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金沢21世紀美術館で美術家とミュージシャンによる新たな試み

金沢21世紀美術館で美術家とミュージシャンによる新たな試み

内田伸一
撮影:佐々木鋼平
2012/07/06

キーワードは「火山?」 色彩が踊り出し、音楽がきらめく空間

このプログラムのために使われる広々とした展示室に進むと、床一面に広がる爽やかなパステルブルーの空間のなか、不思議な階段状の木製オブジェが、南の島のようにぽっかりと出現していました。オブジェの一面を彩るのは、エレロ作品でお馴染みのあのカラフルなパターンです。

作品名は『サイコトロピカル・ランドスケープ』。そこは、訪れた人々が色彩そのものの中に入っていく体験を与えてくれる場になっていました。エレロさんはこれまでも展示空間の内壁そのものに描いたり、街なかに大胆な壁画インスタレーションを出現させるなど、額縁に収まる絵画とは違う自由なアプローチで知られています。今回はその魅力を発揮しつつ、立体造形を自らつくってそこに描くという新たな挑戦もなされていました。エレロさんが観衆に挨拶します。

エレロ:また金沢に来ることができて嬉しいです。お話をもらって最初に考えたアイデアのひとつは、日本、ハワイ、コスタリカを結びつける共通点はないだろうかということでした。思いついたのは「火山」の存在です。そして、いずれも水に囲まれ、豊かな自然に恵まれていること。そこで、この考えをもとに、関口さんとのコラボレーションを実現させる「ステージ」を作ろうと考えました。

ステージ

たしかに、階段状のオブジェは海に浮かぶ火山のようにも見えてきます。しかし、このステージには通常のそれとは真逆の構造がありました。そこにもエレロさん流のコンセプトがあります。

エレロ:ふつう、ステージというのは舞台を中心に客席が段々高くせりあがっていくものです。そう、ローマのコロシアムのように。でもここではそれを逆さまにしてみました。なぜなら「見せる側」「見る側」のヒエラルキーを取り払って、平等に参加できる場所にしたかったから。そして、このステージでは「色」を「音楽」に置き換える表現にも挑んでみました。その形や色から、ものごとのあり方を音楽と同じように五感で楽しめたらと思ったんです。結果、いわゆる「絵画」とはだいぶ違うものをつくることになりましたね(笑)。訪れたみなさんが動き回るたび、新しい体験をしてもらえる場所になっていたら嬉しいです。

オブジェには自由に登り降りし、腰をかけて休むこともOK。確かに、壁にかけられた絵画を眺めるのとは違う体験がそこにはあります。トロピカルな色彩が織りなす多様なパターン。それらが山なりのステージを覆う様子は、さながら「火山」から湧き出るメロディ+リズム+ハーモニー?

エレロ:もうひとつ、この作品に込めたアイデアがあります。それはいってみれば「文化のドミノ倒し」みたいなものです。日本出身の関口さんたちがハワイの音楽を愛し、コスタリカ出身の僕がそんな彼らのためにステージを作る。そしてその場所は日本のミュージアム…。こうしたつがなりが次々と起きて、かつ重要なのは、その行方はまだ誰も知らないことです。こういうオープンなプロジェクトに参加できたことを光栄に思うし、僕自身も楽しみたい。

南国の海を連想させる床の水色は、四方の壁にも膝下くらいまで塗られていますが、その四隅はどこかラフに仕上げられ、折紙でつくったプールのようでもあります。そんな緩やかな仕上がり具合も、エレロさんがいうオープンさにつながっているのかもしれません。

『Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之』会場風景より

ここで関口さんも、愛用のヴィンテージ・ウクレレを抱えてステージに登り、挨拶してくれました。

関口:僕がこのお話をもらって、若い方々と一緒に何をやるかとなったとき、真っ先に考えたのは、地元のウクレリアンを探し、彼らと出会うことでした。金沢21世紀美術館は、周囲とコネクトする、リンクするという活動テーマをお持ちだと思いますが、これは世界中のウクレリアンにも共通することだからです。そして、そのための素敵な空間をこうしてエレロさんに創り出していただけました。ウクレレはときに、モノクロの味気ない暮らしにも、エレロさんの絵のようなカラフルな色どりを与えてくれます。そして、その色はもともと自分たちの中にあるものかもしれない。来場者のみなさんには、まずはこの空間を純粋に楽しむことから入っていってもらえたら嬉しいですね。僕と地元の「メンバー」たちはその案内役になれたらと思います。

