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金沢21世紀美術館で美術家とミュージシャンによる新たな試み

金沢21世紀美術館で美術家とミュージシャンによる新たな試み

内田伸一
撮影:佐々木鋼平
2012/07/06

アーティストからの「出会いの場」という贈り物

続けて、エレロさんと、担当キュレーターの村田さんにインタビューさせて頂きました。エレロさんいわく、今回のような開かれた構造を持つプロジェクトは、アーティストとしての自身の資質にもぴったり合うものだそうです。

エレロ:僕はカンバスにも描くし、建物の壁や街中の構造物にも描く。両方の可能性を探り続けることが大切だと思っているんです。前者は、自分という個との対話。後者はどんな場所でも起こりえる、日々の経験としてのアートの探求ですね。今回はさらに、彫刻タイプのインスタレーションという形をとったことも新たな挑戦でした。2年ほど前から始めて、この美術館で制作できることが決まった際に、いい機会だと思ったんです。

村田さんも今回エレロさんを招くことを、ごく自然に、かつ確信的に考えついたといいます。最初は、地元金沢にウクレレを愛する人たちがいるのは知っていたので、まず関口さんへ参加をお願いしてみようというアイデアがありました。

村田:その次に、どんな美術家とコラボレートしてもらおうと考えたとき、エレロさんのことが真っ先に頭に浮かびました。ジャンルは違えど、即興的な魅力や、公共空間を自由に活かすところなどは音楽的要素にも通じると思ったし、彼の色や形へのアプローチには、ハーモニーやバランス感覚という点でも音とのつながりを感じていたからです。日本、ハワイ、コスタリカというつながりは、欧米中心のアート観に対して、環太平洋のアートという別の視点を見出せるかもしれない、という期待も僕自身にはあります。

村田大輔
村田大輔

『サイコトロピカル・ランドスケープ』の作品空間は完成しましたが、同時にそれはこのプログラムのスタートに他なりません。エレロさんは、今後の関口さんたちによる活動の「予測不能さ」を楽しみにしていると語ります。

エレロ:転がる雪の玉がどんどんふくらんでいくように、これから何が起こるかわからないのが面白い。関口さんとは言葉の壁はあったけれど、それを超えるくらいの、精神的なコネクションが共有できました。彼らがウクレレという楽器を好んで選んでいることも、今回の趣旨にぴったりだと思います。

エレロさんは、実は美術家として活動する以前に、建築や教育を学んでいた時期もありました。そうした背景も今回の作品にはつながるのでしょうか?

エレロ:実際は、建築と教育についてはどちらも卒業には至っていないんですけどね(苦笑)。でもずっと深い関心を持ち続けているのは確かです。壁画という表現で言えば、例えば中南米における政治的・文化的なメッセージを持つものや、ロシアのように宗教的な表現もあります。でも僕のはそのどれとも違う。そうした直接的なメッセージ以前のもの、「媒介される前のレベルの何か」を扱っているんだと、自分では感じています。

フェデリコ・エレロ
フェデリコ・エレロ

エレロさんに、日本の印象は? と聞くと「その問いこそが、とても日本人的な質問ですね」とニッコリと鋭い指摘をされてしまいましたが(汗)、アートバスでの体験以降、強いつながりを感じてきたといいます。彼の作品はこの美術館にも収蔵されているほか、十和田市現代美術館でも建物にペイントした常設作品が見られます。

エレロ:2006年に川崎市での『かわさき現代彫刻展』で、街の小さなトンネルの内側を自由にペイントする機会を得たことも、想い出深い体験でした。10日ほどかけて、現地の建築設計事務所のみなさんと作業したんです。彼らは日々の仕事で多大なプレッシャーとも戦っていますが、そこから解放されたひとときを共に過ごせた気がします。人々と直接的につながることで、美術家が手渡せるギフトもあるのだと思いました。今回はまた違う形ですが、僕の作品を通して、特に若いみなさんが新しい出会いを得ることができれば嬉しい限りです。

形のない「つながり」や「場」を築き、感じ合う

続いて、さきほどのウクレレ演奏で一同を引っ張った本展覧会プロジェクト・リーダーの藤本美和さんにもお話を伺うことができました。4年前に金沢市民芸術村で「ウクレレの輪プロジェクト」に参加。以来、この楽器を通じて音楽の楽しさを幅広く伝えてきました。関口さんが継続しているウクレレイベント『ウクレレピクニック』に刺激され、北陸三県で『ウクレレサミット』も企画しています。

