コラム

中国Z世代を虜にする漢服ブーム。愛好者やデザイナーが語る

中国Z世代を虜にする漢服ブーム。愛好者やデザイナーが語る

テキスト
小山ひとみ
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)
2021/04/09

いま、中国の若者の間で伝統文化の要素を取り入れたデザインや商品がブームになっている。「国風ブーム」と呼ばれるこのブームは、数年前からZ世代の若者を中心に起こり、ファッション、時代劇、アニメなど、幅広い分野で流行しているという。

このような動きの背景には、若者の消費行動や価値観、伝統文化に対する意識の変化などさまざまな要素が絡み合っているようだが、このブームの流れで再注目されている文化のひとつに中国の伝統衣装「漢服」がある。

人気アイドルが出演するドラマの衣装にも取り入れられている漢服は時間をかけて草の根的に愛好者を増やし、いまや普段着として着ている若者もいるそうだ。その人気に目をつけた自治体による「漢服で町おこし」も行なわれているという。

漢服を愛好する中国の若者や、漢服ファッションショーの仕掛け人、漢服を広めようと活動するインフルエンサーなど、現地で漢服ブームに携わる人々に、『中国新世代 チャイナ・ニュージェネレーション』(スモール出版)の著者である小山ひとみ氏が、取材を行ない、その流行の実像に迫った。

(メイン画像:写真:黄富貴児)

音楽や服、ゲームにも。中国のカルチャーに巻き起こる「国風」の波

最近、中国の番組を見ていて出演者のアイドルや歌手の衣装にある変化を感じていた。エレクトロニックなサウンドと東洋的なメロディーがミックスされた曲に合わせて、東洋的な要素が入った衣装でステージに立つアーティストが一気に増えたのだ。

アイドルのサバイバルオーディション番組でも「東洋的な衣装」で登場する候補生が今年はさらに増えたように感じる。丈や袖が長い上着、着物の襟のような首元、袴のような服……。その「東洋的な要素」について調べていくと、中国のネットやメディアでよく目にする「国風(グオフォン)」と呼ばれるものだということがわかった。

「国風」とは「中国の伝統文化の要素が入ったもの」。実はいま、中国ではこの「国風」がとんでもないブームになっている。それは服や音楽だけにとどまらず、ゲームなどにも見られるのだが、なかでもファッションの「国風」の流れでよく目にする「漢服(ハンフー)」が、10代、20代の間でブームとなり一大産業になっているのだ。

ボーイズグループ・S.K.Y天空少年“天外・NEW SKY”のパフォーマンス。昨年12月にリリースされた楽曲

現在WeTVで放送中のオーディション番組『創造営2021』の模様 写真:Tencent Video『創造営2021』Weiboより
現在WeTVで放送中のオーディション番組『創造営2021』の模様 写真:Tencent Video『創造営2021』Weiboより

漢服の研究者、楊娜(ヤン・ナー)によると「漢服」とは「漢民族の伝統的な服飾」を指し、さらには「古代漢服」と「現代漢服」に分けられる。

「古代漢服」は黄帝(紀元前26-7世紀頃、中国を統治した最初の帝とされる)の衣服をもとにつくられ、清の時代以前まで漢民族が着ていた服。「現代漢服」はその古代漢服をベースに伝統文化とモダンが入った服とのこと(今回紹介するのは、後者の「現代漢服」に当たるが、テキストでは「漢服」とする)。

中国・上海で開催された2001年のAPEC首脳会議では、参列した各国のリーダーが開催国の民族衣装を着るという習慣にならい、スタンドカラーにチャイナボタンが付いたジャケットを着用した。この姿がメディアで伝えられると、中国人の間で物議をかもした。「ジャケットは西洋のもの」「中国を代表する民族衣装とは?」「漢民族以外の民族には伝統服があるのに、漢民族は?」と議論が巻き起こったのだ。

その2年後の2003年11月22日、河南省鄭州市在住の男性が、自作の漢服を着て街を歩いたことで話題を呼んだ。彼は「現代になって漢服を着て街に出た人」として初めて報道された人物となり、「漢服ブーム」のきっかけをつくったと言われている。

その後、漢服愛好家たちの間で、11月22日は「漢服を着て街に出ようデー」と呼ばれるようになり、漢服の普及を目的とした記念日とされている。それから現在まで約20年をかけて、漢服は草の根的に広がり、徐々に受け入れられてきた。私も北京の繁華街で漢服を着ている高校生を見かけ、思わず声をかけたこともある。

現在iQIYIで放送中のオーディション番組『青春有你3 / Youth with You3』より 写真提供:iQIYI
現在iQIYIで放送中のオーディション番組『青春有你3 / Youth with You3』より 写真提供:iQIYI

とは言っても、今のようなブームになったのはここ数年のこと。中国のSNSや動画サービスが普及するにつれ、漢服を着てイベントに参加する様子を発信している若者や、KOL (Key Opinion Leader、拡散力や影響力を持つインフルエンサーのこと)として漢服の良さを発信している人も増えている。

また、中国人YouTuberの中には、英語で漢服を紹介する人もいるし、自分の漢服ブランドを立ち上げてネットショップで販売しているKOLもいて、なんだかとんでもないブームになっている。

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