関口和之とフェデリコ・エレロ

「聴く」「聴かせる」の垣根を外すウクレレ体験

関口さんの言葉どおり、これから1年、この空間で様々なプログラムが展開されていきます。この日は、そのなかでも会期中を通して開催される企画『誰でもウクレリアン』のプロジェクトメンバーたちが登場しました。リーダーの藤本美和さんは、ウクレレ歴6年。「ウクレレを通していろんな人と知り合い、いろんな体験ができる幸せを感じてきました。今回参加させてもらえるにあたり、チームを引っ張って行きたい」と、元気よくあいさつ。メンバーたちと陽気な演奏を聴かせてくれました。もちろん、関口さんもこのセッションに参戦。

『Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之』体験会場風景

さらに、この日訪れた人々にも実際にウクレレが手渡され、即席の『誰でもウクレリアン』企画が始まります。数人ずつに分かれ、メンバーが簡単なコードの押さえ方を伝授。曲は誰もが知る『幸せなら手をたたこう』です。エレロさんも笑顔でウクレレを手に取ります。なおこの曲、日本人の木村利人さんが旅先で聴いたスペイン民謡をもとに生まれたとの逸話も。今回は「簡単に弾けるから」というシンプルな理由での選曲だそうですが、「文化のドミノ倒し」が偶然ここでも感じられるようで、面白いですね。

『Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之』体験会場風景

数分の練習後、皆で合奏してみます。美術館スタッフも、来場したプレス関係者たちやゲストも、いまこの瞬間まさにウクレリアンに。「手をたたこう」「足鳴らそう」のフレーズでは、演奏しながら一緒に身体を動かします。こうした楽しみかたができるのも、小さく手軽なこの楽器ならではかもしれません。

エレロ:いま、ほんの少しの時間を使って音楽を共に奏でたことで、今日集ってくれた知らない人同士の間に笑顔が交わされるのを見て、素晴らしいと思いました。テクノロジーの発達に伴って人々のメディアへの依存も進んでいますが、それをここでは一瞬手放し、お互いの顔を見ながら知り合うことができたらと願います。どこでも好きなところに座って、思い思いに交流してくださいね。

多くの場合、アートは高尚なコンセプトを掲げるものだと思われ、またそれを求められる場面も増えています。しかしエレロさんは「今回はそれとは別のもの。『いまここにいる』という関係づくりの場になってほしい」と、やはり笑顔で語りました。

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イベント情報

『Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之』

2012年5月3日(木)〜2013年3月17日(日)
会場:石川県 金沢21世紀美術館
時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし、7月16日、8月13日、9月17日、10月8日、12月24日、1月14日、2月11日は開館)、臨時休館(12月4日(火)〜12月13日(木))、年末年始(12月29日(土)〜1月1日(火))、7月17日(火)、9月18日(火)、12月25日(火)、1月15日(火)、2月12日(火)
料金:2012年5月3日(木)〜11月22日(木)入場無料、2012年11月23日(金)〜2013年3月17日(日)当日の『ソンエリュミエール-物質・移動・時間』展の観覧券でご覧いただけます。
金沢21世紀美術館
金沢21世紀美術館『Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之 』
プロジェクトの様子はこちら

同時開催『工芸未来派』展

2012年4月28日(土)〜 8月31日(金)
会場:石川県 金沢21世紀美術館
時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし、7月16日、8月13日は開館)、7月17日(火)
料金:一般:1,000円 大学生・65歳以上800円 小中高生400円
金沢21世紀美術館『工芸未来派』展

同時開催 コレクション展 『ソンエリュミエール-物質・移動・時間』

2012年4月28日(土)〜11月4日(日)
会場:石川県 金沢21世紀美術館
時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし、7月16日、8月13日、9月17日、10月8日は開館)、7月17日(火)、9月18日(火)
料金:一般:350円 大学生・65歳以上280円 小中高生は無料
金沢21世紀美術館 コレクション展 『ソンエリュミエール-物質・移動・時間』

同時開催『matohu 日本の眼 日常にひそむ美を見つける』

2012年7月21日(土)〜11月25日(日)
会場:石川県 金沢21世紀美術館 デザインギャラリー
時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし、8月13日、9月17日、10月8日は開館)、7月17日(火)、9月18日(火)
料金:入場無料

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