藤本:ウクレリアンの大先輩である関口さんとご一緒できることになって、本当に嬉しいです。彼がよく仰るように、ウクレレは楽器であると同時に優れたコミュニケーションツールだと実感しています。私はもともとトランぺッターでジャズやソウルを吹いてきたんですが、なぜかウクレレ好きになってしまって(笑)。子供に聴かせてあげるのにも、ウクレレはとてもいいんですよ。

フェデリコ・エレロ
藤本美和

今回は、これまでの活動の積み重ねで育んだ仲間=アミーゴたちの力を発揮できる絶好の機会です。この日、エレロさんが生み出した空間に初めて足を踏み入れ、思いを新たにしたそうです。

藤本:あの広がりのあるカラフルな空間に、ワクワク、ゾクゾクしてしまいました(笑)。すごくポジティブな感情をわき上がらせる場所だとも思います。今日はエレロさんにウクレレの弾き方を教えてあげることもできて嬉しかった。これから年間を通して、今はまだ形のない「つながり」や「場」を築いていけたらと思います。そして、参加者それぞれがこの1年間に向けて描いている夢を、関口さんや美術館のみなさんと一緒に具体化していけたらと思っています。

会場で誰もがウクレレを楽しむことができる「ウクレレフリーステージ! - 誰でもウクレリアン-」プロジェクトは、会期中毎日の開催。また定期的に「サタデー・ウクレレ・ワークショップ」も企画されます。「Aloha Amigo メンバー」総勢45名によるウクレレ演奏会は、エレロさんの「ステージ」上はもちろん、市内の湯涌温泉などにも飛び出していきます。

音楽と美術というジャンルを越え、またコスタリカ、ハワイ、日本という国境を越えて進んでいくこのプロジェクト。もちろん「他者」はどう転んでも「私」とまったく同じ存在にはなりません。しかし、だからこそこの世界の「出会い」は楽しく、豊かなものになり得るのだとも言えます。心地良い色と音のあふれる場所でそんな経験をしてみたくなったら、出かけてみてはどうでしょう。もちろん合い言葉は……「Aloha Amigo!」です!

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イベント情報

『Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之』

2012年5月3日(木)〜2013年3月17日(日)
会場:石川県 金沢21世紀美術館
時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし、7月16日、8月13日、9月17日、10月8日、12月24日、1月14日、2月11日は開館)、臨時休館(12月4日(火)〜12月13日(木))、年末年始(12月29日(土)〜1月1日(火))、7月17日(火)、9月18日(火)、12月25日(火)、1月15日(火)、2月12日(火)
料金:2012年5月3日(木)〜11月22日(木)入場無料、2012年11月23日(金)〜2013年3月17日(日)当日の『ソンエリュミエール-物質・移動・時間』展の観覧券でご覧いただけます。
金沢21世紀美術館
金沢21世紀美術館『Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之 』
プロジェクトの様子はこちら

同時開催『工芸未来派』展

2012年4月28日(土)〜 8月31日(金)
会場:石川県 金沢21世紀美術館
時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし、7月16日、8月13日は開館)、7月17日(火)
料金:一般:1,000円 大学生・65歳以上800円 小中高生400円
金沢21世紀美術館『工芸未来派』展

同時開催 コレクション展 『ソンエリュミエール-物質・移動・時間』

2012年4月28日(土)〜11月4日(日)
会場:石川県 金沢21世紀美術館
時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし、7月16日、8月13日、9月17日、10月8日は開館)、7月17日(火)、9月18日(火)
料金:一般:350円 大学生・65歳以上280円 小中高生は無料
金沢21世紀美術館 コレクション展 『ソンエリュミエール-物質・移動・時間』

同時開催『matohu 日本の眼 日常にひそむ美を見つける』

2012年7月21日(土)〜11月25日(日)
会場:石川県 金沢21世紀美術館 デザインギャラリー
時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし、8月13日、9月17日、10月8日は開館)、7月17日(火)、9月18日(火)
料金:入場無料

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