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コンプレックス文化論
第二回「下戸」

其の二 スカート・澤部渡インタビュー
「居酒屋ではなく、ジョナサンで語り合いたい」

お酒を飲まない人間は、いっつも、どこかしら申し訳無さそうにしている。自分がほとんどお酒を飲まない人間だから、その申し訳なさ具合を見つけると、ぐいぐいと心を開いていく。息を切らして会議室に駆け込んできた澤部氏が申し訳無さそうにする姿を見て、「おお、これはナイス下戸に違いない」と色めき立った。スカートの澤部渡、清涼感のあるメロディに小さな屈折と確かな刺激を潜ませる音楽の創造主は、アルコール度数0%の素敵な微炭酸ミュージシャンだった。

スカート
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スカート

どこか影を持ちながらも清涼感のあるソングライティングとバンドアンサンブルで職業・性別・年齢を問わず評判を集める不健康ポップバンド。強度のあるポップスを提示しながらも観客を強く惹き付けるエモーショナルなライヴ・パフォーマンスが魅力。2006年、澤部渡のソロプロジェクトとして多重録音によるレコーディングを中心に活動を開始。2010年、ファーストアルバム『エス・オー・エス』のリリースをきっかけに活動を本格化。さまざまなサポートメンバーを迎えてライヴを行ってきたが、現在は佐久間裕太(ex.昆虫キッズ/ドラムズ)、清水瑶志郎(マンタ・レイ・バレエ/ベース)、佐藤優介 (カメラ=万年筆/キーボード)、シマダボーイ(NATURE DANGER GANG/パーカッション)をサポートメンバーとして迎え活動している。最新作はシングル『静かな夜がいい』(カクバリズム/2016年)。
skirtskirtskirt: Flavors.me

ドリンクバーでいかに人とじっくり話せるかが大事

―ライブで対バンをすると、終わった後に、出演した皆で「飲みに行くぞー」って流れになるわけですよね。そういう時に澤部さんは飲みに行かないんですか?

澤部:そうですね、基本的には帰りますね。お酒という緩衝材が使えないので、対バンした皆と仲良くなるのに、凄く時間がかかっちゃうんです。

澤部渡(スカート)

―いつからお酒がダメになったんですか。

澤部:最初からですね。少しは飲めるんですけど、とにかく20歳くらいの頃、とっても暗い青春だったもので……。友達が全然いなくて、「飲むぞー!」みたいな雰囲気は自分の周りのどこを探してもなかった。しばらくして何かの機会にちょっとお酒を飲んでみたら、気管支が狭くなる感じがして体がたちまちおかしくなった。ちっとも楽しくない、もういい、コーラでいい、ってその時強く思って。以来、僕はドリンクバーで十分なんですよ。

―僕もです。友達と沢山話がしたいときはバーミヤンでドリンクバーと決めています。

澤部:ですよね! 絶対にファミレスですよ。

―飲み屋って、とにかくうるさいんですよ。友達5、6人でじっくり話す状態が一番楽しいし、話も奥へ奥へ掘られていきますけど、飲み屋って、その数名ですら分断しちゃうじゃないですか。特定の人と話さなきゃいけなくなる。だから、レッツゴーバーミヤンなんです。

澤部渡(スカート)

澤部:異論なしです。なんでそんなに酒が欲しいのか。飲み会に誘ってくる人って、まだまだ壁があってそこまで仲良くない間柄であったとしても、飲めばなんとかなるみたいな空気を出してくるじゃないですか、あれがもう信じられなくて。


―みんな、壁を越えるために飲みたいらしんですけど、壁があるから飲みたくないんですよね。

澤部:そうですよ。

―でもですね、いわゆる企業社会って、例えば、取引先と「今日は無礼講だ〜」とか言って飲みまくって、次に会った時に「いやーこないだはどうもでした」なんて言って、実際に壁を越えて仕事が生まれたりしてきたわけですよね。

澤部:イヤですねー。細分化した現代なんですから、コミュニケーションだって細分化していいんじゃないでしょうか。

―「こないだのあの日、マジ酔いまくってて、ヤバかったぜオマエ」みたいな会話、ありますよね。あれ、ちっとも面白くない。

澤部:酒場のエピソードは面白い、みたいな前提は勘弁して欲しいですよね。あと、僕みたいに体がデカいと、「飲めるっしょ」みたいな前提も出てくる。それはあなたの思い込みです! バンドマンと打ち上げして、まあ一杯くらいは飲まないと、っていう状態になった時に「じゃあ、カルアミルクで」とか言うと、「そんな体型なのに」って笑われるんですよ。

