!?~』

2015年10月16日(金)~10月25日(日)
会場:東京都 渋谷 パルコミュージアム、渋谷CLUB QUATTRO、渋谷PARCO館内外各所

『MOOSIC LAB in シブカル祭。』

2015年10月22日(木)21:15~23:00
会場:東京都 渋谷 シネクイント
上映作品:
『大切な君へ』(監督:松本花奈)
『脱脱脱脱17』(監督:松本花奈)
『いいにおいのする映画』(監督:酒井麻衣)
『Heavy Shabby Girl』(監督:東佳苗)
料金:1,500円

『シブカル音楽祭。2015~女子が唄えば世界が踊る!?~』

2015年10月23日(金)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO
出演:
木村カエラ
水曜日のカンパネラ
サ上と中江
Yellow Fang
UCARY&THE VALENTINE
Young Juvenile Youth
料金:前売4,000円 当日4,500円(共にドリンク別)



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