―ひどい話です。僕は、1杯目からカシスオレンジです。お酒全体に漂う「シェアしようぜ」という発想、それは「とりあえずビール!!」に象徴されると思うんですけど、あの「みんなで」感を受け付けちゃいけないんですよ。そういえば、編集者への事前のメールに、「酒豪に憧れるより、酒を飲まないほうがむしろパンクだ」とありましたけど、これはその「みんなで」感への反旗なんですか。

澤部:やっぱり「みんなで」より、少数派にまわるほうがパンクですからね。ライブハウスの現場だと飲む人のほうが圧倒的に多いので、そういう場で「オレは敢えて飲まない、そんなオレはパンクなんじゃないか!」と思うことで、なんとか辛うじて自分のプライドを守っているんです(笑)。

―ライブが終わって、皆が「和民」に行くところ、ひとりで「富士そば」にいく。そばを食って、そのまま家に帰る。これが新しいパンクの在り方だと。

澤部:そうです。それに、酔ってる人って、なぜか肩組んだりハイタッチしたりするでしょう…。こうなると、どうしたって一定の距離を設けたくなる。

―中学時代、いわゆる青春パンクがとにかく苦手だったそうですね。その嫌悪感って、具体的にはどんなものだったのですか?

澤部:「圧倒的に楽しそうだなぁ」って。でもね、これはひがみなんですよ。僕も楽しかったことは楽しかったけれど…。

―ああいった、雲ひとつない晴天、みたいな楽しさではなかった。

澤部:そうですね。でも、我々は曇天でも楽しくやれたんですよ。雨が降っていても構わない、そんな楽しみ方を持っていました。だって、ずっと楽しそうにしている人って、怖いじゃないですか。みんなで共有するひとつの目標があってそこにみんなで群がっていく、この状態って、もはやファシズムですよ。もっと違う青春の姿があっていい。

―青春パンクのひとつの流れとして、悶々とした自分をさらけ出す、みたいな世界観もありますよね。ああいうのもイヤなんですか?

澤部:イヤです! ブログでやってくれ、って思う。オレの、悩ましいがゆえの、ありのままの勢いを見てくれ、っていうのは酒と似ていますよね。

澤部渡(スカート)

―いつの頃からか、音楽に限らず、表現されたものに対して「等身大」って言葉が使われるようになりましたよね。つまり、ありのままを出しているよ、っていうことが、褒め言葉として使われている。受け取る側は、「そのままさらけ出してくれているんだ」と喜ぶワケです。

澤部:気持ち悪いですよね。僕、レビューとかで「ハートフル」とか「等身大」って言葉があったら聴かないようにしていますから。

―でもその「等身大」に対しては、ファンがいっぱいついてくるわけですよね。畜生って思います?

澤部:いや、もうそれはもうしょうがないことです。僕らはマイノリティなんだって思って暮らしていくしかない。マイノリティだけど腐っているわけではない、これを一番大切にしたい。

―スカートを聴いている人は、そのマイノリティの在り方を、群がるのではなく各々で感知していると思います。そういう人って、外の見た目にメッセージを出さない気がするんですよ。

澤部:というと?

―極端な話ですが、金髪にしたりしない。ムキムキの筋肉にタンクトップとはならない。

澤部:もちろん、そういう金髪やムキムキにも聴いてもらいたいですよ。でも、それを強制しないで欲しい。つまり、「お客であるこっちが『イエーイ』ってやってるんだから、ステージ上でも『イエーイ』ってやってくれよ」みたいな。

―正に、酒場っぽいやりとりですね。

澤部:確かにそうですね。あっ、だから、コミュニケーションを深める時に、お酒を使うのが気になっちゃうのかもしれない。なにかの勢いを借りてその人のフィールドに突っ込んでいくのって、そもそもおかしいんですよ。だからやっぱりドリンクバーでいかに人とじっくり話せるかが大事になってくる。

―ドリンクバーは実に平和な環境を作ります。ホットコーヒーを飲んでも良いし、コーラでも良い。あんなに自由にメロンソーダを飲める環境はないですよ。

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